労働力流動化(職業訓練必要性)2

大きな変動を何でも拒否する超保守思想の権化みたいな教条的運動は困りものです。
こういう人たちも人権擁護で頑張っているのでしょうが、あまり反対ばかりが続くと外国から何かもらっているのじゃないか?という疑いを持つ人がふえてきました。
今後IT〜AI発達の過程で、雇用流動化・個人の方から見れば30代まではスポーツ選手では、監督コーチになれるのは一握りで残りの大多数は3〜40台では別の仕事につくのが普通(プログラマー等IT関連も同様)であるように、(タイピストのように職種自体がなくなっていくパターンが増えていきます)人生途中で変化していく人の方が多くなる時代が来るように思えます。
変化することにはなんでも反対にエネルギーを注ぐのではなく、IT化どころかAI化による急激な労働環境・社会変化が見込まれる時代には、変化に対する適応能力の再教育制度の再構築(職業教育は子供〜若者だけではなく中高年にも必要)や再就職の手助けに向けた社会構築にエネルギーを注ぐべきです。
高度成長期でさえ多くの労働者が終身雇用下になかったにも拘らず、今どき時代逆行の正規化…終身雇用拡大が必要か?の根本的な問いかけが必要です。
その結果、もし未だに正規非正規(私はその垣根をなくしていくべきという意見ですが)の峻別が必要としても、終身雇用を前提にした再チャレンジ・受け皿のない(大卒時に人生コースが決まってしまう・変化・コースから脱落した多くはは落ちこぼれしかない社会)固定した社会が有用か?の議論こそ重要です。
終身雇用でもいいが、後ろ向き・倒産しそうな時しか整理解雇を認めないのではなく、当該分野はまだもうかっているが、将来を見据えてこの分野を縮小していきたいという前向きな場合でも、金銭解決で解雇を認めるような柔軟運用が社会をしなやかにしていくように思えます。
金銭解決反対で前に進まないならば、正規・非正規の2択しかなくなり非正規が増える一方になると思われます。
希望の党の公約は民進党系の思想で作られているとしたら、正規=解雇柔軟運用という妥協能力がない旧社会党の系譜が色濃いために・金銭解決絶対反対意見になるのでしょうか?
そうなると企業は新卒新採用を最小に抑えるしかない・・非正規が増えるしかないでしょう。
希望の党(この原稿は17年秋から暮れにかけて書いたもので、当時の希望の党の主張を前提にしています)が「非正規を減らし正規社員を増やせ」と本気で主張しているならば、正規雇用者の解雇規制緩和でなければ矛盾です。
ここ(17年秋総選挙時の)で希望の党の公約を見直してみましたが「 〇〇に希望を」という抽象的スローガンの羅列しか目に入りません。
要は耳当たりの良さそうなことを羅列的スローガンにしただけで、正規を増やすために必要な金銭解決を認めるのかどうか、どうしたいのか道筋が見えません。
金銭解決で入れ替え可能ならば、企業は正規雇用にこだわる必要がなくなりますが、その代わり転職能力のない既得権利者にとっては脅威です。
17年12月16日に書きましたが、省力化による人手不足解消と職業教育はセットであるべきです。
韓国では労働貴族・・非正規の苦しみを無視して無茶な要求貫徹のためのストライキ打ち放題という現状(特に現代労組)が知られていますが、日本の大手労組はそこまでひどくないものの、(解雇規制=新規採用抑制)既得権にあぐらをかく姿勢では国民の支持を得られません。
そもそも日本社会が沈没するでしょう。
正規職人口の比率が下がれば下がる程自分の希少性が上がるので、そういう方向へ大手労組は動きがちです。
組織労組の大方を占める連合の勢力はウイキぺデイアによると以下の通りです。

1989年11月:78産別、 組合員数  約800万人(結成時)
2016年2月 :51産別、       689万0,619人

内訳に占める旧官公労を抜き出してみると以下のとおりです。

自治労     798,659         地方公務
日教組      241,331         教育
JP労組     240,579        日本郵政
国公連合    83,402         国家公務
JR連合       81,230         JR 全日本鉄道労働組合総連合会
JR総連      72,655         JR

JR東労組崩壊

連合の下部組織で、組織単体としては最大勢力を誇ったのが東日本旅客鉄道労働組合(JR東労組)であった。急進的かつ戦闘的な左派労組であり、組織率も2017年2月の時点では約80%と高く、雇用側に対して最も影響力がある労組と見られていた・・・・JR東日本という単体で非常に公共性の高い企業に対し意見ができることは、連合内部で大きなアドバンテージであった。実際、2017年2月に同組合の執行部は「スト権を確立した、いつでも戦える」と宣言している
ところが、
2018年2月に実際にJR東労組がスト権行使を会社に通告したところ、大量の組合員が「労使関係の崩壊」と言って脱退し始めた
この背景には、過激な組織運営に以前から組合員が不満をいだいていたことや、企業に対する労働組合として逸脱する主張が一部の過激な指導者によって実施されていることなどが上げられる。
執行部はスト中止を宣言するがその後も脱退は止まらず、結果的に46,500人のマンモス労組から約32,000人が脱退、かろうじて第一労組の面目は保ったものの、従来の戦闘的な労働運動が成立しない情勢であることを証明してしまう結果になった。

組合が民主的に運営されているというのが建前ですが、実際には組合員多数の本音を反映していなかったことが露呈したことになります。
日弁連の各種政治的意見を会員の何割が支持しているかについても、このように実際の行動で見たらわかり良いでしょう。

労働力流動化(職業訓練必要性)1

ところで検索前から日弁連意見はなんとなく解雇4法理維持・固守論であろうと想定し検索してみると、想定通りに「反対論」が出てくるところに日弁連の硬直性がわかります。
意見を聞く前から答えがわかっているような組織になると、社会は日弁連意見を重視しなくなる・・軽く見られるようになるのが残念です。
昨今各種分野で日弁連意見を求められていますが、日弁連意見を採用するために聞いているのではなく、どうせ反対意見だろうが、せいぜい反対論根拠を念のために聞いておこうという程度の意見聴取になっている可能性があります。
日弁連は(旧社会党同様に?)自分たちは専門家集団だから黙ってついてくればいいというエリート意識の立場でしょうが、17年12月13日紹介の日弁連意見の前提事実としている日本の「労働者が窮乏を極めて」いるかの認識能力については日弁連は専門家集団ではありません。
社民党あるいはその他野党の弱点は、実態無視の傾向・・観念に走りすぎていて、社会実態に対する謙虚な認識能力欠如にあるのではないでしょうか?
前提事実の認識が間違っている・これを自覚しているから、却って検証を許さないような決めつけ的表現に終始しているのでしょうか?
しかし、都合の良い情報を鵜呑みしていると情勢判断を誤るのと同様で、実態と違うのを承知の上で解決策を組み立ても、現実性がありません。
メデイアを通じていくら宣伝しても・・・評論家はメデイアに干されるのが怖くて「よいしょ」意見しか言いませんが・・裸の王様同様で、実態無視で組み立てた論理は表向き通用しても、秘密投票制度下では選挙においてサイレントマジョリティの反乱に直面します。
今回の総選挙結果による支持率と事前世論調査とほぼ一致していたのはニコ動だけで、既存大手メデイアに事前世論調査結果とは大きく乖離していたことを11月5日に紹介しました。
整理解雇4条件の修正必要性に戻ります。
個人事業の場合は別として大手企業のリストラ=事業再構築の場合、個人的好き嫌いで選別するとは滅多に想定できません。
企業にとって重要なのは、新事業に適性・使い回しのきく人材かどうかでしょう。
借地法の正当事由の要件として周辺社会状況を入れるかの議論があったことを12月7日に「大阪市立大学法学部生熊長幸」の論文を紹介しましたが、解雇も個人的な事情・不正行為などなくとも客観的経済環境を判断事情に入れることが可能かどうかこそが重要です。
17年12月13日に紹介した弁護士意見のように万に一つの例外的場合を原則にした議論をするのではなく、個人的怨恨を紛れ込ませた場合には乱用で個別救済する・・制度設計を逆にすべきはないでしょうか?
中高年で多く人の技術が陳腐化するとした場合、中途解雇の受け皿・中高年者に対する教育訓練等の受け皿等の工夫が必要です。
こうした議論こそが重要であって、個人の救済・・マイナーな場面の議論は、こうした中途解約制度で積み残される人の救済をどうするかという別の場面の議論ではないでしょうか・・議論がかみ合っていません。
予防接種の有用性議論している時にはワクチンの有効性や事故率等が重要であって、一人でも事故が起きたらどうするのか!という神学論争しても始まりません。
個人企業の場合、事業主やその家族とと日々喧嘩しながら仕事を続けるのは無理があるので、自分からやめて行くのが普通で、もともと労働法の解雇規制に関係がありません。
制度が硬直しているとその制度利用者がいなくなる・・「特に借地において顕著で、借地権の新たな利用は、目にみえて減少していることが、ひとつの裏書きとなっている」・・と借地法改正の論文でも紹介しましたが、解雇規制の厳し過ぎが正規雇用が急速に減少して行った原因でしょう。
終身雇用を残したいならば、過ぎたる保護をしないことが肝要・・保護が過ぎれば却って継続を美徳とする雇用慣習が崩壊するでしょう。
たまに非合理な解雇があればそれは裁判で救済する道を残せば良いことで、滅多にない事例を全部に及ぼすのは間違いです。
借地借家法では定期契約制度が25年以上も前から運用されていますが、今では受け皿になるべき賃貸マンション等が充実しているので、不都合な現象が起きていると聞いたことがありません。
定期借地を非正規契約という人はいません。
雇用も同様で人材流動化に合わせて受け皿を整備すれば良いことであって、経済のことは経済の動きに委ねる・・政府は不都合を監視しインフラ整備するだけで良いのであって、流動化自体を禁止するの行き過ぎです。
労働法分野では特に(超保守の)左翼系の政治抵抗が激しいために、30年近くも柔軟な企業環境変化を阻害してきために業界の工夫で期間工やパートなどの雇用形態が増殖して来たのです。
実態に応じた変化対応が、超保守の運動家によって労働分野で遅れていたにすぎません。
技術の陳腐化が激しい上に今後70歳以上まで働くようになると、若いころに身につけた技術で一生食っていく・4〜50年前の技術を磨いてきた先輩の方が若い人よりも能力が高いなど言えない時代です。
特定技術は身につけたばかりよりも、10数年程度は実地訓練による技術の磨き上げが有効ですが、(プロを見ればわかりますが、プログラマーでも相撲でも競馬でも将棋でも皆一定期間経過で能力下降していきます)それ以上になると新たな技術についていけない弊害の方が強くなりそうです。
この一定期間が短くなる一方で、他方で長寿化により就労が長期化する逆の傾向になっています。
こうなるとこのギャップをどうするか・・年功で(能力が下がっていくのに)給与賃金が上がっていく正社員の年功制がもたない・不合理な制度をどうするかの議論を避けて通れません。
サービス産業化が進むと、1日の中でも時間による繁閑差があり、業種によっては(スキー場付近のホテル飲食店など)季節要因でも変わります。
こうした場合、時間給や数ヶ月単位の雇用が合理的です。
柔軟性のない、雇用条件の「正社員」しか認めない社会構造を前提とするのでは無理があります。
正社員化を進めるには正社員の概念を非正規に近づける努力・・今とは変えていく必要があります。
企業の稼ぎ頭・事業部門が10数年もすればほぼ入れ替わって行くくらいでないと現在のスピード社会では企業が生き残れないように、個々人の技能も途中で新技術の再補給をしていかないと有用な人材として生き残れない時代に入っているので、終身雇用の前提が崩れています。
労働者の人権も必要ですが・・社会変化にどう対応するか・新たな環境に合わせた保護策を考えるべきで、この工夫を怠って「古い時代に適合していた権利を守れ」というばかりで社会変化を敵視するのでは日本経済はジリ貧になります。

手元資金と日本経済

大手企業の(連結決算)利益は世界中で稼いだ利益ですから国内売り上げだけではありませんので、最高益だろうが利益に比例して国内投資する訳ではありません。
国内の儲け中心で最高益になっている大手企業は皆無に近いでしょう。
仮に国内だけで7%の利益とした場合を仮定すると、1%しか投資が増えないならば、残り6%はどうなった?ということですが、そもそも単年度利益が出てすぐに新規投資する企業の方が稀でしょう。
今朝の日経新聞4Pには宇宙監視部隊(宇宙ゴミの浮遊状態の監視)を創設すると出ていましたが、読んでみるとこれから機器の準備の他に今後アメリカ基地で訓練を受けるなどを経て制度発足は22年度からということらしいです。
こういう制度構想を構築すること自体に数年の根回し・政治力が必要でいよいよ受け入れてくれるようになってからでも、人材育成や機器整備システム構築などで22年までかかるようです。
身近な機器の補修と違い社運をかけるようなあらたな方向性に投資するには、数年以上かけて温めてきた企画(新分野の場合内部人材が手薄なので人材養成から始まります・・業務提携するには相手との信頼関係構築等の準備が必要です)があってあるチャンスを機会に始まるものですから、1期や2期の利益だけですぐに新規投資・決定実行までできる企業などほとんどないといってもいいでしょう。
そもそも世界的規模の企業で、その年度の儲け(トヨタの18年3月期末予想を23日に引用紹介しましたが、半年前の売り上げ伸び率予想だけでその期中に大規模な投資計画をつくるだけでも拙速すぎるのにその計画に基づいて工場用地を選定しかつ地主等との買収交渉して契約を済ませて、その後地元政府への許認可申請など済ませて、さらに工事を済ませて支払いまで終わり、手元資金に残っていない状態にしてしまうなど想定不能です)でその年度内に投資するのは物理的に無理があります。
機動的投資が可能なように、あらかじめ広めに工場用地を取得しておいて新規事業やラインは既存工場敷地内に立ち上げる事例が多いですが、それにしても旧設備と同じラインの増設ではあまり意味がないので、第1期工事後に発展した新技術を盛り込んだ新たなラインとなれば、どの程度盛り込むかなどのすり合わせも必要です。
美容院、レストランのような簡単な新規投資でも、半年や1年顧客の入りが良いからといってその年の儲けの何倍もの新規投資・・すぐに支店出店まではしない・ある程度好調が続いてから決断するのが普通です。
この客の入りは本ものか、この好調がどのくらい続くかの判断を経て(円安景気がいつまで続くか、原油安がいつまで続くかなど)出店や増産投資を考えるのが普通です。
大手企業の生産力増強投資の場合には、諸外国での立地が多くなっている関係でもっと複雑なプロセス・時間が必須です。
まして資金力の問題では全額借金では怖い(リスクが大きすぎる)ので、ある程度利益が溜まってから考えるのが普通です。
最高益と投資の状況については、25日の「最高益の実相」の欄で「じわり動く現金の山」という表題で個別企業の動きが出ていますが、最高益なのに投資が少ないというイメージで書く以上は、投資額と利益率との比較が論理的ですが、これをしないでいきなり下記の通りの総資産増加率との比較になっています。
26日紹介したように「積み上がったのが手元資金だ・・・00年度に比べて8割増えた。総資産の増加率(4割)より大きい。」というのですが、2期連続の最高益なのに投資がその割に少ないというイメージ主張をするならば、7%の利益率と資産額がどういう関係にあるのかを書くべきでしょう。
企業は資産規模の競争をしているのではなく、稼ぐ力の競争をしているのですから資産規模伸び率と比較しても意味がありません。
レストランやホテル・デパートなどが巨大施設を構えて1割くらいしか客がいない・ガラガラでも施設の大きさだけ自慢するのではなく、10人程の客が入る店でも利益率をあげる経営者の方が優秀です。
中国やロシアが未だに領域の広さを重視していること自体が、数世紀遅れの価値観にこだわっていることが分かり、ひいては国民意識がそうである以上は国内政治手法もこれに連動しているのでしょう。
先進国では、小規模のコンビニや居酒屋があちこちにフランチャイズやチエーン店化して盛況している理由です。
過去約25年間産業界はバブル崩壊後の贅肉削ぎ落とし→資産の圧縮・筋肉質の経営プラス(リーマンショック級の大変動に耐えるための)自己資本比率アップに苦労してきたのですから、日経新聞がバブル崩壊前の資産と手元資金を比較して批判して(論理的でないことを自覚しているからか括弧書きで書いているだけなのか?)いるようなイメージ主張するのは無理があります。
上記の通り企業高収益が2期も続くと積極投資に踏み切りたいと思っても、それには長期的傾向を見極める下調べ等の準備が必要です。
ベトナムやカンボジアに工場進出するかどうかも1〜2ヶ月の思いつきで実行できることではありません。
もともとの関心である手元資金(決済用資金)が、過大かどうかを新聞がシリーズで主張する以上は、判断根拠・基礎的資料として少なくとも総売上の資料提示してそれとの比較が最低必要です。
その上で個別事情のチェックに入るべきでしょう。
そこでネット検索してしてみたところ、データが13年分と古い(なぜか近年のデータ検索がでない)ですが、以下の通りです。
ikkei.com/article/DGXNASFS2900I_Z20C13A1EB2000/2017年11月25日(土)

2013/1/29付
日本企業の売上高、全産業で1302兆円 経済センサス・活動調査
経済産業省・総務省は29日、2012年の「経済センサス・活動調査」を発表した。企業活動の国勢調査と位置付ける新しい統計で、今回初めて各企業の業績を集計した。全産業の売上高は1302兆2523億円、粗利益に近い「付加価値額」は242兆6658億円になった。岩手、宮城、福島の被災3県では震災後1割前後の事業所が減ったこともわかった。

大震災直後の12年でも1300兆円・月商で言えば約110兆円ですから、決済用資金としてはその1〜2倍が必要です。
今は5年経過で好業績=決済用資金も膨張しているはずです。
日経新聞の書いている117兆円はもしかして全企業の売り上げではなく、上場企業だけのデータ(それも東証一部だけかどうかも書いていません)を書いているようにも思いますが、はっきりしないので何と何を比較して良いのかすらわかりません。
仮に117兆円とすると手元資金としては月商の1〜2ヶ月前後が必要とする会計原則と大幅な乖離がないように見えます。
ただし、上場企業全部か東証1部だけかすらはっきり記憶しませんが、総売上が700兆円前後とどこかで見たように記憶していますが(今すぐにはデータ根拠を示せません)そうとすれば月商平均約60兆円・その1〜2ヶ月分の決済資金準備プラス増産投資や企業買収あるいは資本参加のための資金需要や納税、配当資金等々がこれにプラスされると)とすれば大方整合しています。
まして上記「金融経済用語」説明のようにリーマンショック以降危機管理コストとして手元流動性を手厚くする傾向・金融機関等の自己資本比率アップ強制の世界的傾向とも合致しています。
イザという時のためにどの程度自己資本を手厚くしておくべきかは、各企業の独自判断で良いのであって、それを批判するのは、個別事情分析のアナリスト意見に市場がどのように反応するかに委ねるべきです。

内務留保の重要性と流動資金の関係4

経営者にとってはいざという時のための必要資金と思っていても、プロから見たら心配しすぎ・もっと少なくて良いという場合もあるでしょうが、(金融機関との間でいざという時には、例えば即時に500億円まで融資を受けられる融資枠契約をしておけば保証料だけ支払えばすみます・・こういう工夫の余地)こういうことはアナリスト等の個別分析が有効な分野であって、一般論で煽ることではありません。
個別企業分析能力のない一般エコノミストがアナリスト意見・市場の声(株価反映)を踏まえないで単に最高益に対するやっかみ的連載を繰り返すのは困りものです。
産業界は最高益更新に湧いているが庶民には関係がないという型通りのやっかみ報道に見えます。
長期好景気と言っても庶民には「実感がない」という根拠なき断定報道も同根です。
仮に一般論であるならば、日本の企業全体の総売り上げの推移と手元資金との比率変化を論じるべきですが、全体の売り上げがどうなっているかの比較記事を見たことがありません。
産業規模が大きくなれば絶対額が増えるのは当たり前ですから絶対額だけを煽っても意味がありません。
1昨日(土曜日)はせっかくの好天に誘われて佐倉の川村美術館に出かけてお気に入りのな庭園を見ながらゆっくり食事をして帰ってきたので、夜帰ってから新聞をちらっと見て驚き、今日もこの追加意見に追われていますがまだ昨日からまともに新聞を読んでいませんので読み間違いがあるかもしれません。
テレビ局のサンゴ礁に関するヤラセが大問題になりましたが、テレビ局がサンゴ礁についてどういう意見を発表しようと勝手としても(中立性違反の問題は別として)が、前提事実にやらせ・虚偽または誤りがあるのではまともな意見とは言えないでしょう。
私のように趣味で書いている個人のブログでも前提事実の記憶についてはうろ覚えなので大方自信がないと毎回のように断りながら書いていましたが、最近簡単にネット検索できるようになったので前提事実についてはできるだけ(その分煩雑になっていますが・・)引用する(・引用文を信用するかは引用先次第・読者におまかせする)ようにしています。
紙媒体の新聞の場合、そのままコピーできないので、文字をそのまま打ち直していますが・今回あまりにも数字が違いすぎるので引用ミスをしたかな?と心配してまだ捨てていない21日の新聞を読み返してみましたが、「日本企業が持っている現預金は200兆円あまりになっている。」とはっきり書かれていました。
日経新聞では「手元資金と現預金の意味を交換して表現すべし」という内規があるとした場合、記事中に「当社では、『現預金とは一般にいう手元資金』のことであり、『手元資金とは現預金』のことです」という説明が必要ではないでしょうか?
新聞・マスメデイアは社会の公器かフェイクニュース元か?
日本では朝日新聞の慰安婦報道以来・・・トランプ大統領のフェイクニュースの批判+ロシアによるメデイア操作疑惑もあって、大手メデイアの信用力はガタ落ちですが、このような唯我独尊的熟語悪用がまかり通ると、トランプ氏の意見の肩を持つ人が増えてくるでしょう。
ところで、25日朝刊では、「直近で」と一応根拠らしいものを示していますが、「直近」というだけで何のデータによるのか?かつ何月何日付けデータを根拠にしているのか不明です。
11月21〜22日に私が、たとえば手元資金必要額は原則として・売り上げ規模規模拡大や新規投資など資金を必要とする個別事情チェックした上での批判でないと合理的でないと書きました。
好業績が続くと増産投資を計画をするのが普通ですが、設備投資資金の蓄積や、納税資金や配当資金需要などの例外を見る必要がありますが、これも結局は月商規模に関連します。
こうした(私の意見など問題にしていないでしょうが、他に批判があったのでしょう?)批判に対応するためにか?26日に紹介した通り総資産が4割しか増えていないのに手元資金が8割増えているのが如何にも良くないかのような書き方になっています。
いかにも反論のように見えて実は比較対象が違う(・手元資金の必要額は資産と比較する意味がない)ので何の反論にもなっていません。
日々・毎月の決済資金の必要性は、資産規模に比例するのではなく売り上げ規模等を大きな要素にして(好業績が続くと増産投資を計画する企業が多い→2〜3期分の税引き配当後利益を蓄積して不足を社債等の発行で賄うなど)出入り資金必要性に比例すると書いてきたのであって、資産規模には直接の比例関係がありません。
百億円の不動産等の資産を有する人と10億円しか資産のない人が同じく月商1000万の飲食店を経営している場合、(新規出店資金需要や食中毒事故による特別損失出費等の予定がない場合)必要な手元資金は資産の多寡に比例せずに売り上げ規模に比例する(10億の資産しかない人も必要な手元資金は同じ)ことは明らかでしょう。
この数十年のトレンドは持たざる経営・できるだけリースその他資産規模圧縮・身軽経営・外注・アウトソーシング経営が合理的とされてきたので、企業は売り上げ規模拡大に比例して資産を増やさなくなってます。
売上でさえ規模拡大やシェア拡大を目指さずに、利益率を重視するようになっています。
個人も車など保有よりは必要に応じてレンタルやシェアーするなどのトレンドになっている現状を無視する変な比較をしていることになります。
25日掲載記事は好業績に関わらず投資しないで内部留保が溜まっている・これを投資に振り向けるべく・・内部留保課税を直接言わないものの相応の政治圧力が必要というイメージ論旨が満載です。
最高益なのに(内部留保していて)投資がその割合に少ないというイメージ論旨ですので、日本企業の最高益の実態がどのくらいになっているかについて日経新聞24日朝刊第一面掲載の「最高益の実相」を見てみると、以下の通りです。

「18年3月期の純利益は2期連続で過去最高の見通し」「7%の壁ー上場企業の売り上げ高経常利益率は、今期バブル崩壊後初めて7%の壁を突破する」「企業が稼ぐ力を高めた要因は3つある。
1つは金融危機後事業の選択と集中を加速したことだ。」
「ソニーは、・・競争の激しい分野一方で量を追わない・得意分野に集中する戦略に転換したのが奏功する」

経常益更新・最高益の原因として日本業が無駄な資産を削ぎ落とした筋肉質経営に努力した結果、そこへ好景気と重なり好循環になってようやく平均利益率7%超えも視野にはいってきたという趣旨ですし、これが日本全体の常識的理解でしょう。
バブル期以来の好業績といっても7%を超える程度ですが、ここでの関心は投資が7%の高収益と比例しているかの比較でしょう。
さらに企業投資は国際化しているので、国内投資が国際連結利益アップと関連するわけではありませんから、企業の内部留保(最近では手元資金)がが多すぎるもっと投資しろと騒いでも国内に投資する保証はありません。
アメリカで車の販売が伸びればアメリカ等での増産投資が増えるのが普通ですし、中国やベトナムタイ等でコンビニが儲ければ現地出店が加速するのであって、国内出店投資が増える関係ではありません。
国際連結の利益率と国内投資額を比較するのは非合理であることは、子供でもわかる論理です。

内務留保の重要性と流動資金の関係3(メデイアと用語統一必要性)

昨日紹介した解説でも「手元資金」には「流動性の高い資金の総称」とあって現預金に限らないことが示され、短期有価証券を含むことが多いとなっています。
そもそも言葉の意味から考えても「現預金」の表現は現金と預金等の個別分類を表していますし、手元資金とか決済用資金・流動性資金等の使用目的による表現よりは範囲が狭いことが明らかで、下位概念の現預金の方が手元資金よりも多いとは(経済知識のない私のようなものでも)常識的に想定できません。
手元資金等はすぐに現預金化できる資産を含む=手元資金の方が現預金よりも多いことが経済用語としても明らかですが、日経新聞記事ではなぜ逆転した書き方になっているのか不思議ですが、私のような素人が食事や仕事に出る合間にちょっと読む程度の人間には思いがけない深い意味がこめられていのかもしれません。
仮に日経新聞で論説を書く人の経済用語理解が間違っているとした場合、日経新聞の21日記事と25日記事両方とも間違っていることってあるの?という疑問です。
仮に別の人が書いているとすれば2人とも逆に理解していることになるほか、両記事ともに内容からして情報収集して歩く新米記者が書ける執筆ではなく、ベテランのエコノミストによるものと思われますが、プロが2人も揃って経済用語の基礎知識を間違って逆に書くようなことがあるのでしょうか?
仮に執筆者が同じとしても・校正等の事務局が充実しているはずの大手新聞社の語句チェックが機能せずに2回も通っていることになりますが、(現預金が200兆円で手元資金117兆円と出れば普通は?おかしいぞ!と気がつくものです)2回目の記事では1回目と大幅な数字違いがあるのでこの時点で「どうして大きな数字違いがあるのか?」に気がついて見直せば、どちらかが間違っていることがすぐ分かる筈ですが、2回ともスルーしているとすれば関連部局のチェック能力に疑いが起きます。
事務局能力の名誉のために邪推?すると関連部局ではわかっていたが、世論誘導のために?意図的にスルーさせて逆の意味で書く必要があると判断したのでしょうか?
もしも世間常識と違う意味で熟語を意図的に使う場合には、誤解を招かないように「ここではこういう意味で書いています」と「断り書き」を入れるのが公平な立場でしょう。
ちなみに資金滞留批判のトーンは21日の「大機小機」に続いて24日の日経新聞の第1面に「最高益の実相」欄として大きく出ていて(1面の左約半分の大きさ)その続きで今問題にしている25日3pの記事になっていることがわかります。
今朝の日経第一面では「利益剰余金56%が最高」の大見出しでいかにも巨大な剰余金を溜め込んでいるかのようなイメージ強調の連載は終わっていません。
内容を見ると、設備投資の動きが紹介されていますが、以下の通りあくまで部分の紹介で全体の動きを期待するかのような書きぶりです。

「スバルの・・社長は・・・『次元が変わる技術進化に備えこれまでできなかった設備投資や研究開発を増やす』と話す。溜め込んだお金をどう使うか一層のの説明を求められる」

と思わせぶりに書いています。
「思わせぶり」だけでカチッとした事実がないといえば、朝日新聞の記事の多くにその傾向が強くて歯ごたえがないので20年以上前に朝日新聞から日経新聞に変えて満足していたのですが、日経も最近ではムード報道中心になって来たのでしょうか?
事実の裏取り必要性といえば、最近では週刊文春の山尾志桜里氏の不倫騒動で見ても分かるように、(経済報道のように難しいことではなくスキャンダル的事実中心ですが・・)裏取り能力の高さに驚きます。
こうした手を変え品を変えての日経新聞報道の流れ(内部留保悪玉説の浸透努力?)を見ると、21日「大機小機」で小さく出して置いて(その間小刻みに何かを書いていたのかも知れませんが、私は気づきませんでした)24日は第1面大見出しと格上げして25日には3pで大きな記事にしてきた流れを見ると「大機小機」掲載時点から、社あげての目標設定によるシリーズ連載企画・・執筆者の個人プレーではなかったように見えます。
新聞社組織あげて(世論誘導したい)企画でありながら、この程度の基礎概念を押さえる必要性スラ認識できない組織レベルなの?という疑問です。
日経新聞の「経済欄はまるで議論の対象にならない・しっかりしているのは文化欄だけ」という口の悪い人の意見がネット上で流れていますが、以上を見ると驚くような低レベル組織になっているとの誹謗?もムベなるかな!という印象・誤解?(私の読み方が間違っているのかも知れませんが)を受けました。
もしも単語表記の単純ミス・現預金が117兆円で手元資金200兆円が正しいとすれば、(6ヶ月の誤差がありますが、10月末時点の現預金が私には不明なので)仮に同時期として計算すると200−118=82兆円が短期有価証券等保有であり、現預金ではなかったことになります。
世界企業で言えば、現預金は世界中に散らばった事業現場で日々支払いできる資金・現金払いの場合、預金払い戻し時間が必要ですが、大口支払いは振込等の操作で済むので時間誤差がほとんどありませんが、有価証券の場合どの銘柄をいくら売却して資金化するかの判断時間(売却優先順位を決めておくことでこの時間は短縮できます)が必要な他に売却指示後現金化できるまでの決済時間・・最短で5〜6日の誤差があります。
このために約1週間〜10日程度のタイムラグに耐えられる・+アフリカ現地で不足した場合に外貨両替して送金する時間差(為替リスクも考えある程度余裕を持った現地通貨保有)程度の現預金が現地出張所等に必要となっています。
短期処分可能な有価証券の利用とは、通常決済には十分であるが九州の震災等のような突発事態への二次的備えとして、預金よりマシな国債等への一時預けにしている数字が短期保有有価証券ですが、これは4〜5ヶ月先に予定されている大口決済資金(例えば配当までのプールとか工場用地取得契約や企業買収がまとまりそうな場合とか、本社ビル完成引渡し予定数ヶ月先にある)などがこの種の資金になってプールされます。
企業が必要もないのにゼロ金利下で不要な資金を現預金で持っていたくない点については意見相違がない(無駄に持っている方が良いという人は滅多にいない)のは明らかですから、新聞・言論機関が不要資金プールするのが合理的か否かを議論する必要はありません。
ある企業の保有資金が「過剰・無駄」かどうかこそが議論の対象ですが、それは個別企業の事情分析によるべきで抽象論で煽るのは間違いです。
希望の党の公約の一つ「不要不急のインフラ整備をやめる」という点についてこの後で書いて行く予定ですが、「不要不急の公共工事をした方が良い」という政党はありませんので「何が不要不急かの選択」を示さない公約ではどういう政治をする約束なのか意味不明なのと同様です。
外部から見て一見多すぎるように見える場合にも個別企業によっては相応の必要がある可能性がある・・
外部から見て一見多すぎるように見える場合にも個別企業によっては相応の必要がある可能性があります。
今朝の日経朝刊で紹介されていたスバルのように、この1〜2年好業績を背景に単なる増産投資ではなく、「次元が変わる技術進化に備えこれでまでできなかった設備投資や研究開発を増やす」ために準備している企業もあるのです。
・・本当に不要な資金なのか、近日中に大口決済が待っているか、配当支払い資金や設備投資計画の有無等の個別事情によりますから、個別企業の実情無視の日本全体の一般論に意味があるとは考えられません。

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