円安効果の限界3(アメリカの場合1)

この辺で為替安の効果を見るために、為替操作によって自国経済が長期的に浮揚した国があるのかどうか、あるいは自分に対する挑戦者を蹴落とすために次の挑戦者を育てるやり方と国力消長の歴史を振り返っておきましょう。
アメリカは、第二次世界大戦前から日本つぶしに奔走していて日本が戦争せざるを得ないようにしむけて来たのですが、戦後も一貫して日本が再起出来ないように画策し続けてきました。
共産圏との対決があったために已むなく日本の独立を認めたに過ぎずいつでも日本つぶしに転じるのが長期的国策でした。
こうした流れについては、2012/12/16「第二次世界大戦の戦後処理から見たアメリカの意図2」前後でも書きましたが、客観的資料としてそのような文書が最近開示され始めたようです。
アメリカは日本の経済攻勢に圧倒的に負けるようになってニクソンショックを経て、国内企業の圧力を受けて挽回を図るためにプラザ合意で急激な円高を強制しました。
この間にアメリカの製鉄に始まって自動車製造業のビッグスリーは円が安すぎるとか非関税障壁が悪いと言っては通商法による圧力をかけるなど、いろいろやって日本叩きに精を出してきました。
アメリカはどんな圧力を加えても日本の経済力が強くなるばかりなので、所謂ニクソン訪中によって、日本を出し抜いて、第二次世界大戦中の援助以来の米中蜜月時代復活を画策しました。
その後は米ソ冷戦終結によって遠慮なく日本を叩けるようになったので、第二次世界大戦中の米中密約復活を基礎にする米中韓結託で、陰に陽に日本叩きに精出して来たのがこの約30年間だったと考えています。
この辺の意見は、「米英系マスコミ支配1」Published November 7, 2012「悪しき隣人との交際4」〜 December 29, 2012前後で連載しました。
田中英道氏の意見では、ルーズベルトは、世論向けには反戦を標榜していたために何とか日本に戦争開始させようとして画策して日本が絶対に飲めない要求(ハルノート)を突きつけていたことを述べています。
彼の意見によれば、ルーズベルトは共産主義の手先だったので国民政府よりは中共の方に軍備等でかなり肩入れしていた(・・この結果中共が勝ってしまった原因かな?と私は想像していますが・・)ことも述べています。
3月3日の日経新聞朝刊11面には、日本の半導体業界が台湾や韓国の台頭を許して日本はどうにもならずに壊滅して行くための布石がアメリカ主導で打たれていた軌跡が紹介されています。
これによると日進月歩の技術革新で日本企業はコスト削減に成功してアメリカ市場を席巻していた(世界市場占有率9割を超えていた)のですが、アメリカは通商法の発動その他の脅迫を繰り返した結果、遂に日本との半導体協定(1986年)を結ぶことに成功しました。
この協定は向後10年間日本は製品値下げしないという法外な強制でしたので、その間に韓国台湾ががいくらでも値下げ攻勢をかけられたことから、日本企業から市場を奪い日本企業が壊滅してしまったようです。
また日本人は切磋琢磨して少しずつコスト削減して行くのが得意ですが、この協定によって日本人職人がコスト削減意欲をなくしてしまい、いくらでもコスト削減出来る韓国や台湾へ再就職して行ったことが両国の技術レベルアップに繋がったようです。
日本人職人は金儲け目的で精出すのではなく少しでも消費者が安く良いものを使えるようにしたいと言う願望が中心です。
身障者用の車いすや義足などの工夫をする職人がいますが、ある程度儲け期待が全くないとは言えませんが、その動機は少しでも障害者が楽に使えるようにして欲しいという意欲が基本です。
3〜4日前に、移植手術で拒絶反応抑制のための免疫材が不要になる技術を京都大学かどこかで開発したと報道されていましたが、こうした研究開発をお金儲け目的でやっている人は滅多にいないでしょう。
日本の発明者が特許料に恬淡としていることが多いのも、日本人の特徴と言えます。
いくらコスト削減しても値下げしないカルテルがあるならば、企業にとってはうまい話ですが、日本人職人にとっては消費者に還元しないで企業の金儲けだけのためでは、やる気が起きません。
やる気を出すために韓国、台湾企業に誘われて多くの優秀な技術者が韓国・台湾企業で新技術開発に努力するようになって品質向上に成功して値下げ出来ない日本企業を市場で追い越してしまったのです。
右翼等の議論では、日本の敵対国韓国へ行って僅かな給料目当て技術を売ったとんでもない技術者と理解されていますが、金儲け目的では意欲が出ない日本人の職人気質をこそ誇るべきでしょう。

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