オーナーと管理者の分配(リクシル騒動)2

この種リスクは消費者分野だけではなく、プロとプロの関係・・大手企業間でも昨年だったか発覚したリクシルの中国小会社の現地責任者の不正経理(使い込み)で巨額損失受け、その後代表者解任騒動に発展しているのがその例でしょう。
https://toyokeizai.net/articles/-/285558?page=2

リクシル、対立の根底に海外買収攻勢の「失敗」
問われているのは「ガバナンス」だけではない
・・・
当時、藤森氏は「LIXILを本物のグローバル企業に生まれ変わらせる」と自信満々に語っていた。だが「海外子会社について実態をしっかり調べたり適切に管理したりできる人材は、日本の本社では皆無に近かった」と、内情に詳しい関係者は話す。
海外事業に精通した生え抜き社員はほとんどおらず、藤森氏は買収先の経営を以前からの現地経営陣に任せていたという。LIXIL本社のマネジメント能力不足は明らかで、買収後の海外子会社では軒並み業績悪化や不祥事に見舞われている。
巨額の損失を計上したジョウユウ事件
例えば2014年1月に買収したドイツのグローエ。2015年4月には同社の中国子会社ジョウユウ(LIXILから見ると孫会社)で不正会計が発覚した。実はグローエ経営陣は、2009年にジョウユウに一部出資(2013年に子会社化)した時点から主要な財務情報に十分なアクセスができない状態だったにもかかわらず、LIXILに報告すらしていなかったのだ。
ジョウユウは実際には債務超過で、その破綻処理を迫られた結果、LIXILは関係会社投資の減損損失や債務保証関連損失などで総額608億円もの損失を計上。この時、LIXILは社外取締役と外部有識者による特別調査委員会を立ち上げ事実関係を調査したが、報告書は概要しか公表せず、全文を開示していない。

ドイツの子会社だった時から帳簿開示すら応じなかったというのでは、リクシルが買収時にどういう審査していたのか?驚くばかりですが、これはある程度信用できる会計基準が現在確立しているから言えることです。
源平時代に戻りますと、他人に任せるに足る管理システム(帳簿制度などあるはずもないし)が整わないので、リクシルの国外企業買収と同じような状態に陥っていた・現地管理の武士から届けられる「つかみ金持参」で荘園領主は我慢していたのでしょう。
ちなみに管理システムがきっちりしない時代には、売り上げ(農作物の場合収穫の何割)の何%という比率による収納制度は無理があるので、支配を委ねる代わりに収入の増減に関係なく年間固定金(租庸調)収納システム・一種の請け負いシステムしかなかったはずです。
今で言えば、レストランや小売店の売り上げに関係なく、土地や建物を貸して地代家賃をもらう仕組みがこれです。
貸店舗などでは、売り上げ増減で地代家賃が上下しない・・売り上げ減で家賃を払えないなら出て行ってくれという簡単システムですが、これは廃業すればいい・・・どこかへ働きに出る仕組みがある・・あるいは生活保護システムが機能しているからできることです。
農業社会の場合、凶作は広範な地域・関東平野全部とか東方地域全部などの天候不順によるのですから、どんな凶作でも一定量納付しろ・納付できないならどこでも知らないところへ流れていけ!というのでは、受け皿になる他の産業未発達なので社会が崩壊します。
そこで減免騒動・・あるいは納付しない実力行使が起きると、個々の農民の能力不足や怠慢とは違うので領主の方が折れざるを得ない状態になります。
この現状把握次第ですから京都にいる荘園領主や預かり所の信西入道のような公卿には実態不明で手に負えません。
そこで実情に詳しく実力行使能力も兼ね備えた武士に現地管理を依頼するしかない状態が増えてきたのです。
近代法では以下の通り法制化されています。

民法(明治二十九年法律第八十九号)
第五章 永小作権
(永小作権の内容)
第二百七十条 永小作人は、小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利を有する。
(賃貸借に関する規定の準用)
第二百七十三条 永小作人の義務については、この章の規定及び設定行為で定めるもののほか、その性質に反しない限り、賃貸借に関する規定を準用する。
(小作料の減免)
第二百七十四条 永小作人は、不可抗力により収益について損失を受けたときであっても、小作料の免除又は減額を請求することができない。
(永小作権の放棄)
第二百七十五条 永小作人は、不可抗力によって、引き続き三年以上全く収益を得ず、又は五年以上小作料より少ない収益を得たときは、その権利を放棄することができる。
(永小作権の消滅請求)
第二百七十六条 永小作人が引き続き二年以上小作料の支払を怠ったときは、土地の所有者は、永小作権の消滅を請求することができる。
(永小作権に関する慣習)
第二百七十七条 第二百七十一条から前条までの規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。

上記によれば、1年間納付しなくとも出て行ってくれ(農地を返せ)と言えない仕組みになっているし、2年間未納になれば、消滅請求出来る(任意引き渡しがない場合、訴訟が必要です)ようになっています。

※民法は現行法ですが、農地の場合戦後農地法ができて大幅に変更されています。
戦後永小作権の新規設定は皆無に近いと思われますが、明治30年代における小作関係の法的意識だったでしょうから参考のために引用しました

オーナーと管理者の分配1

今は管理組合とマンションオーナーとは経営が別組織ですが、これがゆくゆく、固定資産税や各種負担軽減化その他の総合管理業になって利益だけオーナーに送金するようになるとこの水増し・・コスト管理のごまかしがないかのチェックが重要になってきます。
班田収受法が戸籍も登記制度(測量の前提たる度量衡もはっきりしない?)もない時代にどうやって実施できたかの疑問を書きましたが、電話も郵便制度もない時代に遠隔地の収入管理を委ねた場合、どのようにその収益を貢納させられるかのインフラの問題です。
資本と経営の分離・株式会社組織になると帳簿管理が重要で、・・商法では昔から商人には帳簿作成義務が明記されていました。

商法(明治三十二年法律第四十八号)

第五章 商業帳簿
第十九条 商人の会計は、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする。
2 商人は、その営業のために使用する財産について、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な商業帳簿(会計帳簿及び貸借対照表をいう。以下この条において同じ。)を作成しなければならない。
3 商人は、帳簿閉鎖の時から十年間、その商業帳簿及びその営業に関する重要な資料を保存しなければならない。

商法は累次改正されていますが、上記条文は私が弁護士になった昭和40年代から変わっていないと思われます。
そして商人のうちでも会社になるともっと厳格な番頭に当たると理締まり役の職務権限が整備され、その裏付けとしての帳簿整備義務が課されます。
15年ほど前まで商法600条台から会社設立から株式発行株主と運営担当の取締役それを監督する取締役会・・それがイエスマンばかりになると監査役の権限強化、さらにこれもイエスマン中心になると、独立監査法人制度・・独立性のある社外取り締まり役の要請など、屋上屋を重ねる繰り返しです。
取締役会や帳簿整備義務など記載され、その部分を会社法と講学上言われていましたが会社法(平成十七年法律第八十六号)という独立法ができてその部分が商法から削除されました。
商法から独立した新会社法は、1000条近くもある大きな法律ですが、それほど資本家と資本を預かる運営部門との関係が複雑精緻になっている・人類永遠のテーマということでしょう。
会社法の歴史を見ると株主個々人にチェック能力ないので監査役の強化〜監査法人等が発達し、さらには社外取締役制度の宣伝・・他方で消費者保護のために金融商品法との規制法が整備されてきたのは、この所産です。
いわば人権尊重と憲法に書いても個々人は弱いので弁護士が必要になったのと似た次元です。
消費者には個人中心の各種利殖投資には、監査法人が代わって法令違反がないかを調べてくれないので、各種消費者被害があとを絶ちませんので、金融商品取引法という一般的法令が充実してきましたが、それでも事件が起きてから法令違反を消費者系弁護団が追求する程度が限界です。
個々人で言えば、如何に能力のある人でも超高齢化すれば最後は誰かに資産管理を委ねるしかなくなります。
従来これを相続人に一任・・相続人家計との渾然運営を事実上黙認していたのですが、個人主義の風潮が高まると、子供が親の資産を自己経費に流用するのは老人虐待となってきたので、複雑になってきました。
親族後見で子供一人で唯一相続人の場合、子供としては親の資産を食いつぶすほどではなく、例えば、数億資産の場合そのうち50万や100万程度子供の家の修繕費あるいは自分の子供の大学入学金などに使ってもいいと思いたくなるのも人情です。
後見人による使い込み〜横領事件が増えているというのは、裁判所による預金残高の定期チェックで発覚することが多いのです。
流用したい時にはあらかじめ裁判所に相談して解決できるので、今ではこの種の使い込みが減っているでしょう。
今後の問題は貢献まで行かないある程度自分で判断できる生涯独身者の高齢化が進む場合の資産管理でしょう。
貯蓄不足で高齢者が路頭に迷うのも困りますが、せっかく老後資金を蓄えていても、これを狙う悪党がはびこるのは困ったものです。
在宅介護など発達すると一人住まい高齢者の家に出入りする他人は多種多様です。
法人決算のように事件があろうとなかろうと、帳簿開示による不正経理がないかを恒常的に事前チェックする仕組みはありません。
消費者被害は帳簿開示だけでは事前チェックが難しいのです。
リスクの大きい金融商品・利殖系被害と違いアパート投資は堅実投資と思われてきたのですが、スルガ銀行問題やレオパレス問題(不良工事の続出)でこれもリスキーなものとなってきました。
いわば荘園管理を他人に委ねているうちに荘園領主(本家)の手取り収入が徐々に蚕食されていくようになったことの再現です。
この種問題・・人任せ分野がなくならない限り避けられない・人類普遍のテーマとも言えますが、現在では法令が細かくなっているので、弁護士相談する程度の能力のある普通の人の場合、これを守っているか否かで一応訴訟解決可能ですが、それでもこの種の消費者被害が後を絶ちません。
身寄りもなく寝たきりで介護を受けている場合、預金等を勝手に払い戻されていることがわかっても、問い詰める気力もないので困ります。

メデイアの事実報道能力4(労働分配率)

好景気なってからいきなりこういう意味のない統計を毎月のように大規模報道するようになったのは、好景気というが庶民に恩恵がないとか、庶民は実感しないという政権批判意図としか見えません。
合理的根拠のある政権批判は必要ですが、意味のない指標を持ち出すのは、国家をより良くするための批判報道ではなく、批判のための批判・なんでも反対の業界になってしまっているように見えます。
私だけでなくいろんな人がこの種の反論をしているうちに、日経は流石に恥ずかしくなったのか大規模主張・・この種の意見記事はなくなりましたが、ネットで見るとまだ実質賃金が下がったことが、いかにも重要指標であるかのような報道が続いているようです。
例えば今でも以下の通り毎月のように報道しています。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30261420Z00C18A5EE8000/

実質賃金4カ月ぶりプラス 3月、人手不足で一時金増
経済2018/5/9 20:00

https://www.asahi.com/articles/ASL6562PCL65ULFA02Q.html

4月の名目賃金、0、8%上昇 実質賃金は横ばい
2018年6月6日10時27分

以下は
上記の通り、未だに続く実質賃金低下報道に対する批判意見です。

いまだに「実質賃金ガー」って言っている人いるんですね

いまだに「実質賃金ガー」って言っている人いるんですね
厚生労働省が発表した2017年の実質賃金の統計が、前年比でマイナス0.2%となり、案の定「アベノミクス失敗」というつぶやきがいたる所で見られます。
ですが、実質賃金とはどのような性質を持っているのか。それをきちんと理解していれば↓の様な批判は無くなるんじゃないかなと思います。
実際には国民の所得は増えていますからね。
”実質賃金が2年ぶり下落 「アベノミクスっていつ結果出るの?」という声が相次ぐ
2018/2/8 キャリコネニュース

https://news.careerconnection.jp/?p=49834

『厚生労働省が2月7日に発表した毎月勤労統計調査によると、2017年の実質賃金は16年に比べて0.2%減少し、2年ぶりのマイナスになった。名目賃金にあたる現金給与総額は0.4%増加したものの、物価の伸びに賃金の伸びが追い付いていない状況だ。
この報道を受け、「アベノミクス失敗」「私が死ぬまでにアベノミクスって結果出るの?」と経済政策の見直しを求める声が相次いでいる。(後略)』
実質賃金が低下=国民が貧しくなっている”
実質賃金を強調する人はそう主張しているわけなのですが、これらの方々には実質賃金が平均賃金であるという認識がゴッソリと抜け落ちている感じがします。
例えば、この場合 (月収です)
Aさん、Bさんがそれぞれ月収40万円、30万円で働いていました。この時の平均の賃金は35万円です。
そこに翌年、新たにCさんが月収20万円で雇用された場合、この三人の平均賃金は30万円と、Cさんが新規に雇用される以前に比べて5万円も減ってしまいました。
さてこの場合、Aさん、Bさん、Cさんは平均賃金が下がったことにより、貧しくなったのでしょうか?」

上記意見は4〜5年前から私が書いてきた主張と同意見というか事例の上げ方までほぼ同じです。
景気が良くなって失業者や無職待機中の主婦や学生が15〜20万前後の非正規に就職すると、全労働者の平均賃金(平均年収400万前後とすれば)が下がるのはあたりまえのことです。
家庭でいえば、夫一人の月収50万の所帯で無職専業主婦が月20万でも働くようになれば、夫婦2人の平均月収は35万に下がりますが、家庭の合計収入は50万から70万に増えるのでその家計としては格段に豊かになります。
まして非正規で夫の月収30万前後しかない子育て中家庭にとっては、保育所に預けて妻が1日の半分でも働いて月収10〜15万円前後を稼げれば生活水準アップの恩恵は桁違いです。
こいう簡単な仕組みを無視して「実質賃金」と意味深そうな語彙を利用して「 専門家が研究した統計だろう」と国民を思考停止に追い込み・「実質的賃金が下がっているのか?」と国民不満を煽ろうとしているように見えます。
完全雇用になっても更にに好景気が続くと非正規等の賃金相場があがるが(生産性があがったのではないどころか、半人前でも採用するしかない企業が出てくる結果)運賃や居酒屋等物価も上がるので、実質購買力はプラマイゼロが理論数値でしょう。
例えば、半人前の人が失業状態でゼロ収入から月収10数万円になれば彼にとっては、物価が1割上がっても実質賃金は前年比大幅増ですから、人や職種によって短期的には若干の凸凹が起きます。
雇用者増が止まる→人件費アップ→コストアップ→物価上昇=ここ1年〜半年前後の単価アップでも、超短期非正規雇用に頼る業種・例えば居酒屋やコンビニ等と、工場の期間工のような中期的業種とは効果の出る時期が違いますが、いつかは物価に追いつかれます。
1年半後に物価が追いついた時にその年も賃金アップしていれば別ですが、その時には賃上げが終わっていると、同時期の賃金と比較すると賃金は昨年からアップしておらず、物価だけ何%アップですから物価調整後の実質賃金下落と表現されます。
こうして「好景気なのに庶民には実感がない」(「市民感覚があ〜」とメデイアの一方的断定報道の潜在的した支えをしているのです。
街角景気・・千葉の繁華街を歩くと多くの現場系若者が街に出て元気に楽しんでいます。
実質賃金低下論が私のようなネット批判によって(メデイアの言論市場独占支配が破れた結果)化けの皮が剥がれてくると、労働分配率が下がりつづけていると主張が始まりました。
実質賃金低下論は、好景気の恩恵が庶民に行き渡っていない根拠として?始まったのですが、化けの皮が剥がれてきたので次に始まったのが労働分配率低下論です。
労働分配率は資本収益回収額と人件費の比率のような語感ですが、これも実質賃金論同様に実は違うのです。
労働分配率とは付加価値に占める人件費比率ですから、省力化投資あるいは補助器具等で弱者も働けるようなロボット等の装備が増えると付加価値に占める人件費率が下がります。
設備投資をすればするほど労働分配率が下がる(就労率アップが限界になってきた→人件比率アップ→価格転嫁を避けたい企業努力としての「工程短縮」等の投資ですから)のは当たり前すぎることです。
この辺の説明はJune 26, 2017「労働分配率の指標性低下2(省力化投資と海外収益増加)」で書いています。
このように朝日よりマシとはいえ、日経新聞も経済統計の意味を誤解しているのか、意図的に国民に不満を持たそうとしているのか不明ですが、(国民が貧しくて苦しんでいるという主張をさすがにしなくなりましたが、)厚労省の毎月の発表という形の大規模報道を続けて変な方向への誘導が目立ちます。

労働分配率低下論3と外国人労働力

省力化努力・工夫努力の成果を結果的に批判することになる労働分配率低下論のメデイア上でのフィーバーは、日本社会の停滞縮小を目指す悪意によるものではないとすれば、「外国人を入れれば(個々の人件費が低くともトータルの労働分配率が上がるし省力投資を阻止できるので?)労働分配率が上がるじゃないか?」という意見に誘導する立場でしょうか?
EU諸国は省エネ努力を怠り外国人移民受け入れにより、どんどん(低賃金)労働力を取り込んだので日本にくらべてロボットや省力化投資が遅れ(労働分配率は下がらなかったでしょうが)今になってそのツケに苦しんでいます。
アメリカも伝統的に移民受け入れ=新規労働力増加政策でしたが、ついに移民規制をトランプ政権が公言するしかなくなりました。
トランプ氏の発言が過激なのでメデイアが批判していますが、労働力を引き入れる事による生産増加政策は中国の人海戦術に見習っているだけで将来性ないのですから、選別受け入れをするというならば、トランプ氏の方が正しいでしょう。
この辺の意見は、EU低迷の原因としてだいぶ前に書きました。
日本は中国の低賃金攻勢に耐えてその間必死に省エネに取り組んできたので、対中人件費格差を維持したままでも(欧米がやってきた中国に負けないように安い労働力輸入に頼らずに)いろんなロボット産業が発達しこの種機械の輸出によって、巨大な国際収支黒字が続き今の豊かな生活があるのです。
「外国人を入れろ」という議論の支持者は、企業の省力化努力・投資を敵視し(日本の国際競争力低下を狙う国のために主張でもしているかのような印象を受ける人が多いですが・・・)人件費・労働分配率アップを狙う意見は外国人労働力受けれ勢力の応援でもあるでしょうか?
メデイアで「労働分配率が下がっている」→上げろというイメージ報道があると、それとなく給与が下がっているかのようなイメージが定着し、給与アップ要求のようなイメージなので大衆受けしますが、労働分配率アップ論の目指す結果は逆です。
外国人労働力移入論で安い労働力・・日本人並み給与支払いが要求されることによって、表向き安い人件費ではないようですが、結果的に不足分の人数を投入することによって人件費単価アップを抑制する主張になります。
繰り返しですが、労働分配率論アップ論は人件費単価引き上げ論でないことに注意する必要があります。
労働分配率論は、収益に対するトータル人件費率論ですから.設備投資が増えれば収益やコストに占める人件費率=労働分配率が下がります。
設備投資の中でも省力化投資をして人手を増やさずに少しくらい人件費単価を上げても、総コスト・収益構造に占める人件費率低下・労働分配率の低下が大きくなります。
労働分配率を上げるには、低賃金でも労働者の数を増やして省力化投資比率を減らせば労働分配率が上がることに気をつける必要があります。
近代産業革命以降のトレンドは設備投資を増やして人件費率〜労働分配率を下げていき、その結果一人当たり所得を上げる事による個々人の生活水準を引き上げるというものです。
中国のように人口だけ増やして総生産量を増やしても個人は貧しいままです。
その中国でさえチャイナプラスワンの動きに驚いて、産業効率アップの必要性に迫られて日本のロボット産業は引き合いが多く活況を呈している原因ですし、ここ数年の中国の対日擦り寄り再開の基礎構造です。
この点で12月15日のコラムで紹介した労働分配率に対する以下の考え方には疑問を持っています。
「労働分配率とは、「付加価値額」に占める「人件費」を知ることです。これによって、会社に占める適正な人件費を知ることができます。」
上記によると先験的に不動の適正分配率があるかのような解説ですが、省力化投資オートメ化進展にともない収益・コストにしめる人件費率・労働分配率がどんどん下がっていくべき変動値である点を誤解?しているように思いながら、(私の方が素人ですので私の誤解によるのか?)引用しておいたものです。
私の意見は、生産力やサービスをアップしても省力化投資で労働者を少ししか増やさなくとも済む社会にして、その代わり高度な機械操作のできる人材の人件費「単価」をあげる(結果的に労働分配率は下がります)のが合理的という意見です。
中国並みの低賃金でなくとも国際競争できるようにするべきです。
従来システムだと100人の作業量が120人分に増えても省力化投資によって100人で間に合わせる代わりに高度対応できる100人の人件費をアップする政策が必要です。
そのためには、高度な設備を活用できるための労働者の質引き上げ(コンビニ店員の例で書きましたが)マルチ人間化・教育投資が必須です。
選挙目前から選挙中に「労働分配率が低くなっている」とメデイアでフィーバーした挙句に選挙が終わるとメデイアで全く取り上げなくなってしまったのが不思議ですが、政治的にうがった見方をすれば、「好景気というが、国民の実感がない」という根拠のない常套文句裏付けのイメージ強調に目立つフレーズだったからこの種議論が、メデイアのテーマに浮上してきたのではないでしょうか?
選挙期間直前から選挙中だけ尤もらしく騒いでおいて、「景気がいいと言っても労働者に恩恵がない」のかというイメージだけ国民に刷り込めばいいという戦略だったように見えます。
労働分配率は労働単価ではなく総人件費の収益に対する比率のことであるから労働総人口と設備投資額に関係するので、すぐに反論を受けるのがわかっているが、反論が出る頃には選挙が終わっているのでメデイアが反論を取り上げないでそのままそんな議論がなかったことにしてしまう・・・そのうち選挙さえ終わればそんな議論があったことは忘れてしまうだろうという思惑・・一定勢力応援戦略だった可能性があります。
選挙直前から選挙中怪文書が出回ることが数十年前には流行りましたが、怪文書がデマだったとわかった頃には選挙が終わり、落ちた方は切歯扼腕して終わりという構図でした。
怪文書ほど露骨でないのでわかりにくい・巧妙ですが、政権支持率をやけに低くしてみたり(ニコ動の支持率調査だけが選挙結果にほぼピタリあっていたことをNovember 5, 2017, に書きました)一定方向への誘導が顕著でした・・いろんな方法で公的メデイアが選挙を一定方向へ誘導するための方法)を駆使して選挙運動をしていた疑いがあります。
私もこのコラムを書いていて「選挙の頃にそんな報道があったなあ?」という程度の記憶で(数ヶ月前の新聞であれば廃棄しているのでそこから掘り出す・.図書館にいって探すのは大変な労力ですが・・)念のために検索してやっと思い出した程度です。
15日に紹介したhttp://www.toushin-1.jp/articles/-/4126によると第1回が9月12日と書いていますから、まさに総選挙・・解散日程直前の頃にメデイアでフィーバーしていたことが分かります。
それが選挙が終わった今ではまるで出てない・・変なカラクリです。
ネットの発達でマスメデイアが取り上げなくともネットでの反論や解説発表時点での記録が残るので、マスメデイアの言いっ放しの洗脳作戦の結果が残ります。
ちなみに選挙が終わって約2ヶ月経過の12月15日の日経朝刊9pの「21世紀の生産性を測る」というオピニオンには、いつの調査か書いていませんが、「中の上」と「中の中」意識が増えて「中の下」、「下」の意識が減っていることが主張されています。
町中を歩るくと若者の多くが好景気を謳歌している様子が見えますが、これが実態だったでしょう。
このように意識調査の報道は基礎データを誰もが簡単に見られないので、根拠不明の報道可能です。

労働分配率低下論2(省力化投資と人材レベル強化策)

企業は売れ行き不振対策として値下げ競争に突入すると、将来性がないので新製品工夫しか生き残りできないのと同様に人手不足だからと(省エネ努力しないで)単なる給与引き上げ競争に入るのでは先行きの展望がありません。
これは個別企業だけの問題ではなく、国単位の国際競争での生き残りの成否でも同じです。
人手不足対策として企業が省力化に躍起になっているのは合理的ですから、外国人労働者導入を極小にするために機械化が進む・人件費率が下がるのは当然です。
オートメ化どころかAI化が進むと人間の仕事がなくなるという意見もありますが、今のところ、日本社会は、失業の増大で困っている社会ではなく、人手不足で困っている社会です。
将来に備えるために人手不足の今こそ、このチャンスを生かして省力化投資→高度設備操作に対応・適応できる人材育成に力を入れるべきです。
身近なコンビニ店員で見ていても、商品配置場所案内等の従来型能力にとどまらず、ATM操作から劇場.航空券購入その他店員の対応能力の多様性・進化には驚くばかりです。
多様な処理能力が発揮される前提として、レジその他の処理が簡便化してかかりっきりにならなくて済む合理化・.これが失業になるのではなく、コンビニのマルチ化・サービス提供余裕を与えている・実態があります。
お陰で消費者はあんちょこに高度な利便性を享受できているのです。
省力化と人材レベルアップが一体化してこそ高度なサービス社会を維持できることが分かります。
AI化が進むと、知的レベルの高い人でも職を失うかのような意見がメデイアでは一般的で不安を煽っていますが誤導です。
最低作業とされていた現場系・土木工事現場でも(下水道やガス工事を通りがかりにのぞいてみると)パソコン画面を見ながらの工事が増えているし、コンビニ店員の例を書きましたがヨドバシカメラでも同じで高度な商品知識や、高度知的レベルがないと働けない時代がすでに来ているので人材の底上げ、高度化投資が社会にとって重要です。
この点では、国民の底上げ・従来型義務教育だけではまともに働けないのが常識ですから、高校授業料無償化などの政策は時宜にかなった方向性でしょう。
弁護士業務も従来型作業の多くの部分がAIにとって代わられるとしても、その代わりにさらにマルチ的な別の能力が要請される時代が来るはずです。
その代わり昨日書いたように高度作業に適応できる個々人の所得が上がっていくのが理想的です。
20代に名門大学を出て一流企業に大卒時に就職できたとか、ある資格を若い頃に得ているというだけで終生安閑とできる時代ではなく、働き方のレベルアップが日々要請される社会になるのは、技術革新のサイクルが早くなり日進月歩である以上・・我々の世界でも法令改廃がひっきりなしです・・仕方がないでしょう。
これからは、いろんな資格は運転免許証のように一定期間経過で再テストが必要な時代が来るべきかも知れません。
もちろん企業人も例えば10年ごとに再スクリーニングが必須の時代が来るべきです。
01/19/10終身雇用と固定化4(学歴主義3)」等の連載で定年延長ではなく、およそ10年程度に短縮すべきだと書いたことがあります。
人手不足で業容縮小するしかないほど困っている社会なのに、労働分配率にこだわり省力化投資を目の敵にする?マスメデイアのイメージ論調は、どのような社会を理想としているのでしょうか?
「人手不足対策の工夫するな!ただ困っていろ!」というのでは、日本社会が困ってしまいます。
いろんな企業で人手不足のために、業態縮小(閉店時間切り上げや配達時間限定•回数減など)を余儀なくされている企業の状態が日々報道されています。
たとえば以下の通りです。https://jp.reuters.com/article/japan-labor-shortage-idJPKBN19E0JA
2017年6月23日 / 15:44 / 6ヶ月前
焦点:広がる人手不足が企業活動圧迫、潜在成長率ゼロ試算も
東京 23日 ロイター] – 人手不足で生産やサービスを制限するケースが運輸業だけでなく、製造業も含めて広がりを見せてきた。このまま労働力不足が継続すれば、2030年には日本の潜在成長率はゼロ%ないしマイナスに落ち込むとの試算もある。

上記記事ではゼロ〜マイナス成長予測を書いています。
今の好景気循環は、国際競争に勝っていて競争力が高待っている状態で注文に追いつかない・.増産できない状態がそのまま続くと想定していますが、人不足→賃上げ競争による労働者奪い合いだけで終始していると、国全体で見れば増産対応ができません。
しかも、この方式に委ねると賃上げ→製造その他のコストが高くなりすぎて結果的に競争力低下・・注文が多くて納品待ちが続くのではなく、そのうち競合国に負けて注文がへっていく動的な面を軽視しています。
ゼロどころかマイナス成長になってしまうのが原則でしょう。
多分メデイアの論旨は、だhしめえtふぁら外国人労働者を早く大量に入れろということでしょうが、人件費競争をしている限り国民一人あたり所得が上がりません。
しかもて賃金労働として引き入れるとその家族・次世代の底上げ教育が必要で却って
トータルコストが上がります。
最近少年院で外国人少年比率が上がっていると言われています。
だいぶ前から書いていますが、子供の日本語能力が低いので、子供社会に馴染めないし社会人になり損ねているし家に帰っても親は殆んど日本語が話せない(親子の意思疎通もままならない)という状態で、どうして良いか分からないママ少年院を出て行く状態が言われています。
弁護士会としては今後福祉と連携していかないとどうしょうもない状態という議論が起きています。
学校現場ではだいぶ前から、日本語の殆んど分からない子供に対する教育の仕方について問題になっていますが、外国人の安易な(数万円人件費が安いからということで)雇用は社会に対して大変な負荷をもたらす危険をメデイアは何故か報道しません。
サービスを含めた商品供給が従来比2〜3割増えても人員を同率増やすのではなく、数%増で間に合うようなシステム構築などの成否が生き残りの明暗を分けます。
こうした工夫→システム刷新実行には数年単位の時間がかかるのでその間人材不足になるのでしょう。
この場合従来100人の仕事が120人必要になっても従来どおりの100人で賄えるようになると各人の給与を何割か上げる余地が企業に生じます。
従来基準で120人分の仕事が100人でこなせるのは省力化投資の結果でから支払わずに済んだ20人分の人件費のうち省力化投資の方に多くが吸収されますが、少しは賃上げ要因になるでしょう。
それでも、売り上げ増2割に対する労働分配率が下がることになります。
省力化投資にある程度比例して国全体で言えば総人件費・.労働分配率が減って行きますが、個々の労働者の所得水準が上がり国民は幸福です。
その代わりに20人失業するのでは困りますが、好景気下で拡大基調の現在、例えば好調な物流系で100人雇用が必要な時に省力化投資で80人で済むというだけで、解雇する訳ではありません。
雇用の奪い合いが緩和されるだけのことで、今では他産業でいくらでも募集があるので、その心配がありません。
人手不足の今こそ、このように省力化投資に邁進・誘導し構造転換させていくチャンスではないでしょうか?
スーパーレジが自動化されるとレジ要員が大幅減ですが、その空いた要員を別の部署の作業に振り向けられるようになるほか、新規採用が減った分は人手不足の他の業界の応募者になっていくでしょう。
こうした循環の結果、社会全体で人手不足解消される点が、企業の省力化投資の損益分岐点・均衡点になるでしょうから失業者が溢れる心配は論理的にはありません。
上記のためには人材市場が合理化(流動化に耐えるように)されていることが重要です。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC