アメリカの産業・奴隷利用=粗放経済の破綻2

奴隷解放後もアメリカの産業構造はベルトコンベアー方式に代表されるように大量生産・粗放農業による低価格出荷競争が主眼でした。
熟練工や高級品質を求めず「低レベル労働者を安く利用して中間レベルの製品を以下に大量に安く生み出せるか」の工夫に重きを置いてきた歴史にみえます。
今でもスターバックスやマクドナルドなどレストランその他チェーン展開による大量出店で稼ぐ本質です。
喫茶店オーナーがうんちくを傾けるような方式を好みません。
日本人から見れば凝ったものなど理解不能・・安もの好き国民性印象になる所以です。
ところが、流れ作業をこなす程度の仕事→全自動化が行き着くと、さしたる訓練のない新興国・・消費地生産可能になったので、アップルに代表されるようにほぼ全て新興国へ生産移管してきたので米国が世界の生産基地でなくなりました。
この数年シェールガスで元気を取り戻したように、資源国としての生き残り程度が産業の主力になってきたようです。
新興国展開が始まった結果、アップルで言えば全量中国生産になっているように国内製造業が壊滅とまでは言わないまでも、「腕力に任せて米国内生産しないと許さない」というのでトヨタ日産など日本勢は米国内生産に協力していますが・・言わば第二次奴隷解放・低レベル労働者の放逐が始まったとも言えます。
実は米国日本籍のある企業の場合は、選挙権者でもあるので脅しなど怖くないので気楽に米国内生産に見切りをつけてさっさと工場国外移転を進めています。
https://japanese.engadget.com/2018/11/27/ev-gm-5-15/

EVと自動運転車に資源集中。GMが米国内5工場閉鎖、人員15%削減へ
トランプ政策空振り
米ゼネラルモーターズ(GM)が、契約社員の15%をレイオフするとともに、北米5か所の工場を閉鎖、さらに6車種を生産終了すると発表しました。
GMでは今回の再編によって正社員、契約社員あわせておよそ1万4000人のGM従業員が失業する可能性があります。
電気自動車と自動運転車の開発に資源を集中する方針です。

要は、EV系人材に入れ替えたいということでしょう。
ここでも適応障害が起きて旧来型製造工員が行き場を失なっていきます。

https://jp.reuters.com/article/gm-restructuring-trump-tweet-idJPKCN1NW29P
トランプ氏はツイッターで、GMがメキシコや中国の工場を閉鎖しなかったと批判。「米国はGMを救ったのに、その返礼がこれとは!われわれは今、電気自動車を含めGMへの補助金全額カットを検討している」と述べた。

放逐された時代不適合・低賃金労働者をどうするかの、解決策がないことが今のホームレス激増になっていることがわかります。
彼ら全員の再教育には無理があるので、ボランテイアによるピンポイントの教育効果があっても全体の底上げにはつながりません。
アメリカのホームレスに対する施策をさっと見た印象では、ピンポイント救済に引っかからないその他大多数は滅びゆく「先住民」のごとく「ゲットー」に囲って死ぬまで保護していくしかないイメージです。
シェルターは出入り自由なのでその点収容所とは違いますが・・。
出て行くのは自由でも、ホテル等に泊まれない以上は夜になると路上で寝るか、別のシェルターを選べるにしても結局は近くのシェルターに帰るしかないのでは、事実上一生シェルター暮らしになる点は同じです。
能力別人口構成はピラミッド型で、底辺層の裾野が広いのでボランテイアがピンポイント的再教育して・一つ一つの成功例・・やっている人は善行を積んでいる達成感や満足感いっぱい・・それはそれでいいことです。
しかし・・こういうやり方は砂漠に水を撒いているような気休め・自己満足で抜本的解決にはなりません。
マザーテレサで知られるように、あるいはビルゲイツの巨額寄付金のように、欧米ではこういう気休め政策にのる人を賞賛して底辺層の不満のガス抜きしてきた社会です。
日本は個人スターを必要としない社会です。
一本釣りだけではなく、底辺の底上げ・・解決には静かな長期ビジョンによる国・社会の制度設計が必須ですが、これには数世代にわたる施策が必須です。
我が国は誰もスタンドプレーに走らず・・黙々と戦後住宅不足時には公営住宅供給に税を投入してきたし、教育無償化や国民皆保険や年金制度を進めてきました。
こうした息の長い政策には天文学的予算が必須でしかも地味です・・長くても4〜5年で選挙の評価を受けねばならない民主政体・・政権交代する前提の短期施策では不可能です。
日本人の多くは選挙や目先の評判でなく、子孫が恥をかかないようにお国のために尽くす姿勢で多くの人が頑張ってきました。
これが我が国価値基準であり、良き伝統です。
社会のあり方として、いわゆる性善説と性悪説を古くはjune 4, 2013,モラール破壊10(性善説の消滅)前後、近くは19年2月14日頃に書きましたが、日本は性善説の国であって、監視してこそ真面目によく働くというような性悪説・投票箱民主主義のように底浅いものではありません。
米国では奴隷制度に始まり使い捨て的底辺労働に頼って(都市さえもスクラップアンドビルド政策・用済みなれば、ゴーストタウンにして捨てていく社会・・)奴隷制に匹敵する超低コストの底辺労働に頼ってきたこととセットで移民流入(労働能力としては最底辺層が多い)を受け入れてきたのです。
日本でもアメリカの真似をするのが正しいという主張が有力ですが、私はアメリカ方式に反対してきました。
さすがのアメリカも低賃金新興国に汎用品の生産がどんどん移転すると、教育を受け付けない膨大な数の底辺労働者の負の遺産をどうするかの時代に入っています。
2月27日に紹介したヒスパニック人口が約6000万人で、その中で一握りの成功者もいるでしょうが、大多数が文字やパソコン不要の現場作業(草刈り等の原始的?)に従事している階層では真面目に働いてもアパートに住む収入がない状態です。

アメリカの産業・奴隷利用=粗放経済の破綻1

昨日紹介した日経新聞紙面では、60万人の雇用を誇るアマゾンが18年秋に最低賃金を時給15ドルに引き上げたことを紹介しています。
世界に誇る大手企業がその多くを最低賃金で雇っている現実こそ重要です。
Jul 9, 2016 12:00 amのブログで、「非正規雇用の多いアメリカ最大の大企業のウオールマートの店員の多くが,生活困窮者向けの1、25ドル分のフードスタンプを貰う列に並んでいることが問題になって日本でも報道されましたが、漫画みたいな社会です。」と紹介したことがあります。
サービス業でも日本はおもてなし文化度が高いので、能力レベルに応じた多様な高級職種がありますが、アメリカの場合飲食店といってもフードコート類似のマニュアル対応主流ですから、サービス業従事者の多くは最低賃金すれすれ職になっている点が大きな問題です。
(日本でもチェーン展開のコンビニや居酒屋、ファミレス、回転すしなどの従業員比率が上がる1方ですが・・変化が遅いのが取り柄です・スーパーが発達すると反作用でこだわり製品やデパ地下人気が高まるなど世の中の動きが一直線ではありません・・明治維新当時も洋画が入ると反作用で日本画への注目が起きるなど・・)
2月26〜7日に紹介した現地ルポで見たように英語を話せず文字すら読めないレベルの場合、サービス業はフードコートでも一応顧客対応ですので、(一定のコミュニケーション能力が必要)配送すら(宛名等の理解能力)できず草刈りなどの原始的職業しかありません。
ホームレスト関連するフードスタンプ受給者の激増問題もあり、この点については上記Jul 9, 2016 ブログで
「政府の最新データによると、2014年9月の登録者数は4650万人で、前年の4730万人から減少した」
と引用しています。
この登録は世帯単位であることから、1世帯三人とすれば人口の約3分の1がフードスタンプをもらっていることになるとも書いています。
フードスタンプをもらっていても帰る家のある人が多いでしょうが、ちょっと家賃が上がるとついていけないギリギリの人がこんなに多いことが推測されます。
この人たちの生活保障をどうするかのテーマに答えられないのが、ホームレス激増の背景でしょう。
日本のホームレスのイメージは無職者ですが、アメリカの場合有職者なのに住む家がない状態です。
こういう社会では失業率の統計は前年度との比較傾向が分かるものの、(無職で開き直っている人の割合が分かる程度?)目先困っている人の実態には迫れません。
月収3〜40万円の工員がレイオフされて、最低賃金の配達員などに転じた場合、失業者数は変わらないとしても、生活水準の劇的低下を知ることができません。
ところで昨日見た日中の賃金格差ですが、中国と日本の賃金格差が7〜8年前には10分の1前後の相場の記憶でしたから、短期間に約2〜3割上がったことがわかります。
この賃金上昇の結果、チャイナプラスワンの動きが出ているし、中国は低賃金を武器にした国内生産基地化の夢が破れそうになってきたので焦ってレベルアップに乗りだしたところ、やり方が強引すぎてアメリカの怒りを買っている構図です。
中国が近代産業導入後賃金水準アップに連れて国際競争力維持のために労働の質向上に必死なように、アメリカも奴隷利用による最低賃金による安値生産で始めたものの限界がきて、母国西欧諸国に追いつく・・産業革命の恩恵を受ける準備が始まると、労働の質アップが求められるようになったのです。
低レベル労働者のレベルアップは言うは安く、3〜40代以降の人に再教育してもその効果が知れています。
世代交代を待つしかないとすれば、30代後半以降の再教育不能人材の行き場に困ります。
こうなると低レベル・安いだけの労働者を失業させておけばいいのではなく、何らかの生活費支給が必要になる分、足手まといになってきます。
車産業のEV化も各産業分野のIT化でも同じですが、中高年・既存労働者にEVやIT関連作業に変更を強いる社内教育は年齢が行くほど無理があるので、適応可能な若手新人採用の方が企業にとっては合理的です。
社会の変化が3〜40年周期で起きる場合には、世代交代して入れ替わるので問題が少ないのですが、5〜10年で入れ替わる急激な変化の場合、まだ2〜30年働ける年齢で引退(失業)をしいられるので社会の軋轢が生じます。
先進国の高齢化社会到達までに要した期間と新興国の到達時間がまるで違うのがその象徴ですが、あとから追いつく方は近代産業導入以降ごく短期間で先端技術社会に追いつけるメリットの代わりに生身の人間の陳腐化が早すぎるのが難点です。
日本の場合江戸時代からの工芸技術の蓄積がある上に、産業構造の変化がいつも30年程度の周期で来たので、その間に変化に向けた技術修練を経る時間がある・・次の時代に向けた変化能力の高い人材が多く育っているので社会の分断が起きにくい安定社会になっています。
環境激変の時代に、次々と新たな技術に適応していける企業や人材が多くて今なお多くの製造業がしぶとく生き残れている所以でしょう。
訴訟手続きのIT化の取り組みも、パソコン普及開始後2〜30年経過後の今になってようやく始まろうとしていますが、それも明日から紙媒体を受け付けないというものではなくじっくり進める予定です。
そのうち私ら(昨年末同期会に行ってきましたが、同期の多くはすでに後期高齢者です)に続く次の世代が全員引退していなくなる約10年経過ころに全面施行になるのでしょう。
変化の早い時代にこれでは取り残されるといいますが、社会変化は早くとも30年周期が合理的であり、数百年も遅れすぎた後進国が無理に追いつこうとしているから(草花でいえば北国では春と夏が同時に来るように)変化が早い時代と言われているだけではないでしょうか?
先に進んだ方はゆったり構えて次に備えればいいのであって、焦る必要はありません。
新興国では平均寿命50歳前後の社会に近代工場がいきなり入ってきて生活水準が急激に上がり平均寿命が70前後への高齢化が急速に進む一方で、労働技術の陳腐化がほんの10年前後で進み取り残されるのでは、彼らはその後の長い人生をどうやって生きて良いかわかりません。
馬が高齢化して次の馬を買う代わりに車にするならば順次変化でスムースですが、馬や機械がまだ新しいうちにどんどん入れ替えるようなことを人間相手にしているのが韓国や中国政治ではないでしょうか?

近代産業革命とIT革命の違い1

近代産業革命前に100人必要だった生産や輸送が産業革命による効率化で10人で生産し輸送できるようになれば、90人の職場が失われるはずが、余剰生産分を国外輸出によって失業しないで済めば、生産その他すべてが10倍になれば、国力10倍となり民生も10倍豊かになります。
その輸出を受け入れる国は受けれた分元々の生産従事人口が失業します。
いわゆる「失業の輸出」ですから、一旦受け入れ国になると失業が増える一方・・貧しくなる一方で先進国と後進国の格差が開く一方になっていた・・この市場構造固定化・・相手に生産力をつけさせない半永久的市場支配の権力構造が植民地支配体制です。
英国の紡績業発達がインドの綿産業を壊滅的に滅ぼし「白骨街道」になったことを以前紹介しました。
ラッダイト運動で主張していた矛盾を海外に押しつけることで自国内矛盾を回避し、先進国の優位性の固定化装置だったことになります。
それまでの植民地とは文字通り「植民する」ことだったのですが、産業革命以降は市場支配の枠組み固定化装置に変わったのです。
この枠組み変更に異議を唱えたのがアメリカ独立でした。
西欧諸国は植民地現地人台頭(・・・人種差別して威張るのが目的ではなく現地生産が始まると市場を失うの)を阻止するために人種の違いを強調し「アジア人は劣っているので何をしてもかなわない」という諦め精神を植え付ける人種差別政策に邁進することになります。
オリンピックも欧米人が身体能力がいかにすぐれているかの宣伝目的で始めたというのが私の偏見です。
フランスなどの西欧文化芸術宣伝もアメリカの好きなミスワールドなども同じです。
日本人はミスワールドなどハナから相手にしていませんし、文化芸術分野でも日本画に始まり独自文化を主張できたので自立できてきました。
販路である植民地で自前の産業育成・挑戦意欲を持たせないよう自信喪失政治をしていたのですが、同族出身者で構成されている北米では人種の優越論理が通じなかったから単なる市場扱い・搾取されるままでは納得しなくなり独立革命が起きたのです。
この支配構造に唯一の穴を開けたのが日本で、その日本が逆に工場生産品の輸出国になってアジアの市場を荒らされるどころかアメリカ市場に逆輸出が始まり、坐視できなくなった始まりが米国の排日差別法の成立であり市場争奪(欧米植民地に輸出させないブロック経済化→決定戦が第二次世界大戦です。
日本軍のシンガポール占領時に目の前で英軍が追い散らされ捕虜になっていくの見たシンガポールのリークアンユー氏が「絶対叶わないと思っていたアジア人が勝てる」と自信を持ったという原体験につながったのです。
戦争でこそ欧米は勝ちましたが、その後現地人の自信回復によって次々と独立運動が始まり戦後秩序が始まります。
日植民地民族もやればできるという自信がうまれた下地の上で、プラザ合意以降の日本叩き→日本企業の韓国台湾〜アジア諸国への工場移転による迂回輸出の成功→中国参入以降の低賃金国の攻勢です。
賃金格差が市品競争力低下になり、市場経済的に修正されていく・賃金の低い方に生産地が動いていくべきですが、市場経済的反映を上記の通り植民地支配により力づくでダムのように堰き止めてきた分、巨大な賃金格差・欧米とアジア・アフリカ諸国との途方もない生活水準・教育格差が生じていたのです。
旧植民地諸国・・低賃金国が生産に参入するとダム決壊による怒涛のごとき低賃金国からの工場製品の流入が始まると先進国(国内生産縮小→低賃金サービス業への転換)労賃がつられて下がらざる得ません。
(賃金平準化作用が終わるまで恒常的デフレ発生です)
世界の工場の地位が中国から東南アジア諸国等へ順次伝播していき、最後は世界の人件費の平準化が始まる・本来人皆平等論でいえば、公平な世界になる動きであると「世界平準化」というテーマで10年ほど前に書いたとおりです。
アメリカは、戦前排日法で日本人を鉄条網の収容所に収容して対日開戦を急いだように、今次の挑戦者中国に牙をむいたところですが、戦前の日本はいじめられているのをアジア人が内心で応援していても力がなかったので孤立したのですが、いまの中国は戦前日本よりはもっと乱暴ですが、その代わり周辺アジア諸国の地位があがっている点が大きな違いです。
話題が逸れましたが、今回のホームレス化の動きは英国産業革命後の囲い込み運動で、小作人を農地から追い出した運動の焼き直しのように見えます。
第二次産業革命?の寵児IT覇者も、世界規模で市場を席巻できる点は19世紀の産業革命と同じとしても、覇権国で新たに生み出すIT関連者数は微々たるものです。
この結果・・富分配に参加できる人はごく少数=格差が広がる宿命です。
IT産業で覇権国になっても、アップルの生産が中国で行われているように世界の工場として大量の中間層を生み出せません。
近代産業革命の恩恵を受ける国と受けない国が国単位(一定の社会規模・結局は民族単位)で分かれていたのが、IT革命では国単位〜民族単位ではなくITに適した能力の有無によって、砂粒的に分化し始めたと言うことでしょう。
今後民族出身地域差→奥深い文化力能力差は問題にならない時代が来ると言えば、現実の目の前の若手弁護士層を見ていると民族精神の精華である文化に関心のない人が増えてきた印象です。
IT化・デジタル化で気がつくことは、・・実務世界ではデジタル的処理能力が目先重要な印象・・これが文化の比重低下=出身民族差が背景に退く時代の予兆を感じるのは私だけでしょうか。
シリコンバレーでの活躍者は噂によれば出身民族差にこだわらないような印象を受けます。
今回は領主様が地域からまとめて小作人を追い出すのではなく、家賃引き上げに対応できない個別の住人をアパートから追い出すので、(地震による液状化現象のように)水が地面から染み出すようにあちこちに滲み出てきた印象です。
これが先端産業で成功している都市に限って一流ホテルやマンション周辺にホームレスが大量発生し群がり住み着いて?いる状況になっている原因と思われます。

為替相場1と輸出産業の変遷1

介護や保育所の増設とそこでの雇用吸収は、一家で見れば共働きのうち一人が失業したときに、それまでかまけていた子供の世話(保育所の増設)や、高齢者の面倒(介護分野の充実)を専属で見られるようになったのと同様です。
ただし、これを収入を失った失業救済という後ろ向きで見るのではなく、別の前向きの見方も可能です。
リーマンショック以降の超円高によっても生き残れる企業にとっては、ドル換算では約1、5倍以上の高収入になった勘定です。
ここで、円相場と国内総生産の関係を見ておきますと2012-1-16日の円相場は1ドル76円79銭ですが、1998年7〜8月には143円70銭台で、2007年ころでも1ドル120円平均でした・・・98年に比べて円は約2倍、2007年比でも約1、5倍に上がっています。
バブル崩壊後失われた20年と言われていますが、国内総生産はこの間高度成長ではなくなっただけで円表示でジリジリと上がっていたことについては、以前から紹介している通りです。
(19日の追加ですが、同日の日経朝刊1面「日本の企業力」の記事の冒頭に「2000年から07年まで日本の名目総生産は13兆円増加した」と書かれています。)
仮に同じとしてもドル表示で言えば98年比で約2倍に、07年比で約1、5倍に総生産が増えていたことになります。
実際、昨年暮れから年初にかけてのデパート等で高額商品が何割増の勢いで売れています。
上記比率は労働人口が同じとした場合の比率ですが、団塊の世代が退職し他方で少子化の影響で若年労働力の新規参入が減ったので労働者の絶対量が減っているばかりか、失業者や非正規雇用が増えているので、残った正規雇用者だけで見れば上記比率以上にかなり生産性が上がっている計算です。
ドル表示が上がっても自分には関係がないと思っている人が多いでしょうが、実は円が上がれば我が国では、輸入物資で生活していることが多いので、直接間接にいろんな分野で物価が値下がりして国民の実生活は豊かになっています。
(マスコミや学者はデフレ脱却を目指しますが、デフレは国民には良いことであることを、以前からこのコラムで書いています)
一家で2人で働いていたときに、その内一人の収入が2倍になれば一人の方が外から稼ぐのを休んで、(2人とも早朝から深夜まで働き詰めで)それまでかまけていた家庭に花を飾ったり整理整頓し祖父母や子供の世話をして生活水準を上げる仕事に就くのは、失業ではなく合理的選択とも言えるでしょう。
豊かになっているのに睡眠時間まで削って2人で目一杯稼いで貯蓄を殖やすばかりでは、さらに円が上がってしまいます。
2倍にまではなっていないまでも5人で働いていた分を4人で働けるとなれば、一人は生活水準向上に振り向けても良い関係です。
高度成長以来の主力産業変遷の歴史を振り返ると、石炭が駄目になってから製鉄や石油コンビナート、造船、建設、繊維〜電機、機械等々次々と出て来る強い業種が大量の雇用吸収産業でもあったので、入れ替わりに淘汰される石炭産業以降いろんな産業がありましたが、衰退産業の底辺労働者を新たに主役になった産業が吸収して日本は低失業率を維持出来ていました。
日本の場合、戦後、繊維や造船〜電気〜自動車といつも大量雇用出来る産業が次々と発達してドンドン黒字を稼いでいたし、生活水準向上に伴うインフラ整備需要拡大に伴う関連職種・・これも底辺労働者の受け皿になっていました。
これらが稼ぐ黒字を前提に(しかも年末・12月30日に書いたように本来輸入すべきものまで補助金や関税で阻止していたので・・)次々と為替相場が切り上がって行きました。
グローバル化以降の約20年間は、それまでとは違って言わば輸出の主力が最終組み立て・大量生産品から、利益率の高い主要・高級部品製造あるいはソフト産業に移っているので、貿易収支の黒字を維持していても、底辺労働の雇用吸収力が弱いのが社会に暗い影を落としている原因です。
人材構成はどこの国でもピラミッド型ですので、底辺の方が数が多いことから高度化すればするほど適応出来ない人の方が、多くなる社会になるのを否定出来ません。
この現実が格差社会発生の原点であり、このテーマの関心で今書いているのですが、もう少し円高について回り道して行きます。
これら利益率の高い高度部品製造・高収益業種では、円高になってもそれほど驚きません。

ジェンダー論4(近代産業と子育て)

明治以降貨幣経済化が進んでも・・明治維新後最初に工業化に成功したのは繊維系工業・・すなわち女工さん主役の働き場でしたから女性が生産活動から阻害されたのではありません。
八幡製鉄所などが大々的に教科書で取り上げられますが、やっと日本で初めての製鉄所が出来たというだけのことで、重工業が輸出産業に(多くの労働者を雇用するように)なったのは戦後大分経ってからのことでした。
東京オリンピックで東洋の魔女として活躍したのは日紡貝塚・・紡績系の女子バレーチームでしたし、輸出産業の主役として日米繊維交渉が問題になったのは漸く昭和40年代中頃・佐藤総理の頃に自主制限が決まったのです。
(日米繊維交渉は1955年から1972年まで・・すなわちピークは1970年代に入ったときでした。)
日米繊維交渉の結果糸偏が輸出産業の主役から退いた後に輸出産業の主役になった電気・電子産業系でしたがその労働者も女性が中心でしたし、今でも半導体その他電子系は女性労働者比率が高いままです。
社会構造が繊維系から自動車製造系(製鉄/造船等)重工業系に大きく変わった昭和40年代後半から、女性の正規職場が大幅に減少して女性の実質的地位がさらに低下したように思われます。
経済大国化して豊かになったこともあって、職域の狭まった女性が専業主婦・女性の失業状態が一般化してしまいました。
(女性の閉塞状態が極限に達して中ピ連が活躍しだしたのもこの頃からです)
他方で、女性の軽工業関連職場が減って来るのに連れて、女性労働の受け皿としてサービス業が増えるようになってパート・非正規雇用が発達し、非正規なので働いていても以前より立場が弱くなりました。
反面これが出産後の職場確保にも繋がり、出産後の永久的失業状態からの抜け出す突破口になって来たのですから歴史の歩みは難しいものです。
「家貧しゅうして孝子あらわる」ともいいますが、貧しけれみんな野口英世みたいになる訳でありませんので、(不良になるのも多い)ので物事を良い方に導くか否かはその人の素質によることになります。
日本の女性は何万年も前から働き者の素質を持っているから良い方に働いたのでしょう。
都市に出た女性は働かなかったのではなく、日本近代化、明治から戦後高度成長の基礎をなす軽工業製品輸出段階までは、女性がその殆どを担ってきたのに地位が低下したのは、出産による退職が原因でした。
労働の場が子育てしながら働ける自宅周辺の農業から遠くへの通勤に変わり、且つ子供を見ながらできる仕事が減ったことが、妊娠後の労働を困難にさせて女性の地位を激変させたことが分ります。
妊娠以降家庭に入る(あるいは早めの結婚退職)しかないこと・・失業することが一般化してから、小鳥に喩える説明が一般化したと(タカダカ80年前後の期間でした)言えるでしょう。
平塚雷鳥の「元始女性は太陽であった」と言う有名なフレーズがありますが、実は太陽でなくなったのは近代産業の発達による賃労働者化後のことに過ぎなかったのです。
(何事も数十年も続くと古代からあるように誤解する傾向があることを繰り返し書いてきました)
女性の地位向上は男女平等の理念の強調さえしていれば成るものではなく、女性の地位低下の原因を探求してその原因を取り除くことが肝要です。
子を産む産まないの自由を主張していた中ピ連のように要求して成るものではありません。
結婚して子を産まねばならないプレッシャーをなくすためには結婚しなくとも生きて行ける状態・・経済力の確保によってのみ、女性に自主的選択権が手に入るのです。
すなわち、子育て中の労働中断期間を短縮化し、またはなくして、貨幣獲得活動が出来る状態にすることこそが女性の地位回復の実体的基礎ですから、労働形態の変化等を利用しつつ育児の社会化を図り労働期間の中断を少しでも少なくすることが肝要です。
ここ数十年来パート・派遣その他短時間労働での貨幣獲得活動へ復帰・・このためには家の近くで働くなどの外に零歳児からの保育所、学童保育などの充実を進めて来たのは、女性の復権(経済力再獲得)のために正しい方向であったと言えます。
また男性の家事・育児参加を求めて行くのも家事・子育てに縛られる女性の負担を軽減し、ひいては貨幣獲得活動時間を増やすためのインフラ整備としての意味があるでしょう。

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