円高適応力2

円安の効果は何でしょうか?
円安は労せずして(個別の賃金引き下げは大変ですが、全体の水準低下は簡単です・・大掛かりな賃下げ政策です)海外との低賃金競争に下駄を履かせて貰える効果があります。
日本と中国の人件費あるいは地代等が2倍の格差があるときに、仮に円が半値になれば座したままで、コスト競争力が対等になってしまう魔術です。
今はまだ約10倍の格差ですが、これが円安によって仮に7〜8倍程度の差になると技術力の差で十分な競争力があることになって行くという論法です。
韓国製品との競合で言えば、日本製が2〜3割高い程度の競争なら負けないときに2倍も高くなったので、最近の日本の電気業界が大変なことになっていたのです。
アベノミクスがあろうとなかろうと昨日まで書いたとおり原発事故による資源輸入の増加によって貿易赤字定着傾向になっていたので、円の地合が安くなる傾向のときでした。
原発事故→資源輸入の拡大→貿易赤字→円安→日本企業救済に一時的・・早めに役立つことになったと言えます。
ただし、レベルが高過ぎる学校に入ると努力してもどうにもならず精神を病んでしまうことがあるように、円が高すぎると企業努力の限界を越えて海外脱出になりますが、逆に現状で余裕の学校に行けば楽に良い成績を取れる代わりに将来への発展性がありません。
ほどほどの円高が国の発展を保障するのであって、円が安過ぎても企業努力が弛んで衰退の道を歩むことになります。
資源国は、マトモに働かなくともそれで食えるので多くの国民が遊んでしまう・・失業者が増えるリスクがあることをJanuary 20, 2013「中間層の重要性4(テロ・暴動の基盤1)」以下で連載したばかりですが、この逆張りで国難とも言える原発事故によって資源輸入が増大した結果、何十年も続いた黒字国の日本も貿易赤字国に転落してしまいました。
原発事故鬼よる貿易赤字を防ぐには今まで以上に働かなくてはならない・・放っておけば貿易赤字が続くことになるので、その分円安になり、結果的に国際的に見て労賃が下がって国際競争力がついて、国内産業が息を吹き返す・・国内の仕事が増えるという有り難い結果になります。
円安とは、国際的に見れば日本人の労賃を安売りすることになる点は同じですから、どうせ一定数の職場あるいは一定の所得があるならば、高賃金の方が良いに決まっています。
個々人で言えば少しでも自分の給与が高い方が良いでしょうが、高望みすると就職出来ないから困っているのです。
高度技術者1人で10人分稼いで、その代わり高度化についてけない9人は(失業ではなく)従来の家内労働・・介護やサービス業で生きて行く方が、その社会の生活水準がより高度になります。
低賃金で夫婦で夜遅くまであるいは土日は別の職場で働いていて、家に草花を植えたりするヒマもなく家事・育児をマトモに出来ないような家庭よりは、夫婦どちらかが高給取りで他方が家事を充分に切り盛りしている方が(あるいは夫婦とも半日だけ働いて充分な生活を出来る方が)生活水準が豊かになります。
同じ国内所得水準ならば鉱工業従事者数の比率を下げて家事(男女に限らず家庭内の仕事・子どもと一緒にいる時間その他)医療やサ−ビス業の比率が高い方が、国民が豊かなサービスを享受出来るのでより良い生活を楽しめます。
ですから円高でついて行けない産業が生じること自体が悪ではなく、これまで稼いでいたのに、円高に適応出来ずに衰退した産業の代わりに稼げる産業が生まれるかどうかにかかっています。
円高の結果貿易黒字から赤字に転落するとすれば、その時点で円高は日本経済の適応能力を越えている(実力以上の高評価を受けて却って損をする関係)ことになり、日本にとってマイナス要因となります。

円高適応力1

21日までのコラムは1昨年秋ころから書いていたものを基調に若干日付などを修正して掲載したものですが、この間に昨年末に総選挙があって、現在は安倍自民党政権になっていることから、所謂アベノミクスが世上大流行語になっています。
これまでのテーマとの関連で、アベノミクス・金融・財政政策ひいては為替相場に関して現在どうなっているかなろうとしているかを書いて行きます。
アベのミクスの内、円安誘導目標は安倍氏が自民党党首になったころから早くも円安効果が出始めたとして世上囃し立てていますが、その功罪をどう見るべきでしょうか?
これまで書いているように低金利政策だけでは、資金が海外に出て行く(海外投資が進む)・・ひいては国内産業空洞化が進む一方になります。
前回まで書いて来たように海外進出ブームでも国内に居残ってなお勝ち進んでいるトヨタやコマツ等の会社がありますが、そうした会社でも海外工場比率が上がる一方ですし、(国内生産を減らさないで頑張るのがやっとで)しかも国内に踏みとどまる企業は少数派になりつつあります。
大方の企業はこれ以上円高が進むと海外に逃げるしかないという立場ですから・・国内職場が減って海外から利益送金してくる所得で所得再分配をする社会(円高定着で)になった場合を想定してみましょう。
海外進出→国内空洞化が進んで輸出が減っても、その代わり海外からの利益送金が増えて経常収支としては同じになる場合があります。
この場合労働需給側面で見れば職場が減るので、職場が減った分と同じだけ少子化が進んで労働力減小が進んでいない限り、国内失業者が増えるので国内的には不健全な状態になります。
アラブ等で頻発している最近の政権転覆の事例で書いたように、資源国等で革命騒乱が起き易いのは国民の労働に頼る比率が低く、少数労働者の働きだけで巨額収入が得られる産業構造に問題があることをJanuary 20, 2013「中間層の重要性4(テロ・暴動の基盤1)」以下で連載したばかりです。
日本社会が安定しているのは末端まで仕事が行き渡っていて精神が健全に維持されているからですが、少数の高度技術者や国内にとどまっても輸出出来る少数特殊勝ち組企業の高収入と海外進出による海外からの配当収入に国民総所得が頼るようになると、国際収支が黒字でも資源国では所得の割合に職場が少ないのと同様に国内で働いている人が減ります。
失業者が溢れるのでは、大変なこととなります。
この受け皿として失業させて失業保険を長期間払うよりは、税を使ってでも公共工事あるいは介護関連職種への移行が期待されています。
失業対策と言うか所得再分配と言うかの違いです。
すなわち、お父さんの稼ぎが良いときには専業主婦が多くなり易いですが彼女らが失業給付を受けているのではありませんが、家庭生活水準が上がります。
トヨタやコマツ等の特定企業の稼ぎや海外からの送金で日本経済が成り立つ時代には、高収入の分配が家庭内だけではなく社会的に行われないと失業者だらけになります。
特定者に偏る収入を社会的再分配システムにしたのが介護などの社会化と言えるでしょう。
介護関連事業へのシフトが失業の代わりという位置づけですと、海外からの送金や高度化成功者や高収入者の税に頼る分だけ、所得再分配・失業救済事業的要素があって賃金が安くなる傾向・・所得格差が広がる傾向があります。
高額所得者がいて、これをサービス分野に再分配出来れば、国民が豊かな生活が出来ることについて、この直ぐ後に書いて行きます。
以上の次第で円高は国民の労賃を高く評価してくれる代わりについて行けない国民は(新たな職業を税で作ってくれない限り)仕事を失うのが原則ですので、目出たいことだと喜んでばかりいられません。
学校の授業レベルをどの辺に置くのかの議論と似ていて、数人の生徒しか理解出来ないレベルに引き上げて「自分のクラスは高度な数学を教えている」と自慢していても生徒の大多数が眠ってしまうのでは困ります。
4〜5人が稼いで残り95〜6人を養ってやるよりは、9割以上の人が働いている社会の方が幸せですし、政治の方も気楽です。
国内雇用対策として国内公共工事を増やしても海外企業の受注を阻止出来ないし、資材輸入比率も上がる傾向があるので、ある程度しり抜けになりますが、それでもまだ国内企業の受注が8〜9割以上を占めているでしょうし、(資金が1〜2割海外流出しても)何よりも工事場所が国内にあるので、国内物流や現場労務者等向けの国内雇用が維持出来ます。
(資材を海外から輸入するなどもあって投資除数効果が低くなっていることは認めざるをませんが・・)
それと公共工事に使用する資材の大本である鉄鉱石や原油(ビニールパイプその他全て元はと言えば)輸入資材ばかりですから、結局は内需拡大=貿易赤字推進策→円安効果になります。
一般家庭で言えば、工務店を自分で経営していても家を直せば、家計が赤字になるのと同じです。
既にアベ政権誕生直前ころから貿易の巨額赤字発生によって、(20日の日経夕刊には2013年1月単月の貿易赤字額が何と1兆6294億円と出ていました。)赤字になればその赤字分だけ決済用に円で外貨を買わねばならないので、需給の原理によって実際に円安傾向になっていましたが、これに加えてアベ政権の金融・財政出動政策期待によって円安が加速される傾向が出ています。

国際収支3(原発停止)

所得再分配資金についても同じで、政府がどの水準まで国民に生活保障すれば国際収支が均衡し、それ以上ならどれだけの赤字になると言う試算表が公表されるべきです。
学者も政府のお先棒ばかり担いでいないで、こうした国民が本当に知りたがっている研究発表を自発的にするくらいでないと存在価値がありません。
仮に生活水準が現状で国際収支トントン、今の1割アップで2割の赤字ならば、これ以上社会保障水準を引き上げないことが肝要であって、水準を1割引き上げてその資金源として国債を減らして増税しても収入以上の生活をしていれば、対外的な赤字は減りません。
日本経済にとって重要なのは生活水準をどの辺に置くかの議論であるべきであって、国債によるか税収によるかは全く関係がないことを、April 6, 2012「財政収支と国際収支1〜2」で国債が悪で税が善とする意見が誤りであることを連載しました。
現在での具体的な例で言えば、原発停止による燃料費の支出増でイキナリ貿易赤字体質に転落していますが、これに比例して電力消費減・節約が叫ばれているのは上記理論の無意識な応用です。
もしも現状の生活水準を維持したままで従来通り電力を使えば、貿易赤字が恒常的になるとすれば(その他輸出が以前よりも増えなければ)、第1の原因である電力消費を先ず減らすこと・・それでも足りなければ第2にその他の支出も減ら(結局は生活水準低下)して行かないと巨額貿易赤字が定着してしまいます。
これまでの生活水準は原発依存で成り立っていたのですから、これをやめる以上は、コストアップした分・・高価な電力利用・家計負担増加・・ひいては値段に応じた消費削減を求めるのは仕方のないことです。
(原発の方が火力・水力よりも総体的にコストが安いと主張しているのではありません。
原発の方が事故があったときの損害倍賠償や廃炉コストなど加えればトータルでは高いかも知れませんが、これまでこうしたコストを織り込まないでやっていたので外見上安く見えていたに過ぎませんが、外見上の安さに比べて高くなるということになるでしょうか?)
もしもこのままの電力利用の場合、対外収支としてはやって行けなくなる(巨額赤字が継続する)とすれば、家計負担を嫌がって国家で(補助金・・原資は国債もあれば税もありますが)負担しても、国際収支赤字そのものが減る訳ではありません。
以上の次第で、我が国の国債が資金ショートするとしたら稼ぎ以上の生活をすること・国際収支の赤字継続→外貨準備・対外純債権の枯渇が前提であって、国債発行残高の増減には全く関係がありません。
原油や天然ガス輸入拡大によるここ1年間の貿易巨額赤字が恒常化するか否か私には不明ですが、もしも恒常化するとすすれば赤字がなくなる程度まで生活水準を落とさない限り、日本は将来的にギリシャ危機のようなことになります。
具体期には、原発をやめることによってその比率・・仮に原発依存度30%だったとすれば国民が30%電力消費を削減出来れば、原発をやめることによる原油等原燃料の輸入拡大は起きません。
しかし、一律に30%削減すれば、生産活動も同率30%縮小する(画期的な省エネ技術の開発がない限り国内総生産は電力消費量にほぼ比例するのが現状です)ので国内総生産が30%縮小・・従来の輸出用生産が大幅減になりますので、結果的に従来通りの国際収支にはなりません。
と言うことは家庭消費用の電力を8〜90%削減して、生産用電力削減を10〜20%減(国内総生産も1〜2割減)程度にしなければ、経済が成り立たなくなる理屈です。
家庭用とは言え、8〜9割も削減したのでは文明生活とは言えませんので、結局その他の支出(果物その他嗜好品の輸入を抑えてでも原油等の輸入を増やすしかない)電気の方は最大でも従来の10〜15割減くらいにしたいものです。
(これでもかなりの不自由・生活レベルが落ちますよ!)
原発全面停止による原油等の輸入拡大分が仮に昨年1年間6兆円であったとした場合、それを元に戻せない・・仮に最大節約(風力・太陽熱等代替電力の開発・省エネその他で)努力しても半分(3兆円)しか減らせないとすれば、残り3兆円分の赤字を原油以外のどの部分の輸入をどの程度減らして収支を事故前の国際収支に戻すべきかを(いろんな)パターンに分けて(原発依存度をイキナリゼロにするのではなく徐々に軽減するパターンも含めて)研究しておく必要があります。
(原発事故前よりも車や精密工業品などの輸出を増やして原燃料の輸入増の穴埋め出来れば言うことがないですが、海外展開や韓国等の追い上げを受けて国内生産が縮小して行く速度を緩めるのがやっとで・・輸出増をこれ以上期待するのは無理でしょう)
赤字国債を税に切り替えても国債収支の改善には何の解決にもならない・役人の自由度をどれだけ増やすかの議論が政治の主要テーマになっていますが、今はそんなことよりは、原発をやめる・あるいは徐々に縮小して行くとしたら、どの程度まで生活水準低下を国民が受入れられるか、輸出増努力と生活水準低下で穴埋めし切れないで残る貿易赤字をどうするかの研究・・活発な議論が必要とされているのではないでしょうか?

貿易収支赤字転落(原発事故)1

これまで新興国の停滞ラインがどの辺になるかの関心で書いてきましたが、・・今後我が国の(国際平準化後の)安定ラインはどの辺になるかを見て行きましょう。
イギリスが第一次世界大戦前からドイツやアメリカの追い上げを受けても、我が国のように産業高度化に構造転換して穴埋め仕切れなかったことが、現在に続くポンドジリ貧の原因でしょう。
(勿論イギリスも一定限度で高度化出来ていてロールスロイスのように世界最先端技術もありますが、国・社会全体の裾野の広い転換が出来なかった・・トータルでみるには貿易収支でしょうが、貿易収支が黒字にならない限り転換がうまく行ってないと言えるでしょう)
ちなみにイギリスの国際収支を日本の財務省の統計でみると1980年以降1回も黒字になっていない・・ずっと赤字の連続です。
日本はバブル崩壊後も約20年間巨額貿易黒字のままGDPが微増あるいは現状維持を続けていたことを国際収支表を紹介しながら書いてきました。
世上失われて10年とか20年と揶揄されますが、国内総生産が微増を続け、経常収支の黒字が莫大なまま推移していたことを見れば、結果として昨年の大震災までは日本は中国等新興国に追い上げられながらも構造転換に成功していたことになります。
まして、対ドル円相場がこの間に2倍近くも上がっていることから、ドル表示で見れば、驚異的高成長を続けて来たことになります。
昨年の大震災以降発電用燃料の大規模輸入により貿易赤字が原則化し始めているのは心配ですが、石油ショック時にも一時貿易赤字になったことがありますが、苦節何年・・ついに盛り返して経常収支巨大黒字のままで現在に至っています。
今回も試練・・燃料輸入増による貿易赤字化のピンチをチャンスの切っ掛けにして更に強い日本を再生出来ることを期待しています。
貿易赤字が定着するとなれば、ギリシャ並みに緊縮・・更なる構造転換の必要性が現実化してきます。
先ずは貿易赤字の行方・・解消見通しが重要です。
石油ショックのときは、企業の海外展開はホンの僅かでしたので企業も一丸となって全力投球で適応するしかなかったのが功を奏したのですが、今では、大手企業の大半が世界各地に工場を持っていて国内生産はその一部でしかありません。
今では企業に取っては輸出・生産環境の変化は、内外生産比率の変更で事足りるので、政府に円高対策を求めるとしても切実ではないし、その他環境や規制変化に対し企業にとっては血のにじむような新展開努力をする必死さが薄れています。
国内のスーパーなどが各地方自治体の政治には関心があるものの、その結果に対して早く反応することが主目的であって政策実現に向けた努力を殆どしないのと似ています。
全国展開のスーパーや大型電気店にとってはどこかの県にこだわる必要がなく、より有利な所に出店を加速すれば足りる関係ですが、多国籍企業もこれに似ています。
6月24日日経朝刊第一面を見ると、ホンダ(はその一例)も日本からの輸出(生産)を減らしてアメリカで増産してアジア諸国への輸出に切り替えて行く戦略が出ていました。
こうなって来ると日本企業の定義って・・・?と疑問を感じる人が増えるでしょう。
こうした動きが目白押しですので、燃料輸入増で困っているので本来は輸出を増やさねばならないのに、日本からの輸出が減る方向の動きが多くなっていることと石油ショックのときにはまだ伸び盛りの時代でしたが、今は高齢化社会に入っていることもあって、今回は貿易赤字解消がかなり難しいかも知れません。

原発の賛否(右翼)

ところで、つい最近事務所に土地関係で相談に来た40歳前の人が、(特に右でも左でもない普通の若者です)この間渋谷の原発反対のデモに行って来たら、右翼の街宣車が出ていてもの凄い形相で大声でがなり立てているのに驚いたと話していました。
伝統的支配勢力や右翼は何故原発の維持にこだわるのでしょうか?
コスト検証が終わって、きちんと損害賠償しても原発の方が安いと分ったときに、それでも感情的に原発は嫌だという議論に対して、財界や右翼がそれでは日本はやって行けないと言って感情的な反応するなら分ります。
今はもしかしたら原発の方が高いかもしれないという(直感的)状態下で、これをはっきりさせるコスト計算を避けたまま、(財界が研究費を出さないと研究出来ないことをAugust 16, 2011「学問の自由と社会の利益」のコラムで書きました)右翼を動員して国民を威圧する原発運動対策をしているのは理解出来ません。
今日・9月27日の日経朝刊では事故前には、電力債の利回り相場が、1%前後であったのに、原発事故後は4%の上乗せ(スプレッド)になったままで推移していて、東電以外の電力会社もまだ新規起債出来ないままになっていると報道されています。
同記事では沖縄電力だけ事故後も起債出来たようですが、原発がないからではないでしょうか?
財界がコスト検証をさせなくとも市場では、火力だけの沖縄電力よりも原発がある他の電力会社の方が、(充分な安全対策をすれば)コストが割高になると見ていることになります。
(政府保証の支援制度が出来た後の今でも市場では原発は高コストと見ていることになります)
コストを明らかにすると原発維持が出来ないと見て(あるいは既に結果が出ているのに隠しているだけかも知れません)合理的議論を避けて国民を沈黙させるために右翼を動員しているのでしょうか?
独裁国家が不都合な世論に対して、警察や軍による鎮圧をしますが、民主国家の我が国では、公的権力装置を使えないので、裏で資金を供給して形を変えて行うつもりなのでしょうか?
権力者に都合がいいので、闇の暴力装置がなくならないのです。
原発か火力かの技術的問題に右翼左翼の思想は関係ない筈ですが、ここで何故右翼が出て来るのでしょうか?
もしも、原発の方が高くつくならこれを維持すると損するのが財界ですから、財界が率先してコスト計算して損得を明らかにしたい筈ですが、コスト計算をさせないまま財界が何故これの維持に精出しているのでしょうか?
(右翼が軍資金なしに動ける筈がないので裏で巨額資金が動いているのでしょう、・・マスコミの場合、闇の金を使わなくとも広告費でいくらでも誘導出来ます・・)
ところで、最底辺の労務者は将来の年金や保険よりは今日の現金をほしがっていますし、(何十年後に効果の出る放射能の危険よりは今日の高賃金が良いのです)町工場や零細企業・人入れ稼業なども安全対策など法律通りやっていると、経営をやって行けないと言って劣悪な条件で働かせる傾向があります。
企業としては、労働条件が劣悪であろうとなかろうと賃金コストの安い国に工場移転して行くのが普通です。
同じ発想で言えば、原子力発電も次の事故は何時あるか分らないのに、安全対策のために何重もの無駄な設備など用意しておけない、あるいは高額保険など掛けていられないという意見が下地にあるのでしょうか?
安全対策なしに企業活動していて事故が起きると却って高いものにつくので、新幹線その他各種企業が安全対策に精出しているし、これが現在の常識です。
中国でさえも高速鉄道事故では、安全対策を表明せざるを得なくなりました。
各地の原発に安全の備えがないのが分ったので、これではイザとなると高いものにつくと評価する市場が電力業界の社債発行に対して4%の上乗せ利回りで応じているのです。
これに対して、原発業界では、事故が仮にまた起きたら政府保証債で賠償金を捻出すれば良いのだから、(東電は、借り換え債を繰り返していれば良いので、自腹では一切負担しない・・予定であることをAugust 26, 2011「原発賠償支援スキーム2」前後のコラムで紹介しました)また従来通り安いコストでやれると考えているのかも知れません。
「賠償する必要がない」からと正面切って今は主張出来ないので、右翼に資金を与えて原発反対運動を威圧させているのでしょうか?
データ開示をしないままだと原発反対運動が広がる一方になるので、当面の抑えとして右翼を使ってこれの広がりを押さえ込み、(頓服的効果です)マスコミには原油等の輸入が増えて大変だと一方的に騒がせてじわじわと洗脳しておいて、「確かに原油輸入増加で大変だな」と国民が思うようになった頃に御用学者の研究発表という手順かも知れません。
ちなみに、総コストが同じ場合、以下は仮定の話ですが、100のコストの内火力の場合原油コストがその8割を占め、原発の場合は、ウランのコストが2割で残りは建設費や保守・安全対策費用だとすれば、国内雇用や技術水準の維持という意味では、原発の方が価値が高いことになります。
いろんな立場の議論があり得るでしょうが、いずれの議論にせよ、財界が原発を維持したいならば、(右翼やマスコミの煽動に頼らず、)もっと国民に分るような各種データの開示に基づく公開論争をして原発の賛否は合理的に決めて行くべきです。

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