内務留保の重要性と流動資金の関係3(メデイアと用語統一必要性)

昨日紹介した解説でも「手元資金」には「流動性の高い資金の総称」とあって現預金に限らないことが示され、短期有価証券を含むことが多いとなっています。
そもそも言葉の意味から考えても「現預金」の表現は現金と預金等の個別分類を表していますし、手元資金とか決済用資金・流動性資金等の使用目的による表現よりは範囲が狭いことが明らかで、下位概念の現預金の方が手元資金よりも多いとは(経済知識のない私のようなものでも)常識的に想定できません。
手元資金等はすぐに現預金化できる資産を含む=手元資金の方が現預金よりも多いことが経済用語としても明らかですが、日経新聞記事ではなぜ逆転した書き方になっているのか不思議ですが、私のような素人が食事や仕事に出る合間にちょっと読む程度の人間には思いがけない深い意味がこめられていのかもしれません。
仮に日経新聞で論説を書く人の経済用語理解が間違っているとした場合、日経新聞の21日記事と25日記事両方とも間違っていることってあるの?という疑問です。
仮に別の人が書いているとすれば2人とも逆に理解していることになるほか、両記事ともに内容からして情報収集して歩く新米記者が書ける執筆ではなく、ベテランのエコノミストによるものと思われますが、プロが2人も揃って経済用語の基礎知識を間違って逆に書くようなことがあるのでしょうか?
仮に執筆者が同じとしても・校正等の事務局が充実しているはずの大手新聞社の語句チェックが機能せずに2回も通っていることになりますが、(現預金が200兆円で手元資金117兆円と出れば普通は?おかしいぞ!と気がつくものです)2回目の記事では1回目と大幅な数字違いがあるのでこの時点で「どうして大きな数字違いがあるのか?」に気がついて見直せば、どちらかが間違っていることがすぐ分かる筈ですが、2回ともスルーしているとすれば関連部局のチェック能力に疑いが起きます。
事務局能力の名誉のために邪推?すると関連部局ではわかっていたが、世論誘導のために?意図的にスルーさせて逆の意味で書く必要があると判断したのでしょうか?
もしも世間常識と違う意味で熟語を意図的に使う場合には、誤解を招かないように「ここではこういう意味で書いています」と「断り書き」を入れるのが公平な立場でしょう。
ちなみに資金滞留批判のトーンは21日の「大機小機」に続いて24日の日経新聞の第1面に「最高益の実相」欄として大きく出ていて(1面の左約半分の大きさ)その続きで今問題にしている25日3pの記事になっていることがわかります。
今朝の日経第一面では「利益剰余金56%が最高」の大見出しでいかにも巨大な剰余金を溜め込んでいるかのようなイメージ強調の連載は終わっていません。
内容を見ると、設備投資の動きが紹介されていますが、以下の通りあくまで部分の紹介で全体の動きを期待するかのような書きぶりです。

「スバルの・・社長は・・・『次元が変わる技術進化に備えこれまでできなかった設備投資や研究開発を増やす』と話す。溜め込んだお金をどう使うか一層のの説明を求められる」

と思わせぶりに書いています。
「思わせぶり」だけでカチッとした事実がないといえば、朝日新聞の記事の多くにその傾向が強くて歯ごたえがないので20年以上前に朝日新聞から日経新聞に変えて満足していたのですが、日経も最近ではムード報道中心になって来たのでしょうか?
事実の裏取り必要性といえば、最近では週刊文春の山尾志桜里氏の不倫騒動で見ても分かるように、(経済報道のように難しいことではなくスキャンダル的事実中心ですが・・)裏取り能力の高さに驚きます。
こうした手を変え品を変えての日経新聞報道の流れ(内部留保悪玉説の浸透努力?)を見ると、21日「大機小機」で小さく出して置いて(その間小刻みに何かを書いていたのかも知れませんが、私は気づきませんでした)24日は第1面大見出しと格上げして25日には3pで大きな記事にしてきた流れを見ると「大機小機」掲載時点から、社あげての目標設定によるシリーズ連載企画・・執筆者の個人プレーではなかったように見えます。
新聞社組織あげて(世論誘導したい)企画でありながら、この程度の基礎概念を押さえる必要性スラ認識できない組織レベルなの?という疑問です。
日経新聞の「経済欄はまるで議論の対象にならない・しっかりしているのは文化欄だけ」という口の悪い人の意見がネット上で流れていますが、以上を見ると驚くような低レベル組織になっているとの誹謗?もムベなるかな!という印象・誤解?(私の読み方が間違っているのかも知れませんが)を受けました。
もしも単語表記の単純ミス・現預金が117兆円で手元資金200兆円が正しいとすれば、(6ヶ月の誤差がありますが、10月末時点の現預金が私には不明なので)仮に同時期として計算すると200−118=82兆円が短期有価証券等保有であり、現預金ではなかったことになります。
世界企業で言えば、現預金は世界中に散らばった事業現場で日々支払いできる資金・現金払いの場合、預金払い戻し時間が必要ですが、大口支払いは振込等の操作で済むので時間誤差がほとんどありませんが、有価証券の場合どの銘柄をいくら売却して資金化するかの判断時間(売却優先順位を決めておくことでこの時間は短縮できます)が必要な他に売却指示後現金化できるまでの決済時間・・最短で5〜6日の誤差があります。
このために約1週間〜10日程度のタイムラグに耐えられる・+アフリカ現地で不足した場合に外貨両替して送金する時間差(為替リスクも考えある程度余裕を持った現地通貨保有)程度の現預金が現地出張所等に必要となっています。
短期処分可能な有価証券の利用とは、通常決済には十分であるが九州の震災等のような突発事態への二次的備えとして、預金よりマシな国債等への一時預けにしている数字が短期保有有価証券ですが、これは4〜5ヶ月先に予定されている大口決済資金(例えば配当までのプールとか工場用地取得契約や企業買収がまとまりそうな場合とか、本社ビル完成引渡し予定数ヶ月先にある)などがこの種の資金になってプールされます。
企業が必要もないのにゼロ金利下で不要な資金を現預金で持っていたくない点については意見相違がない(無駄に持っている方が良いという人は滅多にいない)のは明らかですから、新聞・言論機関が不要資金プールするのが合理的か否かを議論する必要はありません。
ある企業の保有資金が「過剰・無駄」かどうかこそが議論の対象ですが、それは個別企業の事情分析によるべきで抽象論で煽るのは間違いです。
希望の党の公約の一つ「不要不急のインフラ整備をやめる」という点についてこの後で書いて行く予定ですが、「不要不急の公共工事をした方が良い」という政党はありませんので「何が不要不急かの選択」を示さない公約ではどういう政治をする約束なのか意味不明なのと同様です。
外部から見て一見多すぎるように見える場合にも個別企業によっては相応の必要がある可能性がある・・
外部から見て一見多すぎるように見える場合にも個別企業によっては相応の必要がある可能性があります。
今朝の日経朝刊で紹介されていたスバルのように、この1〜2年好業績を背景に単なる増産投資ではなく、「次元が変わる技術進化に備えこれでまでできなかった設備投資や研究開発を増やす」ために準備している企業もあるのです。
・・本当に不要な資金なのか、近日中に大口決済が待っているか、配当支払い資金や設備投資計画の有無等の個別事情によりますから、個別企業の実情無視の日本全体の一般論に意味があるとは考えられません。

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