和解力(ウエストファーリア条約3)

国際情勢が変わり,朝鮮半島の地政学的重要性が希薄化している現状下では、韓国のわがまま外交継続は無理になっています。
明治維新当時のように(中国カードを交渉材料に使うのと合わせて)韓国が日米対中国の2勢力の強い方になびけば良いという発想・・・現在は中国の方が将来有力と見て,交渉カードに使う限度を超えて・AIIBや反日軍事パレード参加など中国に露骨にすり寄ってしまったのが朴大統領の前半2年間でした。
これを見て逆に日米が韓国を見限る態度を示したので・・驚いた朴政権が一転15年末の日韓慰安婦合意し、アメリカの求めるサード配備に同意するなど一歩(日米側に)後退しました。
政府が反日を煽りにあってしまった効果が出ている単細胞国民が納得していないこともあって,中国が猛然と巻き返しに動くと直ぐにぐらつきます。
いつも自分の軸足がなく,強い要求の方になびくだけのクニとみんな思うでしょう。
大きな流れで見れば,大統領退陣要求勢力の現在の過激な運動は民族の経済破綻が迫っていてもそんなことは関係ない(と言うより多元的思考が出来ない)・・日米勢力圏に戻る流れに対する巻き戻しだけ(そのためにはその他与件・国際信義破壊のマイナス・経済破綻リスクは一切考慮しない・観念空間の自己満足で生きています)を期待しているとしか見られません。
慰安婦像撤去約束を守るどころか新たな設置認可になると(たまらず)日本が・すかさず日韓スワップ協定その他修復交渉中断を発表しました。
現在韓国経済は,2回目のデフォルトになるかどうかが心配されている状態にあって,スワップ協定・日本の経済保障を受ける見通しがなくなるのは国際信用上かなりのマイナスになる筈です。
国民にはその辺が理解出来ない・・知っていても感情が先に走る・・二元論以外にはその他の与件は目に入らない民族性のようです。
勿論最後の最後になれば,(対韓投資している日本企業救済のために?)日本は放っておけないので何とかしてくれるだろうと言う期待・読みもあるでしょう。
これまで周辺3カ国から甘い汁を吸い続けて来たのが裏目に出て、双方から強迫・・報復を集中的に受けて困りきっているのが現状です。
未だに単純二元論で中国が良いか日米が良いかで迷いながら,行きつ戻りつしているのが、韓国の民度です。
アメリカは西欧に比べれば、韓国並み?に民度レベルが単純な社会です。
エスタブリッシュメント流の政治から脱却して,この民度レベルに併せようとするのがトランプ氏の行動スタイルとも言えます。
アメリカの単純な「敵の敵は味方」的見え透いた「戦略」がある程度機能していたのは,突出した経済力・軍事力によりましたが,イラク・アフガン戦争の結果を見れば分るように圧倒的兵力投入だけでは一時的占領は可能ですが、その後の最終解決にはどうにもならないのが中東地域の錯綜した現実です。
単細胞的介入の限界が出てきたのが、国際社会混迷の原因です。
アメリカは占領後欧米価値観に従って、日本の支配層・軍人さえ悪者にすれば済むと安易に考えて戦犯問題を起こし、慰安婦騒動を背後でけしかけて来ましたが,軍人を貶めることはニッポン民族みんなを貶めることになるのに気が付かなかったように見えます。
戦争に勝ったからと言って相手を貶めては行けない・・むしろ敵将の健闘を誉め称えるのが日本の武士道です。
日本では縄文時代の昔から勝っても「やって良いこと悪いことの区別」は決まっていました・・これこそが人間社会としての「文化」と言うべきであって、「感情に任せて負けた方を無茶苦茶痛めつけても良い社会」は猛獣社会と同じです。
朱子の言う「性即理」情動に動かされない安定した「性」の社会こそが、人間のあるべき姿です。
相手を許せない社会には,「文化のある社会に到達していない」と言っても良いのです。
西欧では野蛮のママで来て,戦争があまりにも長く続いた結果、戦争で勝った方もやって良いことと悪いことを決めた始まり・・国際合意・・この程度のことが漸く分って来たことをAugust 26, 2016,以降ウエストファーリア条約の紹介で何回か連載中でしたが,その続きが先送りになっています。
上記連載は西欧で漸く芽生えた「大人の智恵」が異教徒にも及ぶかの関心で書き始めたものです。
アメリカは西欧の人間が移住して始まったたクニですが,西欧近世に到達した智恵・道義は、日系人だけ収容所に入れるなど全ての分野で・・異教徒である日本人には及ぼす必要がない・・と確信していたように見えます。
そうでなければ,逃げ惑う住民を焼き殺す目的で焼夷弾で攻撃し、生身の人間・・しかも人口密集地を狙った相手に原爆実験を二度もするようなおぞましいことは想像すら出来ないでしょう。
そう言う目で見ると,西欧全体がアジア人を植民地化し住民を奴隷化していたこともその現れです。
ウエストファーリア条約は勝敗に関わらず主権尊重が歌われた国際条約・・この精神から言えば、弱いクニを占領し植民地化することを合法化する論理はあり得ません。
アメリカは漸く西欧の歴史を学ぶ必要に気づいたのか、あるいは,仕方なしに人道を言い出したのかは不明です。
兎も角1昨年の慰安婦合意圧力もそこまで理解した上ではなく,日韓紛争が大きくなるのはアメリカにとって不都合・・敵の敵は味方・・中国が正面の敵対国になると日本の反米感情の盛り上がりを放置しておけなくなったからに過ぎないでしょう。
16年12月29日以来書いているように日本の武人は一族を守るための代表戦士であって背後の一族とは敵対関係ではありません・・この辺の理解の違い・(支配被支配の対立を前提にする)欧米の誤解の基礎になって現在に至っているのですが,この辺をじっくりアメリカ人に分らせる必要があります。
アメリカ人が(日本と世界とは,成り立ちが違うことが分りさえすれば,)後に残るのは靖国参拝・訪問ですが、これはトランプ氏の得点チャンスとして残したとすれば?
アメリカは極東軍事裁判は間違いだったとは言えないでしょうが,ただ参拝すれば良いことです・・彼の懐の深さ次第・・・さてどうなるやら・・。
戦犯の汚名・靖国神社のわだかまりがなくなれば、戦争に引きずり込まれた恨みまで言っていてはキリがないので,(それは横に置いておく智恵は日本にはあります)日本にとって真の和解成立です。
アメリカは戦時中の日系人迫害を明白に謝罪し,更に昨年の一連の行為で和解能力があることを内外に示しました。
ロシアの場合,不可侵条約違反と,シベリア抑留を謝らない限り本当の民族和解にはほど遠い関係ですが,ロシアの場合、簡単な・・島さえ返せないレベルです・・アメリカは戦後直ぐに奄美諸島を返すなどドンドン返して来ました・・そこまで至りそうもない・・全く期待薄である点では、アメリカよりかなり稚拙・文化度が5〜6世紀単位で西欧社会よりも遅れているのは仕方がないでしょう。
こうして見ると謝る能力のない民族は、許す能力もない・・物事には・・商取引や友人関係でも男女関係でも・・どちらかが,勢いで行き過ぎやり過ぎが起きることが生じますが,ちょっと気に入らないことがある都度「もまあ良いか!」と許せない人の場合にはトラブルが絶えない・・和解する能力もないことになります。
硬直的原理にこだわる朝鮮族が、日本と和解する能力がないのは仕方がないと言えます。
文字文化普及のテーマで書き漏れましたが,ロシアは西洋諸国のような安定した中世〜近世がなく中央アジア地域で興亡した多くの諸国同様に古代国家的状態が近世まで続いていました。
黒土帯を中心に農耕社会化した点で一定の文化蓄積が起きた点が、中央アジア諸国に多い遊牧系と違う点でしょうし,その分古代的な(農業)国家形成に寄与したと思われます。
近代に入っても(内陸でもハンザ同盟の出来た)西欧のように商業社会化しませんでしたので,基本的には農民しかいない社会でありながら、末端農民=農奴中心社会であったので,農奴は殆ど文字に関係なく暮らしていたと思われます。
第二次世界大戦後シベリア抑留時に収容所の集合で兵の数の点呼が出来ない・いくらやっても数えられないので日本兵が代わって点呼していたとさえ言われます。
上記のとおり,アメリカにとって日米同盟強化への方針変更はそれほどの実害はありませんが、中韓を煽って来た手前どうするかだけですが、上記のとおり折角アメリカが立ち会いまでして日韓慰安婦合意をさせた以上は(俺の顔を潰すな)「合意を守れよ!」と言うのは簡単です。
はしごを外した・・裏切りにはならないでしょう。
こうなると韓国で政権交代があったからと言って「ちゃぶ台返しは困難」と予想されるのがこれまでの展開でした。
ただトランプ氏自身過去の合意無視のスタイルですから,これがどうなるかはアメリカの国益次第で予断を許しません・・。

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