民主主義の基礎4・信頼関係2

ここまでは今回の選挙報道が、不正確過ぎたと言うだけのことですが、その前提として与野党共に、国民に優しくなかった点が重要です。
そこには民族の一体感がない・・アメリカ居住者は、メリット計算で住んでいるに過ぎない・・お互い利益共同体・ゲゼルシャフト・・利益の合う限度で付き合うゲンキンな関係が政府と国民の関係にもある状態が表面化したことです。
国民を守るために政府があるのではなく、企業・資本家の搾取対象としてみていたことになります。
アメリカの政策は、日本のように国民に優しくない・・同胞意識で運営されていません・・。
日本企業は従業員を食わせるのが第1目標ですからこれがマスコミで批判されていますが、世界の企業は資本家利益最大化が目的です。
利益が1億円で1000人雇っている企業と、利益10億円で10人しか雇っていない企業のどちらが社会貢献しているかと言う考え方の違いです。
そして日本外の国家.政府は、資本家支配ですから旧ソ連と共産中国北朝鮮を除いて企業の最大利益を保障することが最重要です。
その結果法人税減税競争になりますし、企業評価では株主還元率・ROEなどの基準が幅を利かします。
この結果アメリカでは、超高額所得者以外の中高額所得者をドンドン転落するに任せて、セーフテーネット・・概ねフードスタンプ受給者にして行こうとする既存政治家(民主も共和党も同じです)等の基本的コンセプトになっていたように思えます。
低賃金競争に入った2002〜3年以降民主共和両党がこの方向で一致していた結果、貧困者が増える一方・・社会保障に強い民主党が次第に共和党の地盤を崩して強くなって来た理由が分ります。
日本以外の国々・・資本家の支配する欧米はこぞって中国発の低賃金競争に負けないように移民導入策を採用して来ましたが、日本の場合歯を食いしばって産業構造高度化に励んで来ました。
日本は、自国民第一ですから、資源不足・石油ショックには省エネで,公害には公害防除工夫で、低賃金競争にはロボット化で、レアアース禁輸には、レアアースを使わない電池等の開発で・・それぞれ難局を切り開いて来ました。
繰り返す地震には耐震技術の開発で対応し、当面人智で対応出来ないと思われる大津波に対しても殆どの人がその土地から逃げようとせず黙々と復興に励みます。
原発が危険と分っても直ぐに廃棄するのではなく、何とかする方策がないかの知恵を絞るのが我が国精神です。
何か不都合があると何とかしようとしないで、ゴーストタウンにして逃げて行き、古くなったビルを爆破してスクラップ&ビルドして行くアメリカ社会とは心構えが違っています。
法隆寺その他古くなれば部材を入れ替えながら維持し続けて千年以上木造建築物を残し、最近で言えば何百万人も日々利用しながら徐々に内容を入れ替えて爆撃にあった東京駅を復元しています。
高齢化すれば若年移民を入れるのではなく、高齢者も活躍できる社会を目指します。
日本にもアメリカ的思考を信奉して、安直に外国人労働力を入れようとする勢力が一定数いますが、(民族特性・・何事も比率の問題であって皆無とは言っていません)これをやると低賃金競争を国内に持ち込むことになって、(高賃金でも中国にまけないように努力するインセンチブが失われるマイナスがあり)分裂社会になって行きます。
日本でも欧米同様の主張が成り立つと誤解しているのが、欧米かぶれ(と言うよりはニッポン民族内にも一定数いる利己主義者が欧米価値観の応援を受けて遠慮なく出て来ただけでしょう)の野党民進党や社共勢力です。
マスコミや民主党などの野党が、頻りに(戦後は資本家による搾取を煽り)ここ10年あまり格差反対を煽って来たのですが、日本の場合戦後の食うや食わずのときでさえも助け合い社会ですから、アメリカの現状をそのまま日本で主張しても殆どの人がピンと来ていないでしょう。
整理解雇も日本の場合最後の最後の決断・・戦国時代で言えば、落城直前まで行かないとそう言うことはしません・・儲かっているのに企業利潤をもっと上げるための欧米流の解雇など想像も出来ません。
今回のトランプ氏の勝利は、外国のコトで内情不明・・(まちがった?)想像するしかありませんが、国民を利用するだけ・・低賃金移民を入れて高賃金労働者と入れ替えて行けば良いと言う長期的トレンド・・民主共和両党既存政治家に対する中間層の反乱が今回のトランプ氏当選結果と見るべきです。
国家・政府は国民のためにあるのか、企業利益・資本利益最大化のためにあるか?と言う根本が今度の選挙で問われたと見るべきです。
ゲテイスバーグ演説で有名なところですが、government of the people, by the people, for the people, shall not perish from the earth
アメリカ人の好きなリンカーンの言うところの「人民のための政府」の精神が地上=アメリカの大地から滅びてしまった・perish from the earthのでしょうか?
ナポレオンが戦うために民族意識を鼓舞したようにリンカーンの演説も南北戦争に際して「国家・政府を愛しましょう」と鼓舞しただけです。
元々政府には国民を愛する精神土壌がなかったから、アメリカ民衆は「for the people」を初めて聞いて感激しただけであって、未だに実現していなかったのではないでしょうか?
トランプ氏が選挙戦で言ったスローガン・公約がそのまま実現出来る訳がないのと同じです。
国家・・専制君主や宗教の聖者・・支配者を敬い大事にする精神は世界中どこでも古代から教育されています。
人民が何故政府・governmentのために戦う必要があるかの動機付けとしてリンカンは「人民のための・・」と付け加えただけです。
近代以降の政府に対する欧米価値観は、王家に対する忠誠心強要が資本家あるいは共産主義者の支配する政府に対する忠誠心に入れ替わっただけです。
欧米の愛国心・民族感情は日本のように元々の同胞意識から自然に出て来る発露ではなく、ナポレオンが戦意高揚のために上から煽ったに過ぎないので、民族主義者=好戦的・偏狭なナショナリストと言う評価になります。
欧米では政府・支配者を大事にする・・これが欧米的愛国心で、(しょっ中「アメリカは偉大」とか国旗の下に集まる戦闘的愛国心・・政府間の競争・・戦うために民衆を戦争に駆り出す愛国心です・・。
アメリカの場合は「人種のルツボ・合衆国」であって「アメリカ民族」を観念出来ませんから、「民族主義擬制」すらも出来なかった・・純粋「政府(支配者)のための愛国心,政府派を鼓舞するしかありません。
日本の愛国心は、同胞を愛し助け合う気持ち・・郷土愛から外敵侵入・郷土を破壊する天災に協同して立ち向かう愛国心であって特定の支配者の利益を守るためのモノではありませんから成り立ちが違っています。
日本人が普通に出て来る「国を愛しています」と言う言葉が欧米では、危険人物と受け取られてしまうリスクがあるのはこうした歴史の違いです。
欧州の民族主義・・これを真似る諸外国の民族主義は、自然発生的に生まれたものではなく、戦争に参加させるために政府の都合で煽って育て上げただけですから、いつでも内政の不都合を誤摩化すために外敵を作り出して民族意識を煽る・・政府に利用される性質を持っています。
諸外国では、政府(支配者)の都合によって民族意識を利用しているだけですから、自民族よりも移民の方が都合良ければドイツ・フランスのようにドンドン移民に入れ替えて行くコトをためらいません。

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