次世代の生き方3(少子化)

社会構造が変化するのは何時の時代でもあることですから、それぞれの能力に合わせて新しい時代に合わせた生き方の工夫が必要です。
天下太平と言われた江戸時代でもしょっ中生活環境が変わっていて、絵の世界・芸の世界にとどまらず、幕府の政治制度その他いろんな分野で絶え間なく変化を続けていました。
何時の時代でも親の真似をしていれば済む時代は滅多になかったので、何時でも時代変化に小刻みに適応した人が出世し生き残って来たのです。
応仁の乱に続く戦国時代に守護大名等名家の多くが没落して戦国大名が頭角を現し、明治維新・敗戦時の大変化など、その時々の時流に乗れた人と乗れなかった人がいて、時代の変化について行けない人が没落して行くし、うまく適合した人が頭角を現して来たのが我が国の歴史と言えるでしょうか?
(明治維新では新興勢力が三菱その他財閥を形成し、他方で多くの武士は没落しましたし、戦後も多くの地主階級は没落しました)
現在も約20年以上前から企業の海外展開が始まり現場労働縮小方向への大変化が始まっているのは誰の目にも明らかですから、次世代がボヤーッとしているのでは、取り残されるだけです。
ちなみに7月29日日経朝刊ではいつものように少子化による労働力減少→その結果?海外脱出が停まらないことを前提とする論文が掲載されていますが、順序が逆でしょう。
(職場がないから母親が少子化に励んでいるのです)
現在のマスコミでは、現在の日本経済悪化の原因はすべて少子化にあるとしてそのことの是非については論証抜き・・自明のこととして処方箋を論じていることが多いのですが,これもその事例です。
マスコミによる世論誘導の弊害としてこのシリーズの冒頭で書いたように、財政赤字と国家破綻は別問題であるのに如何にもイコールであるかのように散々報道してイコール意識を刷り込んでおいて・・増税の必要性だけを煽っている・・これに反対するのは非国民であるかのような論調です。
何故現実に反した論文を1面全部を使う大きな紙面に掲載するのか理解に苦しみます。
少子化が日本経済の活力を奪うというマスコミが決めた前提があって、その阻止に必死になっているのが分りますが、自己主張の正当化のために事実と逆のことを主張するのでは、国民の判断を誤らせる危険があります。
以下同誌21面「経済論壇から」の中段の一部を紹介しておきましょう。
以下の書き方をみれば現在の日本ではこの点は自明であって論証すら要らない・まるで公理のような書き方で自説に繋げています。

「少子高齢化の急速な進展で日本経済の行く末は決して明るくない。円高や電力不足と言った当面の問題に加えて今後の労働人口減や国内市場縮小を見越して、海外移転は着実に進展している。・・・」

と、東京大学教授の福田慎一氏が書いています。
しかし、労働力不足で国内で工員が雇えなくなったから、トヨタその他の企業等が中国その他海外生産に移行しているのではありません。
逆に海外進出増→国内雇用が減り続けていて、終身雇用制下では新卒に先ずその影響が出るので、若者が困っているのです。
また人口減・国内市場縮小を見越して海外生産が始まったかのごとく書いていますが、グローバル化以前にも輸出超過(海外市場目的で)で我が国はずっと来たのですから、国内市場縮小見込みならばなお輸出に精出せば良いだけですから、海外展開が加速するというのは無理なこじつけです。
円高、グローバル化の結果、輸出先で作るしかない・・現地生産しないと国際競争に勝てなくなった現実があって「国内雇用を守ると」と主張しているトヨタでさえ次第に国内雇用を縮小せざるを得なくなっているのです。
グローバル化以降国内製造業従事者が激減していて・・これを介護現場へ誘導するのに必死の国内現実からみれば、上記東大教授の論説は実態に反しているのではないでしょうか?

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