USA=領土拡張の歴史2

米国の州には自治権があり軍隊まで持っていると聞くとすごい様に思いますが、日本だって各大名家・藩が軍隊を擁していたのですが、明治維新後無駄だからヤメたのに対して米国の場合は、独立後連合政府ができた以上は、無駄なのにまだ持っているのは民族統一政府ではなく軍事同盟関係の本質を脱却できないからでしょう。
トランプ政権が同盟国に対等な負担を求めて来るようになりましたが、United States=軍事同盟である以上は、軍事協力義務が必須という理屈によるものです・・だから今だに州兵を廃止できないのではないでしょうか?
米国政府首脳、大統領や議会を州の代表でなく直接選挙で選出するようになっているので、連合政府ではなく連邦政府(the Federal Government (of the U.S.)と翻訳しますが、似たような制度設計したEUとの違いは地域的な帰属意識の違いです。
だからEU(European Union)欧州連合と言い連邦とは言わないのでしょう。
しかし国家権力構造だけ地域を飛び越して一体化しても、地域ごとの帰属意識を飛び越した一体化は、危ういのでいつも外敵の存在による団結・戦後は領土拡張を卒業した代わりに冷戦構造による対立〜テロ国家撲滅等々〜米中対決など常に標的が必要な社会です。
組織が大きくなると誰もが首脳と直接意思疎通ができなくなる代わりに、各人が小分けしたピラミド型組織に帰属して各部署毎の一体感・歓送迎会・飲み会や運動会などの足元一体感の積み上げで万単位組織一体感が維持できるものです。
政党では派閥やグループ帰属が必須になるように、弁護士会では東京のよう単位会で数千人規模になると早くから派閥が結成され、そこの小グループ味帰属することによる安心感が維持されてきたようです。
千葉県弁護士会等の中規模会では派閥までいかないものの各種委員会活動で日々顔を合わし、切瑳琢磨していく過程で専門的スキルが磨かれるし委員会後の飲み会などで気心のしれた関係が出来上がっていくようです。
そう意味で「あの人は何々系(委員会の名称)」という表現が会員数がほぼ倍増したこの10年ほどで目立つようになりました。
ウエブの発達で中間組織不要と言いますが、個々人が首脳に直接メールできても中間組織がなくなっていくと砂粒のようになった個々人の帰属場所がありません。
戦前の反省?隣組制度は厳しく批判されますが、人は何かのグループに帰属しないと頼りない気持ちがするものです。
砂つぶ化を国家規模で作り出した人工国家が米国でしょう。
これを観察して明治人は、米国の内在的本質を見て合衆国と命名したのは慧眼というべきです。
こういう寄る辺ない組織・社会になると個々の国民大衆は日常生活の現実から遊離した大スターやヒーローを求めるようになり、政治家は地道な政治よりは砂粒の個々人にテレビやネット等で派手に訴えるパフォーマンスが必須になり、国民は扇動に簡単に乗りやすくなります。
ゴーン氏や現トヨタ社長のように露出能力がトップの重要資質になります。
米国は建国以来いつもターゲットの必要な社会になっていたので、世界中に勢威を振るっていたのですが、中国の台頭によってその限界が来たので「世界の警察官ではない」と言い出したのですが、世界のために警察官・正義の押し売りをやっていたのではなく、自国内国民一体感維持の道具としてやっていた以上はその効果が国内に及びます。
外に標的がなくなると砂つぶの統合はどうなるか?United Statesは瓦解するかの関心で書いています。
戦後は、民族独立機運に便乗して領土拡張欲を表に出さず、その代わり英仏等の植民地独立を応援し正義の味方のポーズをとりながら巧みにその見返りに英仏旧植民地の利権を英仏から奪う政策で成功してきました。
いわば北米地域内領土拡張(現在の米本土)が終わると、モンロー主義宣言で中南米を囲い込んで棍棒外交で半植民地化して裏庭とし、これが完成するといちゃもんをつけて米西戦争に引きずり込みフィリッピンを奪い取り、その間日欧に遅れをとった中国参入のために「門戸開放要求」し、先行する日本を攻撃標的にしました。
戦後は、第二次世界大戦を契機に日本が火をつけた植民地支配批判によって、アジアで英仏蘭等の旧植民地独立運動が起きると正義の味方のふりをして応援して、英仏蘭等の旧宗主国退場後の穴埋め浸透する政策で東南アジア、中東等を中南米諸国のように米国市場に取り込んできました。
英仏退場後の空隙補充をソ連も狙ったので例えばナセルのスエズ運河国有化事件では英仏軍進駐に対してソ連が核の脅しを英仏にかけた時に米国が英仏を応援せずエジプトを支持して、ソ連の影響下に入るのを防ぎ逆に米国影響下に編入して現在に至っています。
中東ではアラブ諸国にとって目に入ったゴミのような存在であるイスラエルの存続をめぐり米ソ代理戦争が次々と起きたし、インドは国内安定していたので米ソの介入・内戦にならなかったので中立的立場を維持できました。
米国の戦後国際政治は、ソ連・共産主義浸透を阻止する名目で戦後の独立国への影響力競争にしのぎを削る→経済メリット追求との合体政策=グローバル化推進政策により、目に見えるメリットを掲げて国内人心一体化を煽る政治が必須になっている点は独立以来現在も変わっていません。
・・・例えば中東諸国の英仏植民地の独立を背後で応援して結果的に石油利権をほぼ独占してきた・・中南米諸国支配の構図の中東版でした。
現在中東の混乱が収束しないのは、米国内油田開発(技術革新によりサウジ等の中東系原油産出後、不採算化していた国内油田の採算が取れるようになった)により、中東原油支配の必須性が低下し・・中東の争いに首をつっこむメリットが低下したことによることは明白です。
独立戦争に結集した州の本質と連合体制に戻ります。
これといった帰属意識のない州・・英本国の統治の都合でアフリカ植民地のように地図上に線を引いただけの区域である「州」が対英国独立戦争のために連合を組んだだけのことだったのを独立後も西欧諸国からの干渉を跳ねつけ貿易交渉を有利に進めるために「そのまま連合を続けましょう」となり現在に至っているように理解できます。
明治維新政府軍は薩長土肥の連合軍政府だったのですが、新政府ができて廃藩置県を経て政府軍が編成されると各大名家の軍は解体しましたが、米国の場合南北戦争を経て連邦軍が強化されて州の連合軍ではなくなったにも関わらず、いまだに州兵を維持しているのは、連合国・UNTEDのまま現在に至った・対外軍事同盟(をバックにした経済交渉)維持の利点に重点を置く狙いが濃厚です。
トランプ政権が同盟国に対等な負担を求めて来るようになりましたが、United States=軍事同盟が本質である以上は、軍事協力義務が必須だから今だに州兵を廃止できないのではないでしょうか?
その結果、州兵が形式的に残っていると思われます。

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