中国のバブル崩壊17(庶民参加と我が国年金運用の違い)

年金積立金管理運用独立行政法人http://www.gpif.go.jp/operation/archive.htmlの「前年度末の運用状況ハイライト」によると以下のとおり10兆円もの収益を上げています。
平成25年度業務概況書

     収益率:     8.64%
     収益額:     10兆2,207億円
     運用資産額:   126兆5,771億円

0%台の国債ばかりで運用していたのでは、年金財政が赤字になる訳です。
積立金の一部の積極運用だけで(全部ではありません)10兆円も収益が上がっているとすれば、消費税増税論の大義?が吹っ飛んでしまうでしょう。
ちなみに3%増税による増収見込額は(政府答弁)以下のとおり約5兆円でその内社会保障に回るのは約5000億円その内年金に回るのは?と言う状態です。
内閣衆質一八六第一〇一号
  平成二十六年四月八日
内閣総理大臣 安倍晋三

       衆議院議長 伊吹文明 殿
衆議院議員山井和則君提出社会保障の充実のための消費税増税による増収分の使い道に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
「衆議院議員山井和則君提出社会保障の充実のための消費税増税による増収分の使い道に関する質問に対する答弁書
一について
 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(平成二十四年法律第六十八号)及び社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律(平成二十四年法律第六十九号)(以下「税制抜本改革法」という。)の規定により、消費税率を地方消費税率と合わせて五パーセントから八パーセントへ引き上げることによる平成二十六年度予算における増収見込額(以下「増収見込額」という。)は、五兆四十六億円である。
二について
 増収見込額のうち、社会保障の充実に向けられる金額は約四千九百六十二億円であり、その割合は約九・九パーセントである。」

これが増税による景気悪化でそのとおりの増収になっていないことは周知のとおりです。
年金運用に戻りますと、年金積立金管理運用独立行政法人の資産構成状は以下のとおりです。

「運用資産額・構成割合(13ページ参照) 平成25年度末の運用資産額は、126兆5,771億円となりました。
平成25年度末
時価総額(億円) 構成割合 国内

    国内債券     55.43
 国内株式    16、47%
    外国債券     11.06%
  外国株式       15.59%
     短期資産      1.46%

資産構成の状況は上記のとおりで、国内株式の比率は、僅か16%台であり、(国債などと平均すると運用成績は8%台でしかないこと分ります)外国株式取得と大差ありませんから、国内株式相場下支えのため・・官製相場と言う批判はあたらないでしょう。
相場制の高いもので運用をすれば損失もありますが、年金資金の有価証券比率を上げる決定をしたときには、上記のとおり当面上昇局面であったことはまぎれもない事実です。
中国の場合、実体経済が上昇局面にはなく、マイナスのスパイラルに入っていてプロ投資家が我先に逃げようとしている局面です。
国内情報統制を利用して底なしの下降局面にある実態を知らせないで、(中国の夢想的な栄華を誇って)庶民を煽って、景気底割れの下支えのために庶民を参入させて庶民に高値づかみをさせようとしているところが異常です。
13日の日経新聞朝刊第一面には中国の経済状況が大きく出ています。
7%成長を少し下回ったが、まだ高い成長率と書いていますが、その中身を見ると、三月のセメント生産量は前年比2割減、建機大手の利益は前年比96%減、2位?の中聯重科は赤字と書いていて、上海先物市場の銅価格は11年ピーク時の4割安の価格になっている外に各種の卸売物価は三年連続前年割れが続いていると書いています。
これを合理的に読めば、7%弱の成長に下がっているが日本や世界の国々に比較すれば「なお高度成長だ」と言う正面の意見とは矛盾することが明らかです・・。
政府統計とは別に各種業界のマイナスぶりを見れば、数年前からマイナス成長だったと見るのが普通でしょう。
しかも同紙9ページには、中国に大量生産能力を持つGMが1台あたり平均100万円の値引きを発表して値引き競走に突入と大きく出ています。
数日前に紹介したように生産能力の半分しか需要がない・・2500万台の過剰生産力で自動車業界が苦しんでいる状況が、遂に表面化した様子です。
大手マスコミとしては中国政府発表の7%弱の成長が噓だとは書けないので、(うっかり書くと中国国内での記者証が剥奪されてしまう・・韓国の産經新聞記者のように何らかの容疑で逮捕されるとか?と言うことでしょうか?)記事内容でその矛盾を書いて読者に知ってもらおうとしているのでしょう。

中国のバブル崩壊16と庶民の株売買参加1

昨日紹介したように不動産バブルは不動産を買えるほど資金力・信用が必要でしたが、株式は(日本円で言えば)数万円からでも参加出来ると言って、何億の人民参加を煽っているらしいのです。
投機好きの中国人ですから、政府お墨付きの宣伝に一〇数億人民皆これに熱狂している・・「株未亡人」と言う流行語が生まれているようです・・外国人は政府宣伝など相手にしていない・・経済の実力を見ていますので、この機会にドンドン売り逃げするでしょうから、庶民から資金を吸い上げ終わったら株は下がるしかない・・大暴落が待っているでしょう。
庶民大衆までナケナシの資金をなくしてしまってから、バブル大崩壊・不景気・・大量失業が来ると庶民はどうなるのでしょうか?
備蓄米まで供出させて輸出してから飢饉が来たようなものです。
外貨準備世界一の宣伝は実質を伴っていないと言うのが私の憶測・持論ですが、外資の海外流出を防ぐために株高を演出すると同時に庶民から企業救済のための資金を吸い上げようという政府秀才の考え出した一石二鳥?の奇策・魂胆でしょう。
明治政府が全国通津浦々に郵便局を開設し、貯金制度を創設して庶民から資金を集めて近代化資金に充てたのと外形は似ていますが、中国の場合バブル崩壊の穴埋めに使ってしまおうとする・・「焼け石に水」の使い方ですから、目的が違い過ぎて庶民が可哀相過ぎます。
中国は不動産バブル・鉄鋼・クルマ・就職先の当てもない700万人の大卒輩出など何もかも過大投資の付けが次々と破裂している状態・・各種産業が次々と瀕死の状態に陥りつつある・・社会全体が奈落の底に近づいていると言うのに、何故株式だけが上がるか・・上げようとするか?
我が国の場合も年金資金運用比率・株式保有割合を上げたことから、何でも批判したいマスコミによる「官製相場」だと言う批判もありましたが、実態に合わないのでいつの間にかこの種の意見は減ってきました・・この種の論者は中国の株式投機への庶民誘導こそ批判すべきではないでしょうか?
年金も庶民から集めたお金ですから、出所は同じとも言えます。
日本の場合、超金融緩和によって円安が進み海外資産の評価益や海外売り上げが莫大になったことによって、多くの企業が最高益続出状態ですから、株価上昇の地合が前提です。
年金資金をつぎ込んで株が上がったのではなく、外資の買越額上昇等によって上昇中の相場に年金が便乗している・・その結果年金資金の積み増しが出来て潤っているのが実態ではないでしょうか?
社会保障分や赤字解消のために消費税を上げて景気を悪くして、(昨年増税後顕著に各種売り上げが落ち込みました)給与等の収入を減らして年金や保険料納付金を減らしたり、積立金の評価損(景気が悪くなると株式等の評価損が出ます)を出すよりは、景気を良くして給与アップ=納付金が増やして保有有価証券類の評価益も出ます・・年金財政を黒字化する方が良いと言う論説が出ています。
消費税増税推進が良いと言う立場で、年金資金の有価証券評価益が出ると困る立場・・気に入らない勢力が中心になって、年金資金の有価証券運用を批判しているようです。
ちなみに2013年1年間の外資買い越しのデータは以下のとおりです。

2014/01/14 17:24 JST
 「1月14日(ブルームバーグ):2013年の日本株市場で、海外投資家の買越額が年間で15兆円を超え、過去最大に膨らんだ。金融緩和を背景にした欧米株高で投資余力が増したほか、アベノミクスによる日本の景気、企業業績の先行き期待も海外勢の買いにつながった。」

14年のデータがネットに出て来ないので、(14年分統計はこれから出るのかな?)分り難いですが、(ニュースにならないということは)海外資金の流入が一服しているのかも知れません。
外資流入は程々で良いのであって韓国のように外資に占拠されているのでは、植民地支配を受けているのと同じなってしまいますから、国債や日本企業の株式を外資にそんなに買って貰う必要がないと考えていることはいつも書いているとおりです。
ルノーに買収された日産の行動様式とトヨタの行動様式の違いを見ればすぐに分ることです。
折角の株価上昇局面に年金資金が指をくわえていないで、仲間入りして儲けること自体は良いことです。
日本政府は年金資金を投入して株価下落の下支えして、年金資金を消失させようとしているのではありません・・むしろ資産価値を増やす目的でやっていることです。
安倍政権直前のニッケ平均が8000円台だったのに対して今は2万円前後ですから、仮に80兆円投入していれば200兆円になっている勘定です。

中国のバブル崩壊15(他産業への転嫁1)

この後で先送りになっているコラムで貿易黒字と出血輸出の関係(国民を餓死させてまで行なったスターリンの穀物輸出など)を書きますが、採算価格の半値=赤字で売っても、輸入原材料・鉄鉱石価格等をうわ回ってさえいれば貿易収支としては黒字になります。
500億円で輸入した原料に付加価値をつけて1000億円で売った場合500億円の貿易黒字ですが、この付加価値をつけるのに国内で700億円のコストを投入していると200億円分実質赤字です。
この200億円は製造に従事した人件費や納入業者に払えないだけですから、国威発揚には響きません・・倒産・夜逃げされて踏み倒される国民が泣きを見る仕組みです。
表向きGDPを押し上げる・・国威発揚のために需要を無視した行け行けドンドンのやり方は、就職先のない大卒の大量化政策も同根です。
現在年間大卒が700万人位とも言われていて、その35%が就職先がなくて「アリ族」と割れる悲惨な状態になっていることをMay 3, 2014「日中の制裁合戦4(バブル崩壊1)」に書きました。
不動産バブル崩壊を先延ばしするために、次々と新たな業種を選別して?需要無視の大増産を繰り返して来た(これは独裁政権・国有企業中心だからこそ出来ることです)結果が、自動車産業に行き着いたようです。
今朝の日経新聞朝刊第一面には、4月の乗用車を含むクルマ販売が0.何%マイナスになっていて、景気の先行指標である商用車(トラック等は産業界全般的景気・・実需動向に左右されます)は実に17、6%減となっている・・この部分は目立たないように記事の中でこっそりと書いていますが、これが重要です・・と報道されています。
産業界では17.6%の比率で半年〜1年前からマイナス成長になっていることが明らかですが、中国政府発表どおりに日本マスコミは7%弱の経済成長しているとはやし立て続けています。
建設等需要が減って製鉄量が減ると運送需要減→トラック等販売減少となるので、実は商用車需要減は実体経済に1年くらい遅れますが、消費者・従業員は製鉄量等が減っても製鉄会社従業員給与が(非正規は減るでしょうが・・・)正規社員はイキナリ下がらないし、(以下に書く株相場のようにもうすぐアメリカを追い越すなどと言う)政府・マスコミの煽りに乗せられ易い傾向があるので、乗用車販売減少率等消費支出減少になるのはかなり遅れるのが普通です。
上記のようにクルマの増産を煽るのも限界になって来たので、不景気打開のための金融緩和をするしかない→株式相場が上がると人民日報が積極的に奨励し煽っている様子が勝又壽良氏の「経済時評」2015-05-06「中国、人民日報推奨の株式投機「株未亡人登場」する爛熟相場」のテーマで報じられています。
文章の一部を引用します
「中国では明らかに、ちぐはぐなことが起こっている。住宅投機が失敗した後、投機マネーは株式市場へ向かっているからだ。肝心の企業収益は悪化しており、格付けが相次いで引き下げられるほどである。折角の金融緩和でも、金利引き下げの恩典と無縁である。それが、中国企業の実態である。
政府系メディアは、こともあろうに株式投資推奨記事を掲載している。満足に小学校も卒業していない人々が、一攫千金を夢見て株式市場へ群がっているのだ。この情景は、「爛熟相場」と言っておかしくない。中国経済は株式投機に失敗すれば、もはや「その後」がない崖っぷちに立つ。その認識もない政府系メディアは、いったい何を考えているのか。」
「しかも悪いことには、政府系メディアが株式投資を煽っていることだ。「個人投資家の間では、『勝ちたければ人民日報を読め』が合言葉。政府系メディアが論じる通りに株式を売買すれば、外れはないと信じられている。昨年9月、新華社は連日で株高の必要性を訴える記事を掲載。中国本土市場はその約2カ月後に、本格的な上昇相場に入った。『構造改革が進むなか、政府は株式相場による景気の下支え効果を重視している』という見方があるほどだ」(『日本経済新聞』4月22日付け)。」
「住宅バブル崩壊をカムフラージュするべく、中国政府は株価を煽っている。私には、そうとしか読めないのだ。肝心要の企業業績は下降に向かっている。株価上昇の背景には唯一、金融緩和期待しかない。だが、バブル経済崩壊という歴史的な事件のなかで、金融緩和が企業業績の回復に資するのか。そう考えるのは、余りにも無謀である。」

実際5月11日紹介したように産業界の期待・悲鳴に応えて金利引き下げが続いています。
バブル崩壊が近いから、政府が放置出来ずに金融緩和するから、株が上がると言う政府系宣伝もおかしなものですが、(金利引き下げによる外資流出を阻止する目的でしょうが・・)最後の大相場を期待して貧困農民までが殺到していると言うのですから驚きです。

中国のバブル崩壊14

政治の世界で言えば、民意を無視出来る独裁制の場合急激な変化でポッキリ折れるのと同じで、民主制の利点はコマメに民意を反映出来る点にあることをJuly 14, 2013〜「民意に基づく政治4(大統領制と議院内閣制3)」July 16, 2013等で以前書きました。
韓国等の任期制大統領制は、選任するときだけ民意反映ですから、(任期中は民意を反映しなくても政権が保障されているので、その分退任時に不満が大きくなっていることも書きました。
(韓国の総理は朴大統領就任後すでに5人目の引責?辞任になっていますが、大統領の地位は法的に保障されていることを2015-5-1「覇道支配の終焉2」で書きました)
中韓は後発新興国のように金利引き揚げまでは必要がない・・それなりに体力があるので、金利を下げることが出来ていますが、日米のように思い切ったゼロ金利にするには体力的に無理があることが分ります。
日本の巨額スワップ保障を利用して格安為替操作して来たと推測されますが、日本の後ろ盾がなくなって今は出来なくなったのです。
中国の場合バブル崩壊で大変な状態になっているのに、5月8日に紹介したように中央銀行金利では5.35%もの高利(銀行金利になるとそのまた何%も上です)でしか借りられない状態です。
タマタマ今朝の日経朝刊第1面と7ページでは、不景気の進行に中国が堪らず?昨年11月から三回目の金利引き下げ決定したと報道されています。
マスコミは中国贔屓ですから、景気下降を止めるためとは言わずに(高度成長から)「安定成長へ決意」したと大見出しです。
一般的に安定成長路線へ舵を切ったと言えば、高度成長・・景気過熱を引き締める場合に使う用語ではないでしょうか?
実質は(本当はバブル退治のために金融気締めが必要なのに)景気底割れしそうでどうにもならないので、これを防いで何とか「安定成長期待へ」と言うべき内容ですから、噓ではありませんがこう言う小細工をするのが日本マスコミです。
今朝の日経朝刊によると、日本の公定歩合・基準金利にあたる金利を0.25%さげて5.1%、日銀預け入れ金利にあたる準備金金利が2.25です。
中国のバブルの規模・深さは先送りし続けて来た分に比例して半端はありません。
しかし引き締めするのが怖くて未だに公定歩合が5%台と言うのですから市中銀行の貸し出し金利の高さが想像がつくと思います。
公式統計に出ませんが、実際にはインフレ亢進中・だから国際競争力を無視した大幅賃上げも進むのでしょうが、ブラジル同様に大変な事態がじわじわと進行していることが分ります。
5月6日の日経新聞朝刊第1面には中国の自動車市場では、5000万台の製造能力があって、2500万台分も過剰設備・・5割しか操業出来ない状態で、値引き競争激化が紹介されています。
不動産バブルは2年ほど前に実際には崩壊していると言われていましたが、これによる景気底割れを防ぐために2戸目のマンション購入を認めるようにしたり(投機目的購入を政府が奨励するのですから、政府の矜持・理念も何もあったものはありません)需要のない鉄道建設に邁進して世界一の線路延長を自慢していましたが、(マスコミは中国の困った事情を一切報道しませんが)ネット報道では空席だらけの中国版高速鉄道が走っていると言われています。
こんな無理は、いくら民意無関係の独裁制でも長く続く訳がありません。
粗鋼生産量が国力基準になると知ると、需要無視して大規模な高炉建設を続けて採算割れ・野積みされた鉄鋼品を海外輸出をして世界価格を暴落させていました。
5月8日の日経新聞朝刊7ページには採算度外視の鉄鋼製品がアメリカに輸出されていて、アメリカ業界が困っている状態が報道されていました・・。
14年には13年比38%も輸入が増えたこと、主に中国からの安値鋼板が輸入されているために国内価格が13年に比べて14年には3割も下がってることなどが報じられています。
中国のバブル崩壊に関しては、May 16, 2014「中国のバブル崩壊14と虚偽宣伝の破綻6」まで連載しましたので、今回はそのその続きになります。
石化製品その他いろんな分野で需要無視の設備投資しては、赤字輸出で価格破壊をしていました。

主要国の金利差と国力差

明日以降になりますが、主要国の金利差を比較すれば体力のある順に金利が低いこと・・弱い国が強い国よりも金利を低く出来ないことが分りますし、経済実態で世界でどこが信用されているかも分ります。
(この種の意見はApril 24, 2013「外貨準備の内実1(中韓政策金利の推移)」で書いていますが、今回は主要国とブラジルを含めた具体的金利差を見ておきましょう。
日本が世界で最低金利水準を長く続けていますが、これが出来るのは基礎体力が世界で一番強いことの現れです。
財政赤字と世界の信用とは関係がないことを繰り返し書いてきました。
日本が金利をアメリカよりも高くすれば、アメリカは更に引き上げるしかない・・アメリカは国内経済だけ見て金利を自由に決めることが出来ない状態・・言わば金利決定権を日本が握っている状態です。
日本はこういうことを自慢しないで、逆にアメリカの動向を見ないと日本は引き上げることすら出来ないと言う逆の意見になります。
マスコミはアメリカ国内雇用水準だけで金融緩和をやめるかどうかをアメリカが決めるかのような報道が中心・・日本金利との比較を全く書きません。
アベノミクス以来日本の円安が進んでいて、アメリカ企業の輸出競争力阻害が話題に上っているにも拘らず、アメリカがこれにケチをつけない点をいぶかしむ論説が多く見られます。
これを政治に結びつけて国際政治情勢による日米蜜月しかないから日本叩き出来ないと言うのが普通の発想ですが、政治状況はそのとおりですが、政治は実体経済を無視してはホンの短期間しか成り立ちません。
日本の円安は低金利によるところが大きい・・即ち日本の低金利政策をやめさせるにはアメリカも金利を上げる体力がない限り、日本に金利引き上げ強制出来ない点にあると見るべきです。
経済論理上ではそうなるしかない・・円高強制出来ないとすれば、ゲリラ的に1兆円規模の罰金をとったり数年前のトヨタ標的騒動や・・昨年来のエアバッグ騒動のような個別パッシングを繰り返して日本企業に大損させるしかないかもしれません。
江戸時代に商人からの徴税方法がなかったことから、時々豪商の取り潰しや冥加金徴収によって、幕府が大金をせしめていたのと同じやり方です。
早くからスポーツ分野では日本選手が圧倒的に強くなると競技ルールを変えることが目立っていましたが・・・・アメリカは自分の定立した自由貿易競争に負けるようになると腕力にもの言わせて、日米繊維交渉等に始まって、業界別に無茶な要求をして次々と半導体など日本の世界独走業種を潰してきました。
個別業種潰しがうまく行かなくなるとプラザ合意以来円高強制で根こそぎ日本の競争力を奪って来たのですが、世界情勢変化で日本を敵視ししていられなくなったことと、国力比の関係で自国より日本金利が高くなると困るので、金利安=円安政策を許容するしかなくなりました。
こうなると再び通商法の出番ですが、これも上記のとおり、国際政治力学上日本を標的にすることは不可能ですから、出来ることは中東諸国並みのゲリラ・テロ行為しかありません。
中東諸国では政府自身がアメリカの価値で法を作っているので、その国の法でもテロは違法ですが、アメリカの場合なお世界1の強国ですから自分勝手な法律を作ってセカイに守らせる力を持っています。
(これをこのコラムでは覇道支配と書いています)
スーパー通商法と言う法律を作ったり、何兆円払えと言う無茶苦茶な裁判をして嫌がらせをするのは、一種のテロ・暴動・略奪ですがアメリカ国内では合法として守られていますし、どこの国も抗えません。
現在も武田薬品が大型裁判をされていて薬害の根拠がないが、長期の訴訟費用負担に耐えられず何千億円の和解をすることになった・・この結果損失引当金の必要→赤字決算になると言う報道です。
後進国・・経済競争で負けている国では自国産業保護のためには、(4〜5十年以上前の記憶ですが・・)インドネシアの例で言えば、時々反華僑暴動・焼き討ちなど起こすしかありませんでした。
中国で官製の反日暴動が発生したのは記憶に新しいところですが、これに対する世界批判に懲りた中国では、昨年来方針を変えて特定セカイ企業のブラック性を集中報道したり、(アップルを手はじめに次々です)あるいは独占禁止法違反や贈収賄疑惑の取り調べなどして結果的にその企業に大打撃を与える手法・・アメリカ式に変化してきました。
アメリカは自分がやっている方法ですから、これに文句を言えません。
今でもアメリカあるいは中国に進出している限り(政府やマスコミのバックを受けて)標的にされる企業は千億円単位の損害リスクにいつも備えておく必要がありますが、TPPが成立するとアメリカ式巨額賠償請求をされても参加国が今のように陰で「酷い社会だ」とは言えなくなる「これで良いと約束したでしょう」となる点・・お墨付きを与える点が大きな違いになります。
それどころか、今まではアメリカで商売さえしていなければアメリカで訴えられる心配がなかったのですが、(中国がイヤなら行かなければ良いと言うのと同じです)TPPが発効すると日本国内での行為でもアメリカ企業が損をしたとアメリカで裁判出来るのですから(取り決め交渉中すから実際に合意内容がどうなるかはまだ決まっていません)、無茶苦茶裁判→略奪される対象がもの凄く広がります。

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