格差社会1(業種内格差)

勝ち組負け組と比較されて勝ち組に入っているようなイメージの金融業ですが、内部では負け組みの方が多いでしょう。
中小地場産業の衰退により金融業で多くを占める従来型の預金を集めて融資する程度の地銀や信金業態では低金利下では負け組です。
グローバル化について行けない旧来型金融事業者では、地域密着とか言っていますが、結局は小口金融→消費者金融(住宅ローンとカードローン)に活路を見出すしかない状態です。
サラ金に対する総量規制の穴埋め的特需で広がっていた銀行系カードローンも過熱気味=限界になって来ましたし、相続税対策などの勧誘によるアパート建築や住宅ローンの限界がくると金融機関淘汰が始まるでしょう。
格差社会の象徴として反感を持たれているのはグローバル化に成功しているファンドマネージャ−や為替のプロその他の一握りであって地銀や信金等とはまるで違う世界の業種です。
弁護士業界で言えば国際化・・M&Aその他で今風にごっつく稼ぐグループと、これについて行けないその他大勢・法テラス相談→受任や国選事件等の割当を中心としている弱者救済?グル−プに2極化して来ました。
個人事業主の減少によりこれらを顧客にする中間層の弁護士が細ってきたのです。
世上中間層の激減というとホワイトカラーのみ注目されますが、個人商店がスーパーやコンビニに押されてほぼ消滅→その他事業も大手の子会社ばかりで独立系の事業者が減って来たことも重要です。
地域の個人事業者の激減が、中小企業・・中間層を顧客にしてきた地銀・信金の経営基盤が崩壊して困っているように、中小企業とは言っても実は世界中で大手系子会社しか滅多に事業展開出来ない社会になってきたことが、格差・2極化を進めた原因です。
同様に弁護士の政治色激化は、個人事業主系・中間層系の顧客大幅消滅が大きな影響を与えているように見えます。
今や信金並みに地域密着・弱者に優しい視点で生き残るしかないグループが弁護士会の大多数を占める状況で、格差反対・・正義を標榜するしかない結果どんどん先鋭化して行きそうな雰囲気です。
地域的に見ると東京都心からの距離・時間に比例して不動産価格が安い結果、この時間距離に居住者・事業レベルも比例して行く→これらを顧客にする各種の事業内容もこれに制約される傾向があります。
弁護士業務も地域事業者や居住者を顧客とする以上は、地域の顧客分布から逃れることは出来ません・・この結果、若手を中心に弁護士業務も法テラス経由に頼る傾向が出てきました。
我々世代も、最初のうちは、公共団体の法律相談や国選事件等で腕を磨いてから個人事業主等を顧客にするようになって一人前になって独立したものでしたが、今は個人事業主や零細企業が地域からどんどん減って行く結果、法テラス相談から脱皮出来ない若手が多くなって来たようです。
個人事業主を主要顧客とする我々世代が引退すると弁護士業界も2極化(格差拡大)が進むでしょう。
急激な増員の結果、経験10数年前後未満の弁護士が6~7割を占める状況ですから、会内で格差に苦しむ人の比率が急速に高まっています。
生活保護申請を援助しながら明日は自分かも?という危機感がある・・人ごとではなく自分自身の問題になっているのです。
世間では弁護士が偏った政治意見で行動しているという意見が強いようですが、過去10年以上も日弁連会長選挙のたびにより急進的意見を唱える候補者の得票率が埼玉と千葉弁護士会で圧倒的に高い傾向が続いていたのは、都心を軸にした同心円的分布で同じ顧客地盤で働いていることによります。
6月26日日経新聞朝刊13pには、森・浜田松本法律事務所の弁護士がFT弁護士表彰 で部門賞を受賞したと出ています。
VB向けの資金調達方法・・新株発行条件の工夫をした点・・事業が軌道に乗ったら優先株に変換できるアイデア?・・が評価されたようです。
もしかして、この法律事務所内でも下積み的にデータ収集や分析作業に特化している弁護士の方が多数になっている・・同一事務所内格差が大きいかも知れません。
森・浜田松本法律事務所の本日現在のホームページによると以下の通りです。
パートナー(外国法パートナー1名を含む):101名
アソシエイト:233名
客員弁護士等:29名
外国法弁護士等(外国法事務弁護士3名を含む):29名
外国法研究員:1名
この事務所の評判ではなく一般論ですが、大手事務所は毎年大量採用しているにも関わらずそのまま人員増加数にならないのは、(サムスン同様に)その大方が5〜10年以内で(パートナーに昇格出来そうもない人が)吐き出されてしまうからであると言われています。
http://blog.livedoor.jp/kawailawjapan/archives/7733404.htmlによれば15年1月現在の採用数と現事務所在籍数は以下の通りです
順位(昨年順位)          (2015年)   (2014年)
1(1) 西村あさひ法律事務所   34人/501人  (25人/473人)
2(2) 森・濱田松本法律事務所  27人/359人  (32人/342人)
3(3)長島・大野・常松法律事務所 30人/321人  (19人/325人)
4(5) TMI総合法律事務所   27人/320人  (26人/294人)
5(4)アンダーソン・毛利・友常法律  22人/310人 (14人/310人)
6(6) シティユーワ法律事務所   6人/128人  ( 3人/126
このように弁護士という專門職業分野でさえも(同一事務所内でも)最先端で活躍するグループとその他に大きな分化が始まっています。 
大手事務所から吐き出されたり初めっから挑戦すら出来ない人は不満でしょうから「格差反対」に走りやすいですが、社会全体で見ればせっかく伸びる分野を叩く必要がありません。
旧来型商法にこだわっているグループに比べて、リスクを恐れずに新たな分野に挑戦するグループは(失敗して消えていく人の方が多いかも知れませんが)その代わり成功すれば一頭地を抜くのは当たり前です。
格差社会とは、鄧小平が改革開放政策採用に際して言ったことは、平等や格差を気にせずに稼げるものから まず走り出せば良いという意味ですから、格差発生を気にしていたら何も新しいことは生まれません。
人の真似できないことで新機軸を出して成功するのを、非難するのは間違っています。
努力せずに才能もないのに親の7光で格差があるのはおかしいですが、努力が成功した結果の格差発生が悪いことのように非難されるのは不思議です。
実はオートメ化・IT化(ソフト関係者の取り分)、ロボット化、資本家その他いろんな業種内で、勝ち組負け組が起きているので業種別に言えない時代・・業種内競争・・業種内格差拡大時代が来ていると言うべきでしょう。
実は労働者内でも分化がもっと早くから進んでいます。
正規・非正規の分類がその代表ですが、その前から公務員と大手中小従業員の違いホワイトカラーとグレーカラーの違い、サービス業と製造業従事者の違い、専門職でも医師や弁護士等と職人との違いなど色々と分化して来ました。

格差・国内格差と国家間格差

中国の場合、対米巨額貿易黒字をどうするかの問題は、実質的輸出国がそれぞれの利害があって応援してくれるとしても、その外に5月27日まで書いて来たようにアメリカの金利上げの攻勢も凌がねばなりません。
日本の場合、世界一金利が安くても北朝鮮情勢が緊迫すると「有事の円」で円が上がる仕組みです。
他国の追随を許さない・・日本経済は世界最強ですので、アメリカが金利を上げてその差額分日本の円が下がっても何の心配もありません。
円が下がれば交易上有利になるだけです。
超低金利政策は為替操作ではないと言い訳していますが、結果的に「円」と言う貿易商品の値下げになって円の輸出・・貿易黒字なのにその割に円高を防ぎ貿易を有利にしていることになります。
これは経済原理によるのですから日本が何か不正をしている訳はありません。
日本が金利を上げるとどうなるか・・世界中が追随して金利を上げるしかなくなって高金利で窒息してしまうでしょう。
日本企業が海外投資する場合、日本の最低金利で資金調達出来ます(その代わり両替コストがかかります)が、競合の海外勢は自国の高金利調達ですから日本企業は競り合い上有利になっている原理を書いたことがあります。
こうして日本企業の海外投資がドンドン進んでいく・・対外純資産国の地位が固まる一方の下地を作っていることになります。
こうして見ると国際収支のパフォーマンスの良い国を一時的に腕力でへこませても合法的に攻める方法はない・・民度レベルの高い方が結果的に勝利するのは当然の原理であると分ります。
ただし、これが進み過ぎると日本の一方的な蓄積・・他方は利息や収益送金するばかりで貧しくなるのはおかしい・・徳政令みたいな国際合意が出来る・対外資産に頼り過ぎるのはリスクがあると言う意見を書いて来た所以です。
今はまだ、アメリカその他国内の格差がテーマで「国別格差があるのは当然」と言う風潮ですが、これはアメリカが世界からマネーを巻き上げながら国内格差があるからこれで済んでいるに過ぎません。
アメリカが世界からマネーを巻き上げる力をなくし日本一人勝ちになると国内の格差反対論が格上げされて「どこかおかしい」日本一人勝ちは不正だとと言う声が国際的に高まります。
何事も勝ち過ぎるのは良くない・・日本は矢面に立つ1番手をアメリカかどこかに任せておいて2番手で良いのであって、目立たない・矢面に立たないようにするのが国を守る大もとです。
今のところ日本は1番手をアメリカンにお願いしてその楯の御陰で、逆風を凌げていますが、これがいつまで続くかです。
日本を平和的に攻撃する方法が世界中にない・・、中韓にとっては口惜しいが手詰まりになっているので、ありもしない慰安婦・売春婦攻撃をしてきましたが、これも失敗に終わると武力制圧の脅しくらいしかないのが現状です。
日本は再軍備禁止で軍事力がないので、アメリカに頼るしかないのですが、アメリかもメルケルドイツ首相の発言にあるように実は当てにならなくなって来たので、自分である程度守るしかなくなりつつあることは確かです・・・そこで対中防衛力整備が日本にとって急務になります。
p.reuters.com/article/merkel-speech-trump-idJPKBN18Q01X
2017年 05月 31日 18:18 JST
メルケル氏は28日、先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)後にミュンヘンで演説し、「他国に完全に頼ることができる時代はある程度終わった。私はこの数日でそれを経験した。われわれ欧州人は自らの運命を自分たちの手に握らねばならない。欧州人として、自らの運命のために闘う必要があると知るべきだ」などと語った。
同氏は29日にも、前日の発言における多くの要点部分を繰り返し、こうした見解を意図的に発信したことが明らかになった。」
5月26日にサーチナの記事で紹介したとおり中国は2兆ドルも純債権を有しているとしながら、所得収支が赤字になっています。
中国の場合、この数年外貨準備の急激な減少と言う実態・・中国の場合発表数字が当てにならないと言われていますが、その真偽は統計に現れない経済の実態を肌で知っている中国人自身の行動を見れば分ります。
実態を知る人民が中国から資金を逃がすのに必死になっている様子・・これこそが統計とは違う実際の姿が見えます。
この数年では、円とユーロの下落による外貨評価減が外貨準備減少分の約半分とも言わ(言い訳?)れていますが、(ユーロ保有内容が不明のママです)残り半分を占める資本収支赤字・資金流出の原因分析(外国企業買収もあり資本逃避分もあるなど)が必要です。
沈没しそうな泥船から我先に逃げ出したい心理状態のように言われていますが、汚職摘発を逃れるために海外資金逃避する人を含めた金融に敏感な人だけの話であって、普通の人は海外旅行後にちゃんと国に帰って行きますから、クニから逃げ出したい人ばかりではなさそうです。
裸官のように目立つ逃げ方をしているのは中くらいの知恵者であって、本当の知恵者は逃げなくとも政府の政策をくぐり抜けられる・したたかに生き残る智恵のある人・・自信のある人が一杯いるでしょう。
貿易黒字の統計も実は怪しいものです。
造船事業が大変な状態になっていることを17年3月22日に紹介しましたが、中国の苦境は人件費が上がったことによるのではなく、元々中国の生産性が上がっていなかったことによるのですから、世界景気収縮による不況の影響はいろんな業種に及んでいます。
中国の人件費がアメリカと同じくらいかもしかしたら高くなっているとか日本の人件費よりも高いと言う意味は、絶対額が高いと言う意味ではなく、生産性比で見たら割高と言う意味らしいです。
例えば中国人の時給が仮に5〜600円で日本が1000円とした場合、日本人の人件費が割安・・働きの(悪い?)中国人に5〜600円払う方が高く付くと言う意味ですから大変です。
人件費の安さにあぐらをかいて生産性向上に努力しなかったからです。
今になって、日本の工作機械・ロボット導入に必死・・ロボット需要大国になっているようですが、一人当たり生産性を上げるには機械化するしかないことに気が付いた・そうなると低賃金労働者の供給源である巨大人口が重荷になって来ます。
19〜20世紀型巨大人口が勝敗を分けるという発想の間違いが出てきたのです。
ここで、話題をMay 21, 2017「アメリカの傲慢と中国の適応力2」で書き始めていた中国の内需転換に戻します。
中国の場合地域格差はあるものの切れ目なく最低賃金を引き上げるなど製造業従事者に対する所得分配がある程度うまく行っていた可能性・・現状を見ると韓国に比べて中間層がそれなりに(人口の1%でも1400万人です)分厚く育っているように一見見えます。
ところが、これは中韓の高成長開始の時間差だけの現象・・中国も省力化が進むと折角育ちかけている中間層が崩壊する可能性があります。

アメリカの格差社会(フードスタンプ配給)

6月24日以来の格差社会論に戻りますと、鄧小平の言った有名な、格差容認論・・「◯◯の猫でも稼ぐ猫は良い猫だ」と言う・・金持ちになれる人から豊かになって行くと言う格差容認論は前向きですから、儲けに遅れた人の夢・・励みになります。
アメリカで昔言われたアメリカンドリームもこれに似たものでした。
現在欧米の格差論は、新興国の挑戦を受けて単純労働に高額賃金を払えなくなって来た・・負け始めた以上は、等しく貧しくなるべきところをアップルやユニクロみたいにタマタマ成功した経営者や金融のプロあるいは資源利権により特定一握りの階層だけが逆に金持ちになって焼け太りになっている点が大違いです。
アメリカの格差不満を背景にするトランプ旋風の張本人自身が、大金持ちであることを自慢する歪んだ社会です。
西欧を追い越す途中の新興国だったアメリカや・・中国や新興国の格差は、先に儲けた人ですから、こう言う社会では後に続く予定の多くの国民には「アメリカンドリーム」であり、賄賂であろうと何であろうと、「中国の超金持ち」は(自分もその仲間に入れば良いと言う希望で)まだ儲けていない人に夢を与えて来ました。
現在の先進国の場合には水位がずるずる下がって行く中で、特定の成功者だけが天文学的利益を独り占めしているのですから,ビルゲイツやジョブズ氏のように仮に特別な才能のあって不公平ではないとしても一般人には夢がありません。
中国や新興国の明日への夢がしぼんで行くと共産党幹部(の場合能力差ですらないのですから)だけが良い思いをしていることに対して国民の不満が高まります。
先進国で新興国労働者と同じレベルの仕事しか出来ない人は、本来新興国労働者と同じ収入でいい筈ですが、先進国の場合上記の特定巨額収入者の納めた税金や過去の利権収入(海外進出企業からの送金など)でインフラや社会保障コストが補填されているので、なお新興国労働者の何倍もの生活が出来ています。
生活保護その他何らの給付も受けていないつもりでも、非課税者は言うに及ばず納付税額の少ない人は、納付額以上にインフラを利用出来る恩恵を受けている人が一杯います。
月10万円前後の収入で税を払っていない人が保育所利用している場合、その維持費として税で膨大なコスト負担しています。
保険制度に至っては納付保険料の何十倍も使っている人はざらでしょう。
このように格差と言っても直接収入格差は、インフラ次第で大幅に緩和される結果、本当の格差感は社会のインフラ充実度によります。
アメリカの一人当たりGDPが高いと言っても資源や石油利権収入、金融取引、知財収入等の平均ですから、平均収入の議論しても工場労働者やサービス業の平均賃金など詳細は)何も分りません。
アメリカは昨年あたりから末端労働者の賃金水準は中国の人件費に負けないと豪語しているくらいですから、工場労働者やストアー店員の個々人の給与は高くありません。
ですから金融資本や知財等海外からの収益による高額所得者がいる結果却って格差が激しくなるし、成功者の収入が下がって行くと格差は縮小するでしょうが、そうなると将来的に(社会保障を含めた)収入が下がって、本来の働きレベルに下がって行く不安があります。
知財収入や過去の遺産(利権収入)等の分配に頼るようになると受益者が少ない方が有利・・高齢者が退職金等の預貯金を90歳まで残せるか心配になるのと同じでいつまで続くかに関心が移って行きます。
この不安がイギリスの移民増加反対論・・分配対象を減らせと言う運動が盛り上がった現実です。
金融や知財のぼろ儲けや資源・石油利権等で、一人で何十億と言う収入のある人の払った税金や寄付で多くの国民がフードスタンプを配給されていると、国民は不満と言うよりも将来が不安でしょう。
非正規雇用の多いアメリカ最大の大企業のウオールマートの店員の多くが,生活困窮者向けの1、25ドル分のフードスタンプを貰う列に並んでいることが問題になって日本でも報道されましたが、漫画みたいな社会です。
アメリカではフードスタンプ受給者が増え過ぎていて、この数年支給を絞り始めています。
http://www.huffingtonpost.jp/2015/01/09/food-stamp-enrollment_n_6441040.html
「ボーレン氏「2016年にはさらに多くの人びとが給付を失うことになるでしょう。たとえ、登録申請者数の動向が、これまで通りであっても」と述べた。
政府の最新データによると、2014年9月の登録者数は4650万人で、前年の4730万人から減少した」
ちょっとデータが古いですが別の解説によると以下のとおりです。
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=279619
13/07/27 PM10
「四人家族で年収2万3314ドル(約230万円)という、国の定める貧困ライン以下で暮らす国民は現在4600万人、うち1600万人が子どもだ。失業率 は9.6%(2010年)だが、職探しをあきらめた潜在的失業者も加算すると実質20%という驚異的な数字となる。16歳から29歳までの若者の失業率を 見ると、2000年の33%から45%に上昇、経済的に自立できず親と同居している若者は600万人だ。」

フードスタンプは所帯単位で配給するので、約3億あまりの人口を割ると受給率は労働者3人に1人とも言われていますので大変な事態です。
たったの1、25ドルの食品購入券(1ヶ月分で所帯全員分とすると結構な額ですが・・)を貰うために夜中の12時に(何故か深夜に配布する仕組みらしい)並んでいる映像を見ると・・それが全米労働者の3人に1人と言うのでは、如何に格差が進んでいるかが分ります。
こんな夢のない生活で何年もよく我慢しているものだ・・中国よりも先に暴動が起きてもおかしくないような気がしますが・・。
トランプ氏の煽動に乗りたくなる人が増えているのは当然でしょう。

格差とは2(平等化進展)

フラット化は悪いことばかりではありません・・何よりも人権活動家の渇望する平等社会の実現ですから,フラット化に対して何故不満となるのかを考え直す必要があります。
体力差、身長差、不器用さ近視遠視、難聴その他心神のハンデイなどいろんな能力差があってもその差を最小化して同じように仕事をし、楽しめるようにして行くのが近代工業化・・豊かなよい社会の指標であり基礎目標です。
近代工業化の進展とは、これに比例して社会弱者の地位が補強されて男女差や身障者、視力差、高齢者など能力格差を縮小し、(記録媒体も記憶力の補完です)フラット化して行く歴史です。
人権意識さえあれば平等になるのではなく、女性・妊婦や子育て中の人、高齢者や病者・・ガン患者でも働ける医療環境・身障者用の補助具の発達などすべて格差縮小のためにあるといえるでしょう。
クルマ発達は足の早い人遅い人、あるいは荷車引きに必要な人力の格差をなくし・特殊車両・フォークリフトや銃器類の発達も体力格差を軽減したことは明らかです。
ハンドルがパワーステアリングになって、ハンドルサバキが楽になって運転する女性が増えました。
(以前書きましたがコンビニその他あちこちでトイレの設置が進んだことも大きいです)
自動運転技術が進めばもっと年齢差などを補強して行けるでしょう。
人権意識の発達で女性の運転が増えた訳ではありません。
流動食や離乳食や保健食品の発達も消化吸収能力の弱い人と強い人の格差補強であり、リハビリその他ありとあらゆる分野の科学技術の発達は能力格差を補填するものと言えます。
能力格差縮小に起因する平等化進むことと職業分化に目を転じると、重量物取り扱いには腕力不要、製鉄など高熱危険労働も遠隔操作が普通になり、パソコンの発達はそろばん等能力差や筆記能力差をなくし筆跡の上手下手の格差や漢字を読めるが書けない人と書ける人との格差もなくしました。
憲法14条の「平等」とは能力差による結果不平等を認めていると言いますが、他方で出来るだけ各種道具(眼鏡や補聴器あるいは義足の使い勝手の良さ)の工夫によって身体的能力差を克服する試みが推奨され身体能力による待遇格差をなくす方向に進んでいます。
高齢者が移動し易いようにあちこちでエレベーターやエスカレーターや休憩場所を設置しあるいは重い荷物を女性も持てるような補助具・・ロボット系の普及運動もみな同じです。
今流行の在宅勤務も子育てや介護しながら働けるようにする・・いろんなハンデイのある人も働けるようにする・・社会のバリアーフリー化こそが格差縮小の試みの基礎です。
その上工業製品に限らずいろんな分野でのベルトコンベアー方式(精神)の普及によって、事務作業その他の分業化(例えばテレフォンガールの大量雇用など)も進んでいます。
上記のように長い目でみれば、能力格差による結果不平等縮小克服・・スポーツ選手と違い、補聴器をつけていようと眼鏡で視力を補正していようと、薬物療法をしながらでも元気に働いた方が良いルール・・フラット化は抗し切れない趨勢ですし、それが人類の正しい目標と言うべきでしょう。
格差縮小と格差拡大論がここで何故問題になるかのパラドックスですが、フラット化によって、従来20〜40〜70点程度の人が能力格差に応じてピラミッド型の地位・収入を得ていたのに身体能力補完具の発達によって収入差がなくなって来た不満が基礎にあるからです。
10〜20点の人も60〜70点の人と同じ仕事ができるようになったならば60〜70点の賃金にすれば文句なしですが、そうはならないで競合(希少性の軽減)の問題もあって、実際には、みんな平均3〜40ポイントの賃金になってしまうことになり勝ちです。
先進国間の国内競争だけだと一定の閉鎖空間なのでその程度で収まりますが、新興国が参入するようになると国際低賃金競争の煽りで本来の能力水準・・20点の人ができる仕事なら20ポイントの賃金にならざるを得ません。
フラット化される水準が20点〜25〜30〜35〜40点と順次上がって来て従来大卒なら中間層以上・・大丈夫と思われていた人たち(囲碁さえも人工知能に負ける時代です)も単純労働に飲み込まれようとしています。
今や大卒の現場系が増えて来て、エリートだけがフラット化・低賃金化から逃れられている状態ですから、大変なことはそのとおりですが、これを格差反対と言ってレバ済むかかは別問題です。
人間の能力構成は富士山の裾野のような分布のママですが、比喩的に言えば従来5〜60点の人は5〜6合目あたりまで登って能力相応の景色を見られたのですが、現在ではそう言う人もみんな1〜2合目の裾野あたりまで行くと、その次が絶壁になっていて自分の能力を発揮出来るもっと高い場所まで上がれないで景色の見えない裾野付近で単純労働者の仕事しかなくて低迷している状態です。
これはどこの国でも同じですから、格差問題を主張する以上は30〜40〜50〜60点の人にはその点数どおりの展望を開けるような社会・・少しずつの能力差に応じた処遇が用意されないと・・2〜30点の次は80点以上の人しか仕事がないと言われると向上努力する意欲を失う人が多くなります。
なだらかな上り坂ならば2000メートルの頂上付近まで時間をかけて登れますが、500メートルまで登ってみるとイキナリ1000メートルの絶壁があるとそこですくんでしまいます。
かと言って格差をなくすためにエベレスト登頂能力のある人の登山を禁止する・・高度な研究や便利な道具を考案したり新たな事業モデルを考え出すのを禁止するのでは人類のよりよき生活が保障されません。
高度研究者やジョブズ氏や野球のイチローのような特定の成功者・・比喩的言えば80点以上の人の給与・報酬が高すぎないかの批判が格差問題です。
画一的事業化によって、4〜5〜6〜70点の人に払っていた賃金を一律20ポイント前後に落とした差額巨額収入・・考案者利益→知財収入と事業化した資本家の利益→金融関係の高額報酬と一般労働者との格差が目立ち過ぎるようになりました。
ノーベル賞受賞者への賞讃気分でも分るように、研究開発や新規事業モデル開発成功による利益はまだ納得出来るが、この成功者に群がる周辺人そ・・秘書や幹部社員・・金融関係者の報酬が高過ぎる批判がこれの表現です。
格差反対論とは、フラット化とセットになった80〜99点台の高収入者との格差を言うとすれば、有能者がより良いものを造って行こうとする行為を批判出来ない「成功するな」【努力するな」とは言えないとすれば、せいぜいその周辺で働く人を批判するだけとすれば、無理があります。
天才的創業者や発明家がいても、一人では何も出来ないのでその周辺人材が必須でこれをなくす訳には行きません・・真田幸村には十勇士がいた・・勇将の下に弱卒無しと言われるように、これを非難していても解決出来ません・・何となくやっかみの域を出ない印象です。
反対論の中核は中間層が単純労働者化・底辺労働者化して行くことに対する不安・不満でしょうが、庶民や子供が不安・不満の表明なら分りますが、解決すべき役割の政治運動家が不安を煽っても何の解決にもなりません。

格差とは?1

「格差反対」と言うスローガンを掲げてデモをしているだけでは何も解決出来ません。
解決出来ない不満を移民反対論にすり替えていると思わます。
その意味では私の言う移民増加反対論とは目的が違います。
私の移民反対論はクルマの自動運転化その他ロボット化進展によって、単純労働人口が過剰になる一方だから国民レベル底上げが必要・これに苦労する筈なのにあえて移民・底辺労働中心の移民を積極的(受入れ用に税を使ってまで実習)に入れるのは間違い(自然に来るのを排斥しろと言うのではありません)と言うに過ぎません。
これまで何回も書いていますが、格差反対論を唱えるならば巨大な比率を占める格差反対論の中核である「元」中間層の雇用をどうやって創出するかの提案が必要です。
移民排斥は一見労働者が減る方法→単純労働の低賃金化防止になりそうですが、経済原理に反した高賃金政策(中国が強制的に最低賃金引き上げた結果、工場が東南アジアに逃げて行ったのと同じです)は企業が国外に逃げてしまうので結局雇用が守れなくなります。
上記の結果、仮に移民排除してもアメリカやイギリス白人の賃金が上がるとは思えませんが・・。
賃金増狙いではなく職を奪われていると言うならば、移民同様の低賃金でもあるいはきつい職場でも働く意欲があるかどうかにかかってきます・・同等の条件で働く意欲があるならば、企業は言葉も習慣も通じる元々の地元民を優先的に雇うでしょう。
従って「職を奪う」と言うスローガンは自分達の労働意欲が低いことを自己証明していることになります。
わが国の場合介護士でなんであれ鳴り物入りで外国人労働者を受けれいても日本人労働意欲の高さが・・介護士不足が喧伝されていますが実際には、なる人が増えて来たので外国人労働力定着の事実上の排除原因になっています。
補助金を使って誘致しているのに?外国人が定着しないのは受けれ体制の不備だとマスコミが主張していますが、競争力がない以上は定着出来ないのは当たり前です。
この辺は外資が日本に定着し難いのと根は同じです。
先進国では移民に対する差別賃金が許されませんので、他所から来て言語その他職場習慣に慣れていない・総合競争力で不利な外国人の方が、同一賃金を払っても元々の地元民よりも良い労働力になること自体・・余程地元民のレベルが低い・能力以上の賃金を払って来たことの証明です。
西欧では実力上の賃金を得て来た・植民地時代の遺産でやって来たからこそ同一賃金でも移民に負けてしまうのです。
ハンデイのある外資や外国人労働者に負けること自体が自国民との、能力格差が半端でないことが証明されます。
西欧の問題点は何回か書いていると思いますが,労働=奴隷と言う観念が強く出来るだけ遊んで暮らしたい・・日本人のように「元気なうちは死ぬまで働きたい」のとは違い、「早く年金生活に入り遊んで暮らしたい」と言う【日本人からミレバ)倒錯した願望が強く、植民地支配時代に中流層まで貴族のような生活をしてしまった点にあります。
このような価値観の違いがあるののに、マスコミが頻りに欧米基準の「65歳以上人口何人」の高齢化率を繰り返すのは日本には当てはまらないと言う意見を繰り返し書いてきました。
世の中は比喩的に言えば、能力90〜100点クラスと80点台クラス、70〜60〜50点と段階的能力に応じた居場所・職業や収入が決まっているものでしたが、大量生産社会が始まったことから、様相が変わってきました。
事務系で言えば、新人→主事→主任→係長課長補佐など、現場系でも、職長その他古参順に尊敬される社会ですが、大量生産現場で何千人と並んで働くようになるとそこで働く限り基礎能力差に関係なく収入は労働時間に比例しみんな同じ(平等の理想郷出現?)になります。
50年ほど前に私が若い頃に「大衆社会状況」「自己疎外」社会になると言う社会分析が流行しましたが、これが今になって「格差社会」の現実になって来たのです。
等しく貧しく疎外されるのが大衆社会化の想定でしたが、中には健闘して一定数の巨額収入を得る成功者が出て来たので「一握りの大もうけする人とその他大勢」の「格差社会」になったのです。
ベルトコンベア−式組み立て工程の場合、未熟練労働者の役割増加・・熟練度に応じた仕事がなくなって行く・流通系では間で口銭をとる問屋系が姿を消し、パソコン等の発達によって事務系でも何もかもフラット化して来て,中間管理職不要・・あらゆる分野で、言わば30点〜70点あたりまでの才能の人も10〜25点の人と同じ仕事しかなくなって来ました。
先進国は長年の蓄積があったり、産業革命の恩恵を受けない地域に対する搾取?によって、単純労働(2〜30点の人ができる仕事を5〜60点の人にさせていてもなお従来どおり5〜60点の人に払っていた給与をそのまま払えていました。
これが中国の改革開放によって極端に人件費の安い(約20〜30分の1)新興国の参入が始まるとどこで作っても同じような汎用品については国際競争力がなくなり、先進国も25点の人ができる仕事をしてる元60点の人に従来どおり60点の高収入を払えなくなりました。
この結果目に見える形で中間層の没落が始まり一方で孫正義のような成功者・・1強(と言うのは極端ですが上記例で言えば7〜80点以上の強者)の外は皆敗者・底辺労働者になるしかない社会到来です。
フラット社会の到来が明白になったことを格差社会と言っているに過ぎません。
元々10〜20点レベルで低迷していた底辺層や身障者や高齢者にとっては、格差を感じるのは元々であって、怒ることすら出来ない状態・収入が少なくて生活保護などみんなの世話になっていると言う負い目の方を多く感じる関係で不満を言いませんでした。
汎用品製造工程・・大量生産現場と能力格差の関係で比喩的に言えば、25点以上の能力さえあれば、30点も40〜45〜50点の人も皆同じ仕事しか出来ない・・給与も同じ社会・言わば労働の場での格差をなくす平等化の試みと言えます。
上記フラット化の結果、給与が平均の35点になってしまうと元々20点の人には朗報ですが、45点の人似とっては地位の低下ですし、25点の人と同じ仕事しか出来ない・給与も下がる不満を格差社会と言っているに過ぎません。
45点の能力があっても25点の仕事しかない場合本来仕事以上10ポイントも余計給与をもらって得している筈ですが、元の給与から比較すると10ポイント給与が下がったのが不満なのですが、別の角度から言えば能力発揮出来る場がないことを言っているに過ぎません。
そろばんのプロが計算機の発達で一般事務員と同じ仕事しか出来なくなったやり場のない不満のようなものです。
足の強い人も足の弱い人も同じエレベーターに乗れば同時に10階に着くのが不公平と怒っているようなものです。
足が自慢ならばエレベータに乗らないで歩いて上がったら良いでしょうし、流れ作業がイヤなら自分一人で全部完成したら!と言われるのと同じです。
流れ作業よりも良い製品を完成出来るならば、(エレベーターより自分の足で速く登れるならばエレベーターを使わないなど)それをやれば良いのですが、そう言う能力もないからやり場のない不満を持っているのです。

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