円安効果の限界1

3月2日〜3日に少し書いていた円安による国際競争力復活効果についてもう少し書いておきます。
価格差が2倍あるいは10倍もあったり、商品企画力でも負けるようになってしまった分野に対する円安効果はどうなるでしょうか?
2〜3割の価格差で競合している分野で勝つようになっても、2倍の価格差や10倍の価格差がある場合、2〜3割の円安程度では何らの競争力も生じませんので輸入商品が減らずに逆に商品構成部材が値上がりするデメリットばかりになります。
(資源輸入も同様です)
例えば原発事故以降、代替電源として大流行の太陽光発電装置・・設備増強が活発ですが、この資材に関しては、日本企業は総崩れ・・中国製に負け続けてほぼ全面撤退あるいは廃業に向かっているようです。
3月1日、日経新聞朝刊11面記載の報道によれば、08年に比べて重要素材のシリコンやパネル価格が約10分の1に下がってしまい、日本企業は価格的にどうにもならない・・作れば作るほど赤字が膨らむ状態で、撤退または縮小計画が目白押しとのことです。
これでは2〜3割の円安どころか半値になってもどうにもならない格差ですから、為替相場では解決出来ません。
また韓国がウオン安を利用して競合する日本製品を駆逐し始めたと強調されていますが、その効果があることはそのとおりとしてもそれだけではない部分もあることを見落としてはなりません。
即ち例えばアップルやサムスンのスマホ関係で言えば、価格が少し安いから日本企業が負けているのではありません。
そもそもその方向への商品企画をしなかった・・遅れを取ったことが日本企業の大負けの原因ではないでしょうか?
商品企画力で大負けしているとすれば、円が2〜3割あるいは5割〜10割下がっても、それだけでは国際競争市場で逆転することは不可能です。
この辺の真摯な反省がないまま、円安効果を賛美して浮かれて国内需要喚起のために公共工事をいくら増やしても、太陽光発電の例に限らず鉄鋼製品その他各種分野で輸入が増えるばかり・・国内企業は受注窓口、マネジメント料しか入らなくなってしまい、輸入資材価格が上がることから貿易赤字が膨らむ一方になり兼ねません。
円安になったのには安倍政権の政治姿勢に功績があると手放しで喜んでいる場合ではなく、それだけの基礎的条件の悪化があることを意識して、日本経済は大変なことになっていることを覚悟してかからねば危うい状態です。
しかし、私は円安が意味がないというのではありません。
円安がせっかくの起爆剤になるチャンスをしょぼっと消してしまわないように、手放しで喜んでいないで、政治家及び国内企業人の奮起を促すためにここでは書いています。
例えばそれまで5割の値段差があった商品との価格差が1〜2割差の競争になって行くと、この程度の値段差ならば努力次第で品質の差で勝てるようになったり、海外に逃げなくとも企業努力する気持ちにもなって行きます。
その勢いで効率化して元々は6〜7割も価格差があった分野でも価格差が1〜2割に縮小して何とか競争出来るようになって行くという順序で復活して行くことが可能ですから、5〜6割以上の価格差がある場合、円安は何の効果もないとは言い切れません。
最後には大きな差になってしまっていて(価格差ではない)商品開発力でも負けなくなって行くことも期待出来ると思います。
あまりにも実力以上の円高が長く続いて(円安になった場合のJカーブ効果と同じことで円高になっても実力以上に長く貿易黒字が続きます)価格差が開き過ぎたために、サムソンなどに商品企画力でも負け始めたに過ぎないことを祈るしかない・・円安になった機会に挽回して欲しいと願っています。
(あまり大きな価格差があったからこそ、優秀な日本人がサムスンなどに引き抜かれる事例・・あるいは日本企業自体が海外に研究所まで移す事例が多かったのです。)
挽回するには円安に安住せずに「この機会に挽回するぞ!と言う意気込みと努力こそが必要です。

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