金融政策の限界1

商品価値として少量でも良い物・上品さ・アート性のあるものが優位性を持つ時代・・を支えるのは→武力に変わる道義・センスであり商品流通を支えるのは武力よりは動脈となる金融秩序です。
モノが行き渡って来ると2倍の生産をしても飲み切れない牛乳をこれ以上いらない・少量でももっとおいしい牛乳が良いとなります。
少量でも良いものが欲しい時代になって来ると量で勝負する旧価値観で生きて来た人にとっては困ってしまいます・・この反動が現下の反ウオール街運動・・マサに価値観の大転換に対する反作用と言うべきでしょう。
金融や芸術・知財では多くの人を養えないのは当然ですが、それは人口減で対応すべきことであって移民による人口増で対応する政策に矛盾があるから社会問題になって来たのです。
先進国が苦しくなって来たのは現地生産の進行→先進国が世界の工場ではなくなった結果、自国内需要を越える工場・生産力が不要になったことによります。
需要不足=供給過剰状態打開のためにEUと言う障壁を作り日本からの輸入攻勢をふせぎ、コスト競争のため+自国民の賃金低下圧力緩和のために?安い賃金は移民に任せる解決を求めて来ました。
この辺は「介護従事者が足りないから移民を入れろ」と言うのと同じで理屈のすり替えですから解決になる筈がありません。
介護者が足りないのは介護関連賃金が保険制度のために低く抑えられているからであって、これを市場に委ねて高額賃金を支払う・・有料老人ホームであれば人手不足は起こりません。
即ち介護士不足は人件費が他産業に比較して低く抑えられている結果・・市場原理に反している結果・・賃金が不当に低く抑えられている結果でしかないことをJuly 11, 2016に書きましたが、先進国の移民導入論も論理のすり替えである点は同じです。
自国民の賃金が高過ぎることを頰っ被りして国際相場(自国民より安い賃金)で働く移民を一部入れると、結果的に自国民の職場を奪って行くことになりジリジリと賃金相場が下落して行きますのでこれを待っているのでしょうが、どうせ結果が同じならば自国民だけの方が国民が幸せです。
移民が入った分労働力過剰になっている・・西欧では10%台の失業率が普通になっています・・移民を差し引けばどうだったかが明らかです。
国際競争力維持で言えば、移民を入れてもどうなるものでもない(工員の1割を中国人にしても全体の賃金は1割しか下がらない・・100%中国人の中国の工場に勝てません・この辺の理を2週間ほど前の移民シリーズに書きました)・・却って国内失業が増えて行きます。
輸出用の生産要員が不要になった・・先進国が世界の工場として人口を増やして来たトガメが出てきた以上は、世界の工場になる前の人口に減らして行くしかありません。
各民族は自給自足に適した人口を維持すべきであって、タマタマある映画の舞台になったことによるブームによって、観光客が押し寄せて来たとしてそれに頼って店舗増築や従業員などを増やす・・他市町から住民移動があるとブームが終わるとたちまち人口過剰・失業・倒産の危機に瀕します。
数年前からの円安に多くの企業が増産投資しなかったのは、一時のブームに合わせて増産投資すると円安が終わったときに参ってしまうことを企業が知っているからです。
実際に一時的な中国観光客の「爆買いに遅れじ」とばかりに設備投資したデパート等が、この4月からの爆買い急減によって売上減に見舞われ、設備投資が重荷になり始めています。
国内投資が殆ど増えないことをマスコミが焦って企業の内部留保が悪いと言うキャンペインを(左翼文化人も内部留保を還元しろと)張っていましたが、増産投資するとその後で困るのが目に見えていますし、利益要因の基礎が海外資産の評価アップによる・・国内需要が増えた訳ではない以上無責任なマスコミ主張に乗る訳がありません。
他方で日銀もマスコミ的発想を受けて金融政策・・ゼロ金利・・異次元の金融緩和が始まっています。
ゼロ金利にして金融機関に滞留している資金が国債購入よりは投融資に向かうしかないようにすると言う戦略でしたが、国債や日銀預かり金利をゼロ金利にしても銀行としては需要がない(企業自体が内部留保一杯で借りる必要がないでしょう)から金融機関の投資が細っていたのですから、(ゼロでも借りたくない企業は借りない)新規投資すべき相手がありません。
逆に庶民の投融資の入り口であるMMF口座がゼロ金利の影響で逆に続々と閉鎖の憂き目にあっています。
先進国は産業革命の先行でタマタマ2世紀にわたる長い優位期間があったので、世界の工場としての地位が永久に続くかの錯覚があったでしょうが、長期的に見れば一過性のブームと本質が変わりませんが、永久に続くと思って誤って人口を増やして来たに過ぎません。
移民政策は、映画の舞台になったことによって田舎の街に押し寄せた観光ブームが終わったときに、飲食店等の客を増やすために地元商店街の従業員をもっと雇う運動をするのに似ています。
・・彼らも客になるので少しは市内の消費を維持出来るでしょう・・移民によって人口を増やせば飲食店やコンビニの客が増えるしクルマなどの需要もふえるでしょうが、その客になる人の収入をどうするかの意見がありません。
デパートで働く人・納入業者等がその街のにぎわいに貢献しているので、デパートが撤退するとその人たちの消費も減る関係をみると、デパートや商店街の売上を増やすために従業員を増やせと言う主張に似ています。
先進国においては世界の工場としての役割は終わりをツゲつつある・・NHK朝ドラの舞台化による田舎町に観光客が押し寄せるブームが終わりを告げつつあるのと似た結果が始まっていることは厳然たる事実ですから、これに目を背けてもどうなるものでもありません。
人口減少を憂うる多くの学者の意見よりも庶民の意見・・折角自民族が知恵を絞って少子化で人口減を図る・・減ったパイを少人数で分け合う智恵+みかんの摘果と同じで少子化すれば一人当たりレベルが上がる・・が生物界の基本原理です・・生物の本能に従って庶民が来たるべき新時代への適応力向上を目指して少子化に励んでいるのは「正しい選択だ」とここ10年来このコラムで書いてきました。
少子高齢化に励んでいる人は、一方で当然に移民反対です。
折角自分自身が質素倹約・少子化に努力しているときに、よそ者が来て爆食(移民がドンドン子供を産んで有限な資源を食い荒ら)されたのでは叶わないからです。
マスコミは庶民の本能を無視して移民導入を煽っていますが、人口増になるのは困ると言う(世界中の)庶民の意見の方が正しいと言うのが私の持論です。

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