民法改正2

民法は基礎法で素人も関係するから素人にも分るようにすべきだと言うならば、・・「借りたら返す義務がある」「物を買えば代金支払い義務と売った方は売った物を引き渡す義務がある」と言う現行民法のように基礎的原理だけ書いておいて、詳しくは学説判例によるというのも一方法ではないでしょうか?
結局現民法のような簡潔版で良いとなりますので、抵抗勢力の仲間入りになるのかな?
ただし私がここで書いているのは、条文を冗長にする必要がないと言うだけであって、その他の民法内の各種分野で改正案の検討が進んでいる内容について反対しているのではありません。
どの条文をどのように変更した方が良いかなどの具体的な勉強をしていませんので、反対するような意見を持ち合わせていません。
法律家と言っても毎日の仕事に忙しいので、具体的な改正作業について時々耳に入って来る程度ですから国民一般ではそもそも、民法改正が生活にどのような影響があるのか更に分らない筈です。
学説判例も今ではネット化されているので、その気になれば該当箇所を法学の素養がなくともいろんな角度からの検索が可能ですから、ある程度問題点を抽象化する能力があれば検索が可能です。
「家を建てる契約すればきちんと建てる義務がある」までは良いとして、鉄骨や基礎配筋がどの程度足りないと契約違反になるかまで法律に詳しく書かないのが合理的です。
基本原理だけが法律にあればよくて、その先の微細な基準は何かで調べる程度の手間をかけるかプロに聞かないと分らないのは仕方がないでしょう。
その先の細かいルールを知りたい人が、見れば分るようにしておけば足りる筈です。
数十年前までは六法程度(と言ってもいわゆる六法の外に税法や地方自治法や行政法関連や労働法関連、福祉関連等膨大になる一方でした)までは市販されていましたが、その先の細かい政令や省令等がよく分らない状態でした。
今では、六法全書を買ってもどうせあらゆる法律が網羅されていないことから、六法全書で調べるよりはネットで必要な法律を検索する方が便利な時代になって来ました。
私の事務所でも今年から六法全書を買うのをやめました。
ネットの場合は、政省令や規則・・通達・ガイドラインまで知りたければ直ぐに見られる時代ですから、何もかもを法律でベタにしておく必要がないように思えます。
法律は目次程度の利用(大見出し程度)にしてその関連の政令や省令はどんなのがあると言う例示を書いておいてくれれば、そこから順に詳細を探って行く方が合理的です。
法律が目次程度の役割でしかなく、実際の細かいルールが政令や省令で決まるのでは法治国家と言えないという民主主義信奉論者らの批判が起きます。
しかし大方の方向性さえ国会で決めれば、その範囲内の細かいルールは政省令や規則通達やガイドラインで決めて行くしかないのは現実問題として仕方のないことです。
何回も書きますが、原発の安全基準・・機械設備の設置・運営基準を国会では基本方針程度は示せても微細に渡って議論するのは(機械設備の進歩は日進月歩です)無理でしょう。
国会は原発を発展させるのかやめて行くのか、どの程度の安全を求めるのかの方向性を示す必要がありますが、どのような機械を設置してどのような運転をすべきかまで具体的に決める必要がありません。
新幹線や航空機でも同じで細かい機械仕様書のあり方・ビスは何センチ間隔にするべきかとか、運行マニュアルを国会で議論しても始まらないでしょう。
今の世の中はこう言う細かいマニュアルで成り立つようになっているので、これを国会軽視と嘆くのは時代錯誤です。
むしろ規則やマニュアル作成段階を民主化・・透明化して行く方が合理的です。
ここに族議員等が暗躍しているのですから、法律にしろと言う議論よりはこの分野の透明化をして行く作業を進める方が現実的です。
原発の立地基準作成の民主化とは、候補者名の連呼活動によるのではなく、地震学会その他の知見を合理的に公開で議論出来るような仕組み造りではないでしょうか。

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