外国人の参政権1

外国人の参政権論議が盛んですが、現在の収入によって所得税等を払っているからと言って、過去の蓄積取り崩しと将来に残す負債に関係する予算とその関連法案に対して彼らが口出しする権利を与えるのは合理的ではありません。
ただし、 October 3, 2012「制限選挙論」に書いたように分野別参政権を認めるべきかも知れません。
一定期間以上居住していれば、その限度で何らかの利害が起きて来る筈ですからその意見表明の権利を認める必要があります。
こう言う視点から、都道府県や市町村政治に関する限度で参政権を認めよという意見が出るのですが、市町村と言っても国家予算同様に市債発行その他財政政策決定・予算審議のある点は同じです。
そのうえ、海外交流の盛んな時代ですから地方政治家も国際政治に大きな影響力を持っています。
東京都知事の石原氏や大阪の橋下氏の言動に大きな注目が集まり国政への影響力が大きく、また文楽への補助金問題、教育の場での国旗掲揚・国歌斉唱問題等政治的分野に対する影響力・政治権限が大きいので、政治単位(地方か国政か)で参政権の可否を決めるのは問題です。
都道府県や市町村などの地方政治か、国政かの基準で区別して外国人参政権の可否を認めるのではなく、上記のように外国人に特に関係のありそうな分野別参政権・・精々個別分野での意見表明権を与えるが限界でしょう。
賃金は能力に応じたものにしておいて、日本での高度な文化的生活を維持するのに賃金では足りないならば、個人で言えば預貯金の利子配当収入や取り崩しで差額を賄うように、国家で言えば、社会保障の充実の結果貿易赤字が進んだ場合には海外からの利子配当所得(国際収支黒字)範囲内で生活費を支給するのが合理的です。
例えば賃金が現在の生活水準を維持するのに安すぎるならば、子育て支援や教育費支援、家賃補助、(公営住宅の充実)鉄道や教育機関への補助金、出産給付金、医療費補助その他での公的支援で賄えばいいのであって企業負担にする必要がありません。
(集中投資ではないし、産業振興には遠いので政治的にはバラまきになりますが、産業の基礎を支える意味では合理的です)
身障者雇用問題も同様の問題があります。
現在は一定人数以上の雇用をしている企業には一定率の障害者の雇用を義務づけていますが、これなども企業に社会保障負担を強制しているようなものですから、こうした負担のない新興国へ逃げる誘因になっています。
(障害者雇用に対する政府支払や解雇回避のための雇用調整助成金制度が今でもありますが、ここでは企業負担部分があるのを問題にしています)
企業は採算の取れる賃金・労働に見合った賃金(労働分配率をどこに置くかを別途充分吟味する必要がありますが・・)までを払えば良いようにすべきです。
政府(国民)がかれらの生活水準を上げたいと思えば、底辺労働者雇用一人あたり10〜15万円補助金を企業に交付するか、個々人に生活保障(障害者年金など)として10〜15万円交付・・あるいはインフラの底上げをすればいいのです。
生活保障が行き過ぎると、共産主義国あるいは公務員の労働意欲低下に類するモラルハザード問題が生じますので、それは別途考察対象として必要ですが(別の機会に書きます)、ここではあるべき賃金だけでの議論をしています。
(現金給付に限らず公共交通費、医療費や教育費出産費、美術館・図書館等公的施設への補助等で生活費を安くする広義のインフラ充実しているのが先進国ですから、給与だけ低額に抑えても外国人がこれらを無償利用出来るのは問題だという視点で1昨日から書いています))
そうすれば新興国並み低賃金になっても労働者の生活水準・結果は同じですから、雇用企業だけの負担ではなく国民全部での負担となります。
出産前後の休暇制度や介護者の休暇制度も同じで、これらを企業負担とするのではただでさえ、新興国との比較高賃金に困っている企業はドンドン海外に逃げてしまうでしょう。
企業が人を雇ってくれるだけでも有り難いのですから、いじめる方向ではなく後押しするくらいの気持ちが必要です。
低賃金化して来たときの差額=生活補助金の財源はどこから?となりますが、給与を上げなくて良ければ、底辺労働分野でも企業活動が活発になって国際収支も改善し、税収が上がります。
あるいは正当な賃金になり、国際競争力回復の結果儲かった企業や株主らに国債を売って資金源にすることが出来ます。
いろんな分野での弱者救済は必要ですが、救済の必要があるかどうかについて政治判断で決める以上は、その資金源は政府負担にすべきです。
政治が経済原理に反した給付水準を決めておきながら政府がその費用を負担せずに企業負担を増やして行き、(高齢者雇用義務づけも同じ視点からの検討が必要です)企業の海外脱出を後押しする政策方向ばかりしていると、その内富を生み出すべき企業がドンドン少なくなってしまう・・ひいては国際収支黒字が維持出来なくなってしまいかねません。
以上、低賃金レベル=低技能労働者の給与をどうするかの議論から最低賃金制度その他政府保障すべきことは政府が負担すべきであって企業に負担させるべきではないという意見を書いてきました。

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