コーポレートガバナンス2

セブンイレブン騒動は、成長企業から安定・停滞企業への踊り場にさしかかった・・「今後は仮に現状維持=年数%の縮小路線でも良いから安定の方が良い」とすれば多数で決めるやり方に切り替えたことは正しいことになります。
鈴木氏は創業家の同意を得られなかったことを辞意表明の大きな理由にしているところをみると、そこに創業家・伊藤氏の判断の重み・・もうこの程度の成長で打ち止めで良いから今後は安定軌道に乗せてくれと言う意向が働いたのでしょうか?
今後セブンイレブンが今まで通りたゆまぬ新機軸を打ち出すのか、守りに入るのか次第で今回騒動の本当の意味が分かって来るでしょう。
躍進型企業の場合、トップである孫正義氏や永守重信氏からの新規事業提案に根本から反対かどうかを「部下である」取締役らの多数決で決める現行のコーポレートガバナンス方式では無理があります。
(企業買収を含めて)の提案があった場合,取締役らは提案自体に反対せずに、提案を実行する前提でミスがないように手堅くチェックするための機関・・「こう言う問題がないでしょうか?」と言う質問をするくらいが関の山であって、(オ!良い点に気が付いてくれたその点の調査を君がしてくれ」と言う前向きのやり取りが普通です。
マスコミ的評価では、取締役(財務や労務あるいは法務に詳しい人など・・)多数が反対するのが「ガバナンスの勝利」と言うのでしょうか?
彼らは新規事業の発展性について意見を期待されて取締役になっているのではなく、財務系取締役は財務的にその事業にはどの程度資金が必要で当社資金力は・・・などと言う説明・・増資か社債発行か、その場合の損得など・・法務担当は、進出先の法務事情の説明・・公取委の審査機関にどのくらいなどそれぞれ分野別能力発揮を要請されているのが普通です。
セブンイレブンはなお発展を続けて来たことは衆目の認めるところでしょうが、躍進中企業でも安定企業向けのコーポレートガバナンスが機能した事例の1つとしてマスコミが賞讃しているのでしょうか。
企業不祥事が起きる都度、監視機能が機能していないことを理由として監査役会制度や◯◯委員会制度を設けたり、「屋上屋を重ねる」社外取締役制度を設けさせたりと弥縫策に必死ですが、根本には西洋の近代価値観・・各種制度のほころびの一種であって基本的に無理があるように見えます。
西欧型民主義・・西欧の価値観が実態に合っていない点・・矛盾が一杯あって中東地域の反抗の現れが、テロの頻発や難民発生等の根本原因であると書いてきましたが、会社法のコンプライアンス論もその一つのような気がします。
(西欧で発達した)「近代法の原理を守れ」と言うお決まりの政治運動に対しては繰り返し批判してきました。
近代法の原理は三権分立に始まり人間性を邪なものと前提して牽制監視しあう仕組みですが、それではどこまで監視を強化しても不正会計等を防げませんから、無理があるでしょう。
マイナンバー制度に限らずも、どんな厳重な防護策もこれを破る能力のある人間は必ず出ます。
厳重な防御システムを作れる人が100〜1000人いれば、このシステムを理解出来る同等レベルの人(ハッカー)がその何倍・・相当数いるのが普通だからです。
会計不祥事がある都度、帳簿監査の公認会計士の数をいくら増やしても、同等レベルの人にとってはその裏をかいくぐるのは容易です。
三権分立の権力構造に限らずいろんな猜疑心で成り立っている近代法原理をもう一度見直す必要があるでしょう。権力に限らずいろんな猜疑心で成り立っている近代法原理をもう一度見直す必要があるでしょう。
我が国の企業や友人関係をみれば分りますが、従業員が忠実でしかも不正をしないと言う信頼で成り立っています。
不祥事が起きるとあの人が「まさかそんなことをするとは思わなかった」・と言うのが普通です。
そして(近代法の原理によれば)「信用していた私(被害者)が馬鹿だったのですね!」となりますが、我が国古代からの法原理によれば、信用していた人がバカだったのではなく「信用を悪用」した人が(長期信用を重んじる我が国では、信用を毀損した方がその何倍も損するのですから)本当の「バカ」なのです。
「まさか神社に罰当たりなことをするとは思わなかった」立ち入り禁止の立て札すら不要・・結界だけで充分と思っていた人が馬鹿なのではなく、結界を破る方が大バカと言うの我が国の法原理です。

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