円安効果の限界4

アメリカによる謀略の怖さを書いている内にTPP問題に脱線してしまいました。
アメリカの謀略も怖いけれども、打って出ないで孤立しているだけでは困ります。
3月6日(半導体協定)の続き・アメリカによる日本叩き・包囲網に戻します。
改革解放して一定の競争力を持ち始めた中国もアメリカによる日本弱体化政策に加わって米中韓共同で日本苛めに精出して来ました。
中韓両政府は何かある都度いつも「日本は孤立している」という主張をして来たのは、アメリカの後ろ盾でやっていることを誇示していた意味では正しい世界情勢でした。
日本はこの包囲網に苦しめられて来たので、いじめられっ子のママで忍耐に忍耐を重ねて来たのが戦後60年だったと思います。
アメリカは日本叩き・つぶしに利用していた中韓が最近のさばって来たので、アメリカは昨年あたりから再び日本と組むように方向転換しました。
平家を引き立てて強大になった源氏の勢力を殺ぐのに腐心して平家をもり立てていた方針から、今度は清盛が強くなり過ぎたので源氏に乗り換えようとした天皇家のような関係です。
安倍氏の政権獲得は、この潮流変化にうまく乗れたのが幸いしています。
アメリカが自分に対する挑戦者を叩く方式は、我が国の歴史で言えば後白河法皇が摂関家の藤原氏を叩くために(藤原氏にべったりの源氏を除け者にして)平家を利用したところ、今度は平家がのさばって来たので、没落した源氏の再興に力を貸すなどして、武士の力を利用しているうちに法皇・公家層の権力が弱って行った日本の歴史に似ています。
現地人同士イガミ合いさせるのは、アングロアメリカンの世界支配の常套手段であったことを2012/05/24「アングロ・アメリカンルール1」前後の連載で紹介して来たことがあります。
アメリカは他人をけしかけて喧嘩ばかりさせて利用して来たつもりですが、この間アメリカの製造業は凋落する一方で2008年のリーマンショックでは遂にビッグスリーの雄であったGMが破綻してしまうところまで行きました。
為替操作をしたり、挑戦者に対する敵対者を育てては相手を蹴落として行くやり方では、自国民の生活水準が下がる一方になる上に、対外競争に負けて行く自国企業の延命補助にしかなりません。
我が国で源平どちらを利用しても・・建武の中興でも結果は同じでした・・天皇家・公家層の弱体化を防げなかった歴史や、最近では農業保護をいくらやっても駄目だったのと似ています。
プラザ合意当時(1985年・235円/ドル) に比べて昨年の円高時点では対円為替相場では約3分の1くらいのドル安になっていましたが、この間にアメリカ国内製造業が縮小する一方で昨年の報道では製造業従事者がアメリカ全労働者の8%くらいに落ち込んでいるとも言われていました。
為替安による経済効果は、(アメリカの場合シェールガス革命で偶発的に再起可能性が出て来ましたが、これは半永久的に続く資源ではないようですから、北海油田開発で一息ついた英国に似ています)それ自体では一時的緊急避難程度の効果しかありません。
為替安の効能は、雪嵐にあって遭難直前にテントを張って一時的に烈風を避ける程度の意味でしょうから、テントに引き蘢っているだけでは体力が落ちる一方になるのと似ています。
言うならば病人に対する点滴に似ていて、自発的体力回復は患者の回復力次第ですから円安に安住して努力を怠っていたらその間により衰弱してしまいます。
国力を挽回出来るか否かは、為替水準だけではなく、国民が円高の強風がやんだ一瞬のスキに、円安に安住せずに(競争相手や貿易環境の責任にしないで)自分で体力増強を出来るか否かにかかっていることが分ります。
歴史上国力低下に併せて為替水準引き下げに陥った国で、この種の成功した国がない(アルゼンチンや英国など)し、我が国内で見ても衰退産業が補助を受けて復活した事例を知りません。
ですから、円高対応に頑張るよりは安易に円安期待をする風潮に対して、円安期待・・国際競争力低下を期待するのは背理ではないかという論理で、危険な期待だと言う警鐘をJanuary 10, 2013「公約3」その他で繰り返し書いてきました。

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