民主主義の基礎8(信頼関係6)

アメリカ民主党・共和党の政策は、(日本民進党や社民党も似ていますが)移民を受入れて低賃金に頼って国際競争力を維持し、結果的に企業が人件費負担をしないで低賃金層を増やし社会保障を手厚くして行く社会を目指して行く・・誰が喜び、どの階層が損するかと言う単純な図式です。
マスコミは「既成政治家に対する不信感」であると解説していましたが、既成政治家と言う誤摩化しではなく「for the people」と言いながら「民衆」の立場を代弁する政党がそもそもなかったことを問題にすべきです。
そもそもアメリカ式民主主義制度では、日本のように総意で政治をするのではなく多数意見に従う「統治・支配」ですから、2大政党制では、少数派・少数民族を代弁する政党は大政党になることは出来ません。
韓国財閥で問題になっている循環投資同様で・・6対4がその選挙区で10になってしまう日本の小選挙区制・アメリカ大統領選挙の総取り方式で分るように、大政党内部で個別利害を積み上げて行くプロセスで、少数意見はゼロ査定になって消えてしまう仕組みです。
全国民の2%の人が国内資産の半分を占めて良いか?と言う2択ならば選挙で勝てない筈なのに、資金力のある勢力がいろんなテーマに影響力を及ぼして結果的に2%の階層が全分野の決定権を握る社会になっていることに対するアメリカ国民の不満です。
この是正作用を担っているのが裁判所(イギリスで発達した衡平法・エクイテー裁判所の思想)の役割になっていますが、違憲判断や行政に対する是正判断は余程でないと出ない(原則として立法権や行政行為の裁量権を尊重します)ので、中高所得者の負担を徐々に切り上げて行く政策自体は訴訟テーマになりません。
(神懸かり・憑依で決めたり、クジで決めることの合理性について数日前に書いたように、得票数と言う数字で決めて行くのは一見合理的なようでいて実は民意の擬制でしかないのですから、数量的計算によるのではなく日本社会のように「総意」を汲み取る訓練・その能力に長けた人材を育ててその人の決定には異を唱えないルール・・社会体制になる必要・・そこに到達するには今後数千年以上かかるのかも知れません。
アメリカ指導層の出身母体・・現状に戻りますと、トランプ氏自身大資本家・経営者ですし、ヒラリー氏はウオール街から巨額献金を受けていることで知られています。
本当の「民衆」の不満・怒りを王宮のような豪華な邸宅・「トランプタワー」を有する「不動産王」が代弁しているのではギャグみたいな社会です。
資本家の意向を代弁するマスコミや政党が支配するアメリカで、たとえば、移民・非正規労働者が増えて保険加入者がドンドン減って行くと、(機械工具の修理費?)医療費を誰が負担するか?となります。
これが(素人的想像で飛躍がありますが・・)オバマケアや職業訓練施設が必要となった原因でしょう。
日本の保険制度で言えば、大手企業の健保組合からの協会健保(中小企業加入)や国保(無職者中心)への負担金が何年おきに連続的に引き上げられています。
非正規雇用・保険未加入者を増やすと企業負担は減りますが、その分サラリーマンの保険負担を増やす・・中高額所得層の実質税増額です。
この結果大手企業従業員・・多くは800万前後から数千万前後)の保険料負担が数年おきに引き上げられている仕組み・・原因です。
健保組合連合会の本日現在の主張によれば以下のとおりです。
https://www.kenporen.com/public-relations/onepoint/pdf/onepoint-11.pdf
健保組合は、皆さんと事業主が納める健康保険料を財源に運営されています。
『拠出金』による現役世代の負担増
拠出金が増えたことで 全健保組合の健康保険料の平均額が上昇!
この5年間で1人当たり年額5万円以上負担が増えています!」
累進性強化やこの種社会保障政策は7〜800万〜数千万の中高収入層への増税・保険負担増・手取り収入減になる仕組みです。
それ以上の高額所得者は3000万(2003年時点のコラムの引用ですので今はどの限度・・5000万になっているか知りません・・孫正義氏などにとって4000万でも5000万でも同じでしょう)で打ち止めになる累進制の影響を受けません。
これがアメリカの1%の人が全米所得の2割を占める原理です。
米国民主党の政策は、移民・難民層の比重が高いフードスタンプ受給額アップ?の受益者と天文学的巨額収入層からの天文学的巨額献金者の両端の支持によって成り立っていて、巨額献金出来ない中高収入白人層が一番割を食う社会だったコトが分ります。
格差拡大反対は非正規雇用層・・フードスタンプを既に受給している層は支給条件緩和や金額アップのバラマキで満足させることが出来るでしょうが、転落の危機に怯えている・・低賃金化の標的・・フードスタンプ受給予備軍にされている中高所得層から出ている主張だったことになります。
11月18日頃の新聞には、介護費用負担について一定額以上の年金受給者の(現役時代年収7〜800万前後以上?)の人の自己負担率を上げる方針が出ています。
今朝の日経新聞第一面には高所得高齢者への医療費負担増がトップ記事で出ています。
高校授業料補助金その他何かあると・・(7〜800〜1000万)前後のどこで切るかの議論するのが普通になっています。
そうしたテーマでは800か900で補助金をもらえるか医療負担が上がるかの関心(目先の損得・自分が助かるか?)に誘導されていますが、ソモソモ中高所得者ばかり増税や各種負担が上がる仕組みでよいかの基本議論がありません。
要は中高所得層を代弁する政党が我が国にもないからです。
旧社会党は(労働組合が)中間層の代弁者として意味があったのですが、中高所得層の代弁をするよりは、中ソ有利になるような偏った政治偏向?主張ばかりした結果消滅してしまったことに関係があります。
今の民進党も同じで、中高所得者の立場を守るよりは、すでに転落した階層保護策・・生活保護受給レベルアップ・高校授業料補助や児童手当増額+高額所得者除外などを主張する政党になっています。
社会保障赤字問題が起きて来たときに、当初高額所得者を受給資格からの除外論(医療や介護の自己負担アップや、児童手当や高校無償化や消費税負担軽減策の除外論など)だけでしたが、この数年では中高額所得者の保険料や、利用時の自己負担率アップによって,年金や保険収入増を目指すようになって来ました。
中高所得層は税金や保険料を高く払っているのに、イザ、サービスを受ける受給段階では自己負担がより高くなるのでは挟み撃ちに合う関係です。
レストランの客が、あなたはお金持ちだからと言われて定価の2倍払わされ、食べる段になると定価しか払わない人よりまずい(ワンランク下の)料理しか出て来ないような変な関係が起きています。
韓国での大統領退陣要求のデモ報道を見ると、「◯◯」日本の労働組合の旗がひらめいている不思議・・戦後折角発達した労働組合が、肝腎の労働者の生活擁護を放り投げて尖鋭?な政治団体になってしまったことが、中高所得層の立場を弱くしてしまった原因です。
労働者の生活擁護のために地に着いた運動をしないで、中ソのための「政治運動ばかりする変な方向へ行ってしまった」と国民認定?を受けてしまったように見えます。
これが自社2大政党と言われていた社会党が消滅してしまった原因ですが、社会党政治家であった議員の多くが民主党に移籍しそのときに、旧社会党と断絶するために一見マトモな意見を言っていた人が多かったので国民は期待して政権を委ねました。
一旦政権を任されてみると社会党依頼の観念的体質が全く変わっていなかった・馬脚を現したと言えます。
社会党そのものではないにしても、地道に運動すべき労組もその前から国民支持を失い、結果的に労働者を守るべき組織がなくなってしまったようにみえます。

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