消費社会と指導者視点のリスク

指導者の号令一家の経済運営は勢いがありますが、一斉型発展型経済で人件費が一斉に上がった場合・・・全産業一斉に競争力を失うので、入れ替わりに新たに伸びて行く産業がないので大変です。
低賃金を武器に国際競争上優位になっていた点では重工業も軽工業も全ての分野で同じですから、各業界で中進国の罠にはまる前に技術力アップに成功していたホンの何%かの企業以外は賃金アップについて行けなくなります。
例えば全産業で技術アップに成功していた企業が5%平均(しかない)とした場合、残り95%の企業がギブアップになります。
深圳などではバングラディシュやベトナム等との低賃金競争に負けて数年前から何千人規模の大工場の閉鎖ラッシュと言われますが、規模が大きいからマスコミ対象になっていますが、実はいろんな分野での整理・失業が始まっているものの、大量失業者の多くを吸収出来るほどの転職先がある訳がないと思われます。
輸出型産業を縮小して内需型に転換するしかないのですが、未富先老が問題になるのとと同じで、まだ内需が育っていない・・庶民の懐がまだ豊かでないので購買力の厚みが足りない・・不足します。
イキナリ内需転換と言っても生産品の大部分が輸出目的であった結果、輸出を縮小すると企業淘汰が早く進み過ぎる・・膨大な失業が予想されます。
日本が中国など低賃金国の挑戦を受けたときには日本にマザー工場を残して現地生産・・現地工場への部品輸出が残った、・例えばクルマや白物家電工場で言えば部品輸出や技術指導などの仕事が残りました。
中国の場合、自社技術がなく先進国からの技術導入なので、日本企業が第2〜3工場をベトナム等に造れば日本から部品輸出になるだけで、中国工場から輸出するべき独自技術が滅多にありません。
ベトナムやバングラデシュで生産→輸出が始まるとその分100%輸出・生産が減る関係です。
鉄鋼・石炭産業の整理だけで約600万人の失業が予定されていると言われますが(前回2月のG20で大見得を切った?)過剰設備整理公約を実行出来るかが見ものでした。
上記のとおり失速しているのは鉄鋼石炭石化製品等目につく企業だけではないのですから、日々発生している暴動に対する政府の危機感は半端ではないでしょうから、つい我慢出来ずに過大設備廃棄をちょっと進めては、こっそりテコ入れするしかないのが実情です。
実際に耐え切れずに直ぐに金融緩和した結果、5月初めには休止中の鉄鋼業などの操業再開・マンション価格暴騰などの副作用が国際的に(7月23日「中国の権力闘争激化1」に勝又氏の紹介しているフィナンシャルタイムズの記事を紹介したように)取りざたされています。
内需拡大・サービス業への人員誘導と言っても、石炭産業や製鉄所で働いていた人(現場工員)がサービス業(にこやかに接する)に転換するのは容易ではないでしょう。
急激な人員整理を避けるために?国有企業の赤字企業救済と兼ねて(金利下げは人民元下落に繋がるのでこれを防ぐために)この数ヶ月紙幣増発(・・中央銀行への準備預金率引き下げ)マネタリーベースに留まらず社会融資総量(7月28日のコラムに記載)の増加で対応して来たようです。
紙幣増発すると近いうちに人民元が下がると思うのが普通ですから、資金余力のあるコクミン・企業は損しないように急いでドルに変える動きに出ます。
(何千年といたぶられて来た歴史の結果、政府を信用していないので、こうした人民の自己保身能力が極めて高いのが特徴です)
その分外貨準備がザルの底から水が漏れるように減って行きますので、金利切り下げほど直接的ではないですが、時間経過で人民元下落圧力になっています。
中国の金融緩和分(社会融資総量)の大方は、債務の借り換えに使っているので債務が急激に増加していると言われます。
5月15日日経朝刊朝刊4面には、中国政府は景気テコ入れ政策?で、4、7兆元(リーマンショック時に4兆元投資で世界をあっと言わせたので同規模以上)の鉄道・飛行場等の公共投資計画を発表しているものの、不動産投資中心にバブル効果が出ていて、不透明な地方政府債務+融資平台(シャドーバンキング)の債券発行が急膨張している状態が始まっている。
しかし、民間投資は減速していて民間には影響が及んでいない・実需がない・・不動産バブル再燃期待政策?・・「不動産投資依存中国で強まる」と言う大見出しになっています。
中国では、バブル崩壊を先送りするためにミニバブル再燃に持ち込もうと言う魂胆でしょうし、利にさとい国民は政府がテコ入れするならば、株式相場と同様に半年〜一年は相場が続く筈だから、その間に一儲けして売り逃げしようとして再投資に踏み切っている人が多いようです。
恐ろしい国民と言えば言えますが、中国では政府主導によってサブプライムローンの拡大版が起きていてこれが破裂したときに世界にどのように激震を走らせるかが現在世界の重要課題です。
リーマンショックは・・・サブプライムローン利用者と不動産業界→金融業界だけが直接の関係者でしたが、中国の場合、多様な分野の国有企業の一斉過剰生産力→破綻と一緒になっている分が戦前のアメリカ大恐慌とメカニズムが似ています。

2国間交渉社会に戻ることは可能か?1

日本の場合議院内閣制の結果、国政選挙だけではなく地方選挙による民意修正がひっきりなしにあるので、上記土井党首辞任のように民意反映・修正が早いのですが,大統領制の場合、任期が固定されているので票目当ての無責任煽動が起きると被害が大きくなります。
パク大統領の慰安婦騒動も同じで単純化して煽ってしまった挙げ句の日韓合意では、国民が収まらなくなって進退窮まった好事例でしょう。
現在のパク大統領に対する退陣要求高まりは、表向き批判は個人的関係者への便宜供与や機密漏洩ですが,反朴感情高まりの背景には国際政治関係が実際にうまく行っていないことや,財閥に対する切り込みを公約していたのに実現しない不満+経済不振→若者の就職難・格差拡大不満,昨年末の日韓慰安婦合意に対する不満等々・マグマ?がたまっていたことが明らかです。
民意自体をきめ細やかに積み上げて行かずにスローガンで感情的に決める社会では、その対としての政治体制も不満を柔軟に吸収して行けない・硬直しているので、不満がたまれば「デモ」と言う力技で社会を変えて行くしかないのでしょうか。
今回の大統領に対する退陣要求が暴動的争乱になっていない点は進歩と言えるようですが,正常なルート・落ち着いた話し合いでは民意を反映出来ない仕組みになっている点は同じです。 
トランプ氏の二国間交渉論に戻ります。
2国間だけでの貿易均衡だけ図る交渉は比較的単純です・「お前のところの対米黒字を◯◯まで減らさないと制裁を加えるぞ!」と言うスーパー301条方式延長で可能です。
世界全体で多角的な貿易収支均衡を図るのが変動為替制度ですが、トランプ氏が主張する・・TPPなどの多角交渉を全部やめて行く2国間主義・・2国間だけで均衡を図るとなると結果的に高度に発展した多角的貿易体制を破壊することになります。
貨幣利用の智恵は直截交易相手と交換するものがなくとも貨幣に転換すれば、別の人から欲しい物を買えるので、一対一の物々交換から3人集まっての3者交換〜4者〜5者〜10者交換と広まって行き,遂には市が立つ(今の広東交易会等の原理)ようになり、その内抽象的な貨幣制度→債権・手形や有価証券売買などが発展して来ました。
2国間協定はアメリカのpeople・民度向け・・昨日書いた弁護士向けの交渉術・単純思考でアメリカpeopleにも分りよいですが,言わば一対一の原始物々交換経済に原理的に戻るようになります。
現在社会では経済要素が100〜200の要素に留まらないほどの複雑な絡み合いで成り立っているので、一対一で決めたルール・・個人で言えばその日どこかへ行く約束すれば別の友人と同時間帯に別の場所へ行く約束を出来なくなるように,2国間協定(・・ある国だけ関税優遇すれば競合輸出国が割を食いますし、その逆もあります)は他国へ影響を及ぼさずにいられません。
これを強権的に多角・重層的判断経験のない政治の素人が決めることは不可能な時代に入っています。
ちなみに西欧から入って来た経済学も単線思考形式である点は基本的に同じように見えます。
何回も書いて来ましたが,彼ら「偉い」人の意見は「その他与件が一定であれば・・」と言う前提条件付きの議論ばかりです。
ところが,現実の動きにはその他与件が一定のことなどあり得ませんから,空理空論を述べているだけで,いつも現実の動きに全く合わないことばかりですが,彼らは全く予想に反した結果が生じてもその直後からまたマスコミで「今回の株価の動きは・・」などと平然としてあらたな御託を並べています。
そんな意見を聞いて商売していると何回倒産しても間に合わないので、事業に成功する人は学者に頼らずに総合的直感で新たな事業をやって成功しているのが普通です。
ソ連の計画経済体制が失敗した原因です。
国と国の関係では各種変数を織り込んだ為替相場変動(神の手)で修正し,個別修正は市場経済・・各種(原油や資源系の各種商品相場や海運市況)商品相場や株式・債券相場の動きによって修正して行く時代です。
これを腕力・権力だけで一方的に決めつければ(低レベルpeopleには)痛快でしょうが,無理をすれば必ず反動が起きます。
無理→暴動による修正も、微妙な民意吸収による小刻み修正繰り返しも、後から見れば結果は同じかも知れませんが、同じことならば社会をひっくり返すような騒乱によるよりは,徐々に社会が変化して行く方が国民にとって幸せです。
自由平等博愛などのスロ−ガンを並べたフランス革命のようなことをしなくても、何も言わずに徐々に発展して来た日本社会の方がずっと進んだ社会だと書いて来た理由です。
ところで、吉宗が米相場で苦労したのと同じで,権力者が「今度こうするぞ!」と言えば,一応関係者の短期的萎縮効果などがありますが,結果的に国内の米相場1つさえもうまく行かない・・まして外国相手においてオヤ!と言うところです。
ここでは、二国間交渉論は複雑な経済の動きを言わば「物々交換の時代」に戻ろうとしているのと同じである・・経済交流に例を借りて書いているだけで・・国際政治と言うものは国内政治以上に(相手側の民族特性が国内以上に理解困難の結果)更に複雑です。
経済交渉は複雑でも「利」を競う点で土俵が決まっていますが,政治は「利」だけでないばかりか,・・民族感情・過去の経緯など上部構造・・文化や歴史個人的好悪感情を織り交ぜて成り立っているその何層倍もの掛け算による複雑なものであり、(だからこそ政治と経済学とは一致していません)どんな強権を持った政権でも,これを権力者の一存で変えることが不可能である現実を書いています。
旧ソ連のスターリンによる強力な独裁制度下でも無理を通していた結果、最後は破綻したし,中国の独裁による経済運営の無理が今にも出て来そうな段階に入った原因です。
トランプ氏のスローガンを実行するには一見して経済原理無視・・既存国際秩序破壊の無謀な政策になりそうなので,プーチンや中国が「これまで出来上がって来た国際秩序を守れと言われなくなりそう」という期待で歓迎する方向性のように見えます。
トランプ氏の登場が,世界の自由貿易秩序に反する独裁体制下の不合理な経済体制を延命させる方に本当に向かうのでしょうか?
そうはいかないでしょう・・却って遠慮がなくなる・それぞれが自己抑制が利かなくなる結果、破滅を早くするだけではないでしょうか?
ところで高関税・高率消費税がかかると国内消費は大幅に減りますが、損をするのは消費者だけとは限りません。
高関税の結果輸入品が割高になってある程度国内生産回帰出来るでしょうが,国内回帰するアメリカの工場・生産者だけが世界相場よりも割高な人件費,部品や原料を使うしかなくなりますので結果的に国内生産コストも割高に変化します。
しかもアメリカに輸出していた業者にはアメリカ企業が海外進出して製造したものが多く含まれるでしょうし,(アップルなどはほぼ100%中国で製造?)コトは簡単に行きません。
ロシアなどがよその国と対立して輸入禁止しても,ロシアの企業が海外進出を殆どしていないのでロシア企業にそれほどの損がありませんが,先進国になればなるほど世界中に進出している・・しかも自国への輸入品関連から先に進出するのが普通ですので自国企業が真っ先に被害を受けます。
(最初に中国へ出た企業・・食品であれ,衣料であれあれ日本人向けの嗜好に合うように現地指導していました)
アメリカの場合、自国企業が中国やメキシコなどへ進出してしまって国内空洞化進展に腹を立てているのですが、その分そっくり自国企業が海外に工場を持っている関係ですから,制裁をするとアメリカに逆輸入している自国企業が真っ先に・最大の割を食います。
今回の北方領土交渉進展を誘導するためのロシアへの経済協力で見ても,日本への輸出目的の産業進出が中心です。
以上のとおりで,トランプ氏の対外選挙スローガンは無茶苦茶過ぎて政策とは言えない代物・・長期的には多分実効性がないと言うのが専門家の見方でしょう。
1つ二つは強引過ぎても折角権力者についたのだから・・とある程度廻りが既存秩序との亀裂修復に工夫して何とかするでしょうが,あちらでもこちらでも皆強引と言うのでは廻りが取り繕い切れない・・結果的に行き詰まってしまう可能性があります。

目的と手段の取り違え社会(社会矛盾激化→反日の誘惑)2

9月30日に書きましたが、反日教育は数十年以上掛けて漸く効果が出る・・しかも始めると途中の政治家権力者がやめることが出来ない・麻薬的効果があるので、特定個人の権力維持政策とは関係がない・・江沢民の真珠湾演説の前に党を上げての永続的?反日で行く決定があったことが推測されます。
共産党政権の存続と反日は表裏の関係・・切り離せない関係にあると確認されたと思われます。
日本では11年の反日暴動ですべて終わったような印象操作がされていますが、中国としては日本が大震災で弱ったときでしかもアメリカとのすきま風が吹いている民主党政権時を狙って、イザと言うときのために実験・・小手調べをしただけでしょう。
中国の究極の目的は、この先必ず到来する成長ストップ(成長がストップしない国はありません)・・経済破綻による大混乱に際しての最後の切り札・・対日侵攻作戦を予定していたと見ておいた方が良いでしょう。
フィリピンやベオナムなど元々格下の国相手に戦争で勝っても、コクナイ危機時のストレス解消になりません・・古代から今まで勝ったことのない日本に勝つかヘコませることこそ最大の国威発揚・国民の目をそらせる手段になります。
先制攻撃である程度戦果を上げてから、ウクライナ危機のように、アメリカの介入による膠着状態に持ち込んだ方が民族意識鼓舞の持続性が高いと言う読みもあるかも知れません。
実は中国は前回のレアース禁輸のときと違って対日交渉では、絶対的な力を手に入れています。
南シナ海のど真ん中に軍事基地を設けた真の意味・・11年の反日暴動時と違って次は「日本向け船舶に限って南シナ海を通さない」と言い出したら日本は遠回りするしかない・・コスト的にお手上げです。
安倍政権は、これを前提にアメリカ産LNG輸入やロシアとの協商など輸入先の拡散に必死になっていますが、中東産原油の輸入比率を下げるだけであって、その他東南アジアとの交易に莫大な支障が生じます。
中国から日本(尖閣諸島など)先制攻撃は国際非難がきついでしょうが、これをしなくとも日本海軍が遠く離れた南シナ海に先に出動して船舶の護衛をしなくてはならない事態(補給その他ですごく不利)・・日本軍が先に領海を侵犯したと言う理由で中国は尖閣諸島や沖縄攻撃の名分を得る予定でしょう。
手段と目的の逆転社会の応用ですが、中国では経済破綻を防ぐ努力よりはアタマっから防げないと決めて・・破綻を小さくする努力をするよりも、危機対策・・危機乗り切り策の方に頭を使っているのではないでしょうか?
これまで書いているように権謀術数特化社会・・権力闘争・・権力維持策に優先的に関心が行く社会だからです。
今年に入って、中国の民間債務急膨張によって、中国の経済破綻(無駄な公共工事によるGDP底上げ努力や公的資金注入によってゾンビ企業の延命←投資に向かわない債務膨張によって明らか)先送りに必死ですが・・ネット評論だけではなくIMFでもハードランニングリスク論が表面に出始めました。
以下勝又壽良の経済時評2016-08-24 04:25:38によります。
中国、「慢性疾患!」過剰債務が招く経済急減速と元安リスク
8月12日に発表されたIMF(国際通貨基金)による、対中国経済審査では、「衰弱」を裏付ける幾つかの指摘が出ている。
(1)「国際通貨基金(IMF)は、中国のシャドーバンキング(影の銀行)関連の19兆元(約290兆円)に上る信用商品について、企業向け融資と比べハイリスクで、デフォルト(債務不履行)に陥れば流動性ショックにつながる可能性があるとの見方を示した。
IMFでは、シャドーバンキングのデフォルトを懸念しているが、格付けAAAをとっている債券すら5割以上のデフォルト懸念である。中国経済が「信用危機」に陥る可能性は十分ある状況なのだ。見過ごしできないところまで追い込まれている。
(2)「IMFは、対中年次経済審査で次のように指摘した。景気刺激策の質を高めるためには、中国の政策当局者は国内総生産(GDP)伸び率目標の設定をやめるべきとの認識を明らかにした。
「インフラ投資を行ってGDPかさ上げの辻褄合わせをしてきたからだ。将来、投資資金も回収できないような無駄な投資を続けることが、中国経済をさらに追い込む。」
以上勝又氏の情報・意見を転載しました・・いろいろな情報がぱらぱらありますが、引用するには勝又氏上記経済時評の情報に多くを頼っています・・・考えも当然影響を受けているでしょう。
日本で考えている以上に、中共政権は民主化していない分に比例して危機管理に敏感な体制ですので、天安門事件に対する国際反応を受けて中国幹部の危機感が半端ではなかった筈です。
次の大混乱・・イザと言うときにどう対処するかについて真剣に対策を練って来たと思われます。
その一環として先ずはコクナイ体制の整備・・江沢民による法輪功弾圧に始まるコクナイ騒乱の核になりそうな集団排除や言論統制強化・党の支配体制確立=集団指導制から個人集中支配体制への移行など大きな流れが決まって来たと思われます。
江沢民のとききから国家主席と党のトップを兼任するようになったと言われてます。
そして今の習近平氏は言わば軍事を含めて全権掌握間近(これに反比例して不満の蓄積が大きくなっている点を強調する意見もあります)です。
国内衝撃の大きさに比例して耳目をそばだてるような大きな事件を引き起こす必要性・・経済ハードランニングが近づいている・・先送りすればするほど先送りに比例して衝撃が大きくなるのが明らか・・政権にとって最高度の危機間近ですから、対日関係で格段のエスカレートさせる必要性が高まって来ました。
この実現のためには、国際環境・・どの程度までの日本侵略をアメリカが事実上容認するかの擦り合わせ・・アメリカの同意またはどの時点で介入するかの読みが必須です。
始めから介入されて引き下がるのでは却って恥をかくので、大枠としては、太平洋二分論・・西太平洋で中国が何してもアメリカが介入しないのがベスト・・介入するにしても、ある程度戦果が出るまでぐずぐずしている内諾・・どこまで行くと介入するのか?この内諾またはニュアンスを求めて江沢民は1年間に4回もアメリカ訪問していたのです。
イラクのフセイン大統領はアメリカの内諾を得たと思ってクエート侵攻して大失敗しました。
それまでフセインはアメリカの手先として対イランの代理戦争を戦っていたのでまさか手のひら返しを受けるとは思っていなかったでしょう。
中国の場合大きいので、対イラクのように簡単な手のひら返しで陥れることは出来ません・ロシアのクリミヤ占領同様に既成事実を作ればこれをひっくり返してしまう力をアメリカは持っていません。
軍事基地がある限り軍事利用する・・その周辺が軍の都合でいつでも通行止めされる事態が予定されていますから、諸外国の航行の自由と相反する事態です。
中国が南シナ海のど真ん中にに軍事基地を作っているときに「航行自由」と言うばかりで、阻止しなかったアメリカが軍事基地が出来があった後でこれを破壊出来る訳がないのが常識です。
軍事基地を作るのを黙認しておいて「航行の自由」と主張するのは矛盾です・・から、「言うだけにとどめる」中国との暗黙の合意であったと思われます。

目的と手段の取り違え社会(社会矛盾激化→反日の誘惑)1 

現在中国の対日感情の紹介でテーマが逸れてしまいましたが、大躍進政策に戻ります。
大躍進政策そのものが、9月28日紹介したとおり非合理極まるものでしたが、翌29日に紹介したとおり今の統計のデタラメぶりと同じことが行なわれていたこと・・中央の命令どおりにやるとうまく行かないことが分っても・・地方政府が失敗を報告出来ず、過大な成功報告していたことが悲劇を加速したことも分ります。
現在中国の需要無視の生産競争もそうですが、虚偽報告によって大成果が積み上がって行く・・統計が意味をなさなくなっている現在の悪弊が既に大躍進時代に始まっている・・今に始まった事ではないコト・・専制支配下で必然的に生じる現象であることが分ります。
ソ連最後の大統領・ゴルバチョフでさえ、国内生産がどうなっているのかさっぱり分らなかったと回想しているとおりです。
権力者に都合の悪いことを言うと粛清される社会では、下部組織が迎合するしかないことが大もとの原因ですが、この4〜5日書いているように中国では約2000年間にわたる専制支配の結果、手段と目的の逆転があるから全ての分野でこういうことになります。
統計や報告が実態を知るためにあるのではなく下部の官僚にとっては自己保身と出世のためにあり、トップにとっては内政成功の誇示・国威発揚のためにあります。
正しい事実を知るためではありません。
中国がGDP統計にこだわっていて民生向上に頭を使わないのも同様で何のための生産力増強か分っていないのです。
生産力も需要に裏打ちされてこそ意味があるのですが、生産力と言う数値にこだわる結果おかしなことになります。
需要無視の生産力増強が仮にうまく行ったとしても在庫のヤマで、生活必需品の鍋釜や農機具を供出して売れない鉄鋼製品の山を築いた場合、食糧不足のマイナス効果は国民に帰せられます。
大躍進政策では作った鉄の多くが粗悪品でしたが、解放後は日本からの技術導入で一応世界標準の製鐵や石化製品を作れるようになっています・しかし世界需要無視の大増産計画であることは変わりませんので、これが世界に溢れ出して世界中が困っている状態です。
大躍進政策の悲惨さを1昨日紹介しましたが、下が虚偽報告をするしかない中国の社会習慣を見ると、歴史は繰り返すと言うよりは民族の生き方は百年や千年では変わらないと言うことではないでしょうか?
時々千年〜500年前のご先祖も私と同じような考えや生き方歩き方・・笑い方をしていたのかと思うと何となく不思議な気がすることがあります。
中国人は昔からこんな風に上が下の意見を聞かない風土ですから、下は虚偽報告するしかない・・この繰り返しによって、全ての分野で目的と手段が入れ替わる社会になってしまったのでしょう。
大躍進政策強制に対する不満による暴動発生リスク・・あるいは毛沢東に対する怨嗟の声が満ち満ちていたでしょうから、文化大革命運動はこれに対する先制攻撃・・反革命運動を先手必勝の目的でやった粛清の大型判と評価すべきではないでしょうか?
国民のための政治をする能力がないが、こう言うこすからく狡い戦術にたけているのが、共産党政権の本質と言えるかも知れません。
共産党は国共合作中・・孫文の組織内共産党員も委員も参加していましたし、蒋介石の作った士官学校にもソ連の援助があったかの理由で共産党員も参加していました)に国民党内に浸透して行くのに成功します。
権謀術数の得意な中国の中でも更にこの分野に特化し,組織内で着々と勢力を広げ政敵を失脚させて行く能力・・そのために生まれて来た政党と言えるかも知れません。
戦前コミンテルンのルーズベルト政権への浸透ぶりはよく知られていますし、今でも北朝鮮の韓国政府内への浸透ぶりはよく知られています。
政治・経済時その他で比較すれば、来たと南とでは、競争にすらならない程の格差があるのに権力確保では共産党の方が格段に上位になっている逆転現象です。
日本の全学連で言えば学生の多くの支持を受けている訳ではないのに、自治会執行部を全面的に牛耳ってる過激派と同じです。
その内日弁連もそう言う評価を受ける時代が来るでしょう。
日本でも共産党との共闘を他の野党が嫌がるのは主義が大きく違うと言うのが表向きの理由ですが、選挙協力を続けると内部浸透されてしまう恐れが中心的関心と言うべきでしょう。
中韓が何かと反日心情を煽る理由に戻りますと、日清戦争で敗北したことによって、地域大国のメンツを潰された中国の心情・・これは今でも有効な切り札・・これを煽るのは支配者にとっては格好の材料になります。
ところで改革開放後日本サマサマだった中国がイキナリ反日に転じたので、日本人にとっては寝耳に水・江沢民個人を反日的というイメージ報道が多いですが、反日転換は共産党首脳の一致した長期方針だったと思われます。
鄧小平の韜晦戦術同様で、イザとなればいつでも実行出来るように反日教育から始めたものと思われます。
天安門事件によって国際孤立・・危機感を持った幹部間協議で、将来再び同様の事件が起きたら同じことが出来ない・・危機感・・政権が最高度の危機に瀕したときの最後の切り札として反日暴動あるいは対日戦開始で凌ごうと言う重要決定がされていたとみるべきです。
改革開放後日本の優れた技術がドンドン導入され技術指導を受けていると対日親近感が増す一方だったことから、これ自体が共産党専制支配にとって脅威だったでしょうから、言わば一石二鳥の政策決定です。
韓国が長年日本文化流入を禁止して来たことからも分るように、中国にとって日本文化浸透は由々しい問題です。
イキナリの反日攻撃は無理があるので、先ずは国際環境を整えることと、騒乱時に国内敵対勢力の核になる組織が育たないように整備すること、反日感情を徐々に育成する必要・・反日教育から始める数十年先の長期方針が決まったと思われます。
国内敵対勢力の芽を積む戦略・・王朝崩壊時にいつも騒乱・庶民凝集力の核になって来たのは いつも宗教組織(日本の一向一揆もそうですが命を棄てても戦うには向いています)ですから、江沢民が法輪功弾圧を直ちに始めたのは、当然の政策です。

アメリカの格差社会(フードスタンプ配給)

6月24日以来の格差社会論に戻りますと、鄧小平の言った有名な、格差容認論・・「◯◯の猫でも稼ぐ猫は良い猫だ」と言う・・金持ちになれる人から豊かになって行くと言う格差容認論は前向きですから、儲けに遅れた人の夢・・励みになります。
アメリカで昔言われたアメリカンドリームもこれに似たものでした。
現在欧米の格差論は、新興国の挑戦を受けて単純労働に高額賃金を払えなくなって来た・・負け始めた以上は、等しく貧しくなるべきところをアップルやユニクロみたいにタマタマ成功した経営者や金融のプロあるいは資源利権により特定一握りの階層だけが逆に金持ちになって焼け太りになっている点が大違いです。
アメリカの格差不満を背景にするトランプ旋風の張本人自身が、大金持ちであることを自慢する歪んだ社会です。
西欧を追い越す途中の新興国だったアメリカや・・中国や新興国の格差は、先に儲けた人ですから、こう言う社会では後に続く予定の多くの国民には「アメリカンドリーム」であり、賄賂であろうと何であろうと、「中国の超金持ち」は(自分もその仲間に入れば良いと言う希望で)まだ儲けていない人に夢を与えて来ました。
現在の先進国の場合には水位がずるずる下がって行く中で、特定の成功者だけが天文学的利益を独り占めしているのですから,ビルゲイツやジョブズ氏のように仮に特別な才能のあって不公平ではないとしても一般人には夢がありません。
中国や新興国の明日への夢がしぼんで行くと共産党幹部(の場合能力差ですらないのですから)だけが良い思いをしていることに対して国民の不満が高まります。
先進国で新興国労働者と同じレベルの仕事しか出来ない人は、本来新興国労働者と同じ収入でいい筈ですが、先進国の場合上記の特定巨額収入者の納めた税金や過去の利権収入(海外進出企業からの送金など)でインフラや社会保障コストが補填されているので、なお新興国労働者の何倍もの生活が出来ています。
生活保護その他何らの給付も受けていないつもりでも、非課税者は言うに及ばず納付税額の少ない人は、納付額以上にインフラを利用出来る恩恵を受けている人が一杯います。
月10万円前後の収入で税を払っていない人が保育所利用している場合、その維持費として税で膨大なコスト負担しています。
保険制度に至っては納付保険料の何十倍も使っている人はざらでしょう。
このように格差と言っても直接収入格差は、インフラ次第で大幅に緩和される結果、本当の格差感は社会のインフラ充実度によります。
アメリカの一人当たりGDPが高いと言っても資源や石油利権収入、金融取引、知財収入等の平均ですから、平均収入の議論しても工場労働者やサービス業の平均賃金など詳細は)何も分りません。
アメリカは昨年あたりから末端労働者の賃金水準は中国の人件費に負けないと豪語しているくらいですから、工場労働者やストアー店員の個々人の給与は高くありません。
ですから金融資本や知財等海外からの収益による高額所得者がいる結果却って格差が激しくなるし、成功者の収入が下がって行くと格差は縮小するでしょうが、そうなると将来的に(社会保障を含めた)収入が下がって、本来の働きレベルに下がって行く不安があります。
知財収入や過去の遺産(利権収入)等の分配に頼るようになると受益者が少ない方が有利・・高齢者が退職金等の預貯金を90歳まで残せるか心配になるのと同じでいつまで続くかに関心が移って行きます。
この不安がイギリスの移民増加反対論・・分配対象を減らせと言う運動が盛り上がった現実です。
金融や知財のぼろ儲けや資源・石油利権等で、一人で何十億と言う収入のある人の払った税金や寄付で多くの国民がフードスタンプを配給されていると、国民は不満と言うよりも将来が不安でしょう。
非正規雇用の多いアメリカ最大の大企業のウオールマートの店員の多くが,生活困窮者向けの1、25ドル分のフードスタンプを貰う列に並んでいることが問題になって日本でも報道されましたが、漫画みたいな社会です。
アメリカではフードスタンプ受給者が増え過ぎていて、この数年支給を絞り始めています。
http://www.huffingtonpost.jp/2015/01/09/food-stamp-enrollment_n_6441040.html
「ボーレン氏「2016年にはさらに多くの人びとが給付を失うことになるでしょう。たとえ、登録申請者数の動向が、これまで通りであっても」と述べた。
政府の最新データによると、2014年9月の登録者数は4650万人で、前年の4730万人から減少した」
ちょっとデータが古いですが別の解説によると以下のとおりです。
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=279619
13/07/27 PM10
「四人家族で年収2万3314ドル(約230万円)という、国の定める貧困ライン以下で暮らす国民は現在4600万人、うち1600万人が子どもだ。失業率 は9.6%(2010年)だが、職探しをあきらめた潜在的失業者も加算すると実質20%という驚異的な数字となる。16歳から29歳までの若者の失業率を 見ると、2000年の33%から45%に上昇、経済的に自立できず親と同居している若者は600万人だ。」

フードスタンプは所帯単位で配給するので、約3億あまりの人口を割ると受給率は労働者3人に1人とも言われていますので大変な事態です。
たったの1、25ドルの食品購入券(1ヶ月分で所帯全員分とすると結構な額ですが・・)を貰うために夜中の12時に(何故か深夜に配布する仕組みらしい)並んでいる映像を見ると・・それが全米労働者の3人に1人と言うのでは、如何に格差が進んでいるかが分ります。
こんな夢のない生活で何年もよく我慢しているものだ・・中国よりも先に暴動が起きてもおかしくないような気がしますが・・。
トランプ氏の煽動に乗りたくなる人が増えているのは当然でしょう。

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