希望の党の公約等2(内部留保課税2)

法人税大幅減税によってアメリカへの企業回帰を促すのがトランプ大統領の立候補時の最重要公約の一つでもあり、就任後その実現ができるかが彼の支持維持のために重要課題になっていることは周知の通りです。
このように国際政治の重要テーマになっている法人税軽減(裏から言えば企業誘致のための優遇)競争の時代にあって、日本の法人税がアメリカに次ぐ2番目に高い方になっているのをどうするかが日本でも重要課題になっている現在、小池氏が国の方向性として世界潮流に反して二重課税・法人税の実質アップに舵を切る主張をする以上は、日本経済にどういう影響を及ぼしそれをどうやってフォローするかについて相応の説明が必要です。
法人税支払い後に残っている内部留保について二重課税する場合の法的・経済的諸問題について、これを推進する流合理性・・法的・経済学説があって、これまで丁々発止と議論されてきたのならば、公約に掲げるについて特段の説明がなくとも一方の説を採用するというだけで足ります。
これまでに「内部留保課税しても問題がない」という意見を寡聞にして聞いたことがありません。
もしも内部留保課税賛成論があれば、メデイアが盛んに煽っているスローガンですから、新聞等に出ない筈がないのですが・・。
希望の党はこれを言いっぱなしであるとことから見ると、内部留保課税をすれば、どうなるかの総合的検討を一切せずに・・・多分何もわからないままメデイアのおすすめ通りのメニューをパフォーマンスとして掲げただけ・・という印象を受けたのは私だけではないでしょう。
こんな突拍子も無い内部留保に着目するようになったのは、民主党政権獲得時の埋蔵金論と根っこが同じような印象です。
我が国で内部留保課税発想が動きだした経緯は以下の通りです。
http://www.sankei.com/west/news/140828/wst1408280034-n2.html

2014.8.28 02:00
賃上げへ、大企業「内部留保」課税に踏み切る韓国強権政策で韓国経済はどうなるか…日本では禁忌、正反対の経済政策の明暗は
大企業への内部留保課税をめぐっては、日本では平成22年の民主党政権下で、浮上したことがあった。
当時の鳩山由紀夫首相が同年2月、日本共産党の志位和夫委員長と会談。志位氏から「過剰とされる大企業の内部留保に課税し、雇用拡大や中小企業に還元するべきだ」と促され、「検討してみましょう」と応じたのだ。
日本商工会議所からも「(首相発言は)真意を測りかねるが、企業の国際競争力の観点から不適切だ」(岡村正会頭)と批判があがったほか、当時の平野博文官房長官が慎重な姿勢を示すなど政府内からも懸念が広がった。結局は、菅直人副総理が国会で「特に検討することは考えていない」と明言。内部留保課税について「首相からの検討の指示もないし、私自身考えいない」と述べ“騒動”を1週間ほどで収めた過去がある。
そんな日本では曰く付きの政策が、奇しくも韓国で実行されようとしているのだ。
・・・

民主党政権は素人政権という評価の一端がここにも出てきました。
今でも素人的共産党の関心を小池氏やメデイアは引きずっているようです
上記だけでは韓国で実際に実行されているのか不明ですが、以下によると既に実施されているようです。
https://zuuonline.com/archives/181140

企業の内部留保課税」に批判が相次ぐのはなぜか
石谷彰彦2017/11/10
海外の事例で言うと、韓国は大手企業の内部留保吐き出しを目的とした留保金課税を2015年から導入している。年間所得から設備投資・人件費増加・投資家への配当を除外した金額に対して10%の税率で課税している。
人件費増加・投資・配当を行えば課税所得が下がるが、あくまでも単年度の所得に対する課税であり、こちらも積み上げた利益の総額に課税されるものではない。
・・・韓国における留保金課税導入の結果として、配当の増加には回ったものの賃上げには結びつかなかったとされている。
・・・賃上げを促進する税制や助成金であれば、すでに法人税における「所得拡大促進税制」や雇用関係助成金(例えば「キャリアアップ助成金・賃金規定等改定コース」)があり、効果の疑わしい制度を新設する必要性は乏しいと考えられる。(石谷彰彦、ファイナンシャルプランナー)

韓国では各年度の税引き後利益から、配当・賃上げや工場等に投資しなかった分にだけ10%課税する・・過去の蓄積分には課税しないという程度らしいです。
過去の蓄積にいきなり課税される・税引き後の利益で入手した工場や自宅を売れと言われるような政治ではたまったものではありませんから、いくら強権政治の韓国でもこれはできなかったようです。
このように常識的結果・・次年度からの剰余金にしか課税しない(しかも設備投資などを除くので、何かに換金してれば良い・・例えば出店予定地/社員の独身寮用にマンションを買ったと言えばいいのかな?何か買っていれば大方控除になるでしょう)となれば実際の課税対象は微々たるものになるでしょう。
他国にも実施例があると内部留保課税を擁護する意見(希望の党の言い分?)もあるようですが、もしも韓国の例によるならば、内部留保課税は未投資の現金剰余分だけに課税する・・実際の課税段階で投資済み分を除くのであれば、せっかく企業買収したのを内部留保だから売却しろと言われるバカなことがない・実害がないかも知れませんが、その代わり喧伝されているほどの税収増にはなりません。
当初から書いてきたように大手企業は社債発行による巨額借金をして投資しているのが普通で、無駄な現金をほとんど抱えていないのが普通です。
投資済みには課税しない→決済用に保有している現預金部分にしか課税しないとなれば課税対象は微々たるものになります。
しかも過去の累積剰余金には課税しないでその年の剰余金だけというのです。
これでは、数十年以上かけてたまった累積剰余金=内部留保蓄積が3百兆円・これに対する数%の課税でも莫大な税収というメデイアの触れ込み宣伝は、いいとこ取りの使い分け・・何の関係もない実質的デマ報道だったことになります。
希望の党の説明は以下の通りらしいです。
http://www.iza.ne.jp/kiji/economy/news/171112/ecn17111209150001-n2.html

希望の党は選挙公約で消費税増税を凍結し、その代替財源として内部留保課税を打ち出した。増税の実施を掲げた自公両党に対抗するためとはいえ、「(大企業が抱える300兆円の内部留保に)2%の税金をかければ、増税凍結分は浮く」という課税案は経済界を驚かせた。この案を主導したのも、希望の党を率いた小池百合子東京都知事のブレーンを務める投資ファンド経営者のようだ。

上記の説明によれば、300兆円に課税する予定の数字ですから、韓国で実施されている内部留保課税のように現金部分だけの課税を前提としているとすれば、300兆円に2%かけるというメデイア宣伝は辻褄が合わなくなります。
だから希望の党では、韓国でやっているが問題が起きていないとはっきり言えなかったのでしょうか?

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