中間層・蓄積の重要性8(同胞意識5)

ちなみに武士の出現以前にも、武士に守ってもらうべき需要・・自作農があちこちに存在していたこと・もっと古くは荘園への名義だけの寄付が流行ったのも自作農地を守るためのものでした。
水田耕作の我が国では、水路の維持管理の必要性からムラ社会は一心同体の紐帯で結ばれて来たことを書いたことがあります。
ムラの代表者は自己保身のためではなく、むしろ自己を犠牲にしてもムラ人が全員一族・同胞のつもりですから、全構成員のために政治をすることに千年単位で親しんできました。
戦国武将が自分が腹を切っても城兵全員の助命を開城の条件にしていたし、農民一揆でも代表者・・庄屋クラスが処刑されること・自己犠牲を前提にしてムラのために頑張って来たことが、その象徴です。
莊屋クラスが自己保身・・私腹を肥やして農民から抗議されるような事件は全く起きていません。
中国だけはなく、朝鮮半島でも初の統一支配政権となった李氏朝鮮の支配下で、両班以外は人間扱いされない(文字も知らない)ままで近代に至り、日本支配になって漸く平等を前提に全員が教育を受けられるようになったに過ぎません。
総督府の時代に一般人対象に教育を始めたのですが、イキナリ漢字を教えるのは無理があったことから、総督府の勧めで現在のハングル文字(表音文字ですので言わば平仮名だけしか理解出来ない状態が、今も続いています)の普及を奨励したのが文字教育の始まりです。
我が国では名目的な律令体制を導入しましたが、班田収授法・・すなわち国有農地方式は根付かなかったことを01/15/06「三世一身法と墾田永年私財法1(法か律か?)」前後で連載しました。
中国や朝鮮の地域では(中国では辛亥革命まで)律令体制をそのまま敷いてきましたので、自作農・・自分の農地と言う観念自体が育たなかったでしょう。
だからこそ食えなくなれば簡単に流民化するし、共産革命・・集団・国営農場化が簡単に出来た面があることを、03/04/06「商から農への転換9・・・中国の場合1」等で書いたことがあります。
中韓両国の地域では異民族支配の繰り返しこれとセットの専制君主制・王朝下で何千年も来たので、日本のような国民(同胞)という概念もなく、単に支配領域内に住んでいる人間と言うだけで言わば支配対象・物みたいな客体でしかありません。
(この点日本人は他所の国の人を「その国民(同胞)」と日本的理解で考えると間違うことをこのあとで書いて行きます)
中国政府にとっては中国国内にいる人間も領域外にいる人間も、全て将棋の駒みたいな政権維持の対象・材料にしか過ぎず、(中国では異民族支配が繰り返された経験があるので、)領域外にいる人間も領域内にいる人間も将棋の駒のように取れば自分で使えるコマ・・工場経営で言えば原材料的対象として考えているので、都合によってどのように切り刻もうと自由自在ではないでしょうか。
領域内の国民も政権に反抗するならば、国境の外にいる外国人よりも政権維持にとって危険ですから、死刑・臓器摘出を含めて徹底的に押さえ込む・・恐怖政治でやって行くのが今でも中国風の政治です。
文化大革命当時に流行った下放政策も根は同じです。
国民の方も都合が悪ければ流民化したり、外国籍をとったりすることに抵抗がありません。
日本人の場合同胞どころか身近な動物まで家族のように可愛がり、大切にする社会です。
勿論庭に植えた草木もこよなく大事にしますし、針供養で知られるように身近な道具類にさえも魂を認めて大事にします。
まして同じ人間同士では、ネットその他では観念的に韓国や中国批判論が盛んですが、実際に身近にいる外国人を差別したり貶めたりする気持ちが(内心でも)基本的にありません。
中韓でいくらいろんなことがあっても、ネット騒いでいても、具体的に身近な中韓の人に対して罵詈雑言を浴びせるような人は(礼儀上黙ってるというだけではなく内心でも目の前にいる人には皆平等に接する気持ちが基本で)皆無と言っていいのではないでしょうか?
内心で異民族を侮蔑し、憎悪しながら理性の力で、博愛・動物愛護などと主張している欧米とは順序が違います。

同胞意識5と統治対象2

中国では政府に反対する者は皆殺しにしても、あるいは非合法に収容しては臓器摘出してこれを売却商品にするなど何でもする政府ですが、ここまでやると怖くて抵抗出来ないし、政権に抵抗するのは命がけ・・反政府運動に参加する以上は先鋭化して行くのが普通です。
2013-1-27「 暴動と政権維持1(同胞意識2)」以下で書いたように、近代国家では政府軍の軍備は、寄せ集めの武器に頼る反政府軍や素手の暴動群衆に対して圧倒的に強大ですから、外国の介入がない限り、反政府運動はまともに戦ったのでは勝ち抜く見込みがありません。
中国のような大国では外国軍の介入が殆ど期待出来ないので、どんな圧政・臓器摘出されても国民は従うしかありません。
中国では古代から「苛政はトラよりも猛し」と言われて来た所以です。

「孔子過泰山側。有婦人哭於墓者而哀。夫子式而聽之、使子路問之曰、子之哭也、壹似重有憂者。」
「而曰、然。昔者吾舅死於虎、吾夫又死焉、今吾子又死焉。夫子曰、何爲不去也。曰、無苛政。夫子曰、小子識之、苛政猛於虎也。」

苛政とは重税を意味したものと学校で習った記憶ですが、今様に言えば不公正、不合理な制度や非民主的過酷な弾圧などが苛政にあたるでしょう。
圧政・・すなわち正義に反する政治の強制が許される政治体制・・装備の優勢と国民に対する呵責ない弾圧を躊躇しないで実行出来る国では、政権が倒れない代わりに個々人の道徳観が蝕まれますので、犯罪多発・道徳の頽廃した社会が継続する原因になります。
特権層が日本のお金持ちの10〜100倍の収入があって厳重な警備で生活したり家族を海外に逃がしたりするのと、日本のように使用人ゼロでも気楽に自宅近くを散歩出来るのとどちらが良いかの問題です。
政府が政権維持のためには道徳も何も要らないと言う姿勢ですと、国民も毒になる物をミルクや食品等に混ぜるなど、金儲けのためなら食品産業に限らず何でもやるという姿勢が顕著になります。
日本では野球でも何でも有名人が行儀悪いと青少年に与える影響が大きいからという理由での締め付けが厳しいですが、(ジヤィアンツの王選手が試合中にしきりにつばを吐くシーン映像が行儀悪い・・少年に悪影響だ嫌われていたことを想起して下さい)政府自身が政権維持のために人倫の道に反していろんなことをすれば、国民に与える道徳的影響は半端ではありません。
ところで、中国や韓国国民が非道得的行動原理になる理由については、政府の国民に対する政権維持のためにする呵責ない圧政の外に、「貧すれば貪する」と言う原理も加えて作用しているでしょう。
中国や韓国と我が国の本質的民度差は、中国や朝鮮では民衆の極端な貧しさ・・庶民層ではちょっとした凶作等があればたちまち餓死に直結するような極貧状態が古代から続いている・・庶民がマトモな蓄積を出来ない状態で何千年も来たことも関係あるのかも知れません。
中間層と言うと世上ホワイトカラーの出現・・高度成長期以降のことを想定している人が多いと思いますが、我が国では実は古代から中間層が存在していたことを軽視してはなりません。
我が国では、平安の昔から、武士層という中間層と安定した自営農民中心社会だったのに対し、古代から中間層が育ったことのない中韓社会との違いです。
安定した中間層の存在が早くから庶民文化・BC級グルメの発達した基盤でもありますし、日本と中韓の違いだけはなく世界中の諸外国との大きな違いになっています。
何でも西洋にあるものに日本をあわせようとする(日本の実態を知らないまま)学者が多いので、(士農工商と階級社会関係の違いについては「最先端社会に生きる3」January 14, 2013で書いたばかりです)我が国では昔から地主小作関係や農奴的身分があったかのような書き方で教育されて来ました。
いろんな歴史漫画でも長者ドンの息子と結婚出来て目出たし目でたし・・あるいはとんちの利く小僧が長者ドンをへこますような筋書きが多く見られます。
しかし、地主小作関係が発達したのは明治の地租改正・金納制による自営農民の没落によるものであったことを、04/10/04「イギリスの囲い込みと我が国の自作農崩壊との違・・・農村の窮乏化政策」04/09/04「地租改正と農地売買の自由化3(大地主の誕生と小作農の出現=窮乏化)」その他で連載しています。

テロ・暴動の基盤5

共産党政権としては、経済政策の行き詰まりが顕著になって来たことから、どうせ暴動になるならば無差別暴動→収拾のつかない内乱を待つよりは日本企業相手に的を絞らせた方が避雷針みたいになって安全ですから、昨年これの社会実験をしてみたと思われます。
日本企業にとってはいい迷惑でしたが、中国にとって実験出来たかも知れませんが、日本企業にとってもその分リスク予測可能・警告になった大きなメリットがありました。
中国政府はこの実験の結果芳しくないと思ったでしょうが、経済が行き詰まれば行き詰まるほど制御不能な暴動発生のリスクが高まります。
放置していて暴動が頻発拡大し、政権転覆の危険が迫れば背に腹は代えられませんから、日本と対立する損害は欧米や韓国企業である程度穴埋め出来ることもあって、今後1〜2回は苦し紛れにやれるでしょうが、官製暴動を繰り返していると次第に暴動の規模が大きくなって行く危険があります。
不満の圧力が強過ぎて避雷針から電流が漏れ出るように、あまり煽っているとデモ崩れが日本企業周辺略奪を始める事態が起きる・・軍や公安で抑え切れなくなる事態が想定されます。
これを避けるために目くらまし的に先手を打った対外強行策・戦争行為に(・・標的は日本しかないでしょう・・フィリッピン等小国相手では国民の目くらまし・ストレス解消には小さ過ぎます)打って出る・・この場合、国内では戦争相手の日本企業の襲撃をより煽動し易いので一石2鳥の策と誤解する危険があります。
二兎を追う愚策になって、内政混乱して対外的には孤立の道を歩む(今でも仲良くやっているのは北朝鮮(韓国も反日共通としてその気持ちでしょう)とパキスタンくらいですが・・・)・・収拾のつかないことになるのでしょうが、回りは迷惑です。
24日に書きましたが、中国は沿海部工業地帯の賃上げと内陸部開発の二兎を追って失敗したのですが、政策立案としては1石2鳥のつもりだったのです。
レアース禁輸も日本攻撃を兼ねたレアアースの価格引き揚げの1石2鳥の効果を狙ったものでしたが、却って代替資源開発によって暴落して国内レアアース産業が参ってしまって散々です。
ここ10年ほどの中国の打つ手は全て逆回りをしているように見えるのですが、これは頭でっかちな役人・・ハーバード等留学組のエリートが考えるからこういうことになるのです。
失政続きで不満のはけ口として日本企業に的を絞り切れなくなって大混乱に陥った場合、食い詰めた個々人が豊かな日本へ押し寄せて来るリスク・観光名目で泥棒や強盗目的で来たり住み着く場合が想定されます。
戦争または流民の押し寄せいずれになっても日本にとっては大問題です。
日本としては、危険な国が近くにある以上は防犯・軍備をしっかり準備して行くしかありません。
さしあたり軍備よりも金のかからない方法・・中国人へのビザ免除特権を停止することが先決です。
紅葉を楽しみに京都へ行って来たことを年末のコラムで書きましたが、中国人のいない京都は静かで(中国人の甲高い声が充満していた数年前の京都に比べて)本当に良かったですよ!
ちなみに京都のホテル予約では最盛期にはどこも満室で、漸く12月初めに予約出来たに過ぎません。
それでも、実際に京都へ行ってみるとどこもかしこも観光客で溢れていました。
中国人が来なくても、日本の観光地は困らないのではないでしょうか?
どうしても来たいと言うならば、犯罪を防ぐために長崎辺りにジャパンワールドを作ってそこに日本列島のミニュチュアを造って大声で騒ぎながら日本を鑑賞していただくのが合理的です。
入国許可範囲は、その特区(出島の大型判)に限定すべきです。

中間層の重要性5(テロ・暴動の基盤3)

中国にとっては持続的外資導入のためには、成長持続が売り物ですから、これまで人口オーナス論に見向きもしなかったし、その意を受けた日本マスコミ・マスコミに出る学者も一言も触れない状態でした。
ところが、中国政府は方針を正反対にしてイキナリ労働力減少数を多めに(労働力人口は従来15〜60歳以下人口統計だったのを59才に引き下げてまで人口減を多めに)発表したので、慌てて1月19日の日経新聞朝刊で報じざるを得なかったように見えます。
翌20日には19日の大きな記事に続けて社説でまで書くようになった慌てぶりは異常です。
中国政府の意を受けて中国市場の際限ない成長を宣伝していた日本マスコミ界にとって、中国政府自身によるこのような発表は日本の頭越しに米中和解したのと同様の衝撃だったでしょう。
労働力人口減のマイナス影響論を逆手に取って従来基準よりもさらに1年分労働期間を減らして計算して減った人口を多めにイキナリ発表した政府の意図は何でしょうか?
失業増大による社会不安拡大の憶測否定・・「職場が減っても人口がこんなに減っているから大丈夫」というアナウンスがその目的でしょう。
そこまでしなければならないほど、対日暴動時点よりも更に失業増大が進んで余程追いつめられていると見るべきです。
習近平氏がトップ就任最初の訪問地に広東や深圳方面を選んだことをもって、日本マスコミは鄧小平の南方講話を引いて路線継続意思表示と賛美していましたが、実は当地では工場閉鎖続出で大変なことになっていたからではないでしょうか?
19日の報道ではこの1年で365万人程労働人口が減ったと言うのですが、確かに5000人規模の(日本では)大規模工場が10個や20〜30個バタバタと閉鎖してもそれだけ労働者が減っていれば数字上では関係ないと言えば言えます。
しかし、まだまだ工場労働に押し寄せる貧窮農民層からの圧力が毎年何千万とある状態ですから、全国で労働力人口が数字上300万や400万人減ってもその圧力が減った訳ではありません。
まして20日にテロや暴動の供給源について書いたように、もともとの農民が苦しくなっても食えなくなるまで命を捨ててまでテロや暴動に参加しません。
(新規参入者である農民工が雇ってくれなければ田舎で従来どおり貧しく生活しているだけでテロリストにはなりません)
ところが、一旦都会に出てしまった労働者が職を失うと帰る家もなく(19日に書いたとおり郷里には受け皿がありません)先進国のようにセーフティーネットの未成熟な中国ではマトモに食いはぐれます。
毎年何千万と発生していた新規参入者が365万へったと言うだけで、既存労働者の50万〜100万単位の失業がそのままになっているのでは大変です。
中国の場合新規参入仕損ないも実は大変なことです。
・・田舎からギリギリの仕送りで卒業した大卒が就職出来なくとも郷里に帰れないのは同じで、ネズミ族、あり族になっているのが有名です。
日本で言えば、仮に50万人失業者を出すにしても中高年者を失業させると影響が大ききいので、新規参入を抑える(新卒の就職難)政策をずっと採用してきました。
日本では親世代が豊かなので就職出来ない新卒・若者は親の家にとどまることが多いので、親に寄生している限り社会不安が起きません(草食化するばかりです)が、中国では深圳特区等早くから開けた工業地域に多い既存労働者(中高年齢層)の失業や大卒の就職率低下は、その受け皿がない分深刻な社会問題になっている筈です。
中国では親世代が貧窮状態ですから、中高年齢層が失業したり田舎から出て来た大卒が就職出来ないときに今更極貧の郷里に帰れませんので、砂漠で路頭に迷っているテロリスト供給源と同じ状態に陥りますので、(根なし草としては砂漠の民と同じです)数字のゴロ合わせでは解決しない社会不安・・暴動予備軍が生じます。
北アフリカ諸国では、近代化以前の裸足で槍をもって獲物を追っていた生活に戻れないので、失業or就職難→テロリスト供給源・予備軍になり勝ちなのと同じです。
新興国や産油国では半端な近代化が、もともとの原始生活に後戻り出来なくしてしまったから、成人しても職がなかったり一旦職を失うと命がけにならざるを得なくなっているのです。
中国の若者が高度産業の受け皿もないのに大量に高学歴化してしまい、行く場所を失ってアリ族に転落している・・今更内陸の農家に戻れないのも同じ構図です。
GDP統計同様に数字発表の操作が中国では大好きですが、失業による困窮度は国民が肌で知っていることですから、この発表が外国(中国べったりの日本向け)メディア対策にはなっても、現実に失業している国民の不満がなくなる訳ではありません。
折しもネット上では、中国のあちこちで大型商店の突然の廃業・閉店がニュースで流れていますが、失業増大で消費が落ち込み始めたことが分ります。
中国政府は本当は困っているのでしょうが、実態に合っていなくとも政府に都合の良い数字を発表しておくしかなくなったのでしょう。
ソ連時代もそうでしたが、共産党政権では、実態にあっていようがいまいが、計画経済・官僚の書面上の辻褄だけが尊重される伝統が開放・自由主義経済化?した現在でもそのまま踏襲されています。
情報規制しているから、裸の王様の寓話が(国民は信じていなくとも)そのまま、まかり通っていることになっているのでしょう。
(したたかな中国国民は信じていないので)虚偽宣伝報道がそのまま、まかり通ってるのは、これをそのまま有り難がって報道してくれる・・洗脳される日本人だけかも知れません・・。

最先端社会に生きる5

欧米経済学者やマスコミは日本の長期持続して来た高度成長による欧米追い越しに対するやっかみがあって、ついに日本も駄目になったと言うことばかり強調したがる傾向があります。
欧米では中国から遠いので格安品の流入による影響が静かに進んでいたこともあって、これを見ないことにして、中国・新興国由来のデフレに悩む日本を失われた20年などと揶揄してバカにしていたのです。
新興国の逆襲に何の対応も出来ずに、(欧州が合併してEUとして規模による防衛するくらいしか考えないで)欧米国内産業が疲弊するに任せていました。
ちなみに商品の競争力がない負け組が合併を繰り返して生産規模を大きくしても、割高な物を大量に作れるだけでは意味がない点は企業でも国でも同じです。
・・清朝のように大きな国でも技術革新に負けてしまった19世紀には、近代化した英国に叶いませんでした。
パナソニックが、サンヨーと合併して規模を大きくしても、商品単位あたりの性能やコスト競争力がなければ、何にもなりません。
国や企業は規模ではなく、(EUが大きくなればいいというものではないでしょう)如何に効率よく、良い商品を作れるかが競争力を左右します。
日本は格安製品の怒濤的流入に対して国中挙げて対応して来た結果、国内企業も負けずに(ユニクロや100円ショップのように)格安製品を供給するようになったのがデフレ化の原因です。
他方で価格競争から脱する工夫に関しても各分野で成果を上げていますが、精密機械等では門外漢には分り難いとしても、身近な一例としては、国産農産物の品質が格段に良くなったことは誰もが認めるところでしょう。
欧米は、デフレに苦しみコストダウンや品質アップに必死になっている健全な姿の日本をバカにしているばかりで、中国や新興国からの格安製品の流入にこれと言った適応努力も出来ずに貿易赤字を膨らませていた結果が、現在の大量失業社会の現出であり、リーマンショック〜欧州危機です。
ただし、優れた生産技術で圧倒した19世紀の植民地化進行時代とは違い、中国が人件費の安さで勝っているだけですから、この競争は欧州やアメリカも人件費が中国並みにまで下がれば(あるいは中国の人件費が上がれば)均衡します。
中国が画期的技術を開発しない限り(先進国の盗作や模倣だけでは)逆転することはあり得ません。
日本の場合、今でも中国の人件費の約10倍ですが、この格差のママで貿易収支が黒字を維持出来ていたのは、余程うまく対応出来ていたと言うべきでしょう。
19世紀西洋の産業革命による廉価品の怒濤のような輸出攻勢に対して、アジア・アフリカ諸国はなす術もなく敗退して行き、日本を除いて全て植民地化・半植民地化して行きましたが、この逆張りの進行・逆襲に対して今回も日本以外の先進諸国は全てなす術もない状態に陥っていると言えます。
(グローバル化=先行者利益の消滅過程であることについては05/26/07「現地生産化の進行と加工貿易の運命1(先行者利益の寿命)」February 28, 2012「高度化努力の限界2」等のコラムで書きました)
逆張り進行については以前書きましたが、もう一度簡略に書いておきます。
機械化によって大量生産出来ればその分労働者数が不要になる論理ですが(この論理によって機械打ち壊し・ラッダイト運動が西洋で起きました)増産した分を輸出に回して他国の市場席巻出来ることによって、後進国へ失業を転嫁し、 先進国では失業にならずに逆に分け前にあずかれる・・先進国労働者が高賃金を得られました。
即ち世界中に機械化による製品を輸出して後進国の失業輸出・・植民地化=奴隷的地位への転落と引き換えに先進国労働者は高賃金を得られていたのです。
グローバル化によって、世界中が近代工業社会・生産能力がフラットになると新興国でも最先端機械を使って生産する以上は競争力の源泉は人件費の差に帰してきます。
人件費差が国際的に平準化するまでは、新興国の攻勢が続くと見るしかないでしょう。
日本は直近の国でイキナリに始まった激変経済環境(超低価格化の波)にその割にうまく適応して来ました。
(ブラックホールのような低賃金・大規模人口国で起きた低価格品流入潮流にも拘らず・・・・原発事故まではずっと貿易黒字だったのですから、)
この成功の原因は戦後5〜60年に亘って時間をかけて形成して来た中間層の層の厚さ・蓄積の大きさによるところが大きいと思われます。
(この点は2〜3日後で書きます)
しかるに欧米かぶれの経済学者やマスコミはこの成功の意味を知らないで、新興国の挑戦を肌で知らない欧米学者と一緒になって「失われた日本の20年」と受け売りして得意になっています。
受け売りの行き着くところ、目覚ましい高度成長期の復活期待の合唱になっていてこれを実現出来ない政治家に対する不満意識を誘導しています。
そもそも政治でやれないことをマスコミが政治に要求していれば、誰が政治をやっても出来る訳がないのですから必然的に政権交代がめまぐるしくなって行きます。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC