金融支配→法の支配の重要性2

明治維新当時の治外法権制度は西欧が自分のルールを押し通すための条約であり、その延長で砲艦外交が花開いたのですが、(アヘン戦争もイギリスの論理で言えば商品を(欽差大臣林則徐が)勝手に没収・廃棄するのは、違法と言う論理・・アヘンを売る事自体が許されないと言う大きな倫理違反があるので今ではイギリスの方が悪いとなっています・・これは戦後ナセル中佐によるスエズ運河接収・国有化に対して(有名なレセップスが民間資金で投資で作ったものですから、正当な保障を求めて)英仏が軍を動かしたのと論理が同じです)歴史的に貸金や投資中心になると武力ではうまく行きません。
このように強制力に頼るのは弱いので、内心道徳律の育成・・如何にルールを守る持ちにさせるかが関心の中心になります。
商取引の場合は継続性が基本ですので、一度でもルール違反すると次の商売(仕入れ先が限定されている上に支払停止すると同業組合一斉に納品拒否する仕組み・・これの一般化が手形不渡り→各種取引停止制度)が出来ない・・自分自身が業界から抹殺されてしまうリスク(自分のみならず従業員全が路頭に迷う)があるので余程のことがないとルール違反で来ない仕組みが出来上がっています・・法の世界では商慣習が重視されている所以です。
権力による強制=法がなくとも商人は商道徳・(慣習法・・デファクトスタンダード)ルールを必死に守りますので強制的「法」の必要性が乏しかったのです。
戦後相次いだ独立国による国有化宣言は、民間商取引と違ってすぐに国単位での取引停止にはなりませんが、投資危険国として警戒されるので長期的にはその国の経済活動が停滞して行きます。
アフリカのやソ連の長期停滞の原因は、独立や革命と同時に旧政権時の債務支払拒否や旧宗主国出身技術者の追放あるいは重要施設接収のトガメであると言われています。
ソ連解体後ロシアがソ連成立時に支払拒否していた旧帝政ロシアの債務支払を始めたのは、こうした長期的マイナス(取引すると危ないと言う評判)除去にあります。
消費者がお金を借りたり買ったりする当事者に浮上すると同じ人から1買い切りの取引が多いのでもう一度借りなくとも踏み倒していることを知らない別の人から借りることが可能です。
1万円札は誰から借りても同じ・・この辺が個性のある商品仕入れとの違いですが、(コンピューター化の進展で個人も信用情報が整備されましたがそれまでは)貸す側にとって借りに来た人がどこかで借金を踏み倒しているかの情報がありませんから借りる方や分割払い約束する人の内心のモラルだけが頼りなってきます。
江戸時代に三井高利が始めた「現金掛け値なし」の商法は、ムラ社会で知り合いばかりの時代から大都会化して来て(匿名の)消費者の信用情報がない時代に消費者層を広げる近代的方法でした。
現代では遠隔地の取引や現金を持たない階層・・最貧国まで対象にする時代ですから、現金取引に限定すると顧客が限定されてしまうので、再び信用重視になってきます。
こうなって来ると相手の資産状況不明ですから、相手のルールを守る気持ち・・法教育・・約束・ルールを守る可シと言う強制力の整備や道徳教育やその精神の浸透が重要になってきます。
道徳教育だけでは限界があるので、これを意図的に破る悪質な場合には刑事処罰する必要性も出て来ます。
他所で借りていて既に返せなくなっていて、返したり払う当てもないのにこれを隠して借りたり商品を買ったり契約して財産上の利益を得た場合(以下に紹介する刑法の2項サギの)場合、詐欺罪で処罰する法律が整備されてきましたし、守らせるための民事法や民事執行法も年々着実に整備が進んでいます。
武力・腕力支配がいけないとなれば、民意に裏打ちされた「法による支配]」強制しかないのは当然です。
古代からの10戒では財産犯に関して盗みを禁じるだけですが、近代法では詐欺(これも人を騙すだけでは罪にならず財物騙取・財産上の損害を与えた場合だけ)罪が重視されるようになった所以です。
刑法
(詐欺)
第二百四十六条  人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2  前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
国際関係も世界支配の源泉が武力から金融力に変わって来ると武力による強迫から道徳・・法を守る意識の植え付けが必須になります。
欧米が何かと言えば、(自分たちの作った)法の支配を強調するようになった所以です。
韓国の場合まだ近代法意識が根付かない・・待ってるだけでは貸金を返してくれないので過酷な取り立てが横行する社会になっているのか?・・借金地獄解消のために時々借金棒引き令を出したり、若い女性が海外売春に出掛けているのが知られています。
中国ではまだ政府自体が公式に法の支配を行なっていない・法的手続外で共産党批判者を拘束したり、政府発表自体虚偽に満ちている社会ですから、国民に法を守れと言うのは背理です・・国民意識がその程度ですから対外的に窃盗団や知財剽窃やサイバーテロやり放題ですし、その意識のママ海外旅行に行くとマナーの悪さ(結局はルール違反・分らない)が評判になります。
政府は私兵(人民軍は国軍ではなく共産党の私兵です)を擁している強みで、国内ルールに従わず違法なことをしているだけではなくこの延長で海外でも臆面もなく行なっているのが、領海侵犯(小笠原でのサンゴ乱獲など)などですが、これは自発的なルール遵守意識が育っていないことの現れです。
国際司法裁判所の判決が出てもそんなのは関係がないと臆面もなく言い切るのは、中国政府自身が国内同様に・・国際社会でもルールを守らないと言う宣言です。
国際ルールを守らない民族と取引するとカネや商品を受け取るまで安心できません。
資本自由化に応じないという意味は、中国国内に投資しても回収金を簡単に日本への送金をさせないことがあるという意味です。
中国では法の支配がないとすれば、リスクに応じた投資抑制しかありません。
先進国内では、過酷な取り立てが出来ないし武力で取り立てるのでは採算が合わないので、借りたものは返す・・法を守れと言う法教育が必須です。
対日戦争の結果植民地を失って結果的に旧植民地人を武力・警察力で支配出来なくなった欧米は、法を守れと言いだしたのですが、そうなると人種によって法適用が違うと矛盾しますので、植民地支配に対する反抗者を監獄島などに幽閉していたのをすっかり忘れたフリをして?方向転換して西欧諸国がイキナリ法の下の平等..人道主義を言い出したのです。
自分がクジラを好きなだけ捕っておいて、不都合になるとイキナリ捕鯨反対に切り替えるのと同じです。

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