利子・配当収入(鉱物資源)で生活する社会1

平等意識の強い我が国でも高度成長期から大分期間が経ってくると、親世代が有能で高収入を続け、ある程度金融資産を残して、あるいは巨額株式保有をしていて死亡した場合、次世代以降が無能でもその巨額株式等の遺産で贅沢できるさらなる不平等時代が現出します。
個々人の区別はできないとしても総体で見れば、わが国の対外純資産分だけ貯蓄が積み上がっていると言うべきですから、(赤字財政・・年金赤字+国債残高の増加で「子孫に借金を残すな」の合唱ですが、実際には)この純資産分だけ、貯蓄を次世代に残す勘定になります。
この純資産を国民が平均保有しているなら話は別ですが、持っている人と全く持っていない人がいる・・偏在しているのでこの格差が次世代には大きく作用します。
仮に預貯金がゼロに近くても普通の中堅ホワイトカラーでも都市住民の場合、かなりの人が東京都内・近郊に一定の土地建物・マンションを保有しています。
市営・県営住宅等に住んでいて何も残さない人の次世代との比較では、一戸建てあるいはマンション保有者との生活費負担に大きな格差が生じることを、都市住民2世と地方出身者の格差としてFebruary 5, 2011都市住民内格差7(相続税重課)」まで書いたことが有ります。
巨額金融資産保有者として我が国の有名なところでは、ブリジストンのオーナーの娘で鳩山元総理の母親が目もくらむような巨額遺産を相続していてその資金が鳩山元総理などに流れたことが、政治資金規正法の虚偽記載に繋がって政治問題になったことは記憶に新しいところです。
鳩山兄弟は無能で遊んでいるのではありませんが、鳩山兄弟は政治家として有名なので明るみに出ましたが、社会の表面に出るのは氷山の一角に過ぎないと言えます。
我が国でも高度成長期に巨大企業化した数多くの企業オーナーの子孫の時代が始まっていますので、お金の使い道がなくて遊んで暮らしている人が一杯いる筈です。
大王製紙の会長が(2世〜3世?・どら息子の典型?)が子会社から100億近い借金をしたとマスコミを騒がせてでいるのもこの氷山の一角の一例です。
我が国はお金持ちであることを自慢しない社会ですので、彼らは目立たずひっそりしているだけで、我が国も(知らないところで巨万の富の上で遊び暮らしている人が増えている)アメリカ並みの格差社会に近づきつつあります。
このように国際収支が貿易赤字なのに所得収支で均衡を維持したり黒字を計上している国では、真面目に働きたくとも製造現場が減る一方で失業者が溢れ、(今朝の日経新聞第一面では、製造業が国内総生産の3割を切り、GDPは過去20年で48兆円減って雇用者数は570万人減少したと有ります。)その内に働く意欲が薄れ、国民の健全性が次第に蝕まれて行きます。
円高対策として海外進出しても、海外で儲けて配当収入で黒字を計上出来れば良いという意見が目立ちますが、これは国際収支上の均衡を維持するための意味でしかありません。
その間の国民の生活(働かないで暮らす人が増えると技術の蓄積がなくなります)はどうなるのか、将来所得収支黒字(利子・配当・知財収入等)がなくなったときにどうするかの遠い将来を見据えた意見とは言えません。
いつかは預貯金は食いつぶすのですが、個人の場合は100歳(寿命のつきる)前後までの資金を用意しておけば、その先は残っていてもいなくとも良いと言えますが、国家の計画としては、その先のことも考えておく必要が有ります。
幸いか不幸か分りませんが、所得収支の黒字が大きくて次世代でも使い切れずに残っていて3世代先まで残せたとした場合の方が実は大変です。

ギリシャ危機とEUの制度矛盾3(関税自主権等)

今回のギリシャ危機解決のために主たる債権国のスイス・フランス以北の国々が、債権放棄あるいは追加融資で対応せざるを得ないのは、本来は1つの国内類似の関係・同一経済圏である以上当然の結果です。
日本でも仮に各県を独立国とした場合、地方県は東京大阪等からの流入超過を阻止するために、独立国として自国を守るために高率関税を取ったり輸入制限して自分の県内に立地しない限り、車、家電製品その他製品を売らせないことができます。
(金利の調整もできます)
(幕末に締結した不平等条約の改正・関税自主権の回復その他のために明治政府がどんなに苦労したかを想起すれば分るように、関税自主権は主権国家の最も重要な権利です)
高率関税や輸入制限等の規制ができれば、東京大阪圏等の企業は各地の県別に工場を分散立地するしかなくて、結果的に各地方に産業が立地して地方の自立が出来ます。
その代わりマーケットが狭い地域の乱立で、各企業は規模の利益を追求出来ず、世界的な競争力を獲得できなかったでしょう。
日本企業は国内だけで世界第二の大規模なマーケットを有しているので、国内である程度大きくなってから海外に出られるメリットがありました。
日本は各国の輸入制限措置の結果、アメリカに現地法人を設立して工場立地したり、韓国や台湾、中国アジア各国に合弁進出せざるを得なくなっています。
トヨタやコマツ建機等が海外で稼いでいると報道されていますが、これは国民を安心させるための一種の欺瞞・レトリックであって、稼いでいるのは正式な社名は知りませんが喩えばアメリカトヨタ、中国トヨタという別法人であって、日本のトヨタやコマツはその株式の大半を握っているだけです。
言わば海外生産比率の高い会社はすべからく株式保有による投資収益を本国に還流しているだけであって、世界企業とは生産会社から投資会社・知財会社化が進んでいる会社と言うべきです。
海外比率が4割から6割8割と上がって行くに連れて、生産・製造収入比率が6割4割2割と減って行く場合の社会がどうなるかを考え直す必要が有ります。
この比率を国内総生産に当てはめれば、生産に従事して得た収入が2割で、利子・配当・知財収入8割で生活している社会となります。
65歳以上の世代になれば、年金や配当収入及び貯蓄の取り崩しが生活費の8割で、老後のアルバイト収入が2割(有るだけマシ?)でも良いのですが、国全体(現役世代)がこれでは、社会がおかしくなってしまうでしょう。
全員が均等に株式等金融資産や知財収入を保有し、均等に職場が有れば上記の図式ですが、不均等が世の常です。
現役で言えば知財・金融資産保有者には有能な人が多いのでこれら資産を大量保有した上で2割の仕事を独占して高収入を得りょうになり、8割の人は無職で金融資産も保有していない・収入ゼロになりかねません。
現役世代では高額所得者と失業者・生活保護費受給者と二分される社会になりがちです。
アメリカがこの格差社会に突入していることは「 October 28, 2011格差社会1(アメリカンドリーム)」以下のコラムで書きました。
我が国の場合、現役の収入格差が小さい(企業トップと平社員の収入格差は諸外国に比べてかなり低い社会です)うえに累進課税のカーブがきついので現役一代目には有能な人でも一代で稼いで蓄積出来る金融資産は多寡が知れています。

ギリシャ危機とEUの制度矛盾1

グローバル経済が始まるまで日本の驚異的な輸出増によって輸出縮小・・国内生産減少に見舞われていた欧米の内アメリカ中心に書いてきましたが、ここから日本の攻勢に対する欧州諸国の対応を少し見ておきます。
アメリカは戦後世界の半分以上の生産力を誇っていて、超豊かな時代があったので日本やドイツからの輸入が増えて貿易赤字になっても、内需拡大で国内生産縮小を補えてたのですが、その惰性と言うべきか、蓄積を使い尽くして対外純債務国に転落してもそのまま贅沢をやめられなかったので、リーマンショックを引き起こしました。
欧州諸国は第一次と第二次世界大戦の戦場となって国富・蓄積を使い尽くしていたので、アメリカのような超豊かな時代がなかったので、日本に輸出で負けるようになっても内需拡大政策をとれませんでした。
その代わり採用したのが、10月18日に紹介した低賃金外国人労働力の導入でした。
ドイツやオランダの外国人労働力が有名ですが、イギリスでもフランスでも欧州諸国はどこへ行ってもアフリカ系や中国人や南欧など外国人労働力で溢れています。
20年ほど前にパリへ行ったときに帰りにホテルから空港までタクシーに乗ったら、運転手はアジア系で聞いてみると中国人とのことでした。
ま、日本人ではタクシー運転手になるために外国移住する人は今でも稀でしょう。
パリでもロンドンでも道路清掃やバスの運転手系は黒人が圧倒的に多い感じで人種別階層が出来上がっている感じです。
こうなると白人系の底辺層が(自分で敬遠して)こうした現場系労働から閉め出されがちですから、底辺層に人種差別運動・外国人排斥運動が起きるようになります。
今年の夏にノルウエーだったかで青年が外国人労働者増加に反対してこれを推進している大会に向けて無差別発砲事件を起こしたことで、こんな寒いところまで外国人労働力が浸透していることに驚かされたものです。
欧州諸国は外国人労働力導入によって日本に対抗しようとして、国内に高賃金の自国民と外国人労働者という2階層を作り出していたのですが、元々階級社会性・意識が色濃く残っている社会だから許容出来るのでしょう。
(ココ.シャネルの映画を見た感想として、所有権の絶対性に絡んで階級意識が色濃いことを、08/10/09「大名の没落と西洋貴族1(所有権の絶対性1)」以下のコラムで
少し書きました)
しかし民主主義国家ですから、賃金格差を維持出来るのは来たばかりの外国人だけであって、2世になると同等の待遇をせざるを得なくなります。
即ち外国人労働者を導入して4〜50年以上経つと、2〜3世の教育問題その他社会コストが増大して来る割にレベルの低さに悩まされるようになります。
フランス以北の欧州を覆う真の問題点でしょう。
ユーロ誕生後は単一経済圏誕生の恩恵で独仏以北の先進工業国は南欧諸国や東欧諸国を内庭として有利な輸出環境になったので、輸出が伸びて潤いましたが、その分南欧東欧諸国は借金まみれになってしまいました。
南欧の主な債権国は独仏英蘭であることは、独仏等輸出国が金を貸して輸出していたことの裏返しです。

国際競争力低下7と観光亡国1

国民の御機嫌取りのための内需拡大政策は、国内産業を強化して外貨を稼ぐどころか、却って資金流出加速策・・・対外借金増を繰り返していたので、その咎めが遂に出たのが、リーマンショックを単純化したストーリイです。
不景気が来れば内需拡大よりは韓国のように極端なウオン安にして行って輸出増加政策をするのが(相手にとっては失業の輸出で困りますが・・)正しいのです。
アメリカの場合、強いドルを演出しないと沽券・過去の栄光に拘ることから、連続的な貿易赤字なのに強いドルを軍事力・金融支配力で下支えして来たのですから,無理は無理ですからいつかは破綻します。
無理の咎めがリーマンショック以降の現在のドルのじり安に繋がっているのです。
ただし、世界中が質素倹約で売ることばかり考えていると世界全体の需要が減退してしまい、まさに世界大恐慌の到来ですから、黒字国は内需拡大して赤字国は内需を縮小して(歯を食いしばって)技術を磨いて輸出力を回復して行くのが正しい処方箋です。
最近話題のギリシャ危機について、ここでちょっと書いておきましょう。
ユーロ危機震源地のギリシャなどは元々赤字国(対外純債務国)ですし、観光業も既に成熟していますから、これ以上財政支出による内需振興をやっていると余計国際競争力がなく増す。
内需拡大目的ですから不要な投資が多くこの設備投資負担が重荷になって高コスト社会になって行き、ひいては企業に対する税その他の間接的な高コストに繋がって結果的に余計国際競争力がそがれて行きます。
観光業などにシフトしても同じことで道路のタイルばりなど無駄なインフラ整備でその負担が税に跳ね返ってきます。
根本的解決には内需拡大よりは輸出力回復によって外貨を稼ぐことしかないのですが、長年輸出競争で負け続けている国が短期に輸出力を回復することは不可能です。
外から稼ぐ能力がなければ、山で遭難したときと同じで、先ずは身の丈を縮めて風圧を避けるのが本則です。
ずばり言うのは気の毒ですが、外貨を稼いでいる範囲まで「節約・生活水準を落とすしかない」と言えば分りよいでしょう
ギリシャ国民よりも生活水準の低いスロバキアが、支援策に最後まで反対していたのはこうした背景があるからです。
輸出競争で負け続けているのはそれ相応の原因がある・・知的レベルが低いとか不器用とか根気がない、あるいは技術の蓄積がないなど長期的要因によるところが大きいので、長期的な計画的施策が必要で短期的対応策などあり得ません。
政府や市町村の行政府・政治家は、50年単位の長期的施策では自分の成果にならないので、直ぐに手っ取り早い観光とか、イベント開催に走りがちです。
観光立国と言っては、キャンペインにお金を使い、駐車場を整備し遊歩道や休憩所や手すりを造るなど土木工事が中心で、土木業者が潤うだけですので、公共工事中心の内需拡大は人気がなくなったので言葉を変えているだけでしょう。
観光立国とは形を変えた内需振興でしか有りません。
これをもって観光「産業」と言うか疑問が有りますが,観光業には何の教育訓練も要らず、何とか県民会議などの会議さえ開いていれば良いので安易すぎます。
20年ほど前に姫路支部の裁判に行った際に、2泊して竜野の城下町を散策しましたが、このときに童謡の里と言う公園に行ってみると綺麗に整備された食事処が出来ているのですが、そこで食事するのは私たち夫婦だけでした。
時々観光バスが来るのですが、さっと見てトイレに行ったりゴミを捨てて行くだけで誰も食事などしません。
大型バスが入れるような広い道や大規模な駐車場整備など億単位の税金で使っているのでしょうが、観光客は公の施設をただで利用して行くだけでした。
千葉県内の大多喜城へ行ったときのことを昨年あたりに書いたと思いますが、駅から少し離れた坂道にさしかかると小高い丘か山に掛けて(城は丘陵の上に有るので)歩道付きのしかも高価そうな欄干を付けた立派な道路が出来ておおきな駐車場も出来ているのですが、観光客は私たち夫婦の外はまばらで、(数人出会っただけです)お城管理や受付の人は4〜5人いたのと入り口付近にある食堂の店員がいたので、彼らの雇用には役立っているかも知れませんが、(お城の維持管理費用は博物館という別の項目で自治体から補助金が出ているのでしょう)食べているのは私達のように電車で来た夫婦くらいで、採算が取れているのか怪しい感じです。
竜野市の公園と共通して言えることは、食堂のパートのおばさん一人プラスアルファの職場を確保している程度にしては税金の使い過ぎではないかということです。

格差社会1(アメリカンドリーム)

ウオール街での格差是正デモがあったのでこの際書いておきますと、アメリカ社会では一握りの大金持ちがいて大多数が貧しい・貧富格差が大きいのが特徴ですから、正義の実現のためにこの是正が必要なことは国際収支赤字の問題とは別次元の問題です。
10月24日の日経朝刊5ページの「グローバルオピニオン」欄のスティグリッツ氏(ウオール街デモの基礎になる論文を書いた人らしい)によると、アメリカでは上位1%の富裕層が所得全体の4分の1を稼ぎ、富みの40%を占めていると書かれています。
アメリカンドリームという言葉を有り難がっている人が多いのですが、この熟語自体が、超格差社会を反映した言葉です。
国内の富が一定であれば、一人で何兆円・天文学的富を持つ人がいる以上その分誰かが貧しい人がいる理屈です。
また統計の話ですが、国民平均所得で世界ランキングを発表しているのが普通ですが、平均と最多数値帯とは同じではありません。
アメリカやインド中国のように格差の激しい社会では、平均値以下の人が圧倒的多数になります。
工場労働者の平均賃金とか、非正規雇用者の平均賃金など職種別平均賃金で比較しないと実態が分りません。
弁護士でもそうですが、アメリカのように大規模事務所が発達していると、そこのパートナー(経営者)と平の弁護士の格差が大きいので、弁護士全部の平均収入を比較しても大多数の弁護士の収入平均にはなりません。
また、金融収支の比重が上がって来ると国内総生産を国民数で割るようなおおざっぱな統計ではなく、(内容を見るとこんな程度ですから、これを統計と言えるのか驚きです)金融収支の分も加味しないと意味不明になります。
前回まで書いたように、我が国でも貿易収支の黒字よりも所得収支の黒字比率が上昇して来ると、製造業関係に携わるべき人(失業者も含めて)の収入比率が減るのは当然で、逆に無職あるいは低所得でも所得収支で稼いでいる人の比率が上昇します。
金融収入に関与する人は高額所得者ないし遺産収入の有る人などが多いので、格差拡大が余計拡大して行きます。
10月26日まで書いたように、貿易赤字が進んで国内生産が壊滅状態になってもまだ経常収支が黒字の場合、国民の多くは失業しながらも食えて行けるのは、海外からの送金があるからです。
国民全体が無職で年金生活をしているような社会です。
年金や生活保護支給のため、あるいは医療や保険給付,保育士などの職員は,個人としては失業中ではないですが、国家経済全体では生活保護や失業給付支出内の支出に過ぎません。
金融収支や所得収支に頼る国家経済では、海外から送金の恩恵に与かれるのは限られた人になりがちで、限られた大金持ちの海外からの金融所得・知財収入等に失業中の多くの国民がぶら下がる構図ですが、こういう社会になれば貧富格差が大きくなるのは当然です。
対外純債務国のアメリカの場合海外からの利子配当ではなく借金中心ですが、借金出来る人と出来ない人の格差を緩和するために庶民にも支払能力に関係なく借りさせて良い家に住めるようにした・・借金の恩恵を庶民に及ぼしたのがアメリカのサブプライムローンでした。
特にジニ係数・・相対的貧困率になって来ると、フローの収入平均よりもストックも重要ですが、これの統計が難しいので、全く無視して議論している様子です。
高齢社会では、(高齢者は今の収入はゼロに近くとも、ストックの取り崩しで生活している人が多いので・富豪まで貧困層にカウントされてしまいます。)意味がなくなっていることもこの後に書いて行きます。
製造業分野で国際競争から長い間脱落していたアメリカでは、マイケルジャクソンやビルゲイツなど一握りの成功者が巨万の富を得て、国民大衆は失業状態・・彼らの寄付・慈善事業・・おこぼれ・・お布施に頼っているのがアメリカの理想社会の現実の姿であり、これを有り難がっている我が国のマスコミはどうかしています。

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