アメリカ金利上げと円高(基軸通貨とは?)1

アメリカ発の金利変動の場合、世界規模で始まるのですから大変な事態です。
ついでに、10年ほど前からこのコラムで書いているように、日本は約20年間以上も最低金利国ですから、実は日本が経済連鎖の頂点に立って久しいのです。
(大きな声では言えませんが,アメリカは実は2位です)頂点の日本が,中国が偉そうなこと言うならば、金利を少し挙げたら、すぐに参ってまう仕組みです。
日本に原爆がなくとも、金利さえ上げれば(表向き威張っていても中国を含めた本来の)弱小国はひとたまりもないことが明らかです。
中国が参ってしまうと影響が大きくて大変だからと、(大き過ぎて潰せないだろうと言う聞き旧した中国の開き直り論で)アメリカが猶予して来たのですが、中国が実力もないのに世界支配意欲を引っ込めないことから、遂に満を持してアメリカは昨年12月に金利引き上げ断行しました・・。
それでも世界に対する影響を考慮して1回に予定どおりに大きく上げずに來年内に4回に分けて行なうと言うものでしたが、それでも中国にとって劇薬のようでした。
中国はすぐに始まったドル流出に耐えきれなくなって、(12月だけで1000億ドル超の流出と言う公式発表・・1説には1900億ドルとも?・・・実態はもっと多いでしょう・・ですから大変です)年明け以降中国発の経済危機が始まりました。
この危機勃発によって・世界中から連鎖的資金流出→アメリカへの資金還流が始まった=ドル高ですが、(ユーロも近日中の金利下げ発表で、ユーロ切り下げが始まっています)日本円だけが逆に円高基調になっています。
この円高とはドルに対する円高ですから、アメリカが金利を上げても元々アメリカより金利の安かった日本の円保有の方がまだ有利であると市場が判断していることを表していますし、危機混乱時の世界の資金の逃げ場として絶大な信用があると評価されていることが分ります。
アメリカの方が日本より信用があれば、(経済状態がよければ・・)日本より元々金利の高かったアメリカに資金が逃げれば安全な上に高い金利をもらえて有利です。
言わば(こんなことを言うとアメリカににらまれるので大きな声で言えませんが、波乱になるとアメリカより金利の安い日本に資金が逃げて来る事態は、経済実態から見ると)世界の基軸通貨の地位が日本に移動したかのような現象です。
10年ほど前のコラムで国の力は金利動向で現れる・・日本より金利を低く出来る国はない・・もしも日本が金利を上げて日本より金利の低い国になったら、世界中のどこの国の経済も持たないだろうと言う趣旨を書いたことがあります。
そのころから、既に日本は実質世界一の強国・・押しも押されもせぬ世界支配者になっていたと言う意味でかきました。
基軸通貨とは、中国のように?自己宣言・・威張ったり(昨年秋にIMFの公式通貨に採用されましたが・・)政治工作さえすればなれるものではなく、世界の通貨市場で最も信用のある通貨と認めて成立するものです。
市場評価・・これはどんなにマスコミが一致してデマを流しても市場は自分のお金がかかっているので義理や政治力・・デマに従いません。
日本マスコミが如何に日本が駄目だ「失われた20年」と事実に反した宣伝し,世界のメデイアがこれにに協力して一致した言論を展開していても(違う意見をマスコミのせない)事実に反している限り、イザとなれば投資家は損してまでこれに合わせた動きをしません。
マスコミ・エコノミストの一致した意見に反して、逆にこの20年間で日本が世界における盤石の経済的地位を確立していたことが市場の動きから読み取れます。
東京株式市場では、株式が乱世の円高想定の結果下がっていますが、日本・日本企業の評価が下がってのことではなく、逆にイザとなれば頼りになる・・日本に対する高評価による現象です。
株式下落の結果だけ見て日本のエコノミストやマスコミが「それ見たことか!」と騒ぐのでは、「ミソも糞も一緒にする」と言う無知蒙昧な人間のようです。
株価下落には、経済基礎が駄目でドンドン資金が逃げて行く倒産危機の下落と、日本のように危機時の緊急避難先として資金が集まる結果、円高になって株価が下落する場合の2通りがあります。
円が対ドルでⅠ割上がると外資にとっては株価が1割下がって、手取りドル評価がトントンです。
もしも東京市場の株価がそのままだとドル表示で1割暴騰したことになるので,「今のうちに」と利益確定売りが出て均衡点に落ち着きます・・これが株価下落の原理です。
これに対してブラジルのように通貨が3割下がって株価が同じか下がった場合、投資家にとってはダブルパンチ・悲劇的結果になるので、売り逃げに殺到して収拾がつかなくなり大混乱になります。
上海市場で年明け早々、売りが殺到してサーキットブレーカーが連続したのはこの原理によります。
日本の株価下落と中国のように人民元買い支えに必死の株価下落とは意味・原因が違います。
リーマンショックでも日本の被害が一番少なかったのですが、資金避難先として円高になった結果、日本企業が苦しみましたが、将来の見込みなくて下がったのとは違うので、約7年経過してみるとやはり緊急避難先としては世界で最も頼りになる国だったとして今回も選ばれています。
「イザというときの友こそ真のともだち」と言われるように、危機に際して頼られる国が本当の実力者です。
反日暴動以来、日本が急速に投資引き揚げをした結果、今では日本の対中貿易比率はGDP比2、44〜3%未満(いろんな数字が出ていますがこんなところです)に下がっていて、日本が貿易比率を下げた後で、中国に深入りした韓国(貿易比率30%台?)、ドイツ、欧州諸国や豪州その他新興国の被害(デフォルトになっていませんが、急速な貿易縮小による被害)は計り知れません。
この煽りで原油その他資源が暴落に近いほどの下落に見舞われ、資源国は通貨下落・・軒並み経済危機直前状態になっています。
(韓国も大変な事態でしょう)
勿論回り回って貿易縮小の被害を日本も受けますが、直截被害を受けた国とは桁違いの軽微さです。
リーマンショック〜中国危機など世界危機が起きるたびに日本の実力はいやが上に増して行く・・傷が浅くて資金を持っている「日本に頼るしかない」と言う認識を世界中が新たにするより外ありません。

円高適応力3

パナソニックやシャープ・・家電業界を比喩的に言えば、白物家電など不採算事業の撤退で仮に1万人のリストラがあっても同一企業内で高度産業部門にシフトして1000人雇用が出来て(高度化の結果)一人当たり10倍の稼ぎがあれば、残り9000人を社内で清掃や見学者案内その他で遊ばしておいてもやって行けます。
これを社外に出せば9000人の失業発生になりますが、9000人政府が雇えるほどの納税をして所得再分配資金にすれば、その税で介護や医療従事者の拡大・フィットネスクラブサービス業その他新たなビジネスになります。
鉱工業生産部門から第三次産業へシフトするには、鉱工業分野の稼ぎで養えるだけの収益がなければなりません。
鉱工業あるいは農業等の人口比率の高い社会とは、言い換えれば生産に従事しない余剰人口を多く養えない社会ですから、第一次第二次産業の余剰収益性の低い社会・・生産性の低い社会の別名と言えます。
円高で国内企業の減った分だけ勝ち組が大儲けしてくれれば、その資金で(所得再分配)街を掃除したり子どもを預かったり病人の世話・高齢者介護・芸術活動する人、美術館で働く人などへの支出が増えて、いろんな非生産分野で働く余力が出るので、生活水準が上がります。
円高が続いてもトータルとして貿易収支が黒字であり続けている場合、衰退した産業分野に変わる高収益産業・分野が出て来ていることを意味しているのですから、国のあり方として問題がないばかりか、めでたいことです。
円高=高賃金でもなお国際貿易競争に勝っていて貿易黒字を維持出来ている以上は、日本経済は適応出来ていることになりますから、この段階で不適応の結果生じる失業者は介護などへ職業訓練などで移行させて行く・・サービス分野を増やして国民の生活水準を上げる方向へ誘導すべきであって、何重苦などと言って騒いでいるのは間違いです。
スポーツでも勉強・研究でも順次ランクの高いチームに移籍して行っても、そこでもレギュラー・・一定の上位集団に入れる限度で、より高レベルのチームへ移籍して行く方が本人の修行のためにいい結果になります。
円高によって10の事業が海外に出て行きその結果50万人の職場が失われても、残った優良企業の円高対応力が上がって50万人分の失業者を養うほどの利益を得ているならば国家経済としては収支トントンです。
(円高になっても経常収支が黒字ということはこういうことでしょう)
円高でも儲かってる企業からの税の投入や彼らの消費によって、所得再分配方法として失業保険を払う代わりに介護職員や美術館やサービス業等の職員を50万人増やせば失業者はゼロになります。
円安政策は、円高に見合った多くの介護従事者その他を養うに足りるほど高額な稼ぎの出来る高度企業・分野が育っていないにも拘らず、能力以上に円高になったとき・・即ちその結果貿易赤字に転落するときにこそ必要です。
ここ数年の超円高では、対応能力する暇がないほど急激過ぎたとすれば、(誰が判定するかと言えば貿易赤字になるかどうかを基準にするしかないでしょうが・・)高度化対応に一息つくまでの時間稼ぎとしてはさし当たりの円安政策は意味があるでしょう。
近代産業で負け続けて貿易赤字になるのを待ってから・・自然に円安になるのを待っていると恒常的な貿易赤字になってからになりますので、その時点=円高適応に失敗して産業がメタメタに負けてしまってから漸く円安になっても最早、再起不能になってしまいかねません。
我が国は所得収支の黒字が大きいので、貿易赤字になってからでも何年間も経常収支赤字にならない(・・一見貯蓄があると良いようですが、資源国同様に却って問題が大きくなります)このために円高是正措置が遅れるリスクが大きくなります。

円高適応力2

円安の効果は何でしょうか?
円安は労せずして(個別の賃金引き下げは大変ですが、全体の水準低下は簡単です・・大掛かりな賃下げ政策です)海外との低賃金競争に下駄を履かせて貰える効果があります。
日本と中国の人件費あるいは地代等が2倍の格差があるときに、仮に円が半値になれば座したままで、コスト競争力が対等になってしまう魔術です。
今はまだ約10倍の格差ですが、これが円安によって仮に7〜8倍程度の差になると技術力の差で十分な競争力があることになって行くという論法です。
韓国製品との競合で言えば、日本製が2〜3割高い程度の競争なら負けないときに2倍も高くなったので、最近の日本の電気業界が大変なことになっていたのです。
アベノミクスがあろうとなかろうと昨日まで書いたとおり原発事故による資源輸入の増加によって貿易赤字定着傾向になっていたので、円の地合が安くなる傾向のときでした。
原発事故→資源輸入の拡大→貿易赤字→円安→日本企業救済に一時的・・早めに役立つことになったと言えます。
ただし、レベルが高過ぎる学校に入ると努力してもどうにもならず精神を病んでしまうことがあるように、円が高すぎると企業努力の限界を越えて海外脱出になりますが、逆に現状で余裕の学校に行けば楽に良い成績を取れる代わりに将来への発展性がありません。
ほどほどの円高が国の発展を保障するのであって、円が安過ぎても企業努力が弛んで衰退の道を歩むことになります。
資源国は、マトモに働かなくともそれで食えるので多くの国民が遊んでしまう・・失業者が増えるリスクがあることをJanuary 20, 2013「中間層の重要性4(テロ・暴動の基盤1)」以下で連載したばかりですが、この逆張りで国難とも言える原発事故によって資源輸入が増大した結果、何十年も続いた黒字国の日本も貿易赤字国に転落してしまいました。
原発事故鬼よる貿易赤字を防ぐには今まで以上に働かなくてはならない・・放っておけば貿易赤字が続くことになるので、その分円安になり、結果的に国際的に見て労賃が下がって国際競争力がついて、国内産業が息を吹き返す・・国内の仕事が増えるという有り難い結果になります。
円安とは、国際的に見れば日本人の労賃を安売りすることになる点は同じですから、どうせ一定数の職場あるいは一定の所得があるならば、高賃金の方が良いに決まっています。
個々人で言えば少しでも自分の給与が高い方が良いでしょうが、高望みすると就職出来ないから困っているのです。
高度技術者1人で10人分稼いで、その代わり高度化についてけない9人は(失業ではなく)従来の家内労働・・介護やサービス業で生きて行く方が、その社会の生活水準がより高度になります。
低賃金で夫婦で夜遅くまであるいは土日は別の職場で働いていて、家に草花を植えたりするヒマもなく家事・育児をマトモに出来ないような家庭よりは、夫婦どちらかが高給取りで他方が家事を充分に切り盛りしている方が(あるいは夫婦とも半日だけ働いて充分な生活を出来る方が)生活水準が豊かになります。
同じ国内所得水準ならば鉱工業従事者数の比率を下げて家事(男女に限らず家庭内の仕事・子どもと一緒にいる時間その他)医療やサ−ビス業の比率が高い方が、国民が豊かなサービスを享受出来るのでより良い生活を楽しめます。
ですから円高でついて行けない産業が生じること自体が悪ではなく、これまで稼いでいたのに、円高に適応出来ずに衰退した産業の代わりに稼げる産業が生まれるかどうかにかかっています。
円高の結果貿易黒字から赤字に転落するとすれば、その時点で円高は日本経済の適応能力を越えている(実力以上の高評価を受けて却って損をする関係)ことになり、日本にとってマイナス要因となります。

円高適応力1

21日までのコラムは1昨年秋ころから書いていたものを基調に若干日付などを修正して掲載したものですが、この間に昨年末に総選挙があって、現在は安倍自民党政権になっていることから、所謂アベノミクスが世上大流行語になっています。
これまでのテーマとの関連で、アベノミクス・金融・財政政策ひいては為替相場に関して現在どうなっているかなろうとしているかを書いて行きます。
アベのミクスの内、円安誘導目標は安倍氏が自民党党首になったころから早くも円安効果が出始めたとして世上囃し立てていますが、その功罪をどう見るべきでしょうか?
これまで書いているように低金利政策だけでは、資金が海外に出て行く(海外投資が進む)・・ひいては国内産業空洞化が進む一方になります。
前回まで書いて来たように海外進出ブームでも国内に居残ってなお勝ち進んでいるトヨタやコマツ等の会社がありますが、そうした会社でも海外工場比率が上がる一方ですし、(国内生産を減らさないで頑張るのがやっとで)しかも国内に踏みとどまる企業は少数派になりつつあります。
大方の企業はこれ以上円高が進むと海外に逃げるしかないという立場ですから・・国内職場が減って海外から利益送金してくる所得で所得再分配をする社会(円高定着で)になった場合を想定してみましょう。
海外進出→国内空洞化が進んで輸出が減っても、その代わり海外からの利益送金が増えて経常収支としては同じになる場合があります。
この場合労働需給側面で見れば職場が減るので、職場が減った分と同じだけ少子化が進んで労働力減小が進んでいない限り、国内失業者が増えるので国内的には不健全な状態になります。
アラブ等で頻発している最近の政権転覆の事例で書いたように、資源国等で革命騒乱が起き易いのは国民の労働に頼る比率が低く、少数労働者の働きだけで巨額収入が得られる産業構造に問題があることをJanuary 20, 2013「中間層の重要性4(テロ・暴動の基盤1)」以下で連載したばかりです。
日本社会が安定しているのは末端まで仕事が行き渡っていて精神が健全に維持されているからですが、少数の高度技術者や国内にとどまっても輸出出来る少数特殊勝ち組企業の高収入と海外進出による海外からの配当収入に国民総所得が頼るようになると、国際収支が黒字でも資源国では所得の割合に職場が少ないのと同様に国内で働いている人が減ります。
失業者が溢れるのでは、大変なこととなります。
この受け皿として失業させて失業保険を長期間払うよりは、税を使ってでも公共工事あるいは介護関連職種への移行が期待されています。
失業対策と言うか所得再分配と言うかの違いです。
すなわち、お父さんの稼ぎが良いときには専業主婦が多くなり易いですが彼女らが失業給付を受けているのではありませんが、家庭生活水準が上がります。
トヨタやコマツ等の特定企業の稼ぎや海外からの送金で日本経済が成り立つ時代には、高収入の分配が家庭内だけではなく社会的に行われないと失業者だらけになります。
特定者に偏る収入を社会的再分配システムにしたのが介護などの社会化と言えるでしょう。
介護関連事業へのシフトが失業の代わりという位置づけですと、海外からの送金や高度化成功者や高収入者の税に頼る分だけ、所得再分配・失業救済事業的要素があって賃金が安くなる傾向・・所得格差が広がる傾向があります。
高額所得者がいて、これをサービス分野に再分配出来れば、国民が豊かな生活が出来ることについて、この直ぐ後に書いて行きます。
以上の次第で円高は国民の労賃を高く評価してくれる代わりについて行けない国民は(新たな職業を税で作ってくれない限り)仕事を失うのが原則ですので、目出たいことだと喜んでばかりいられません。
学校の授業レベルをどの辺に置くのかの議論と似ていて、数人の生徒しか理解出来ないレベルに引き上げて「自分のクラスは高度な数学を教えている」と自慢していても生徒の大多数が眠ってしまうのでは困ります。
4〜5人が稼いで残り95〜6人を養ってやるよりは、9割以上の人が働いている社会の方が幸せですし、政治の方も気楽です。
国内雇用対策として国内公共工事を増やしても海外企業の受注を阻止出来ないし、資材輸入比率も上がる傾向があるので、ある程度しり抜けになりますが、それでもまだ国内企業の受注が8〜9割以上を占めているでしょうし、(資金が1〜2割海外流出しても)何よりも工事場所が国内にあるので、国内物流や現場労務者等向けの国内雇用が維持出来ます。
(資材を海外から輸入するなどもあって投資除数効果が低くなっていることは認めざるをませんが・・)
それと公共工事に使用する資材の大本である鉄鉱石や原油(ビニールパイプその他全て元はと言えば)輸入資材ばかりですから、結局は内需拡大=貿易赤字推進策→円安効果になります。
一般家庭で言えば、工務店を自分で経営していても家を直せば、家計が赤字になるのと同じです。
既にアベ政権誕生直前ころから貿易の巨額赤字発生によって、(20日の日経夕刊には2013年1月単月の貿易赤字額が何と1兆6294億円と出ていました。)赤字になればその赤字分だけ決済用に円で外貨を買わねばならないので、需給の原理によって実際に円安傾向になっていましたが、これに加えてアベ政権の金融・財政出動政策期待によって円安が加速される傾向が出ています。

円高とデフレ(円高メリットの享受)

 逆から見れば国民個々人が頑張ったからこそ、貿易黒字を稼げた結果の円高でもあるのですから、円高の効果(メリット)を国民個々人が享受するのは当然の権利となります。
スポーツでも何でも優秀な成績をおさめて何日も勝利の美酒に酔いしれていたら次の試合で負けてしまうので、トップの座を維持するために勝利の美酒は1晩だけにして直ぐにも次ぎに向けたトレーニングに精出すのが普通です。
円高は国民の努力の賜物とは言え、給与アップの恩恵を受けて海外旅行や安楽を決め込んでいれば、その内貿易赤字→インフレになって、国民の方が今度は逆襲されます。
政府や経済界・エコノミストはインフレ待望論一色ですが、経常収支黒字を維持しながら円安=輸入物価上昇を求めるのは虫のよい矛盾した願望です。
バブル崩壊後我が国だけの超低金利政策によって、円キャリー取引による(円の流出)円安の演出が出来て、貿易・経常収支黒字の連続にも拘らず円安を維持出来ていたことがありました。
リーマンショック以降世界中が低金利競争に入って来たので、このトリックが通用しなくなり、長期の経済原理に反した円安維持の咎めが出て急激な円高になりました。
(アメリカと日本がほぼ同率の低金利になれば、金利差による為替相場形成がなくなり貿易収支・経常収支の黒字・赤字関係が為替相場にモロに反映されるしかありません。)
キャリー取引のようなイレギュラーなトリックを前提にしない場合、整合性のある議論としては、貿易赤字に陥らない限り円安になりません。
円安待望論者は、国内的にはインフレ・・債務の目減り期待と対外的には円高だと貿易が苦しい・・貿易黒字を維持するために訴えているのですから、貿易黒字を続けながらの円安期待ですから、矛盾した論法です。
赤字→円安→輸入物価上昇ひいてはインフレになり・・結果的に賃金の実質引き下げになり(国民は困りますが)国債など各種借金の実質返済負担が下がります。
インフレ待望論とは、5月12〜16日に掛けて書いて来た世界的な借金棒引き論の広がりと根は同じです。
我が国は世界一の純債権国であって、借金棒引きまたはインフレによる減価で損をする立場にも拘らず、殆どのマスコミや経済学者がインフレ待望・借金棒引き・・一種のモラルハザードの広がりに熱心とは驚きです。
ところで、国債発行残高がいくらになろうとも国民が保有者の殆どである限り問題がないという意見を2012/03/19/「税収2と国債1」〜2012/04/08「財政収支と国際収支3(純債権国)」〜2012/04/19「国債残高の危機水準3(個人金融資産1)あたりまで連載してきました。
政府・マスコミや経済学者はこれを理解せずに、国債残高増加=借金大国になってしまうかの如く心配しているから、棒引き論・・インフレ期待=支払負担を軽くするモラル普及を広げる方が国益になると誤解しているのでしょう。
再論しませんが、世上誤った意見が流布しているので1つだけ付け加えてておきます。
「税で負担せずに国債で政府支出をすると次世代に巨額借金を残す」とマスコミや経済学者が不安を煽っています。
(私が/2012/05/05「海外収益還流持続性1(労働収入の減少1)」以下で批判して来た世代間対立を煽る論の1つです)
あるいは1000兆円の国債残高は一人当たり何万円の負債だと騒ぎます。
しかし、国債保有者の95%が国民であるとすれば、その債券の95%を次世代が相続するので次世代に残す借金は5%に過ぎません。(子供でも分る理屈でしょう)
1億円の定期預金を有する人が負債4000万円で死亡しても次世代に負債を残すことにはなりません。
不安を煽っている論者は定期預金部分をことさら隠蔽して銀行借金だけを強調している不公正な議論です。
5%前後は国際取引決済上必要な(普通の人は貯蓄以外に全資産の5%くらいは毎月の口座引き落とし用に普通預金を持つように)ゆるみに過ぎませんから、日本も外貨準備としてその何十倍も持っているので、心配がありません。
結局、次世代への引き継ぎは、わが国が対外的に純債権国の地位を維持出来るかどうかだけが要点であって、純債権国である限り国内の帳簿の付け替え・・定期預金を残してしその範囲で借金するかどうか・・国債残高の多寡・財政赤字の程度に関係なく、次世代はプラス財産を相続することになります。
インフレ・・例えば物価(給与や収入が)が2倍になれば、借金の額面が同じですから返済負担が半分に減りますので債務者にとってはメリットが大きいのは当然です。
日本は今世界最大の債権国・・すなわち政府債務は別として国民の金融資産が最大にも拘らず、インフレ期待論は政府債務を縮小すべく「国民資産を毀損すべき」という誤った期待です。
ただし給与負担としてはインフレになると、賃金アップは後追いのために、企業負担が減ります。
総じてインフレは個人が損をして組織が得をする状態と言えるでしょうか?

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