金融政策の限界4

買い替え需要循環に入ると、たまに同一商品(・・例えばクルマやクーラー掃除機)についてちょっとした工夫商品が出て多く売れても他社製品の交換需要を食うだけであって、トータルでは同じ(一家に洗濯機や掃除機は1台しかいりません)です。
タマタマある商品が(画期的な省エネタイプの冷蔵庫が開発された場合)ヒットして多く売れても2〜3年分の買い替え需要の先食いでしかなく、その後却って低迷期に入ります。
冷蔵庫の改良程度と違い新機軸の例・・アップルの大成功がありましたが、その分従来型パソコンやガラケーの売れ行きが減ってしまいました。
消費税増税前の駆け込み需要、タバコ値上げ前の需要あるいはオリンピック景気後の低迷など皆同じです。
ヒット商品を開発すれば国内だけではなく海外にも売れるのでヒット商品開発力の有無は国際収支上有用ですが、国内トータル需要は変わりません。
一時輸出が伸びますがその内現地生産に移るので、(ユニクロで言えば、中国の工場〜東南アジアで生産していますし、アップルで言えば、その殆どが中国での生産と言われています)ホンのちょっとの期間しか輸出が増えないので、輸出用に増産投資すると1〜2年後には国内設備・従業員過剰に苦しむようになります。
ユニクロやアップルの例で言えば、ユニクロのフリース製品ヒットの最初から中国での生産だったように記憶していますが、これでは、始めっから国内生産が1つも増えません。
アップルの大成功もアメリカこの国内生産が増えなかった点は同じです。
金融緩和しても、例えば当時のユニクロの中国への工場新設資金融資に使われただけだったのではないでしょうか?
富士重工のクルマが世界で大人気になっているときに円安になったのですが、国内増産投資しないでアメリカでの現地生産を増やすと言うニュースを見たことがあります。
ホンダもその前から国内増産投資しないで、海外で売れる分は海外投資する方針と言う基本方針が知られています。
私は海外投資が良くないと思っていませんので、その点誤解されると困りますので繰り返し書いておくと、要は(世界の工場の地位は無理・・)どんなヒット商品を開発しても国内需要を越えた投資は成り立たない時代が来ていると言うことです。
買い替え需要循環に入ると普及期の生産力そのままでは、供給過剰になりますから企業はいくら内部留保があるからと言っても、増産投資は出来ません。
企業内の余剰資金はインフラの整わない・・あるいはクルマやクーラーの工場を造ればもっと売れそうな資金需要のある海外に投資するしかないのであって紙幣大量発行しても国内需要が伸びるワケがありません。
ヒット商品を仮に開発しても国内で売れる限度の設備投資しか出来ません。
借金までして国内で売れる以上の国内投資する訳がない・・借りたい人・企業もいないのに、じゃぶじゃぶと供給すると・・貸し手の地位が下がります・・マイナス金利になって来ると既存金融機関の役割が大幅に低下して来る・・紙幣自体の意味がなくなって来る可能性が目の前に迫っています。
紙幣も商品の一種であって供給不足状態であったから金利を払ってでも借りる人が出るのです。
紙幣大量発行してインフレになったらどうする?と言う議論を直ぐにしますが、これはモノ不足時代を現在に当てはめる時代遅れの議論です。
IPhoneでもポレモンCOが飛ぶように売れれば増産すればいいだけで、インフレになることははありません。
供給過剰になれば供給者・・紙幣発行者の地位が低下する・・紙幣発行量の調節や金利調節などの金融政策に意味があるのかと言う事態になります。
規制強化するべきは新たに浮上して来るビットコイン等の別の決裁手段ではないかと言う関心です。
新たに登場して来るフィンテックなど新システムは既存規制がないので、技術や利用方法の進展に合わせて順次後追い的に規制を作って行くしかないのが普通です。
紙幣の方は、(紙幣の足りない貧困国ではまだ有用ですが)資金豊富な日本経済に与える機能を失いつつあるのですから、これを今更がんじがらめにしたって?「羹に懲りてナマスを吹く」ような滑稽な事態になりませんか?
クルマの時代になっているのに、荷馬車の構造が危険かどうかを熱心にしかも国家の大事のように議論しているような印象です。
日本ではいくら金融緩和しても借りる人がいないで困っている報道ですが、他方中国・韓国の経済危機リスクに関して対GDP比の債務率拡大が議論されています。
見方を変えればまだ量的不足国・・あるいは法の支配・道徳律が定着していない中国や韓国が「野放図に」(バイキング料理で食べもしないのにお皿にとるように)利用しているに過ぎません。

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