国際収支と財政赤字1(国債の外国人保有比率2)

1家の経済で言えば、家族内の貸し借りだけにしてよそから借りてまで(一家の総収入以上の)豊かな生活をしないようにするために、外国人による国債引き受けが必要になった時点で緊縮経済に切り替える仕組みにすれば健全です。
政治的に見ても外国人の出資を受けなければ、外国人の意向に左右されなくなるメリットがあります。
外国人投資家に国債を引き受けさせない・・あるいは一定保有率以上になったら国債発行を出来ない制度設計にすれば国内資金で賄える限度しか政府支出が出来なくなりますし、国内資金の限度で賄っている限り国債残高がいくら膨らんでも対外経済上(デフォルト)の心配は全く要りません。
国債発行残高問題の論点は、財政赤字になるか、その額が大きいかどうかではなく、当初引き受けだけではなく転売後も含めて外国人保有比率をどうすべきかこそを議論すべき事柄です。
ただし、国際政治上我が国だけ外国人保有禁止を出来るかの配慮は別に要りますし、国民が買った後の転売・名義貸しを考えると法的禁止まで進むのは無理があります。
そこで実質的外国人保有比率を何%まで認めるかの政策判断・・何%を超えたら、新規国債発行を禁止するガイドライン・トリガー制度が必要となります。
無制限に外国人比率を上げて政府が安閑としてることになれば、そのような制度設計こそが危機管理として問題ですから、これをマスコミが報道すべきことです。
これまで約40年くらい連続して国際収支黒字でしたが財政赤字が累積している現状に明らかでなように国際収支が大幅黒字でも、税を取らずに国債で賄えば財政赤字ですし、税で国費を全額賄っても国際収支の範囲を超えて国内で消費すれば国際収支は赤字になります。
国全体の収入以上の生活を政府が保障しているとその差額資金が税収によるものであれ国債であれ結果的に国際収支が赤字累積になります。
何回も書いていますが、一家の総収入の範囲内の生活かどうかが重要であって、一家の総収入(40万円)以上の(50万円の)生活をするために自分の収入30万円に加えて息子から20万円を生活費として借りたことにしている場合に、強制的に(税として)20万円取るように変えても、一家の総収入が赤字であることは変わらず、いつかは家計が破綻してしまいます。
この逆に総収入の範囲内であれば、息子からの借金名目の数字が如何に膨らんでも健全性が変わりません。
「負債を次世代に残すのか」という報道も多いですが、親が死ねば相続人である息子の貸金が相殺によって、ゼロになるので何の問題もありません。
国家経済も同様で、赤字国債が如何に巨額になろうとも、その債権者も自国国民に限定していれば次世代はその債券を相続しますので、差し引き零以上の遺産を受け継ぐことになります。
この辺の原理については7月15日の「マスコミによる世論誘導の害2(不毛な財政赤字論1)」前後のコラムで紹介しました。
国民が債券相続出来るかどうかの意味でも、外国人が債権者の多くを占めているとその前提が崩れますので、外国人保有比率をどうするかを考えないでノホホンと発行を続けるシステムであると問題が大きくなります。
外国人保有比率の限度に関する内部ルール策定こそが喫緊の課題であり、これの議論をしないで財政赤字額の大きさだけを議論しても意味がありません。

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