来し方を振り返って(千葉県の被災1)

今年はクリスマス・イヴをサボって年末準備こそが本命と考えていたのにいつの間にか年の瀬になりました。
毎日どうでもいいことを頭の体操のつもりで書いて来ましたが、今日からは年末特番シリーズです。
今年は、平成から令和に変わりめでたい行事が続きなんとなくおめでたい雰囲気で1年が終わりそうです。
雰囲気だけでなく国民生活に影響の大きい景気動向・雇用状況も人手不足を嘆くほどの活況で1年が終わり多くの人に笑顔が見られる良い一年でした。
戦後長く続いた日韓関係も新たなステージに入った年になりそうで、その評価は後世に待つとしても日本全体では何となく良い1年だったように思います。
以上は総括的印象であって個々人や地域によっては大変な1年だったことも多いでしょう。
例えば、私の住む千葉県では想定外の台風被害で、あちこちで復興に苦しんでいる方が多くいらっしゃるようです。
千葉県は台風がくるといってもほぼ百%予報止まりで、その日になるとちょっと強い風が吹く程度で台風がそれてしまうことの繰り返しで暑すぎもせず寒すぎず、住みよいところだと言うのが自慢の県でした。
気候風土が温暖な結果、お人好しというか、あっけらかんとした朗らかな県民性です。
洪水になるような大きな川もなければ山、谷も深くないので、人間だけでなく樹木や岩石の方も安心していたようで、今回の想定外の強風〜大雨であちこちで十分根を張っていなかった樹木が倒れ崖崩れが起きました。
崖崩れが起きるほどの大雨がない前提で高圧線や鉄道線路や道路も走っているので、電線も道路も樹木も崖上の岩石土砂も抵抗力が弱かったようです。
しょっちゅう大雨があれば崩れるべき崖は崩れ、倒れるべき高圧線や樹木は倒れ、おっこちるべき岩は落ちていたでしょうが・・。
人間界でも農家などが農業施設がどうなる?と言う危機感がなく台風通過する数時間だけ自分が家に引っ込んでればいい程度の感覚だったようでしたし、県組織自体の台風対策もあんちょこだったようです。
災害当時の対応が緩かったと県知事が追及されていましたが、県知事の意識の低さは県民意識の反映だったようです。
12月26日毎年行っている千葉県在住弁護士同期会で房州枇杷の話題が出ましたが、ビワはみかん畑のように日当たり水はけのために山の斜面に植えているようですが、今回の大雨でその斜面が崩れてビワ畑全体が崩落してしまった例が紹介されました。
事務所は千葉市にあるが自宅が館山市にある同期の弁護士・・話題提供者の説明によると崩落した斜面を復興してビワの苗を植えても、収穫できるまでには何年もかかるので、その間の生活費や今働き盛り?(今では5〜60台が大半でしょう)年齢の人が元気なうちに投資(借金返済)回収可能かの心配があるということでした。
長年丹精込めて作り上げた肥沃な土が崩落してなくなっているので、土つくりからの作業になるでしょうし、・・果実がつき始めても、品質の良い特産品への改良工夫〜業として安定出荷できるようになるには年数がかかる面もあるでしょう・・。
また山(千葉県には地図に乗るような高い山はありませんが丘陵地帯の丘のことです)の中腹から麓へ荷下ろしできるように斜面にロープウエー?(私の独自翻訳)を設置しているとのことでしたが、これらも根こそぎ倒れてしまったので、この復旧費用も巨大らしく災害用特別融資を受けても5〜10年程度で返せる自信がないので困っているとのことでした。
その他の農家も多くはビニールハウスやガラス張りの温室栽培(今は内部に温度管理用の設備)が多いので、これらがほとんど壊れているようで、これらを復旧するかしないかに悩んでいる農家が多いようです。
精密管理のためにか?ガラス張りの温室が最近増えているようですが、粉々に割れて畑に散らばっているので同じ場所で耕作できない問題があるようです。
一般農家がビワ等果樹栽培への転向やビニールハウス等への投資は、少しずつ栽培面積、ビニールハウスや高級なガラス張り温室等を増やしてきたものでしょうが、台風による一斉倒壊の場合、一斉巨額再投資が必要になるとともに軌道に乗るまで収入ゼロになる点が大違いです。
近代産業の場合、遠隔地展開の30店舗のうち1店舗が浸水して1店舗の営業を半年休んでも残り29店舗の売り上げでカバーできますが、農家の場合一箇所に集中しているのでビニールハウス30棟その他が同時被災する点が大きな違いです。
基本的に農業後継者が滅多にいない現実・・多くの農家で子供らが都会に出てしまっている現実があり、後継者がいない大規模投資はリスクが大きすぎるということらしいです。
東北の津波被害でもこのような問題・・遠くてこの種の苦しみが首都圏の人には、直に伝わらないだけで似たような苦悩が起きていることでしょう。
このような問題は緊急時のボランテア活動ではどうにもなりません。
弁護士会のメーリングリストを覗くと災害対策関連者間でこの種の悩みが出てくるようになっています。
東北の災害復興関連報道でも、鉄道駅の再建やスーパーの再開など目に見える復興の映像だけ伝わりますが、その何倍も消えていった姿は目に触れません。
過疎化が進む地域・・次世代後継者のいなくなった地域で60代の人が、自分の世代だけは先祖代々の漁業(関連加工業)や農業(畜産や果樹園など)や村唯一の商店を守っていこうと思っていた場合に、被災して根こそぎ事業資産を失うと事業再開気力をなくしている点では多分同じでしょう。
人気シリーズの「ポツンと一軒家」の場合で言えば、麓での現役リタイヤー後にいろんな事情を背景に「ポツンと一軒家」に戻って先祖の家を守っている姿が多いので人気なのでしょうが、こういう家が仮に災害で倒壊してしまうと、再建はほぼ不可能で黙って消えていくしかないのでしょう。
過疎地で5〜10年に1軒づつ住人が消えていくのと同じです。
東北大震災や千葉県の台風災害は、たまたま大量被害が一斉に発生しただけといえば言えますが、「ポツンと一軒家」の場合、一円被害でなく麓の家や農地が無事であれば「ポツンと一軒家」を維持できなくなるだけで日常生活に支障がない点が大違いです。

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