司法権の限界8(政治と場外乱闘2)

法制度外の超法規的テロに戻しますと、アラブ世界で吹き荒れるテロやゲリラは、欧米の何世紀にもわたる不当な圧迫に対する不満を根底にしていることが明らかです。
民族・階級別社会化がある場合、一見合法的選挙があっても実質的代表になっていない場合などで、合法的に弱者が圧迫されている場合があります。
アメリカで言えば、選挙では修正が利かない・・金融資本による支配=格差拡大・・選挙に巨額コストがかかって結果的にそうなって行くことに対する不満が蓄積されています・・これがウオール街を占拠せよとか、トランプ旋風になっているのは健全な姿と思われます。
アメリカの場合、選挙でうっぷんを晴らすチャンスがあってガス抜きになり、結果としてガス抜きに留まらず民意回復力・格差拡大を止められれば、暴動を起こす必要がないことになります。
トランプさんは支離滅裂に過激な言い回しで国民のストレス発散のために煽動しているだけのように見えるので、政権をとっても結局はヒットラーのように煽動の繰り返しになるリスクがあります。
煽動政策はA標的に対するボコボコにして一段落すると次にもっと大きなB標的〜C~Dへと次々と大型化するしかないので、その内抵抗出来ない程度の外国にイチャモン(トランプ氏の選挙戦でのスタイルだとイチャモンにならないような無茶苦茶な理由で戦争を仕掛けて来るでしょう)つけては戦争を吹っかけるようになります。
金融資本家に対する敵意=ナチスのユダヤ人に対する敵意と同根ですが、煽動政治になるのが怖くて、(金融資本家のみならず)みんなが怯えているのかも知れません。
4月3日日経新聞23pの右下には、「アメリカの排日運動と日米関係」という題名でアメリカ国内の政争(共和党の分裂と汚職追及のとばっちりで排日移民法が成立)があってその妥協の産物として排日法案が可決され、一気に反日の方に燃え広がって行ったことが克明に研究している蓑原俊洋氏の著作が紹介されています。
実際に金融資本家を追放するとアメリカが持たないので、その矛盾ストレスのやり場に困ると対外スケープゴート探しに向かうのは日米開戦の原因あるいはナチスの経験でも明らかです。
金融資本家の跳梁跋扈を制禦するのが難しいのは分りますが、だからと言って短絡的にストレスの赴くままに煽動にのって選挙するアメリカの風潮は危険です。
金融資本家の跳梁跋扈を制禦するのが難しいのは分りますが、だからと言って短絡的にストレスの赴くままに煽動にのって選挙するのは危険です。
上記のように結果的・実質的不正があるかどうかによりますが、こうした不正がない民主国家において正々堂々の選挙で・・スポーツで言えば試合で負けた場合、政治決着するべきルールのない別の世界・・相撲やプロレス、ボクシングで言われる「場外乱闘」で意思を通すために、賄賂や強迫(民主国家におけるテロもその一種です)、買収で政治を歪めるのはルール違反で許されません。
「江戸のかたきを長崎で」と言うセリフがありますが、政治で負けたことを、別のルール・・野球の勝敗やカルタや決闘で最終的に決めようと言うのがおかしいことは誰でも分るでしょう。
政治で負けた方が、司法手続に持ち込むのは一見合法的装いですが、政治の世界で決まった勝敗を認めないで「別のルールでもう一度」と言う点では「どちらがバイオリンがうまいか賄賂競争はどちらが得意かで政治決定を変更するかどうかを決めよう」と言うのと大差ありません。
政治の勝敗の場合全国的勝敗・・特定主張する政党が1〜2選挙区で勝った程度では国家意思にはなりません。
共産党が勝っている場合もありますし(小選挙区はないのかな?)民主党も全投票の何10%前後の支持を受けています。
総合して多数派になれない場合負けたと評価されますが、司法の場に(裁判官の政治思想が)上記割合で分布しているとした場合を考えましょう。
全国各地に原発反対・安保法反対訴訟を出した場合、そのときの担当裁判官の政治信条次第で裁判出来るとすれば、民主党支持の裁判官だけでも何十%の勝訴率になりますし、国論が6対4の場合4割の勝訴率になります。
裁判が全て最高裁に行ってから初めて効力が出るならば政治信条の比率どおりに各地でいろんな判決や決定が出ても最後は国民多数の意見に国家意思が統一するので混乱しません。
仮処分決定のように上級審に行く前に効力が出てしまうと仮に数%の少数意見による決定でもその間は国家意思としての強制力があるので、最高裁で統一見解が出るまでにはあちこちで矛盾した決定(国家意思が精神分裂になった状態)が乱立してそれぞれが強制出来るので大混乱になります。
例えば福井地裁で続行決定を求めて認められた場合(福井も大津も積極的に続行を求める裁判が出ていません)大津地裁の禁止決定と並立した場合どちらに従うのか?
※諫早訴訟では菅総理が最高裁で負けそうだと分ると意図的に矛盾判決を確定させてしまう荒技を紹介しましたが、開門を求める裁判と開門禁止を求める双方の裁判が双方認められた矛盾状態で確定した結果、開門してもしなくともそれぞれに1日いくらの損害金を払えと言う矛盾状態で国はどちらに従ってもお金を払い続けるしかない変な状態ですが、これは意図的に国家意思を矛盾状態にした例です。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC