中銀の独立性?2(トランプ政治の正統性?1)

ニューヨークダウ平均に大方連動している年末年始の日経平均株価の動きを紹介しておきます。
日本はファンダメンタルズが悪いから下がるというよりは、アメリカの高金利に世界がビビったことと、政権と議会の対立でついに予算がない状態・公務員給与も払えない事態に突入したことも大きな原因です。
有事の円高想定による株下落→日本の場合、円高率と同率で下がるのが理論的です。
例えば円が120円から100円に上がれば、日経平均が12000円から1万円に下がっても外国人投資家にとってはドル換算では同じです。
実際には瞬時に20円も上がりませんが、小刻みに円が上がるのに連れて外資(プロ)にとっては、コンピュータープログラムによって小刻み・・自動的に売り抜けようとしますから、円相場に連動するので円が100年に上がる場合には日経平均が1万円まで下がるセオリーです。
アルゼンチン等脆弱國ではこの逆で、通貨下落に連動して株価や債権下落→金利上昇になります。
12月20日パウエル議長記者会見による大幅下落・・年末年始の日経平均のグラフを引用しておきます
https://kabutan.jp/stock/chart?code=0000&ashi=1

パウエル議長の12月の会見要旨を引用しておきます。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39169710Q8A221C1000000/
2018/12/20 6:11

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は19日開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、・・・2019年の利上げシナリオでは「来年の経済は2回の利上げが求められるような道筋で成長する可能性が高いと考えている」と語り、従来の3回から引き下げた理由を説明した。・・・・・19年の利上げ想定の引き下げにつながった。パウエル氏は「基本的なところで見通しを変更したわけではない」と強調し、経済は健全な形で成長を続けるとの基本的な想定を堅持した。
・・・
一方、トランプ米大統領から利上げをけん制する発言が続いていることに対しては「政治的な考慮は我々の議論や決定になんらの役割も果たさなかった」と強調し、政治圧力の影響を強く否定した。」

この会見で株価が下がり、年が明けてもさらに下がる展開でした。
トランプ氏によるあまりの恫喝(彼は直接言いませんでしたが更迭論がメデイアを賑わしていました)に怯えたのか?年初1月9日に公開した12月の利上げ時のFOMC議事録要旨は、今後の利上げ予定の取りやめに含みを持たせるような内容であったことが議論を呼び、1月10日以来市場安定化・・株価回復に資しているようです。
これ(日経平均の動き)を見ると予算が成立しないことよりも(予算成立が年を越したどころか、今日現在まだが成立しないままですが、議事録要旨公開だけで株価が持ち直したということは、)金利動向の方が世界経済への影響が大きかったことがわかります。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-10/PL3ULX6KLVRA01
Christopher Condon

2019年1月10日 17:02 JST
FOMC議事要旨と12月のパウエル議長会見、際立つトーンの違い
9日公表の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が市場に安心感をもたらす内容だったことで、投資家の間に新たな疑問が浮上した。それは、昨年12月19日の会合後の声明やパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見とはトーンの違いが大きかったためだ。
・・・・
ラインハート氏は、12月19日の声明や議長会見に対する市場の否定的な反応に対応するような形で金融当局者が議事要旨を取りまとめた可能性があると推理。「パウエル議長は会見の冒頭発言と質疑応答でFOMCの認識を正確に伝えたが、あまり歓迎されなかった。その後、議長がもっと強調しておくべきだったと残念に思った部分をもっと気配りして強調することにしたのではないか」と論じた。

比較のために米連邦公開市場委員会(FOMC)決定が政治圧力によるかの神学論争は別としても、政治=国民福利を最大にする必要がある点は金融当局も同じであるべきですから、金融当局も国内景気実態を無視できませんし、基軸通貨国としては国際経済への目配りも欠かせません。
日銀が地方を無視して東京の景況感だけを前提に判断するのが許されないのと同じです。
トルコ・エルドアン大統領のような強権支配者は中央銀行の決定に強力な支配力を持つので、国内景気対策の配慮が優先して金利引き上げが先送りになっていた結果、リラが大幅下落し物価大暴走になってきた例を昨日まで紹介しました。
ただし「政権が政策の最終責任者であるべき」という私の意見によれば、独裁の弊害の問題ではなく、エルドアンの判断が間違っていたことになるのか?というだけのことです。
中銀の独立性を強調するのがメデイアの原則ですが、私は独裁権力者が「自己保身のために経済原理に反した」ことをしても国民が苦しむと言うだけであって、中銀の独立性自体を絶対的なものとは考えていません。
経済「政策」は総合視点でやるべきですから、金融理論ばかりではなくその時の経済体力その他状況に応じた総合判断が必要です。
これを政治判断の利かない金融のプロが最終決断をして良いとは思いません。

米中対決と周辺国への影響2

今日は昨日から書いてきた論文紹介です。
最初はグラフだけ紹介しようと思ったのですが、前提条件ど知りたい方がいるかもしれないので、検討した前提条件等を抜粋して紹介することにしました。
私の要約では微妙に間違うといけないのでそのままの抜粋ですが、そのために今日は引用が長くなってしまいました。
印象を書くと対決する米中が損をし「揉め事を起こしていると喧嘩している双方が体力を消耗し周囲が得する」ということでしょう。
第一次、第二次世界大戦の当事者になった欧州が力を落とし、第一次世界大戦や朝鮮戦争特需の恩恵を受けた日本を見ればわかります。
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/as181226a.pdf

2018年12月26日
   みずほ総合研究所調査本部 アジア調査部
米中貿易摩擦のアジアへの影響
中国以外のアジアはネットでプラスの影響を享受
○米中貿易摩擦のアジアへの影響について、サプライチェーンを通じたマイナスの影響だけでなく、生産代替を通じたプラスの影響についても、国別かつ業種別に試算
○各国別では、いずれもネットでプラスの影響を受けると試算される、その規模は最大のメリットを受けるベトナムで0.5%程度。ただし、当面はマイナスの影響が先行する可能性
○産業別では、多くの国でPC関連と一般機械にプラスの影響が集中するなかで、ベトナムとカンボジアに関してはカバン・帽子・自転車といった低付加価値産業での生産代替が多くなる可能性
1.米中貿易摩擦によるアジアへの波及は、
マイナスとプラスの二つの経路
・・・・
以上のマイナスとプラスの影響の波及経路について、一定の前提を設定し、アジアの各国・各産業への影響を試算することが本稿の狙いである。
2.現状レベルの貿易摩擦を前提し、アジアの国・産業別に影響を試算
(1)前提条件
a.試算の全体に関する前提
・・・中国の対米輸出については2500億ドル相当、
米国の対中輸出については1100億ドル相当が制裁を受ける対象となっており、この部分について分析する(図表2)。
b.サプライチェーンを通じたマイナスの影響試算に関する前提
・・・・現実には、関税率が上昇しても、通貨の下落や製造・流通業者の利益圧縮によって販売価格への転嫁が抑制されたり、たとえ価格に転嫁されても、最終需要者が価格上昇を甘受して購買を続けたりするケースがありうる。試算を単純化するために「価格弾性値=1」としたが、マイナスの影響を大きくする厳格な前提といえる。
c.生産代替を通じたプラスの影響試算に関する前提
第一に、生産代替を通じたプラスの影響試算に関する前提貿易量の減少と同規模だけ、生産代替が行なわれる(完全代替)と前提する。つまり、米国による追加関税で、中国の対米輸出数量が25%減少する場合、それと同規模の生産が米国の追加関税を回避するために中国から第三国(ないし米国)へ代替されると前提する。
なお、代替率は0~100%の間の値を取りうるため、100%の「完全代替」はプラスの効果を最大にする楽観的な前提である。
第二に、生産代替の行先としては、世界の輸出市場における国・地域別のシェアに応じたものになると前提する。
・・・・この前提は、ADBの先行研究と同じであり・・・・世界シェアが
高い国・地域ほど中国を代替するポテンシャルが大きいと思われる。
(2)試算の手法と範囲、データベース
サプライチェーンを通じたマイナスの影響試算については、OECDの国際産業連関表(ICIO)の最新版(2011年)を用いる・・・・・・・の範囲は1次波及までとし、米中および各国・地域の輸出減少や不安心理などが内需を押し下げる二次的な波及効果は対象としない。
3.アジア各国・地域の各産業とも、ネットでプラスの影響を受ける試算結果
(1)国・地域別の影響


(2)産業別の影響
産業別にみると、サプライチェーンを通じたマイナスの影響については、台湾、マレーシア、韓国、フィリピンといったアジア各国・地域のPC関連分野で目立つ試算結果となった(図表4の赤塗りの横棒)。これらの国・地域が、特に中国とのサプライチェーンにおいて、PC関連部品のサプライヤーとして組み込まれているためである。その他の産業については、各国・地域とも目立った影響はなさそうである。
生産代替を通じたプラスの影響については、多くのアジア各国・地域でPC関連および一般機械に集中する(図表4の青塗りの横棒)。例外としては、ベトナムではPC関連と一般機械に集中するのでなく、繊維にもプラスの影響が分散する。
4.ただし、当面はマイナスの影響が先行する可能性に留意

本試算の枠組みでは、マイナスとプラスの影響がいつ現れるのかという時間の概念を示すことはできない。
以下略

米中対決と世界経済への影1

昨日見た貿易比重でみれば、日本に関してはありがたいことに他国に比べて対中比重の上昇率が低いようですが、世界全体で見れば対中貿易の方が米国を上回っているように見えます。
米中対決すると中国への輸出が減り(世界で対中輸出が対米より大きいので)世界経済が大変なことになるという変な議論がメデイアで流布していますので今日はこれに対する私の素人的反論です。
中国の巨大な輸入は、対米貿易黒字によってファイナンスされている・対米貿易黒字がなくなる・・対米輸出が減ると中国が加工生産→対米輸出するための資源や部品輸入がなくなる・・中国の世界経済への影響力がその分縮小すると思うのが素人的道理です。
中国の輸出→輸入が減れば世界中が困るかのようなメデイアの論調ですが、それを手をこまねいて見ている企業はありえない・・・ベトナムその他東南アジア諸国に生産工場を移転してそこから対米輸出に切り替える・・米国の対中高関税を回避するように動くのは当然です。
米国の消費が減らない限り、消費に必要な分を米国内で生産するか、中国輸出分の肩代わりする国が出てくる(中国工場の米国向け輸出分の生産縮小して東南アジア等の生産を増やすので)結果的に世界生産量は変わらないはずです。
その生産地移転コストとタイムラグが問題になるだけのことであって、中長期的世界経済あるいは日本経済に対する負担にはなり得ない・・むしろ高関税回避のために生産基地の移転恩恵を受ける最貧国カンボジア等の生活水準が上がり世界が平準化してトータル消費が増えるはずです。
部品も同じで中国製部品を使うと高関税になるならば、競合する他国製部品に切り替えるようになるので切り替え能力のない企業,生産地移転できる産業構造でない国だけが中国と心中するしかないにすぎないというべきです。
どうにもならないのは欧米制裁で中国の資源輸入に頼るロシアやベネズエラやイラン等限定された国のことでしょう。
中国の輸出産業が打撃を受ければ、輸出製品生産用の資源,動力消費も激減します。
対中締め上げは、米国発の経済制裁の効力を高める狙いがあるようです。
逃げ場のない最たる国・企業が震源地の中国であり中国企業です。
中国企業がベトナム等に工場移転→ベトナム製として対米輸出できるかというと中国国有企業関連は、それだけで米国から忌避されるので工場移転も無理があります。
そのほかに中国資本企業の場合の網もかかります。
米国へ輸出目的による中国内での生産ではなく中国国内消費拡大を当て込んで先行投資したおむつ工場や店舗進出などの場合、中国経済減速による消費減退はもともと中国内需向けだった以上は、東南アジア諸国へ工場移転する余地がなく消費拡大予想が見込違いになったことになります。
中国国内自動車販売が減少に転じていることが外資が関与していて統計をごまかせないので信用性が高いですが、その他分野の生産や売り上げも車にほぼ比例して減っていると見るべきです。

https://www.msn.com/ja-jp/news/other/

12月中国貿易統計、輸出入ともに予想外の減少-世界経済リスク高まる
[北京 14日 ロイター] – 中国税関総署が発表した12月の貿易統計では、輸出が2年ぶりの大幅な落ち込みを記録し、輸入も減少した。ともに予想外のマイナスで、中国経済が2019年に一段と減速し、世界的な需要が低下する可能性を示す内容となった
12月の輸出は前年同月比4.4%減。主要市場のほとんどで需要が鈍化した。

対米輸出基地としてあった中国での生産工場が新興国へ移れば、その分新興国の所得が上がり消費力が上がるので、中国で減った(おむつなどの)消費分が周辺諸国に拡散するので、世界全体での消費量は同じです。
中国企業の輸出向け生産が減り、その分原燃料輸入が減れば、(資源需要減少と言いますが)その分東南アジア諸国が生産に必要なので資源を買い、工場稼働アップによって電力等の必要性が増え燃料の輸入が増えます。
輸出入で見れば中国の対米黒字分が、周辺国の黒字に置き換わり周辺国の消費拡大に置き換わります。
早くから周辺国への進出準備をしていた・・用地取得・建屋まで完成していていつから操業しようかという企業にとっては追い風になるし、その予定がなかったか、予定していたが、これから数年かけて用地を探し、許認可交渉に入ろうとしていた企業にとっては遅れている分だけ競合他社の後塵を拝することになります。
http://www.tokyoーnp.co.jp/s/article/2019010501000986.html

事務機器大手リコーは5日、中国での複写機の生産をタイへ移管する準備を進めていると明らかにした。
中国の輸出環境が米国との貿易摩擦で悪化している影響を緩和する狙いだ。
現在、複写機を中国の上海や深センから米国へ輸出しており、生産の移管を決めれば、最速2カ月でタイから輸出できる体制を整えた。部品も中国以外で調達が可能だという。

この一般論をリコーの例を引いて10日ほど前に素人的に書いてきましたが、ついにプロの分析結果が見つかりましたので明日引用紹介します。
これによるとほとんどの国はマイナス影響よりプラス影響の方が大きいことがわかります。
ベトナムやマレーシアなどはマイナス分は殆どなく工場移転メリットをもろに受けるなど大幅なプラスになっています。
日本も若干のプラスです。
EUは日本、韓国台湾のように簡単に東南アジアに移転(する下地がない)できないので、大きなダメージを受けるように思っていましたが、以下のグラフによれば(私には原因不明ですが)かえって儲かるようです。
対中高関税をかけると米国が高い製品を買うしかなくて、米国自身が困るとメデイアが言いますが、米国自身も代替生産国から従来通りやすく買えるので、ほぼ中立になっています。
こうなると米中摩擦で困るのは、逃げ場のない中国だけのようです。
マスメデイアはなぜ困る困るというのでしょうか?

アメリカンファーストと国際協調1

トランプ氏の米国第一主義はわかり良いスローガンですが、誰だって自分が一番大切なのですが、自分の欲求だけでは社会が成り立たないので、社会あるところ付き合い方のルールがあるのです。
「米国ファースト、都民ファーストと言ってれば何かが決まる訳ではない」と小池都知事の国政参加表明の頃に連載しました。
多くの動物は集団行動で生命を守っていますし、防衛ばかりではなく生活に必要な道具が増えてくると遠隔地との交易の必須度が上がってきます。
たった一人では獲物を素手で取ることができないだけではなく、獲物を取るべき道具を含めて完全自給自足が不可能である限り、100%自分中心で生きていくのは多分石器時代の昔から不可能です。
日本でも石器時代の昔から黒曜石を求めて長距離移動していたことがわかっています。
個人であれ、小集団〜国家であれどの程度で他人〜他集団と折り合いをつけて交際していくかが重要なのに、〇〇ファーストとかグローバル化反対と唱えていれば解決するものではありません。
出来の悪い幼児が駄々をこねているたぐいです。
トランンプ氏の行動をみていると、政治家に要請される高度複雑系の判断に基づくのか疑問を感じる人が多くなっていくでしょう。
「あちら立てればこちら立たず」の2項対立ならば、どちらを味方をするかの決断だけでよかったのですが、中東問題の対処を見ると関係が複雑化しすぎて2項対立の単純思考の文化度ではどうして良いか分からなくなりました。
ナウール共和国の例を引いて資源で食っている国はその分技術文化の発展が阻害されるという私の持論をあちこちに書いてきました。
アメリカはオーストラリアやサウジ同様、資源が国力の基本になっていて資源国の中では比較的優秀人材吸収(移民受け入れ宣伝)に努めたので比較的技術発展できたにすぎない以上、(資源に頼っている分)その限界に見舞われているのは仕方ないことです。
国力と能力乖離のジレンマで歴代大統領が悩んでいるうちに、メッキが剥がれて米国の指導力低下が認識されるようになったのですが、複雑系紛争解決をするには単なる武力や経済力の優位だけでは無理があり複雑系処理能力が必要ですが、米国民の民度では無理があることが分かったということです。
無理があればどうするかですが、能力に余るならば手を引くしかないという単純論理であるべきでしょう。
それを米国ファーストと言い換えているだけですが、米国民の大方がこの自覚を持った・土地成金ならぬ資源成金は成金らしく振舞うしかないということでしょう。
アメリカの民度レベルでは複雑な利害を捌く政治能力がないのは当然です。
アメリカが、19世紀から20世紀にかけてアジア諸国にとって人気があったのは、(日本でいえば、木曽義仲と都人の対比でもわかるでしょう)交渉に長けた複雑系の人がらではなく田舎出の成金らしいおめでたい雰囲気が表に出ていたからです。
第二次世界大戦後覇者になると、気の良さそうなおじさんの役割だけでは物事が進まなくなりましたが、幸い、どんな残逆行為をするかしれない・怖い共産圏諸国という対立軸があったので、アメリカの無茶も通ってきたのです。
ソ連崩壊後恐怖を煽る対立者がなくなると、国家でいえば対立する敵対国がなくなると内政に回帰するしかないのですが、内政は利害が錯綜していて「あちら立てればこちら立てず」で単純能力ではうまくいきません。
アメリカ一強になると国際政治が内政並みになってきて二項対立どころか、5派〜6派に利害が入り乱れる関係になってくると「気持ちの良いおじさん」レベルではどうして良いか分からくなるのは当然です。
世界の警察官ではないとオバマ氏が言ったと報道されていますが、いまも世界一の武力・経済力があるので、軍事力の行使による紛争解決能力がなくとも治安維持程度の能力・・警察官派遣能力・資格はあるでしょう。
軍と警察の違い・・一般的理解では、軍事力は政治と密接に結びついた装置・・要は「国際紛争解決のために利用する装置」ですが、警察は政治判断から切り離された自動装置・・明確な法規違反取締り装置(逆に政治的目的での取り締まりや検挙をするのは違反)です。
紛争解決目的の武力展開力は政治判断によるのですから、政治判断能力がぐちゃぐちゃのままでは、政策目的遂行のための手足となる軍も機能できるはずがありません。
このように警察と具の機能を仕分けすれば、アメリカが果たせなくなったのは、「世界の警察官」をやれないのではなく、政治判断による「軍事力による解決能力がない」ということでしょう。
もしかしたらオバマ氏が言ったのは「紛争解決のための軍派遣・・世界の面倒見られない」と言ったのを、日本メデイア界一致して?「警察官」をやれないと意図的に?誤訳して流布しているのかも知れません。
http://net.keizaikai.co.jp/archives/498

世界の警察官」を返上 オバマ政権、曲がり角に津山恵子(ニューヨーク在住ジャーナリスト)
2013年10月1日
9月10日午後9時、オバマ大統領はテレビ演説でこう語り始めた。
「化学兵器による死から子どもたちを守り、私たち自身の子どもたちの安全を長期間確かにできるのなら、行動すべきだと信じる」と大統領は、化学兵器の禁止に関する国際ルールは維持すべきだと強調。しかし、武力行使に対しては、驚くような考えを明かした。
「米国は、世界の警察官ではない」
「私は、武力行使の必要性に対して抵抗した。なぜなら、イラクとアフガニスタンの2つの戦争の末、ほかの国の内戦を解決することはできないからだ」

上記の文中の「警察官」を軍隊と置き換えたほうが意味が通るでしょう。

韓国・中進国の罠3(企業と国民の出国熱1)

外資を含めた韓国内自動車工場全体の今年9ヶ月の販売数の動きです。
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20191001005100882

韓国完成車5社の9月販売 2.2%減少=1~9月も4%減
1月から9月までの累計では5社の世界販売台数が581万623台で前年同期比4.0%減少した。メーカー別でも5社全てが減少し、現代は3.9%減、起亜は1.5%減、韓国GMは9.5%減、ルノーサムスンは24.4%減、双竜2.4%減となった。代表的業種である自動車の韓国国内生産が減ってきました。
中国経済縮小の影響による減少か?というと以下の通り表題だけ見ておきますと、日本のメーカーの場合そうでもありません。
https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_prod/productionfig_japan_2019
日本の乗用車メーカー8社、9月の自動車生産は3.1%増、輸出は2.6%増

韓国では企業の国外脱出が続いていますが、これは11月6日まで見てきたように米国や日本の大企業も早くから同様の動きでしたが、どう違うのでしょうか?
https://diamond.jp/articles/-/206617

韓国企業が自国から相次いで「海外脱出」している理由
真壁昭夫:法政大学大学院教授 2019.6.25 5:00
韓国企業の海外脱出が加速化
ここへきて、韓国企業の海外脱出が加速化している。
それを如実に示すデータが韓国政府から発表された。企画財政部の発表によると、今年1~3月期、韓国の企業は141億ドルの海外直接投資を行った。これは過去最高だ。産業別にみると製造業の割合が高い。
「国内脱出」を図る韓国企業
1~3月期、韓国経済の“成長のエンジン”というべき製造業の海外直接投資は、前年同期比で140%も増加した。
それは、輸出主導型の韓国経済が、大きな変化に直面していることを意味する。
韓国は資材などを海外から調達(輸入)し、それを国内で加工・生産し、完成品を輸出することで成長してきた。
こうした経済の運営は徐々に難しくなってきた。
その要因の1つには、中国が国家主導で半導体産業の育成などを進めたことがある。中国企業などの技術面でのキャッチアップに直面し、韓国企業は徐々に海外に進出した。その主な目的は、国内生産を海外に移管し、コストを低減することにある。
韓国経済の“地盤沈下”
韓国経済は、サムスン電子を筆頭とする財閥企業の業績に大きく依存している。財閥企業が海外進出を強化するのに従い、韓国の中小企業も生産拠点をベトナムなどに移している。
これまで国内経済を支えてきた産業の基盤が、そのまま海外に移管されているといえる。その分、国内の雇用機会は減少してしまう。
より高い付加価値を生み出す産業を育成できなければ、韓国国内における投資(民間企業による設備投資)も減少するはずだ。
韓国は目立ったイノベーションを発揮することができていない。韓国企業は、半導体市場では存在感を示してきた。ただ、それは完成品の需要に左右される。
自動車の分野で韓国企業は世界的なSUVブームに乗り遅れた。米国によるファーウェイへの制裁はサムスン電子にとってはチャンスだが、開発を急ぎすぎたこともあり折り畳み型スマホの発売が遅れている。加えて、海外進出を進めたにもかかわらず、同社の売り上げは減少している。
自動車や造船業界では、文政権の支持基盤である労働組合がストライキを起こし経営再建がままならない。韓国では財閥企業創業家や労組といった一握りの既得権益層に富が集中してしまっている。この中で、より効率的な資源の再配分を目指すことは難しい。韓国経済は長期低迷に向かっているように見える。

国内高度化脱皮努力するより低賃金国へ生産移管しか打開策がないのでは将来性がないという点は、韓国ケミカル業界が大量生産方式から脱皮できていないと10月16日末尾に書いた私の思いつき意見と同じです。
https://japanese.joins.com/JArticle/254844?servcode=300§code=300

海外に「逃避」する企業…「脱韓国」投資が増加
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2019.06.26 0
「メード・イン・コリア」が魅力を失っている。企業の脱韓国ペースも加速している。
慢性的な韓国の高コスト構造、週52時間勤務制度、最低賃金引き上げなどコスト競争力の低下と革新成長を妨げる規制も企業の背中を海外に強く押す原因だ。
今年1-3月期の韓国大企業の海外直接投資(ODI)規模は102億ドルと過去最高となった。製造業の海外直接投資(57億9000万ドル)は前年同期比140.2%も増えた。一方、今年1-3月期の外国人直接投資(FDI)は前年同期比35.7%(申告基準)も減少した。

サムスンなど大手が国外移転あるいは進出すると関連業界もベトナム等へついていきますが、雇用はそのままついていけないので、人の方は国内に居残って失業に苦しむか、個々人の能力に応じて国外脱出を図るしかないのでしょう。
この先駆現象が雁パパの出現だったでしょう。

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