危機管理の事前準備・・トレーニングの必要性

トランプ政権成立以降、米国の対中政策が強硬となり、G20会議を利用して18年12月1日に米中首脳会談を行い90日間の猶予(中国の対米提案を待つ)を米国が与えた形ですが、この記事は16年5月頃に書いていた中韓の反日運動への関心シリーズの続きの原稿の続きです。
今年8月に1ヶ月間ほどサーバーの不具合で在庫の記事ばかり(無気力に?)掲載していた結果、時事問題をテーマにしたブログを書く習慣がなくなってしまい、いまだに在庫整理的掲載が続いています。
中国経済がハードランニングを恐れて時間稼ぎをすればするほど、その間に経済規模が縮小し、世界での存在を小さくして行く期待感で16年5月ころに書いていた原稿です。
2014〜5年ころからの中国経済の変調が起きると資源爆買いがおさまり、購買力が落ちている・・15年からの原油や資源値下がりの主因はこれですので、その分資源国その他への影響力が着実に下がっています。
(ただし経済縮小が始まるとじりじり犯罪目的の来日が増えるリスクがありますが・・・)
これこそが正に中国政府の言う「新常態・ニューノーマル」です。
トランプの対中高関税の脅し以来米中関係は緊張激化の一途ですが、今朝の日経新聞第一面には、「工作機械受注が10月23ヶ月ぶりに前年同月を割り込んだ。主因は中国が36、5%も減少したことだ」と書いていて、いかに中国が日本にとって大切かのトーンですが、対中輸出減を連日煽って日本にとって大変な不利益になる・・米中の争いが激化するのは日日本にとって大きな不利益だから米中間を取り持つ必要があるという長期的論調です。
中国の減速は一時的には大問題でしょうが、このように傾向が続くとチャイナプラスワンの流れが加速するだけのことであって、中長期的には中国の存在感が縮小していくはずです。
米国の対中関税強化で中国の対米輸出が減れば、その穴を埋めるために東南アジア諸国が米国向け輸出を増やす・・生産増になるでしょうから、日本は東南アジア諸国への工作機械輸出を伸ばせばいいのであって、一時の輸出減にしかなりません。
中国では債務が激増しているのに投資が増えない・・これは投資のための債務増加ではなく債務返済用の借り換え需要が中心になっていることを表していますが、こう言う状態では赤字輸出も高値で仕入れてしまった在庫がなくなれば、赤ジウhs鬱用の資源h輸入を続けれないので生産が止まるしかありません。
中国経済がガン細胞のように(ガンそのものと言う見方もあるでしょうが)ドンドン小さくなって(場合によっては四分五裂してから・・ただしこの段階で混乱を避けてかなりの灰色難民が日本へ来るでしょう・・)から、デフォルトしてくれるのが、世界経済にとって最も理想的な形です。
北朝鮮であれ韓国であれ、イキナリの大混乱は日本に迷惑だと言う現実的思惑があって、(嫌韓派が怒るでしょうが・・)韓国がつぶれそうになるとスワップ協定してやるしかないか?などと言う動きが出て来ます。
実際に海運会社「韓進」が16年だったか準備なく(無責任に)つぶれてしまい、輸送中の世界中の荷主が迷惑を受けています。
荷役や港湾利用料その他の支払い保証がないので、世界中の港湾に接岸させてもらえず荷揚げが止まっているのですが、これを救済するために?日本の裁判所が神戸港での荷揚げ命令?を出したと言うニュースが流れています。
日本の買い主が、荷物が入らないと生産活動に支障が出るから無償で接岸させろと言うのかあるいは買い主の支払い保証があるから?でしょうか?
これが国家規模のデフォルトになれば大きな迷惑が起きることは間違いがありません。これを防ぎ損害を最小化するにはニッポンが出来るだけ中韓との取引を減らしておくことです。
中韓企業の商品やサービスは半値でも注文しないなどの保険的コスト負担が必要です・・つぶれそうな会社の値引き勧誘にうっかり乗ると酷い目に遭います。
ここで中国の永続的反日戦略がいつ始まったかの関心ですが、これは・・中国の天安門事件による国際孤立による危機感が発端であると考えられます。
天安門事件に関するhttps://ja.wikipedia.org/wikiで時系列を見ておきましょう。

「1989年6月4日(日曜日)に、同年4月の胡耀邦元党総書記の死をきっかけとして、中国・北京市にある天安門広場に民主化を求めて集結していた学生を中心とした一般市民のデモ隊に対し、中国人民解放軍が武力弾圧(市民に向けての無差別発砲や装甲車で轢き殺した[1][2])し、多数の死傷者を出した事件である。」
江沢民に関するウイキペデイアの記事です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%9F%E6%B2%A2%E6%B0%91
対日関係
天安門事件直後の1989年6月21日、日本政府は第3次円借款の見合わせを通告し、フランスなどもこれに応じた。7月の先進国首脳会議(アルシュ・サミット)でも中国の民主化弾圧を非難し、世界銀行の中国に対する新規融資の延期に同意する政治宣言が発表された。円借款自体は1991年8月の海部俊樹首相の訪中によって再開されたものの、中国が国際的孤立から脱却するには天安門事件のイメージを払拭する必要があった。そのために江沢民政権は、1992年10月、今上天皇・皇后を中国訪問に招待した[31]。天皇訪中は日中関係史で歴史的な出来事だったが、西側諸国の対中制裁の突破口という側面もあった[32]。江沢民政権は1994年に「愛国主義教育実施要綱」を制定し、「抗日戦争勝利50周年」にあたる1995年から、徹底した反日教育を推進していった。同年9月3日に北京で開催された「首都各界による抗日戦争記念ならびに世界反ファシスト戦争勝利50周年大会」で江は演説し、日中戦争の被害者数をそれまでの軍民死亡2100万(抗日勝利40周年の1985年に中国共産党が発表した数値)から死傷者数を含めた上で3500万とした[33]。1998年8月には、「日本に対しては、台湾問題をとことん言い続けるとともに、歴史問題を終始強調し、しかも永遠に言い続けなくてはならない」と外国に駐在する特命全権大使など外交当局者を集めた会議で指示を出した[34]。江沢民の対日政策によって中国では反日感情が高まり、同時に日本でも嫌中意識が強まっていった。」
1997年10月、江沢民はアメリカ合衆国を訪問。ハワイ真珠湾へ立ち寄って戦艦アリゾナ記念館に献花を行い[43]、ここで日本の中国(当時の中国大陸は中華民国の中国国民党政府の統治下であった)「侵略」と真珠湾攻撃を批判した。
アメリカ合衆国との関係においては緊密な関係を築き、大統領であるビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュとも複数回にわたって会い、一緒にレジャーを過ごした事もある。ブッシュの叔父で米中商工会議所議長を務めたプレスコット・ブッシュ・ジュニアと江沢民は長年の友人[19]であるなどブッシュ家とは密接な関係を持ち、江沢民の息子である江綿恒はブッシュの弟で中国共産党入党の示唆[20]で中国国内で知られるニール・ブッシュと中国で会社を共同経営している[21]。1997年10月に訪米した際、江沢民とクリントンは両国関係を初めて「戦略的建設的パートナー」と表現して米中協調の枠組み作りを本格化させ・・・」

STAP細胞事件2と日大アメフト事件2(危機管理2)

私の理解によれば研究成果が内部で評価されるだけで、外部批判にさらされ難い・・「社会によって批判され難い」場合にモラルが低下するという区分けが可能です。
製造現場でのデータ捏造による革新技術開発発表は、それを利用する工程ですぐにバレるので、再現できない発表は起こりえません。
STAP細胞問題は、実用化が待望されていた分野であったからこそ話題性があったし、その分その成果を利用してみようとする追試が盛んに行われたので、再現不可能性の疑問が早期に巻き起こったのでしょう。
小保方氏は、誰も相手にしない学位論文同様に、「ネイチャーの書類審査さえ通れば良い」的気分で捏造データによる発表をしてしまったものと思われます。
大学の研究部門発表では、実用性に乏しい分発覚しにくい・・言論自由市場論のまやかし同様で、学問の自由にアグラをかいて、外部批判どころか学内からの批判さえ事実上受け付けないシステムに問題があるように見えます。
早稲田大学が小保方氏の学位論文を非公開にしていた訳ではないとしても、理系論文の場合、よその大学の若造の学位論文がインチキかどうかなど、他大学のプロは誰も手間暇かけて検証したいうほどの価値がないのが普通です。
たまたま同方向の研究者で「もがいている」テーマの発表がでれば、興味を持って研究・追試対象にするでしょうが、そうでなければ本当に価値ある新発表であればそのうち誰かが利用して世に出るだろう・そのとき参考にすればいいと言う程度で放っておくのが普通の動きでしょう。
たまたま同方向で実験を繰り返しているような場合には、発表した実験が自分と違った方法、あるは混ぜる資料が一つ違った工夫というような場合には、その資料だけ入れ替えて再現実験できるので簡単ですが、そうでない無関係な研究者が追試しようとすると新規に実験装置全部用意するしかないのでは膨大なコストがかかります。
そんなことが本当にできるかな?と科学常識で疑問に思っても、おいそれとは追試実験出来ない・再実験するには巨大な装置コストがかかる仕組み・採点教官でさえ合理的チェック・批判するには「そっくり同じ装置や資料をゼロから用意して同じ実験をしてみないとわからない」ので、その実験が発表通り行われた前提でしか採点できないのでしょう。
(「ABCD試料を合成してXになった」と言う場合、目の前で混ぜている試料が本当にABCDの試料かどうかまでチェックするには容器にAと印字されているだけで信用せずに中身を実際に確認する必要・・実験材料からして自分で集めて見ないとわからない・・200時間の実験成果であれば自分も200時間同じようにやるしかない(・・プロは要点を見れば出来の良し悪しがわかるとしてもデータが前後矛盾なく差し替えられている場合、捏造か改変されているかどうかまでは分からないでしょう)→そんな時間がないので事実上合理的チェック不可能な状態と思われます。
昨日出た会議でも、役所のアンケート結果の集計を見せられてそれを議論するのですが、そのアンケート集計が正確かどうかを議論する暇がない・正確性を前提にした議論しかありません。
こういう前提をつき崩したのは働き方改革法案の前提になっている集計がおかしいという批判でしたが、こういう批判ができるのは審議会の偉い人ではなく、集計に関与している現場の人しかありません。
4〜5日前に公共施設利用者のアンケート集計結果を紹介しましたが、回答者の属性不明のママ議論することになります。
民俗調査・・東南アジアや太平洋諸島などに出かけるフィールドワークの学問発表・古老の話の採録発表も、いくつか事実があるだけで重要部分が作文かどうかは(客観資料との比較の他に)採点者が現地に行くなどして古老に聞いて歩いて確認しないと本当のことは分からないはずです。
サンゴ礁のやらせが発覚したのは、地元漁協の憤慨があってこそバレたものですが、大して手間のかからないことでも多くの場合裏付けまで取らないしそんな暇もなく報道をそのまま受け入れるしかないのが普通だから起きるのです。
NHKによる台湾の現地住民に対する「人間動物園」だったかの報道では、テレビカメラまで入っての「客観性ありそうな」報道でしたが、台湾原住民が別のことに感動し涙を流しているのに違う方に演出していたことが、問題になったようですが、訴訟としては映像をどのように利用しようと編集権の範囲で文句言えないという判決だったようです。
慰安婦報道の元になった吉田調書も結果的に「フィクションで何が悪い」となったようですし、
指導教官や審査委員ではない部外者の場合、本気でチェックしようとすれば装置や材料の準備まで全て新規に揃えて同じ実験をするしかない・・理系研究は装置産業化している点で事実上の参入障壁・非公開性があり、ひいてはデータ捏造の誘惑が高まります。
この現実をどうすべきか(やりようがないと匙を投げ、放置するのではなく)こそが、大学や研究機関に求められている「自浄期待」と思われます。
まずは、不正に対する厳罰のルール化が必須です。
バレたら研究者生命を失うとなれば、安易な不正に手を染める人は激減するでしょう。
この点で内部の懲戒処分制度の厳格運用姿勢は重要です。
最近大騒動になっていた日大アメフト部のルール違反に対する社会の批判の視線もそこにあります。
井上コーチはまだ30歳のようですが、あるいは20歳そこそこの選手でも選手に出るからには、選手としてやっていいことと悪いことの区別はつくはず・・公式試合に出す以上はルールを理解していない選手はいないのが原則でしょう。
ましてコーチともなれば業界からの追放処分を誰も重すぎるとは思わないでしょう・重すぎるという批判意見を見たことがありません。
人権擁護の一方的報道の雄である毎日新聞でも、以下のように客観的に報道するのみで処分を(「市民感覚があ〜と批判せずに)肯定するかのような報道姿勢です。
https://mainichi.jp/articles/20180530/ddm/005/070/126000c

日本大アメリカンフットボール部選手の悪質なタックルをめぐる問題で、関東学生連盟が関係者の処分を決めた。日大の内田正人前監督と井上奨(つとむ)元コーチは除名とした。
除名は懲罰規定で最も重く、大学アメフット界からの永久追放にあたる。学生に限らず、スポーツ界での除名処分は極めて異例だ。
・・・・・こうして内田氏を頂点とするピラミッド型のゆがんだ支配構造が構築されていった。学連の処分は、この構造こそが問題を引き起こした本質だと断罪したに等しい。

組織維持の根幹に関わるルール違反があれば、国家の場合、刑事処罰・・国外追放から死刑、〜刑務所への隔離等があるように、組織有る限り、組織維持のために除名→業務停止〜戒告等の順に厳しい処分を行うのが原則です。
これがきっちりできないとその業界・組織がジリ貧になります。
アメフト業界(関東学連)による上記処分は日大の組織挙げての違反行為を看過できないとしたものですが、日大としてはこの処分を受けても(元凶と言われる内田氏の大学支配が強すぎて)誰も「首に鈴をつけられない」状態らしく大学の対応をどうするかの腰が定まらないママでした。
早稲田大学が、身内教授らへの波及を恐れて小保方氏の不正を認定しながら学位剥奪をしなかったのと似ています。
我々弁護士会でも、懲戒制度の適切な運用こそが、弁護士自治・弁護士の信用維持を実効性あらしめる核心的位置にあると言われる所以です。
懲戒請求された弁護士が可哀想という人権論・同情を基本に運用していたのでは、社会の信用を維持できません。
まず第一に非違行為の事実があるかどうかは人権を守るために厳格に認定する必要がありますが、非違事実があった場合にそこに至った情状を総合して弁護士のあるべき姿に対する社会の信頼がどの水準かを知り、また「あるべきか」の価値判断で決めるべきで、知り合いか、可哀想かどうかを判断要素にしたのでは国民の信頼が揺らいでしまいます。

STAP細胞事件2と日大アメフト事件1(危機管理1)

今回の日大アメフト部のルール違反事件処理の拙さといい、早稲田の小保方事件に対する処理能力といい、日頃偉そうなことを言っている「大学の自治能力って、一般企業以下でないの?」と疑問符のついた事例が続いたことになるでしょう。
日大事件では日大に「危機管理学部」?が、あることが、ネット上で揶揄されていましたが・・・!
https://www.asahi.com/articles/ASL5T323RL5SUTIL03T.html

「対応遅すぎ」日大・危機管理学部生が見たタックル問題
張守男、円山史
2018年5月25日09時47
日大には、自然災害対策や情報管理などについて学ぶ、国内で珍しい危機管理学部がある。
同学部1年の男子学生(18)は「大学の対応は遅すぎた。先に選手を表に出してしまい、責任も学生になすりつけようとしている」とあきれた。
23日夜の内田正人前監督らの会見について「誰が見ても指示は明確。全て認めて辞任しておけば騒動を沈静化できたかもしれないのに、信じられない思いだった」と語った。
23日夜の会見では司会者が質問を遮る場面もあった。別の1年の男子学生(19)は「こっちが加害者側なのでもっと丁寧な進行をすべきだと思った。危機管理の対応を考えるきっかけになった」と話した。
前監督は大学の常務理事。1年の女子学生(18)は「学内でも権力のある人だったから大学も動きにくく、まずい対応になったのではないか」。別の1年の男子学生(18)は「周りが監督に物言えないのなら、早く大学のトップが出てこないといけない」と指摘する。

上記は報道機関の意見を学生の名を使って書いているのかも知れませんが、とんだ反面教師の教材提供になったものです。
こういう実例教材に事欠かないという宣伝効果で日大危機管理学部の人気が上がるのでしょうか?
小保方事件に対する理研の対応を見るとプロの世界では再現テストをして再現不能を確認した上での処分であり、プロの世界の信用意維持にかろうじて成功したようですが、この経過を見ると実証するには大変なコストが掛かることもわかります。
再現テストをするには、膨大なコスト+時間がかかる・例えば医薬品開発の巨額資金の必要性が知られていますが・・これの再現実験ってどうやるの?という問題があります。
いわゆる治験を例に考えると・・10万人に対する数〜5年単位の追跡調査など・本当に別のグループでやっても同じ結果が出るかなどを考えて見ると、誰が?どこの企業が知的好奇心のみで膨大なコストと時間をかけて、酔狂な再現実験をしてA社の実験発表が正しいかどうかの実証検査をすることができるでしょうか?
学問研究の成果でも同じで、採点側の教官としてもコストがかかったり時間のかかる再現実験を自分でしていると自分自身の研究や仕事をしている暇がなくなるから、学位論文を出す学生や研究者がまさか虚偽データを潜り込ませていないだろうという信用で判断するしかないのが現実でしょう。
小保方氏の論文を掲載したネイチャーだって、その実験成果が正しいとすれば掲載価値があるかどうか、論文の論理を追って外見上の矛盾さえなければ掲載する程度の審査でしょう。
世界中でいろんな分野に広がって発表される論文をネイチャー自身が掲載前に自前であるいは第三者委託で再実験する能力(装置)があるはずがありません。
電池製造など実用分野の発明発見ではその企業が製品化するための実験繰り返しですから、虚偽発表してもし品化して作動しなかればすぐにバレるのでデータ捏造する意味がないでしょう。
あるいは新製法では、消費電力が半減するとか持続力が二倍になるなどの触れ込みの場合、その製法による電池などを機器に組み込めばすぐに結果が出ます。
(ただし医薬品の場合、副作用がきつければすぐに問題化しますが、「毒にも薬にもならない」風邪薬程度の場合、虚偽データの発覚リスクが低いことがわかります・・)
工業製品でもプロが機器に組み込んでコストダウン出来るのではなく、新製品(化粧品・風邪薬など)を消費者が受益するような場合、消費者には直感程度(しかも個人差が大きいので、自分の体質に合わないのか程度の疑問しか持ちません)のしか違いがわからないので、捏造の誘惑が高まります。
車の燃費偽装や免震ゴムの偽装なども途中どの業者も損がない・・消費者のもとで効能を発揮する仕組み、結果の分かり難いもので誘惑が高まるようです。
論文発表が自由な批判にさらされ、自由市場で淘汰されるといっても、製品化に遠い分野あるいはその成果を利用してその次の段階の実験に取り掛かろうとしているような場合を除けば、第三者が好奇心だけでは(実験設備その他膨大なコストがかかるので)容易に再現実験できないので虚偽データによる成果捏造の誘惑が高まると言えそうです。
大学の学位論文など現実社会で実用になるような論文は皆無に近いでしょうから、着眼の斬新さと論文作成の様式にあっているかの形式審査程度で、実態調査や引用した統計データなど正しいかどうかなど精査しきれないのが実態ではないでしょうか?
ドイツ・ワーゲンの燃費偽装に始まり、日本企業での燃費偽装や神戸製鋼その他の大手で検査データ偽装が続々と出てくる背景を見ると、企業モラルの実態に関心が行きますが、モラル低下というよりは、発覚し難いことが誘惑助長につながっていると見るべきでしょう。
犯罪率低下には、検挙率アップが重要と言われている所以です。
他方で、もともと大して信用がなかった飲食店や農産物業界の信用が必要になり、信用が高まってきたことによる期待を裏切られたという逆方向の問題でもあります。
政治モラルなどの事件では、昔普通だったことが国民の期待・要求が高まって許されなくなってきた面が目立ちます。
期待の高まりによる不祥事の場合、期待度が上がるのに関係者全員一律について行けない部分(人材)が残るのは当然で、その部分に焦点を当てるとしょっちゅう不祥事が表面化するのは当然であって、モラルが下がったことにはなりません。
昔普通にあった事件が減って稀少化するとニュース価値が高まる結果、ちょっとした殺人事件等が全国ニュースで駆け巡る結果、「最近物騒になりましたね」という人がいますが、少年事件や刑事事件の絶対数が大幅に減っている現状と合わないのは、被害に対する敏感度が上がってきたことによります。
学会・研究者は学問・求道者としての矜持があるでしょうが、現場検査要員によるずさん処理となると人材レベルが違うので研究者と彼らを同視批判するのは妥当ではないと言えますが、現在社会における企業製品に対する品質信用の重要性が高まってきているという点では軽く考えてはいけません。
個々人で見れば政治家には政治家のモラルがあり、公務員や弁護士や医師、教師〜会計士それぞれの職種に応じた必要なモラル・ルールがあります。
大学の研究者に要求されるモラルと現場の品質検査要員に要求されるモラル・・同じ食品業界でも高級レストランと個人飲食店での衛生モラルでは、(個人商店は不衛生で良いわけではありませんが)国民期待度・信用がそれぞれ違うし歴史も違います。
小保方氏の場合、まだ経験未熟の若手とはいえ、大学院での論文執筆の修練・・研究ルールを体得して博士号になっている者であって、学位授与されている専門家としての能力を前提に理化学研究所の研究員に採用されていたのでしょう。
プロとして基本ルール違反があれば専門研究家の資質がなかった・・業界から排除されるべきは当然のことです。
小保方問題は、研究者に対する信用度が上がったのに小保方氏がついて行けなかったからではなく、大学や研究者に対して「昔からある信用基準を満たさないプロがいたことに社会が驚いた」ということでしょう。
小保方氏擁護論は「研究者なんて実は大したモラルがないんだ」という科学会全般批判・現実直視・肯定論のようです。

ポンド防衛の歴史11(ポンド管理政策の破綻2)

12月10日に紹介したように、イギリスとOECD諸国との成長率格差が広がる一方で、為替取引自由化の部分を多くして行くと硬直的なポンド維持・為替管理が難しくなります。
この打開のために1949年9月には、1ポンド4、03ドルから1ドル2、80ドルへ約3割に及ぶポンド切り下げを行います。
大恐慌時のポンド切り下げと違い、戦後は域内諸国が多額のポンド預金を強制されていた(債権保有者になっていた)ので、49年の切り下げは指定諸国(元のスターリング諸国)にとっては(ポンドでの)外貨準備の対ドル価値が大幅減額・大損害になってしまいました。
今の日本や中国がアメリカドルで保有している外貨預金が3割切り下げられたようなものです。
その上イギリス及び指定諸国(主に英連邦諸国)全体が戦後では貿易赤字基調なので、今後もじり安になるリスクのあるポンド預金をするのはリスクが増えるので指定諸国のポンド離れ(ポンドにつきあっていると損をする意識)が始まりました。
大恐慌時のスターリング地域設定時には構成諸国トータルの国際収支は黒字であったので、この黒字分をロンドンに集積するメリットをイギリスは受けていたし、その結果ポンド相場が維持出来たことを既に紹介しました。
戦後はスターリング地域(戦後は指定地域)全体が対ドル圏に対して赤字機基調になって来たので、ロンドンで外貨交換してもドルを集積しなくなり(トータルで赤字であればロンドンで交換してもドル支払いの方が多くなって持ち出しになります)、むしろイギリス本国が参加国を援助しなければならなくなる方向になってきました。
参加国全体がじり貧になって来ると、参加国もイギリス本体も相互にこのシステムを維持するメリットがなくなってきました。
言わば親戚みんなが貧乏人の集まりになって来たので、お互いに他所の金回りの良い他人とつきあう方がメリットが大きくなって来たと言えます。
その結果、域内貿易よりは域外貿易の比重は上がる一方になってきます。
他方でポンドの両替が不自由・使い勝手が悪いとその不満から域内諸国のポンド離れをいよいよ加速するので、イギリスとしてはポンドの自由化を進めるしかない展開になってきます。
徐々に為替自由化を進めて行った結果が、西欧諸国一斉に行われた1958年の非居住者の換金自由化に繋がり、61年の居住者に対する制限撤廃になります。
ポンド両替が完全自由化された1961年にイギリスはIMF8条国(貿易収支の悪化を理由にする為替取引制限を出来ない国)に移行して漸く先進国のメンツを保てました。
ちなみに日本の8条国移行は1964年(昭和39年)で、戦前の一等国から敗戦による4等国への格下げ・(子供の頃には何かと言うと「4等国になったのだから・・」と大人の自重気味の話を聞いて育ちました)ここから漸く挽回しての再度の先進国(戦前の言葉で言えば列強諸国)入りを果たしたことになります。
(東京オリンピックもこの年ですし、新幹線開通もこの年でした)
日本の場合は十分な実力を蓄えた結果の8条国入りですので、参加したからと言って円の売り浴びせはなく・・、むしろ以後値上がり圧力のまま現在に至っています。

ポンド防衛の歴史9(ポンド管理政策の破綻1)

戦時中の為替規制は戦時特例としての「管理令」だったのに1947年の制度は、「法」という恒久制度にしてしまったらしいのです。
日本では法と令とは格式が違う・・日本では法は国会の制定したもので、令(勅令・政令・省令・は行政府の定める法の下位規範です。
(格と式の違いについては以前律令制との関係で01/17/06「律令制の崩壊と平安遷都(格式の発達と令外官1)」前後で書きました。)
12月1日に紹介した名古屋大学教授金井雄一氏の「基軸通貨ポンドの衰退過程の実証的研究」によれば、戦時中の規制を為替管理令と翻訳して、戦後規制を為替管理法と翻訳しているのは、上記日本の法と令の格式の違いを前提としてのことなのでしょう。
これは日本法形式の違いであって、イギリスも同じような違いがあるのか(・・法制度の違いを知って翻訳しているのかまでは分りませんが・・)その論文には恒久法になったと紹介されています。
41年の管理令は戦時特別の時限立法だったので「管理令」と翻訳して戦後の47年法は戦時に限る時限立法ではない平時の法なので「管理法」と翻訳を変えているのかも知れません。
これによって域内諸国に関してはポンド利用を強制し、同時にドル・プール制も強化されて、ポンド以外の外貨との交換を許可制にして、ポンド流出防止に成功します。
英連邦諸国に対する法・強権による強制は、経済の実態に合わないと、ナポレオンの大陸封鎖令同様に無理が出てきます。
この体制はアメリカの圧力というよりは、内部事情から徐々に崩壊して行きます。
戦時中と違って、戦後世界全体が自由化に向かっている中で、(たとえば、1950年の「ヨーロッパ決済同盟」設立など戦後の為替交換性回復・貿易自由化の流れは留まるところがありません。)これに反する為替閉鎖体制の維持(スターリング地域全体が域外に対して貿易赤字化して来ていたので、一種の貧乏国・低成長国の集まりとなってしまいました。
貧乏人の集まりでは先がありません・・旧共産主義諸国の経済機構・COMECON・もやって行けないので解体していまい、中国も1980年IMF加盟国になり、未だに孤立しているのは北朝鮮くらいです。
スターリング地域を閉鎖社会にしたままでは、世界からの孤立化にも繋がり、戦後の発展から取り残されてしまいます。
1947年8月に緊急避難的に為替管理政策に戻ったイギリスは孤立し続ける訳に行かなくなって、47年のような一気の自由化ではないものの、おそるおそるの自由化を試行して行きます。
1951年には、公認為替銀行と多くの為替ブローカーに対する為替取引の自由化を部分的に認めるようになり、為替交換が徐々に再開されて行きます。
他方でポンド預金の封鎖勘定と外貨変更自由な解除残高の割合を徐々に変更して封鎖残高のポンドの比重を下げて行ったのですが、自由化が進み始めるとスターリング地域合計の国際収支赤字基調がポンド相場維持に重荷になって来るジレンマがありました。

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