司法権の限界13(人材と身分保障1)

人材採用方法には、面接、紹介、経験その他いろんな方法がありますが、ペーパーテストが一番公平で確率が高いと言われますが、それでも5%前後は箸にも棒にもかからない人物が受かって来る・・その程度の誤差は許容範囲と言われます。
テストを強化すればするほど、テスト問題に特化した勉強をした病的な人(いわゆる受験秀才)が何%か合格するのを防げません。
裁判官採用選考の場合にはペーパーテストだけではなく法科大学院制度が始まるまでは、司法修習中の2年にわたる観察期間がありましたが、それでも修習中の見習いとしての行動だけの判断と独立した裁判官となってからの独自性発揮出来る地位になって「地金」が出て来てからの人間性判断とは違うので一定率の当たり外れがないとは言えません。
民間で言えば、10数年の実績を見た結果で管理職にしてみたら意外に駄目だった人が一定率出て来るのが普通ですから、裁判所とは別の研修機関での研修成績だけで、一般事務官ではなく裁判官と言う生涯の身分を決めてしまうのは無理があります。
管理職としての身分を決めるのが早過ぎる分、民間よりも不適合発生率が多くても不思議ではありません。
法科大学院制度・新司法試験制度になってからは、修習期間が半減し研修所にいる期間が減ったので、人物観察期間がほぼなくなりました。
一旦裁判官として任用されると生涯事務官より格式が上・・身分官僚ですから、能力・・平衡感覚に難があっても管理職以下には出来ません。
仕方なしにドサ廻り・・裁判官が1〜2人しかいない地方の支部廻りになると、年功のある裁判官が支部長になりその支部で独裁的に君臨することになります。
私が修習生の頃には任官さえすれば、最低評価の裁判官でもどこか僻地(と言っても県庁所在地)の地方裁判所長になれる仕組みでした。
大津地裁民事部の裁判官をMarch 12, 2016に紹介したことがありますが、全部で4〜5名しかいませんので、年齢構成的に見ると10年近い平均差のある人で構成されます。
地裁本庁でこの程度ですから支部になると普通は1人か2人しかいません。
支部ばかりの転勤が2〜3回続くと、普通はイヤになって退官(辞職)して行きます・・そう言う予備軍ばかりになります。
私の修習生当時判事、検事の任官希望者が足りずに困っていたので、現役以外から採用すべきだと言う意見に対して,大卒現役〜直後合格者以外の採用をすると「定年まで所長や検事正になれないから」と言う尤もらしい(噓っぽい)説明がされるのが普通でした。
20年くらい前から30歳台半ばの任官がパラパラ出ていますし、全体採用数が増えたので地裁所長や検事正まで行かない定年退職者も一杯出ていると思いますが、その分定年が伸びたこともあり、(人格評価?)最低でも部総括(合議体の裁判長)や支部長等の管理職まで行くのが普通です。
企業の場合テストでは良い成績でも実務をやらせる中で人柄が分ってきますので、上に立つ人、立たせられない人など10〜20年かけて決めて行けます。
今朝の日経新聞朝刊にセブンイレブン社長更迭案の紛糾が出ていますが、コンビニ創業者とも言うべき会長の鈴木敏文氏してみれば、社長をやれる人材として社長に抜擢したが、この7年間やって来たことは全部自分が指示したことばかりで現社長の創意・・リーダーの資質がないと言う憤りがあるようです。
余談ですが、この7年のセブンイレブンの業績伸張は目を見張るばかりでここで解任(正確には任期満了による再任を認めない)にする名目もないと言うことで、大方の反対を受けているらしいですが、外部役員・・識者の判断基準の大方は前例踏襲・・穏便が本旨ですからその辺は思いっ切りのよいことが取り柄の創業者的才能とは相容れません。
裁判官の選考に戻しますと、20代前半の研修時点での選考だけで「裁判官」と言う資格が決まってしまいますので、実務の中で箸にも棒にもかからないような人材と分っても、裁判官から事務官に降格させられません。

憲法
第七十八条  裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。

裁判所法
(身分の保障)
第48条 裁判官は、公の弾劾又は国民の審査に関する法律による場合及び別に法律で定めるところにより心身の故障のために職務を執ることができないと裁判された場合を除いては、その意思に反して、免官、転官、転所、職務の停止又は報酬の減額をされることはない。

上記憲法の身分保障があって、これを受けた裁判所法では解雇どころか意思に反して転勤等を命じることすら出来ないので大変です。
裁判所法の転勤禁止などは、労働者保護を濫用的に成長させて(日教組や総評など)政治運動体にしてしまったのと同様の憲法精神をはみ出した行き過ぎ立法と言うべきでしょう。
ただしこの法律の有無にかかわらず、裁判官に限らず日本社会では一旦採用してから変な人?と分っても解雇しない運用が普通です。
(ただし、この運用は裁判所法で保護されている裁判官(事実上自分の身に置き換えて考えること)による解雇転勤の有効性判断が厳し過ぎることが原因かも知れませんが・・)

司法権の限界12(合法テロ2)

テロ・・違法行為抑止力に戻ります。
テロ行為に失敗しても何の処罰・リスクもないのでは、野球の打撃練習のように成功するまで何回でも違法攻撃を繰り返せます。
旧来型犯罪は未遂・・予備段階、もっと先の準備段階でも物色中に近所の人の目につことが多いのに対して、サイバーテロは当たりを付けている程度では何にも関係ないし、成功するまで隠密裏に何百回でも攻撃を繰り返せることと、一旦侵入成功すると千両箱を担ぐ必要がない・一挙に無限大の巨大情報を窃取出来る・・被害甚大=成功利益が巨大なことが特徴です。
一人で孤独に頑張れば良いので協力者を募る必要がないことも事前発覚リスクを小さくしています。
事後にも一見しただけでは情報がコピーされたか分らないので発覚がもの凄く遅れます。
どんな厳重なカギでも道具や時間をかければ壊せないものはないのですが、その前に発覚するリスクがある(明るいところと暗闇の違い)からこれが抑止力になって実行され難いようにしているだけです。
仮処分による国策妨害運動・・外れて元々の気持ちで原発立地全事件で操業停止の仮処分を仕掛けて行く運動・・「裁判闘争」の場合、失敗リスクがない点が問題です。
裁判官採用では思想差別していませんから国論が3対1あるいは6対4で割れている場合、大方この比率で裁判官の思想信条が分布している筈ですから「裁判官の良心」による判断ではなく、個人の政治信条どおりの裁判をしても良いとすれば、国論に関する民意分布どおりの裁判結果になります。
夫婦別姓・相続のあり方、朝鮮人学校へ学校への補助金、各種儀式での国旗掲揚の可否、ソーラ発電補助金等特定産業に対する補助金の可否、マンション建て替え決議制度導入・飲酒運転処罰加重の是非その他いくらでも賛否の分かれるテーマがあります。
全て憲法違反と言えば言えます。
政治にはいろんな意見があるのが民主主義社会の基本ですが、いろんな意見を戦わせながらその主張を支持する多数を得た方の意見で決着・・国会で議決して国家の意思としては1つにする仕組みです。
折角政治の場で国家意思を1つに集約して一定方向へ動き出しているのに、(飲酒運転過重処罰改正法で言えば)納得しない勢力が司法を利用してあちこちで(仮に3分の1比率の場合3分の1の地域で)効力停止させてしまうと、上級審で統一されるまで,ある裁判所では執行停止、ある裁判所では執行して良いとなって、国家秩序が無茶苦茶になります。
個人だけ関係する事件・・例えば個人間で金を払えと言う裁判では場所ごとに判決がちがってもそんなに影響がないのですが、同じ安全基準で操業している原発に対して,この基準の合理性・危険性を争う裁判をあちこちで起こして、それを直ぐに効力の出る仮処分で決めて行くと、裁判所ごとに内容が矛盾する・あるところでは基準が不合理だから、操業停止しろと言い、ある裁判所では合理的だから守れと言うと、国民(企業)はどちらに従って良いか迷ってしまい国内産業が混乱します。
国民・市民一般に効力が及ぶ対世的効のある事件では、仮処分ではなく高裁→最高裁で統一見解が出るまで効力の出ない本訴で決着つけるべきです。
福岡高裁宮崎支部では今朝、川内原発では基準が合理的であるとして差し止め命令申し立てを棄却しています。
新基準に関しては福井地裁の操業停止命令が異議審で覆り(この間裁判長転勤)川内原発では地裁で却下されて異議も却下されて、今朝高裁で棄却されているのが現状です。
鹿児島地裁決定が昨年4月らしいですから、今朝の高裁決定まで約1年もかかっています。
鹿児島の決定は差し止めを認めなかったのですが、大津地裁は操業禁止してしまっているので高裁で決まるまで1年もかかって仮に高裁で操業を認められても、その間の停止は国家的大損害です。
自分の考えが異端で上級審で破棄されることを仮に知りながら、その間だけでも(数ヶ月でも1年でも意図的に引き延ばす場合?)国家意思を麻痺させる目的で仮処分制度を悪用しているとすれば一種の合法的テロです。
一般的不良品率・・何百人に5%程度は、司法界の正統派意見ではなく、どちらかと言えば誰も相手にしないような変わった意見・・はぐれた?人格破綻的裁判官もいるでしょう。
昔から人材に関してはどんな厳密なテストをしても5%前後の想定外人材が入るのを防げないと言われます。
部品等の場合歩留まり利率が何万分の1に高まっているかも知れませんが、人間の場合複雑なので(日航パイロットの逆噴射事件・・精神異常?がありましたが、採用時点で)数十年先の人格を予め判定しきれません。

司法権の限界10(当たり外れの確率1)

法律界の異端説(支持者の少ない学説や経験則論)で判決を出しても、普通は控訴されてすぐには効力が出ませんが、仮処分の場合直ぐに効力が出てしかもすぐに控訴出来ない仕組みですから、いつかは上級審で是正されるとしてもそれまでの期間だけでも原発をストップさせられることを狙って仮処分申し立てをしするのは、合法的テロ行為の仕掛けと見るべきでしょう。
一般のテロでは目的地に向かう地下鉄などのは予定どおり運行する前提ですが、裁判闘争の場合憲法の命じている「良心や法に従う義務」に裁判官が違反しこの申し立てに同調する裁判官が担当するのを期待するしかない点では、あなた任せ的要素があります・・。
何かのテロを仕掛ける場合・赤穂浪士の討ち入りで言えば吉良邸の絵図面を入手したり、襲撃予定時に不在かどうかなどの動きを探る・・内通者確保するのが常道です。
高度に政治的な事件を提起するには、前もってこれから訴え提起する裁判所にどう言う政治傾向の裁判官がいるかを調べてから提起するようになればどうなるでしょうか?
裁判官は転勤があり訴え提起後の転勤もあり得るので、うまい具合に司法の限界を弁えないで個人的意見を判決や決定をする裁判官・・しかも野党系の意見に同調している裁判官にうまくあたるとは限りませんが、・これに期待を掛けて政治の負け(民意に反する意見を通すために)を挽回するために訴訟を仕掛けているとすれば、政治運動としてはあり得ることですが、法律家としては邪道です。
申立人側がそのつもりで意図的に仮処分を利用するのは民間ですので(役人が袖の下を受け取ってくれるかの期待で接待するのと同様で)ある程度気持ちが分りますが、担当裁判官がこれに呼応して「裁判官の良心」に反して自己の原発反対や選挙無効・自衛隊違憲などの政治意思・・主観的意見で判断をしたいことを隠して、(仮処分でやるべき緊急性がない・・本案判決手続で良いにもかかわらず、一定期間上訴させないために敢えて)仮処分手続を認める(一般的経験則で認定すれば根拠なく緊急性を認定する)となれば世も末・・裁判制度の破壊です。
個人の政治意見を通したいならば官を辞して自由な立場で運動するべきです。
3月23日ころ発生のベルギーのテロが大騒ぎですが、地下鉄の運行停止は数日のことで済みますが仮処分・・「合法テロ」の場合、もしかすると(途中裁判官交代がない限り)長期間原発停止の可能性がある点で社会被害的には爆弾テロよりも被害甚大です。
自衛隊に対する緊急出動命令が出たときに、憲法違反を理由にどこか僻地の裁判所で(憲法違反を理由とする)出動停止命令執行停止仮処分あるいは基地使用禁止命令が出た場合を考えれば分りますが、この仮処分の結果緊急事態にも関わらず、自衛隊が1〜2年出動出来ないとなれば国防が麻痺します。
テロリストが出動する自衛隊の1〜2台の車両に爆発物を仕掛けて出動妨害したり空港に爆発物を仕掛けて自衛隊機の発着妨害や携帯型対空砲で狙撃するよりも効果が大きいことが明らかです。
「テロ」とは何を目的にするものか?ですが、人命被害ばかりが大きく報道されますが殺傷行為がテロ本来の目的ではなく、その結果起きる交通秩序遮断・妨害→流通阻害・・国力低下が主要目的です。
戦争での爆撃目標を見れば分りますが、最優先目標は敵の反撃拠点たる軍事基地ですがこれがおわって、社会一般に対する攻撃目標段階で見ると第1に港湾や橋、駅など交通の結節点、次に道路や鉄道網そのもの、あるいは大勢の集まる大きな施設が目標になるのが普通です。
これらを見ると、有機的結合体としての社会が最初に困るのが流通が滞ることであることが分ります。
動物の闘争で言えば、血管損傷が致命傷になるのと同じです。
テロ組織が小さいときには流通網自体を破壊する能力がないので、多くの人が集まるところで人命損傷すれば怖がって人が集まらなくなる=直接的には数日間閉鎖される程度のささやかな目標です。
これが繰り返される恐怖・不安を抱かせることで、外出者が仮に1割減ればその地域の物流組織1割破壊したのと同じ効果・・産業活発化に大きな影響が出て来ます。
エジプトやパリの観光客が減ったのはその効果が現れたものです。
原発操業禁止命令・・国の枢要産業を仮処分制度を使って長期間麻痺させるのは社会秩序破壊する目的=テロ目的としてはもの凄い威力があります。
ただし、大津地裁の決定をそうだと書いているのではなくもしもそう言う意図であれば大変なことになると書いているだけです。

司法権の限界9(法と良心とは?1)

テロとは国家秩序を短時間でも矛盾混乱させるのが目的ですが、たった1つの裁判所でも勝てば今回の仮処分のように全国的影響がある・・大逆転のチャンスがあるので「司法闘争」が合法的テロを仕掛けるような役割を果たしています。
テロとは国家秩序を短時間でも矛盾混乱させるのが本質的目的ですが、たった1つの裁判所でも勝てば今回の仮処分のように全国的影響がある・・大逆転のチャンスがあるので「司法闘争」が合法的テロを仕掛けるような役割を果たしています。
政治で既に負けているので、裁判で負けて元々・・40回に1〜2回でも勝てば儲けモノ的訴訟が増えます。
ちなみに脱原発弁護団全国会議(全国脱原発訴訟一覧2016年3月15日現在)によれば、現在の原発訴訟の数は以下のとおりです。
表が大き過ぎてコピペしきれません(何日分のコラムになってしまいます)ので要約しますと、(青字のみ現在係争中とのことです)全体で41事件あって青字の部分は29件です。(数え間違いがあるかも知れませんが大方こんなものです)
都道府県の数からすれば、原発・関連施設のあるところ殆ど全てで裁判していることが分ります。
裁判官が自己の政治信条によって判断することが許されると地域ごとに変わった判決・・千葉と埼玉では同じ国政選挙が有効だったり無効だったりする矛盾した国家意思になってしまいます。
こうなると裁判官が個人的政治信条に従った裁判をして良いか・・政治に介入することが許されるかの議論の重要性が分るでしょう。
公務員の中立性の要請もその基礎は同じです。
ここで裁判官に求められている判断基準が何かが重要になってきます。
この後で書くつもりでしたがここでちょっと書いておきますと、裁判官は「法・憲法と良心のみに拘束される」のが近代法の原理ですが、主観的政治信条に(忠実に?)従った裁判をするのは「法と良心」に関するはき違えです。

憲法
第七十六条  すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
○2  特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
○3  すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。

個人の主観的信条を裁判官の「良心」とは言いません・主観的意見とはちがっていても確定判例や通説に従うのが「法や良心」に従うことです。
ただしこのままでは判例変更出来ませんから、従来の判例通説が間違っている・・社会実態の変化にあっていないので改正すべきだとの確信があれば、堂々と新判例を出して上級審の判定を待ち、最高裁の場合判例評論等の批判に委ねるべきです。
例えば特定宗教に凝っていても共産主義を信奉していても裁判官になるのは自由ですが、その教義や主義に従って憲法を無視してたとえばイスラム法に従った判決や決定・・喩えば、不貞行為の主張に対してイスラム法を引いて「男は何人妻を持っても良い」と言う判決をすることは許されません。
自分の意見は司法界の通説判例(あるいは、司法界で通用している経験則)に反していて上級審ではすぐに否定されると分っていながら敢えて主観的意見による判決や決定を出すのは(裁判官が知っている法解釈に反した行為ですから)「裁判官の良心や法に従った」判断ではありません。
本来の訴訟による判決の場合不服のある場合には、すぐに控訴出来てその場合1審判決の執行力もありませんが、仮処分の場合異議申し立てしか出来ず直ぐに控訴出来ない仕組みですから、この仕組みを悪用すれば、申立人の意見が政治意見に共鳴する裁判官にあたって主張が偶然通るとしてもそれは異端説・・一般的解釈に反していることを見越しての訴訟提起です。
上級審では直ぐにも覆ることを知っていながら申し立てする場合、申立人は、本来本案訴訟でやるべき事件をすぐに上級審に移行出来ないように敢えて仮処分制度を悪用?することも可能です。

司法権の限界8(政治と場外乱闘2)

法制度外の超法規的テロに戻しますと、アラブ世界で吹き荒れるテロやゲリラは、欧米の何世紀にもわたる不当な圧迫に対する不満を根底にしていることが明らかです。
民族・階級別社会化がある場合、一見合法的選挙があっても実質的代表になっていない場合などで、合法的に弱者が圧迫されている場合があります。
アメリカで言えば、選挙では修正が利かない・・金融資本による支配=格差拡大・・選挙に巨額コストがかかって結果的にそうなって行くことに対する不満が蓄積されています・・これがウオール街を占拠せよとか、トランプ旋風になっているのは健全な姿と思われます。
アメリカの場合、選挙でうっぷんを晴らすチャンスがあってガス抜きになり、結果としてガス抜きに留まらず民意回復力・格差拡大を止められれば、暴動を起こす必要がないことになります。
トランプさんは支離滅裂に過激な言い回しで国民のストレス発散のために煽動しているだけのように見えるので、政権をとっても結局はヒットラーのように煽動の繰り返しになるリスクがあります。
煽動政策はA標的に対するボコボコにして一段落すると次にもっと大きなB標的〜C~Dへと次々と大型化するしかないので、その内抵抗出来ない程度の外国にイチャモン(トランプ氏の選挙戦でのスタイルだとイチャモンにならないような無茶苦茶な理由で戦争を仕掛けて来るでしょう)つけては戦争を吹っかけるようになります。
金融資本家に対する敵意=ナチスのユダヤ人に対する敵意と同根ですが、煽動政治になるのが怖くて、(金融資本家のみならず)みんなが怯えているのかも知れません。
4月3日日経新聞23pの右下には、「アメリカの排日運動と日米関係」という題名でアメリカ国内の政争(共和党の分裂と汚職追及のとばっちりで排日移民法が成立)があってその妥協の産物として排日法案が可決され、一気に反日の方に燃え広がって行ったことが克明に研究している蓑原俊洋氏の著作が紹介されています。
実際に金融資本家を追放するとアメリカが持たないので、その矛盾ストレスのやり場に困ると対外スケープゴート探しに向かうのは日米開戦の原因あるいはナチスの経験でも明らかです。
金融資本家の跳梁跋扈を制禦するのが難しいのは分りますが、だからと言って短絡的にストレスの赴くままに煽動にのって選挙するアメリカの風潮は危険です。
金融資本家の跳梁跋扈を制禦するのが難しいのは分りますが、だからと言って短絡的にストレスの赴くままに煽動にのって選挙するのは危険です。
上記のように結果的・実質的不正があるかどうかによりますが、こうした不正がない民主国家において正々堂々の選挙で・・スポーツで言えば試合で負けた場合、政治決着するべきルールのない別の世界・・相撲やプロレス、ボクシングで言われる「場外乱闘」で意思を通すために、賄賂や強迫(民主国家におけるテロもその一種です)、買収で政治を歪めるのはルール違反で許されません。
「江戸のかたきを長崎で」と言うセリフがありますが、政治で負けたことを、別のルール・・野球の勝敗やカルタや決闘で最終的に決めようと言うのがおかしいことは誰でも分るでしょう。
政治で負けた方が、司法手続に持ち込むのは一見合法的装いですが、政治の世界で決まった勝敗を認めないで「別のルールでもう一度」と言う点では「どちらがバイオリンがうまいか賄賂競争はどちらが得意かで政治決定を変更するかどうかを決めよう」と言うのと大差ありません。
政治の勝敗の場合全国的勝敗・・特定主張する政党が1〜2選挙区で勝った程度では国家意思にはなりません。
共産党が勝っている場合もありますし(小選挙区はないのかな?)民主党も全投票の何10%前後の支持を受けています。
総合して多数派になれない場合負けたと評価されますが、司法の場に(裁判官の政治思想が)上記割合で分布しているとした場合を考えましょう。
全国各地に原発反対・安保法反対訴訟を出した場合、そのときの担当裁判官の政治信条次第で裁判出来るとすれば、民主党支持の裁判官だけでも何十%の勝訴率になりますし、国論が6対4の場合4割の勝訴率になります。
裁判が全て最高裁に行ってから初めて効力が出るならば政治信条の比率どおりに各地でいろんな判決や決定が出ても最後は国民多数の意見に国家意思が統一するので混乱しません。
仮処分決定のように上級審に行く前に効力が出てしまうと仮に数%の少数意見による決定でもその間は国家意思としての強制力があるので、最高裁で統一見解が出るまでにはあちこちで矛盾した決定(国家意思が精神分裂になった状態)が乱立してそれぞれが強制出来るので大混乱になります。
例えば福井地裁で続行決定を求めて認められた場合(福井も大津も積極的に続行を求める裁判が出ていません)大津地裁の禁止決定と並立した場合どちらに従うのか?
※諫早訴訟では菅総理が最高裁で負けそうだと分ると意図的に矛盾判決を確定させてしまう荒技を紹介しましたが、開門を求める裁判と開門禁止を求める双方の裁判が双方認められた矛盾状態で確定した結果、開門してもしなくともそれぞれに1日いくらの損害金を払えと言う矛盾状態で国はどちらに従ってもお金を払い続けるしかない変な状態ですが、これは意図的に国家意思を矛盾状態にした例です。

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