格差社会6(グローバル化)

いわゆるグローバル化を結果から見れば,国民のなだらかな階層構成から中程度の熟練工・中間層を減らして高度技術者・IT・知財関係と下層階層に2極化して行く政策・・資本家層の利益最大化と低賃金労働者増加を目指した政治でした。
西欧型支配構造・・支配対被支配の2項対立理念をそのまま極限まで体現する政策を押し進めていたことになります。
同じ技術者でも芸術家レベルしか生き残れない・・中級以下の職人は大量生産品のライン従事者にしかなれない社会を目指してきたのです。
よく書く例ですが、明治以降伝統的職人芸・・陶磁器系で言えば庶民日常使いのお茶碗・湯のみ類は大量生産(工場系)に淘汰されて行き、工芸展に出品できるような一定レベル以上の作家のみ生き残って来た・・細工物その他の分野がいっぱいありますが、この場合、職人とまで行かないレベルの人でも、一人前の労働者として遇されるメリットがありました。
数字的に表現すれば職人の技が95点以上は企業の「型」作りに重宝される・・企業は「型」さえ作れれば世界的に量産可能ですから94点以下の職人は不要です。
94点以下は5〜60点平均で足りる現場職人として雇用することになります。
これが流れ作業になり、さらに工程が単純化された結果3〜40点レベルで足りるようになり、ロボット化、オートメ化の進展により(過酷作業に耐える体力不要になり)10点前後のレベルでも足りるボタンや計器の監視役となりました。
この結果、体力的に参加しにくかった女性や障害者もかんたんに作業参加できる社会が到来したことになります。
この変化は大規模な工場の製造工程のみならず、食品や飲食業まで及んできていることは、大規模工場製のオニギリや弁当類が小売業界を席巻している外、ファッストフードや居酒屋チェーンの発達を見れば明らかでしょう。
ラーメン屋に行っても半端に倣った程度で開業したのでは、チェーン店の味にかなわない時代が来ています。
あらゆる分野で特殊技能の1強以外はフラット化する社会・・弱者参加が理想的になればなる程、フラット化が進みます・・これこそが理想社会の実現ですが、一方で格差社会批判が高まったのは皮肉というか矛盾です。
ビルゲイツのような巨額所得者を許せないやっかみも手伝っているでしょう。
みんなが貧しいか豊かではなく、能力に応じた格差を求める本音があるからではないでしょう?
この競争心・向上心こそが人が生きていく楽しみですから、一概にこれを否定する綺麗ごとばかりではどうかな?と思います。
産業革命に対して職を守れと言うラッダイト運動が起きたように、中間どころか中の下の能力も不要「みんな5〜6点できればいいよ!」と言われると文字どおり支配層と被支配層の両極社会に分化して行きます。
産業革命時に資本家・貴族層が競って囲い込み運動に参加したように資本家はグローバル化競争にうまく参加してこそ,倒産を防ぎ・地位を維持出来るので,(参加し損ねると倒産,戦国時代で言えば落城して城主が一介の武士に落ちる)・・一向に困りません。
彼らに言わせれば企業倒産を防いで資本所得を得て,その分を税としてあるいは◯◯財団に寄付して国家に還元してフードスタンプ資金等にしているから自己利益ばかり追及ているわけではない・・企業がつぶれてしまうより良いではないかと言う論理になります。
生産拠点を海外移転しないで倒産していたらもっと悲惨だよ・・と言う論理です。
あるいはIT業界のように高度技術者導入によって世界企業になっている御陰で国内一般雇用を(技術移民が500人働いて地元民が掃除や配達などで50人しか働いていなくともこの企業が、掃除夫など少しでも雇用を増やしている、納税も増えているはずです。
トランプ氏の就任演説では、「エスタブリッシュは自己利益保護しただけで労働者を守らなかった」と言うものですが,資本家・経営層に言わせれば当たり前です。
企業を守ってこそ雇用も守れるし配当収益の還元が出来る論理です。
他方で、ピープルにしてみればお金持ちのおこぼれを貰うのではなく、自分たちにも活躍の場をくれと言うことでしょう。
同じ月額20万円の生活でも生活保護20万円より自分で働いた20万円の方が良いのが普通の心です。
産業革命時に貴族が囲い込み(エンクロージャームーブメント)で小作人を追い出し
て工場労働者にして行ったのと同じことを(中間管理職を掃除夫や運転手にして行く)欧米資本家が繰り返して来たことになります。
トランプ氏の就任演説は国民不満を代弁していますが,「だから反対」と言うだけでは展望・先が見えません。
単なるストレス発散・・打ち壊しだけでは韓国民の大規模集会主義・・不満のはけ口に反日を叫んでいるのと同じで建設的ではない・・先の展望がないでしょう。
韓国の場合には、小国なので国内でいくら揉めていようが世界が相手にしませんが,米国の場合展望がなくとも,大国の不満を無視出来ないので,(図体の大きな牛が暴れるのは面倒なのでまあまあと宥めるのと同じで)フォードに始まるメキシコ投資撤回発表などに見られるように,当面「マアマア・・」と言う形になるのが普通です。
トランプ政策は幼稚で単純とは言え、欧米型労働者無視政策=いわゆるグローバル化戦略は修正に向かうようになり、何らかの軌道修正が行なわれる契機になるでしょう。
資本家叩きは庶民の喝采を受け易く人気取り政策としては簡単・・トランプ氏はキャリーのメキシコ進出阻止に成功し,次いでフォードも中止させ,次に外国企業であるトヨタにまで強迫をしました。
就任式後は日本に対する貿易赤字をなくせ・・合理的正義基準でなく,腕力による結果重視の理不尽要求・本音があまりにも早く始まりました。
いくら理不尽でも企業は強権に従うしないでしょうし、日本その他のクニも理屈を言って喧嘩するわけにも行かないのが現状です。
こういうことが続くと不採算工場縮小が先送りされる分、日本に限らずアメリカ自身の資本家利益(裏取引があるとしても社会総体の資本家利益)が急減します。
国有企業中心の中国で赤字企業を温存していると時間の経過でクニの活力が奪われてしまうことが一般に指摘されています。
アメリカも目先の利益のために・・言わば企業の損失先送りと同じ動きを始めたことになります。
アップルや金融資本による利益の極大化で新興国との賃金競争で負けている分の穴埋め・・労働者本来の生産性以上の給与支払やインフラ整備や社会保障資金になっていたのですが,資本家イジメをやるとこの穴埋め分・・海外利益の本国送金が減り,国内の補助金的資金源が枯渇してしまいます。
巨額収入者がいるとジニ係数が上がりますが,他方で彼らの納める税や寄付金で社会保障資金やインフラ資金も出ていて、その恩恵を受けている面もあります。
巨額収入者を潰すとジニ係数が下がって溜飲が下がるでしょうが,その分格差が少なくなるので生活保護基準が下がります。
閉鎖社会では、国内の富みが一定の場合,巨額所得者をなくして平準化すれば庶民の収入が上がります。
しかし,海外から巨額収入を得ている人まで(やっかみで)潰してしまっても(一時的に溜飲がさがっても)国内では誰も得しません。
金の卵を産む鶏を殺してしまうようなものです。

格差社会5(サービス無償意識2)

サービス業の無報酬意識→報酬の低廉化傾向に戻ります。
大分前に書きましたが、女性の仕事は単価が安くても良いと言う前提があるから、女性の活躍と言うと男性用に作り上げられた職場で男性顔負けで働く・・男勝り・残業もするし転勤もいやがらないなど・・誤った風潮になるのです。
女性活躍社会とは男性職場に入って男以上の能力発揮することではなく、女性固有能力を尊重する・女性の仕事には機械に置き換えられる男性の仕事よりも価値があるという意識転換が必須です。
両性の本質的平等・・相互に違いを認めあい尊重する社会を実現することこそが本質的に重要です。
機械で代替できる分野はどんどん機械化して行ける・・最後に残るのは人の温もりでしょう。
「女性のやさしい介護等はお金変えられないから・・」といって、無償や低賃金で良い筈がありません。
「お金に代えれない貴重なものだ」と言う言葉の本来の意味を実現して行くべきでしょう。
そうなると女性の方が有利・人件費が高い時代がきます。
若い人でも家庭内では奥さんの地位が高いと思いますが、高齢化するともっと地位が高くなる・高齢化してからの方が妻の有り難味が分かるのは体が効かなくなって世間との代替性が下がるからです。
トランプ氏は製造業従事者数の減少を国民平均収入低下の原因として問題視して製造業の復活を主張していますが、製造業では機械化・ロボット化が進む一方で労働者の需要が減っていくのは防げませんから、サービス業の尊敬が必要です。
少なくとも、製造業従事者の賃金底上げにはアメリカのように移民を入れて労働者を増やす政策は間違いです。
製造業の重要性は変わらないとしても、活躍する人材は製造業の省力化・ロボット製造関係などの研究開発に移っていますから、底辺労働者の需要がなくなる一方です。
無限の底辺労働力を抱える中国でさえ、ロボット化・少量化投資に邁進中であることをMay 23, 2017「ロシアの台頭と資源(民族文化の有無)2」
で紹介したとおりです。
近代工業に比べて収入が低くなった農業収入を上げるとしても、農業従事者を増やせという人はいないでしょう・・底上げには従事者を減らすしかないのと同じです。
金融のプロやIT技術者に昇格出来ない在来のアメリカ人が多いことは確かでしょう。
しかもこれはアメリカに限らずどこのクニでも同じ問題です。
そこで高度に専門家した知識群の理論的・実践的な応用を対象とする「H-1Bビザ」で、高度技術者になれる移民を入れて上層部に組み込んで行く企業行動によって、下層階級化・・落伍して行く元中間層がノーを突きつけている構図です。
15年程前にこのコラムで移民でも有能・エリート層を入れれば良いと言う意見に反対意見を書いたことがありますが、アメリカ人も自分が追われる立場になるとそう言うことです。
アップル、ウーバーその他IT業界で高額所得者になるインドを中心とする新移民と、IT業界隆盛の御陰で企業の警備員や受付係・ホテルのベッドメイキング係や掃除夫・運転手の職にありつける・・移民2〜3世の雇用を守る構図を従来政治家は前提にしています。
今後アメリカ国籍取得後2〜3世には原則現場労働・サービス業しかなくなって行くとすれば、(企業トップやIT技術者になれる人もいるでしょうが大方の話です)GDPが半分〜3分の1になっても自分たちが政治家や社長・中間管理職をやれる方が良いと思う人が多いのではないでしょうか?
アメリカ国民平均で言えば、優秀な技術者を入れない限り能力不足で世界の潮流に着いて行けないとすれば、自分の民度をあげる努力をして底上げ出来る限度で中流国レベルで落ち着き納得するか、これが嫌ならば自国民の能力不足を補うためにインド人などのIT技術者等を移民として受け入れるしかありません。
戦中戦後ドイツ系を多く受け入れて科学技術の発展を享受したのと同じ流れを繰り返すかです。
この場合、国家社会は発展するでしょうが、自分達の仕事の多くがビルの受付や掃除夫などに転落して行き、毎日働いているのにフードサービスに頼る生活になって行きます。
都市近郊地域にホワイトカラーが移り住んでくると農村地帯の地価が上がって一時農村住民が潤いますが、落ち着いてみると自分達の出来る仕事は公園整備などの現場系しかないのと同じです。
このジレンマで国内で面白くない人が増えてきた結果、ただ不満・怒り発散のために対外強行策を政府に求めても、目先の溜飲を下げるだけで本来の解決にはなりません。
お腹の空いた赤ちゃんが泣くのを宥めるために「ガラガラっ」と音を出すだけのことです。
クニの方向として無理をしないで(有能な人を引き入れないで)引き上げられる民度に応じた中〜下流国になって行くのを認めるかどうかの決断をするのが合理的です。
どうあがいても民度以上の生活が出来ないのが正しいとすれば、低賃金労働者を求めて数世紀に亘って(黒人奴隷〜中国人奴隷(クーリー)〜戦後のアジア系移民)大量に移民を受け入れてきた過去蓄積が重荷となってきます。
威張るために低賃金移民をドンドン入れる・・人口の多さや資源だけが自慢では、ブラジルや中国、インド並みのレベルに落ち着いて行くしかありません。
クニ・民族の栄誉を求めるために、IT技術者を大量に移民受入れて元々の国民の多くが移民の運転手や掃除夫になるのは、レストランで言えば自分は運転手や掃除をやりその給与で働きながら経営者・技術腕利きの調理士を高給で雇うようなものです。
経営者としては客が半分、従業員も半分・収入半分になっても、自分が経営者のままでラーメンを作っている方が良いか、有能なコックを入れて自分は皿洗いして皿洗いの給与で我慢するかの問題です。
個人の生き方で言えば大きな家を貸して門番や受付を掃除をしているよりは、小さくても自分の家の方が良いかの問題です。
「世界の警察官をやめたい」と言うのは、トランプ氏が言い出したことではない以上、身の丈にあった生活の方が良い・後者の人が多いことを表しています。
トランプ氏の主張は単純粗野な印象を受ける人が多いですが、国民の素朴な願望を表現している点が重要です。
これをソフトランデイングさせるプロの政治家が必要なだけで、方向性が間違っているとは思えません。
そこで17年3月11日以来、彼の思想を整理して実現させるプロの実務家が不足していることを書いて来ました。
中国解放後の欧米政治は,北米ではNAFTA(域内総生産はEU以上です)西欧はEU結成→移民受け入れによる人口増・市場拡大政策で分るように、飽くまで従来型規模の利益を追う方式の延長であり、新興国並みの競争力維持策・ひいては熟練工・熟達事務系不要社会の追究でした。
そして一方では国際展開・・IT化を進めその主導権を握ろうとして来ました。

格差社会4(サービス無償意識1)

格差社会に戻りますと個人投資家でも海外債券投資比率の高い人と低い人あるいは内需関連企業とで円安の恩恵が違う・・この分野でも投資先相違による明暗・格差が発生します。
株価好調でも消費がそれほど増えないのは、海外収益中心・投資利益の場合、株価が上がったからと言って、(配当の入る預金残高1500万前後の人が数十万円増えたからと言って)あるいは昨年より配当金が数%増えても喜んで食事に行くような人があまりいないから当たり前です。
サービス業従事者が増えると平均賃金が下がる傾向がありますが、この分野の賃金引き上げには「電気釜や冷蔵庫などの物品よりも、生身の人間のサ−ビスの方が高い」ものだと言う意識変革が必要でしょう。
介護・保育その他各種サービス分野は女性中心職場であったこと・・元々家庭サービスから始まっているので、無償奉仕が前提になっている点が問題です。
このため男性中心職場であった製造業に比べてサービス関連は基礎賃金が低過ぎるのを容認して来たことに対する意識変革が必要です。
それをしないで徒らに製造業の維持拡大・・従事者数の復活を主張しても時代錯誤にしかなりません。
我々弁護士業界ででも、訴訟になれば大金でも払う気がするが、相談するくらいはただという伝統的意識が強く、この払拭に苦労してきました。
せっかくこの数十年の努力である程度の相談料を払う意識が定着したものの、最近若手の経営難の結果、1回目相談無料みたいな広告がはびこるようになってきましたので、元の木阿弥に戻りそうです。
米国と違いヤミクモな訴訟を回避したいのは合理的傾向ですが、その回避や円満解決に重要な役割を果たす相談料が無償または1時間1万円程度では、アマチュアやボランテイアなら別ですが、事務所家賃やスタッフ給与その他のコスト負担のある弁護士の「業」としては成り立ちません。
弁護士業界の経営難が弁護士増員によるだけではなく、訴訟より事前相談比率が多くなっている現状に即した収入形態になっていない点が、大きな原因になっているように思えます。
実際の訴訟数の変化は本日現在の司法統計年報によれば以下の通りです。
http://www.courts.go.jp/app/sihotokei_jp/list?filter%5Btype%5D=3&filter%5ByYear%5D=&filter%5ByCategory%5D=&filter%5BmYear%5D=&filter%5BmMonth%5D=&filter%5BmCategory%5D=1
第1-1 全新受事件の最近5年間の推移
【全裁判所】年 次
     全事件 民事・行政事件 刑事事件等 家事事件 少年事件
23年 4 059 782 1 985 305   1 105 826  815 523 153 128
24年 3 798 126 1 707 715   1 098 989  857 237 134 185
25年 3 614 236 1 524 023   1 050 716  916 409 123 088
26年 3 494 100 1 455 716   1 018 673  910 687 109 024
27年 3 529 977 1 432 279   1 032 791  970 018 94 889
上記の通りですが、弁護士の主たる収入源である民事事件数が、この5年間だけでもほぼ25%も減っているのに弁護士数が逆に約2割増えている,・・この10年間で見ると約8割増の矛盾です。
以下は日弁連の発表数字です。http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/statistics/data/white_paper/2015/1-1-1_danjo_nenrei_suii_2015.pdf
 年   正会員総数(内女性数)   女性割合
1994   14,809 (938)      6.3%     
1995   15,108 (996)      6.6%
1996   15,456 (1,070)     6.9%
1997   15,866 (1,176)     7.4%
1998   16,305 (1,295)     7.9%
1999   16,731 (1,398)     8.4%
2000   17,126 (1,530)     8.9%
2001   18,243 (1,849)     10.1%
2002   18,838 (2,063)     11.0%
2003   19,508 (2,273)     11.7%
2004   20,224 (2,448)     12.1%
2005   21,185 (2,648)     12.5%
2006   22,021 (2,859)     13.0%
2007   23,119 (3,152)     13.6%
2008   25,041 (3,599)     14.4%
2009   26,930 (4,127)     15.3%
2010   28,789 (4,660)     16.2%
2011   30,485 (5,115)     16.8%
2012 32,088 (5,595)     17.4%
2013  33,624 (5,936)     17.7%
2014  35,045 (6,336)     18.1%
2015  36,415 (6,618)     18.2%
この表を見ると日弁連執行部は女性比率に重大な関心を持っているようですが、弁護士業界にとって焦眉の急・最重要な増加率には全く関心がなさそうな表の作成には驚きます。
刑事少年事件では、当番弁護や被疑者国選がこの5〜10年ほど前から始まっているので私選の刑事事件受任がほぼ壊滅・・ゼロになっていて、言わば弁護士業界の収入源の半分が官業による民業圧迫でなくなっている勘定です。
少年事件もほぼ同様です。
離婚事件等は増えていますが、弁護士に相談する程度で自分で調停などにでかけるのが圧倒的比率です。
このために若手弁護士が生活保護基準すれすれのような低報酬目当てに(昼間だけでは食べて行けないので夜9時ころまで遠くの警察まで接見に行く状態)国選事件や少年事件受任を競っている惨憺たる状態に陥っています。
この結果若手弁護士の多くが年収300万円以下という状態になってきた様子ですので、法科大学院の応募数が激減..ひいては応募者の劣化が始まっていると言われます。
このママでは、司法界崩壊目前ですから、偏った運動ばかりする?弁護士業界潰しの政策意図があるかどうかは別として、国家における司法(判事検事の供給源のあり方を含めて)に関する基本戦略の策定が必要な段階に来ています。
この時にあたり、千葉県弁護士会新会長が4月1日就任直後に従来同様に大量合格を続ける場合、「一定数以上の修習生受け入れ 拒否 も有りうる」という趣旨の通知を発したことが大激震になりました。
(会内的にはしかるべき会内手続きなしに、会長が一方的に対外外通知をして良いのかが5月総会の大テーマになりました)
多くの見方は「一種のフライングである」と言うことでしょうが、時機にあっていた・・放置できない状態・発火点に近づいていたことは相違ないでしょう。
これが逆に判検事と弁護士の別立て試験になっていくリスクを開いた結果になった・・単なる暴発の結果になるかは別ですが・・。

格差社会3(株式相場と国内経済)

「大機小機」の連載を印象で読むのではなく検討して見ましょう。
論旨は昨日紹介した通り第一段落で「株式相場の好況は国内実体経済と乖離している」とした上で、第二段落で「総生産が変わらない以上人件費のカットか海外活動による収益か円安の計算上の収益しかない」と一応実体経済と乖離する場合もあることを認めるものの「そうでなければ実体経済とかけ離れたバブルだ」と断定します。
数日前に紹介した「大機小機」に労働分配率の低下を書いたのはその伏線だったのでしょうか?
上記の通り論旨はせっかく海外収益や円安要因による場合にも国内経済と関係なく上下する場合があることを義理で?触れているにも関わらず、この要因該当性の有無を検証または論じることなく、「そうでなければ・・」と仮定の論旨に入って行き、直ちに日銀等による株式購入等の官製相場の弊害論に入っていきます。
これを読んでいると「国内」実体経済と株式相場の乖離は官製相場によって出来ているかのような誤った印象を持ってしまいそうです。
きちんと円安や海外収益増加でも国内実体経済に関係なく株式が上がるとも書いているのですから、私の読み方が悪いからそうなったのかも知れませんが・・.不思議な論理だなあと思って読み返してみると、せっかく「円安や海外収益でも乖離する」と(義理で?)書いておきながら、何故かそのあとでこれに該当するかどうかの検討をすっ飛ばして(如何にも海外収益増加も円安もなかったかのように)いきなり官製相場の弊害に入っているからそそっかしい私の場合「官製相場によって実体経済と乖離してしまっている」かのように印象付けられたのだと分かりました。
上記国内経済と関係なく株式が上がる・・乖離する場合の条件の内、円安について見ると安倍政権誕生直前から急激な為替変動があって、円が80円付近から120円近くまで急落したことは周知の通りです。
(昨年から少し円高傾向ですが、それでも今年6月28日夕刊では112円あまりです)
こうした場合、国内生産活動のアップに関係なく瞬時に海外投資(ドル表示)残高(日本は世界最大の純債権国です)の円評価や売り上げ代金の本国送金の円換算率が円の下落率に比例してアップするので、決算上対外設備投資等や株式・ドル評価の円換算評価益が急上昇します。
これを評価して株価が急上昇したのは、合理的な市場評価だったと言うべきでしょう。
他方で外国人投資家から見れば、ドル表示で120ポイントの株がいきなり80ポイント近辺に下がったのですから、(外資・ドル表示では大損ですが、企業業績が悪くて下がったのではないからナンピン買いをして損はないのでこれを含めて)日本株の割安感から買いを入れるのが普通でありこれが市場原理です。
この場合ドル表示で元の水準まで買っても良いとすれば、円が1ドル80円から120円への下落率と同じ相場・・8000円の株を12000円まで買い進めてもドル表示では同じです。
国内投資家にとっても上記の通り自動的に評価益が生じることによる株価アップ要因がある外、トヨタ等が円安による分を値下げすれば売り上げ増になるし値下げしないまま従来通り価格維持すれば(日本からの輸入部品等のコストが120円から80円に下がっている差額がそのままマージン率アップになります。
実際には120円から80円に下がったコストを100%値下げしないというだけで、企業によっては5〜6%〜8〜10%値下げする場合など色々あるでしょうが、いずれにせよ国際展開企業にとっては評価益だけではない将来的//持続的な5割前後の増益要因です。
内外投資家としては利益率アップが想定されるのでこの種の買い相場が始まると相場が相場を呼んで値上り益も見込めます。
株価は実態経済を反映すべきという論理が正しいとしても、東証上場株価は外資(約3割)も参加している国際商品ですから、基盤とすべき実態は国内だけではありませんので、国内実体だけを見て、株価が決まるものではありません。
経済的基礎がグローバル化している場合は国際的視野で検討すべきです。
国内経済との比較論は比喩的に言えば、千葉県発祥企業が県内シェアーが高くなりすぎて成長限界になり、他県に進出して成功・全国的に売り上げが倍々ゲームで伸びている場合、全国売り上げ増を見ないで「千葉県内での売り上げが現状維持なのに株式だけが何故上がっているのだ」と議論しているようなものです。
トヨタや日産〜コマツ、ダイキンなど国際企業は、国内売り上げ増がもはや限界ですから、米中その他市場での前年比売り上げ増加率が毎月ニュースになっているのです。
特に今回の円安の場合、日本企業の多くは(また円高に振れると困るので)現地価格を円安に比例して価格値下げ→売り上げ増に走らず、円下落効果を僅かしか価格に反映せずに利益率アップに動いた企業がほとんどですから、(円安にも関わらずホンダなどは輸出を増やさずに海外生産比率をあげると当時宣言していました)円安による輸出増・国内生産増GDPアップはほとんど起きていません。
海外資産評価アップと収益増のダブル効果があればその分株価が上がるのは当然ですが、国内付加価値増加・国内総生産増加に結びつきません。
今回の株式相場とGDP・国内総生産アップとは関係がなかったのは当然であり、これを国内実体経済との乖離だけを理由にいきなり官製相場の弊害に論旨を進めるのは(私のような粗忽者をひっかける)不当誘導っぽい書き方です。
海外投資残の大きい企業ほど海外取引比率も高いので円安に比例して株価が上がるのは当然であって、これを市場の歪みと非難する論旨は対象とすべき経済基盤とすべき実態の範囲を意図的に国内に絞っている疑いがあります。
ところで論旨は人件費安も原因のひとつに上げていますが、この数日書いてきたように海外収益増や評価増に寄与していない上に、人手不足下で機械化すればするほどコストに占める労賃比率が下がるのは当然です。
ところで・・現在の株式相場が(国内だけなく国際的視野で)実体経済と乖離しているかどうか及び、乖離しているとした場合その原因かどうかは別として、公的資金が相場を歪めていると言われると(そういうことがあるとすれば困ると思う人が多いでしょう)もっともな感じを受けますが、これも問題があります。
それを論じるのであればそれ自体を独立に論じるべきであり、現在の株式相場が高いこととと(ある程度関係があるとしても)直結する論旨は飛躍があります。
高齢化=年金の時代ですから、公的資金が巨大化している点は先進国ではどこの国でも同じです・・。
カナダ等先進国の年金運用機関の巨額資金が債権や株式相場に与える影響が大きいことは数十年前から指摘されていましたから、問題は我が国の公的資金運用がどうあるべきかの議論の必要性であって、市場における公的資金の比重が高まっていること=悪であるかのような印象づけ批判も問題です。
サウジなどのオイルマネー、中国の国有企業その他いろんな国の巨大な公的資金が日本や世界中の債券や株式相場に影響を与えているのは普通の状態です。
この現状を見ないで、(その分析の一環としての公的資金運用のあり方論であれば合理的ですが)日本の公的資金が安全=国債偏重をやめて株式を買い始めたことだけをテーマにする必要はありません。
中国の人権侵害や公害には黙っている人権集団と同じ印象です。

格差社会2(職務発明と労働分配率)

国全体のGDP・付加価値を合計して・・総人件費との比率・・労働分配率が下がった(上がっている場合にはトンと話題になりませんが・・)などと言う抽象的批判さえ言えば、片が付く時代ではありません。
平和主義と言いさえすれば、平和が維持できるものではないのと同じです。
ある企業内で考えても、発光ダイオード事件の報酬が低過ぎると裁判になりましたが、・・あるいはノーベル賞受賞した田中氏の例見ても分るように、世界展開する先進国企業では、貿易黒字よりも所得収支黒字が中心になっていることと比例して国内的に見ても今や現場労働の比重が低く、研究開発部門・知財を生み出す比重が高くなっています。
こういう人の高収入をやっかむ必要がない・・伸びる人や分野はどんどん伸ばしてやるべきです。
いわゆる職務発明の対価が会計上どう言う分類になっているのか知りませんが、労働対価であれば請負のように成果に関係ない筈ですから、・職務発明対価は研究成果によるのですから、人件費と言うよりも、発明の対価(特許権は発明者に原始的に帰属する→権利譲渡)ですから、企業にとっては土地代金のような譲り受けのコストであり人件費にはならないでしょう。
この種の人の受ける報酬がいくら増加しても労働分配率が上がるどころか(企業の総コストが一定であれば人件費率が下がります)逆に下がる仕組み・・高額報酬が労働分配率を計算する際の人件費から抜け出しているのです。
http://www3.grips.ac.jp/~ip/pdf/paper2004/MJI04055goto.pdf
「職務発明の「相当の対価」の法的性格と算定方法について」平成17年2月
 後藤 信之(MJI04055)
1はじめに 本論文の目的
「・・・発明の権利は従業者に原始的に帰属するという前提(発明者主義)の下で、無償の通常実施権を使用者等に与えると共に、特許を受ける権利や専用実施権の設定権を事前の取り決めによって一方的に使用者が得られる代わりに、その対価を従業者に支払わなくてはならない旨 35 条で定めている・・」
(3)「相当の対価」を巡る論点
①青色発光ダイオード事件(2004.1.30東京地裁判決)(稲垣注→200億円)
本件は、東京高裁の勧告により平成17年1月11日に、支払額約8億4,400万円(発明の対価は6億857万円、遅延損害金(利息)を含む)で和解が成立した。
②光ディスク事件
日立製作所元従業員が光ディスク読み取り機構の発明に対する対価を
求めて、東京地裁に提訴(要求額は 9 億 7000 万円)。2004 年の2審判決
では 1 億 6500 万円の相当の対価を認めた
③味の素アステルパーム事件
人工甘味料アスパルテームの工業的製法を発明した元研究所長が「相当の対価」を請求。2004年2月24日東京地裁は味の素に約1億 8900万円を支払うよう命じ、原告・被告共に控訴していたが、東京高裁にて1億5000万円で和解が成立した。」
職務発明の問題は生産性引き上げに貢献した人に対する正当な対価が支払われるべきであって、生産性向上に何の寄与もしない労働者が格差反対だけ叫べばいいものではありませんし、労働分配率だけ上がることはあり得ません。
職務発明対価は言わば生産工程合理化のために導入した機械設備のコストと同じで労賃支払いにカウントされない・・労働分配率で言えば分配率を下げる・逆の働きをしています。
このように一見企業内労働者のように見えても、知財の場合には人件費と別の支払い対象になる分野が増えています。
メデイアでも成功して高給取りになるとフリーアナウンサーやコメンテーターなどになって独立していくのが普通でこれは外注費になっていき、労働分配率から外れていきます
アップルで言えばジョブス氏の貢献によって世界中で大規模にスマホが売れましたが、大規模生産が出来たのはジョブズの知恵と中国の労働者が働いたからであって、アメリカの労働者がこれに何らの貢献もしていないでしょう。
アップルの高収益とアメリカ国内の労働分配率を比較して労働分配率が下がったと嘆く経済評論家はこの世にいないと思われます。
格差社会の広がり・・労働分配率の低下があるとしても、社会構造(被雇用者内で高額報酬を得る人〜単純労務に細分化してきた結果、高額報酬を得られる人は人件費扱いではなくなっていく)の変化の結果であって原因ではありません。
金融業と言っても地域金融と国際金融があるように、弁護士にも国際派と地域で弱者救済・・リテールを追求する弁護士など色々あるように・・労働者といっても仕事の工夫をして役に立つ人と立たない人が昔からいます。
私の子供の頃のクラスには、教科書を読めない子もいたなど色んな能力の子供がごっちゃになっていました。
共通項は同学年・同一地域と言うだけでした。
小売店も個人商店中心の玉石混交時代と違い、明治以降デパート等の大型商店が発達し、戦後はスーパー〜コンビニ等になり個人物販店がほぼ消滅状態ですし、飲食店でも個人経営中心からチェーン店化が進んでランクづけがスライス化して来ました。
労働者も学歴が高卒中卒の違い程度でみんなごっちゃに働いて年齢差程度を基準に賃金を貰っていた時代と違い、今では一人一人の能力を査定して能力に応じて分配率が違う社会です。
子供が4〜5十年前から偏差値で分類・輪切りされるようになっていますが、「末端労働者」と一口に言っても労働者になる前からこの振り分けが極度に進んでしまった社会になっています。
期間工や派遣の時給は画一的と見えますが、採用側から言えば大量の対象者を細かくスライスして能力に応じて何千人単位で時給を決めているだけ・・作業効率の工夫を出来る人材は別に処遇しているし、よりもっと高度な工夫・・研究段階になれば、研究員となり院卒・研究者も内部階層化が進んでいます。
役に立つ点を見込まれて一定の出世する人にとどまらず、研究員の場合には、発光ダイオード事件のように何億と別途もらう人が出てきます。
ここまで来ると個人で賃金とは別に対価をもらうので、企業にとっては外注的コストですから労働分配率アップに貢献していません。
ところで、サービス業化が進むと労働対価が低下する傾向があるのは何故でしょうか?
この辺を解明しないまま、単に「労働分配率が下がっている」という教条的主張だけでは解決しません。
似たような傾向の意見では、昨日(27日)の日経新聞大機小機(19p)には、日経平均が民主党政権時代から2、5倍に上がっているが、経済実態とかけ離れていると批判しています。
引用すると以下の通りです。
「..旧民主党政権時代に8000円台で低迷したが今やその2、5倍になっている。・・他方実体経済では様子が異なる。消費もGDPも殆ど増えていない。今後この状態が変わるとも思えない。」
「株価は本来実体経済の今と将来を反映するはずだ。ところが今はこの2つが乖離している。」
続けて内容を読むと日銀や年金基金等による株式購入・・官製相場を懸念するもので、確かに問題がないとは思えませんが、書き出し及び内容のトーンを見ると如何にも現在の株価は実態と乖離し過ぎている・・官製相場で国民を誤魔化しているから将来に禍根を残す悪い政治ではないかという・・印象を受けます。