日米製造業の違い3

生産年齢人口のグラフを見ていきます。

https://bizhint.jp/keyword/27639からの引用です。
2018年10月26日(金)更新

生産年齢人口の推移

1880年頃の生産年齢人口は、上記グラフによると約8千万人で、17年ころはグラフ上で見ると約12分の11、5くらい・・7500万前後です。
17年の実数はグラフでは不明ですので日経の記事を引用します。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32867410R10C18A7MM8000/
2018/7/11 17:15 (2018/7/11 20:03更新)

総務省が11日発表した住民基本台帳に基づく2018年1月1日時点の人口動態調査によると、・・・
主な働き手となる15~64歳の生産年齢人口は7484万3915人。全体の59.77%にとどまった。
・・外国人人口は過去最多の249万7656人で前年比7.5%増えた。

昨日見たように80年から17年までの40年近くでトータル製造業従事者約550万人減ですが、その間の生産年齢人口が500万減ですから、製造業従事者減と人口減の数字がほぼあっている・・生産年齢人口で見れば、人口減分だけ製造業従事者が減ったことになります。
しかも上記生産年令人口には外国人250万人も含まれていますが、80年には外国人労働者がほぼゼロ・その頃から風俗系女子がいたように思いますが、製造業従事者数推移に関係ない数字です。
男性労働力として外国人労働力は純増です。
外国人労働力は、研修生やアルバイト中心で製造業で正規社員になる人は稀ですから、製造業従事者がどれだけ押し出されたかの推移を見る場合にカウントする必要がないでしょう。
80年から17年までの日本人の生産年齢人口の推移としては外国人の生産年齢人口を差し引いて考える方が合理的と思われます。
外国人全員が生産年齢人口でないとしても、多くは働き盛りの留学生や研修生等であって、幼児高齢者は少ないので生産年齢人口比が高い筈です。
仮に生産人口比率が8割とすれば、200万人が含まれていることになるので、80年以来の日本人労働力推移としてはこれを現在日本の生産年齢人口から差し引く必要があります。
7484万から200万引くと80年からの日本人だけの推移としては8000万から7284万に(約716万)減ったと見るのが正確でしょう。
日本人生産年齢人口が40年間弱で716万減った間に製造業従事者が550万減ったとすれば、リストラ等による不本意退出が少なく、定年等による不補充が大方の傾向だったように見えます。
ただ、これも男女別の統計をみないとはっきりしないとおもいます。
一家の大黒柱とされていた男性中心の製造業工員削減→転職後非正規に変わることによる技術伝承の断絶や家計収入大幅減が社会問題になっているのを勘案すると、男性工員減少の実数を知ることが重要です。
製造業といっても家電系の工場では大量の女子行員が働いているのが普通でしたが、(私は昭和40年代はじめに川崎市の南武線沿線に住んでいたことがありますが、当時は富士通、NEC、東芝など一駅ごとに大規模工場があって、大量の女子行員の独身寮が存在する時代でした。
千葉でも20年ほど前までは事件相談などで東金だったかソニーの下請け工場に働いているという女性がいましたし、2年ほど前の事件でも茂原あたりのやはり工場勤務の女性がいましたが、半導体電子部品関連では手先の器用さが必要なので女子工員が意外に多く働いていますが、多くは家計補助程度で主役ではありません。
このシリーズのテーマ・・格差拡大視点で考えると、女性工員が介護に転職しても家計収入はそれほど変わらないし技術伝承途絶の心配もありません。
重要なのは、一家の柱として4〜500万の年間給与を得ていた男性工員がリストラで配送やサービス業などへの転職の比率でしょう。
このように考えると製造業従事者の推移としても男女別推移が重要で、製造業という大雑把な括り方統計自体に無理があることがわかります。
男女別統計がすぐには見当たらないので日本で男性が主に従事する製鉄(関連産業)や化学系工場〜発電(重電系)車製造ライン等々での製造業がどの程度のスピードで衰退縮小しているかで見た方が良さそうです。
(男性が家計を支えるという意識自体徐々に薄れていますが「今までのところ」まだ重要ですので、これがどうだったか?という意味です)
一般的にいって、新興国へ移りやすい職種は女性工員の多い分野(イメージしやすいのは何千人と働く深圳(今はバングラデイシュ)の縫製工場やおもちゃ製造あるいは家電組み立て・半導体工場など労働集約系)から始まるように思われます。

日米製造業の違い2

GMの国内5工場閉鎖発表は、閉鎖による国内イメージダウン・トランプ氏による報復のマイナスや消費地としての国内市場規模よりも国外で戦えるかどうかの判断の方が重要とみたのでしょう。
本田の英国工場閉鎖発表が大騒ぎになっていますが、本田の場合、英国にとって外資そのものですから、英国内に工場を持つメリット(英国内にある方が英国内では売りやすいでしょうが、EU全体への売り上げを見込んだ工場維持ができるかです)デメリットの帳尻の問題であることが分かり良い例です。
これが英国最近のヒット企業である(せっかく世界企業に育ったのに?)掃除機で知られるルンバがシンガポールに本社を移すという決定になると英国民も複雑な気持ちのようです。
消費の将来性としてアジアが有望・本社(商品開発や意思決定の迅速さのために)もアジアにおいた方が合理的という発表のようです。
アメリカに戻しますと、「レベルの低い国民はお荷物なので早く出て行ってくれ」とまではっきり言えないので、国内製造業を守れとキャンペインしていると思われますが、アメリカの政策方向から見れば、大量雇用する必要のある製造業・3月5日に紹介したようにGMはアメリカ本籍の企業でありながら、(実質用済み扱いされているから?)トランプ氏に脅されても米国工場閉鎖を決めたのです。
自国内にとどまって自国企業としての保護を受けて優遇されるよりは、世界(よその国・市場)で堂々と戦う方が合理的という企業があっても不思議ではありません。
3月3日には中国企業自体が大量生産部門をアフリカへ移転している実態を紹介しました。
アメリカで残っている製造業でもハイテク製品は別として車生産等旧来型製造業は時代の寵児ではない・・肩身の狭い思いをしているのでしょう。
日本人の価値観は一人で巨万の富を稼ぎ、大金を寄付してばらまく・/貧乏人をフードスタンプの行列に並ばせるようなあり方には拒否感の強い社会です。
アクまで皆ですり合わせて良いものを作り、(自己の手柄にせず「皆様の協力のおかげです」という)世界に貢献したい人が多い社会ではないでしょうか?
米国製造業従事者比率を80年台と足元?の比較(20%から8%へ)を3月1日に日経新聞記事を紹介しましたが、日本製造業従事者数の変化がどうなっているかを見ておきましょう。

https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0204.html

 

上記引用グラフでは、日本では全労働者に対する比率は80年の約35%から17年の約18、6%へ下がっていますので、アメリカの20分の8より減少率が少ないのですが、、この間女性と高齢就労者が増えたことが重要です。

アメリカも同様の理屈がなりたつでしょうが、日本の場合、増加分の多くが女性高齢者の労働参加の進展・保育や介護その他サービス業の需要があってその方面の就労者が増えたのです。

(現役の工場労働者が吐き出されて慣れないサービス業に押しかけたのとは違います。

全産業に占める製造業従事者比率の変化ではなく、製造業従事者がどれだけ減ったかの減少比率が重要です。

グラフのコピー拡大率によって違いますが、80年では3、5センチ(約1、8センチ1000万人)で約2000万人あまり、17年では2、8センチですから約27%(約550万人あまり?)しか減っていません。

アメリカの実数減少率が不明ですが、日本の場合工場労働者数自体(実数)があまり減っていないようです。

日本では、生産年齢人口の減少過程に入ってから逆に就労者数が増えているので、生産年齢人口比・特に男性で製造業従事者比率がどうなっているかが重要でしょう。

(この間に増えたのは製造業向きではない女性と高齢者ですからサービス系需要が増えたのは、受け皿として好都合でした)


日米製造業の違い1

アメリカだって今後はレベルの低い人を減らして民度アップする重要性に気づいていたでしょうが、それが形になって現れたのがオバマ政権の不法移民に対する・・処遇変更政策であり、大分前から取り組んでいた(技能/留学ビザその他細分化した)移民の絞り込み政策の強化でしょう。
移民のレベルアップ再教育には帰属意識が重要ですから、(いつまでも不法扱いではヒスパニック系では英語すら学ぶ気持ちになれない・警官に対する反感の強い人が多いことを2月末頃にレポート引用で紹介しました)帰属意識が生まれないからです。
これに対してトランプ氏の反移民政策は、新規流入阻止程度の生ぬるい施策だけではなく(人手不足の時には目をつぶって不法滞在を利用してきたが・・)既存単純労働移民の面倒を見きれない・・簡単に切り捨てたい意識が表面化してきたように見えます。
国民として負の遺産の再構成・再教育に取り込む気持ちの程度は企業のありかたに現れます。
日本企業は従業員の社会不適合を防ぐために、しょっちゅう社内研修していますし、仮に環境激変で企業全体の操業率が下がってもすぐに解雇しないで社内失業として抱え込んで切磋琢磨して時節到来亜を待つのが普通です。
アメリカの場合、社内失業で抱え込まないでドンドンレイオフするのが普通であるのと同様に、国全体でも彼らの面倒を見るための再教育などしてもジェット機やロケット製造に関与させることは不可能・・手間暇かかっても大した効果がないので「ボランテイア資金程度は出すが、国策として再教育などやってられない」とばかりに、「不法移民」として「追い出し政策」に転じたと見るべきでしょう。
アメリカの場合、AGFA(Apple, Google, Facebook, Amazon)アップルやグーグルフェイスブック等を見ると、中間人材など歯牙にも掛けない・・世界トップレベルの頭脳を持つ人だけが人間らしく創造に参加し働ける社会を理想としているように見えます。
February 19, 2019にアマゾンの第二本社設置に関してニューヨークの反対を紹介したように、今やAGFAその他最先端系世界企業は本社部門が巨大化しています・日本でもソニー本社ビル群の威容には驚きますよ!これに対し従来型製造企業ではトヨタ東京本社(本拠地にはもっと立派なビルがあるのでしょうが)も簡素なビルが1棟ある程度の簡素なものですし、ブリジストンが数年前から本社ビル建て替え中ですが世界企業といっても本社ビルが1棟あれば良い程度です。
アメリカではその他の労働者はロボットのように(工場ロボットが代替するまでのつなぎとして?)働かせればいいという社会を構想しているように見えます。
軍事でいえば無人機が開発されていますがゆくゆくはパイロット不要・・無人ロボットを開発し操作する国防省本部の機能は巨大化しますが、ネット上の指示・ゲーム機を操作するような戦争になっていくと末端兵士はいりません。
大規模戦が終わった後の現実の現地支配にはアナログ対応・・人間が必要ですが、(今のアフガンで苦労しているように)リスクが大きいので現地支配を志向しないで、空爆ロケット攻撃を際限なく繰り返しほぼ無人地域にしてしまう・ジェノサイド目的であれば消耗率の高い現場兵士も不要ですから、今後その方向に行くおそるべき時代が到来する可能性があります。
1億日本人生存数が10〜20万前後になってからの占領開始ならばゲリラの心配がありません。
中露米は本質的に「やっていいことといけないこと」の価値観が低い民族歴史ですから・(ストッパーが低いので)圧倒的戦力を持てば・・あるいは先制攻撃次第で圧倒的立場を握れるとすればそこまで行く可能性が高いでしょう。
話題がそれましたが、国を挙げて一刻も早く(競合企業に先駆けて)ロボットに代替して人件費を減らす方向こそ正しいと考えている以上は、わずかな底上げ努力をすること自体が「無駄」という発想でしょう。
産業構造を40点の仕事から45点のちょっと難しい仕事に引き上げるならば国民も努力のしがいがあるし、周りも応援しやすいのですが、(職業訓練校の仕事です)いきなり航空機やロケット製造あるいは、(パソコン作業できるように教育するのでなく)AIプログラム作成の中核作業要員にレベルアップしろというのではみんなが尻込みしてしまいます。
本音は切り捨てて追い出す目標の不法移民相手に膨大な教育資金を投じる予定が企業にない以上(企業精神=国民の生き方ですから)政府もその気がないのは当然の帰結です。
母国に追い戻すまでの収容=シェルターとすれば、安定的住居供給に踏み出さない・公営住宅建設を一定率でやってるでしょうが大規模供給に踏み切らないのは、論理一環です。
以上アメリカのホームレス対策と原因を見てきましたが、日本も国際競争についていけない人が徐々に出ている点は同じで、これを生活保護で吸収したので路上生活者が減少しただけで、貧困問題の深刻さは変わらないという意見があります。
脱工業化社会への変化についていけない底辺層をどうするか?については深刻さには温度差があるとしても、日本も「アメリカの後を追うはず」という意見が普通・各種レポートも「いつか日本の辿る道」というイメージを基にした紹介が普通です。
そうなるでしょうか?
一つには排除論理のアメリカと違い日本は包摂論理の国であり、これがホームレスを生活保護等で受け入れる政策対応の違いになっているし、労働分野では時代不適合を起こさないように社内教育に力を入れています。
製造業の占める比率が下がる傾向にあるとしても、日本はアメリカのように格差が大きくなく縮小率が激しくありません。
アメリカが、例えば戦闘機やロケットミサイル製造のような超高度精密品さえ国内で作れれば良いと決めている(訳ではないとしても)場合、製造業で養える国民はほんのちょっとになります。
金融も同様で、日本の銀行のようにマメに足を運んでの要望を聞いて歩くのではなく、国際金融取引、トレーダーや、金融工学的新商品創出できる人材だけが必要となれば、ほんの少数の人数で何兆円と動かすことが可能です。
金融取引では一人で5兆円を動かしても百万円を動かしても手間暇は同じです。
金融取引等エリート中心に据える米国経済界にとっては、役立たずの巨大人口はお荷物になっていると思われます。
(巨大企業も消費される必要があるので国内市場も重要ですが、世界を市場とした場合、よその国の消費者生活の面倒をみる必要がない・いいとこ取りできるのですが、自由貿易が進み内外平等が進めば国内企業のメリットがそれほどないので、経営上不合理な協力を求められるなら他国に本社を移すという選択が起きてきます。)

切り捨て社会の持続性3

それぞれの後進国が民度レベルに合わせて落ち着くところに落ち着けば、変化の激しい国際変動が終わるのでしょう。
初対面のある集団(新入生集団やPTAなど)が始まると各人の居場所・位置関係が決まるまでキョロキョロキョロして落ち着きませんが、一定時間経過で自然にそれぞれの役割が決まって行くものです。
日本人の場合多くの人は遠慮して隅の方から席が埋まって行くのが普通ですが、自分から進んで中心に立ちたい人もいます。
自分から名乗りをあげる人を(「あなたその器ではないでしょう」とは言えないので)誰も咎めませんが、長い時間軸でいつの間にか人望のある人が中心になる人が決まって行くのを待つやり方で、選挙によるよりは実質的です。
推挙された人も「自分はその器ではないで自分よりあの人の方がいいのではないか?」と一応辞退し、振られた方は当然「イヤイヤ〇〇さん適任ですよ!」と応じて円満に決まって行くのが普通です。
選挙の場合、こういう阿吽の呼吸がなく、誰がどういう能力を持つか不明の状態で「俺が俺が」という自己顕示欲の強い人が名乗りを上げて当選してしまうマイナスの方が大きいでしょう。
アメリカも中国も人から自然に推されるようになるのを待つよりは「俺が俺が」という自己顕示欲中心の国のように見えます。
こういう自己顕示欲中心の国・・アメリカはどこまでの西欧を追い越し続けたいので、いっときも休むことができない気の毒な民族?国です。
いっときも休むゆとりのない点では、現在中国(共産党政権)も成長経済を止められない点で同根のように見えます。
アメリカや中国の民度レベルの問題もありますが、金融資本に牛耳られる社会では目先の利子配当収入の多寡が最大の関心になります。
前年度同期比何%の成長か4半期の業績ばかりが株式相場の基準になっているのでは、ホンの数年先のための投資すら危ぶまれます。
自分で経営していれば一定の規模になれば昨年同様の収益があって、従業員を養なえれば満足して文化活動に精出す人が多いでしょう。
これが江戸時代に大旦那が番頭に経営を委ねて文化活動をしていた日本人の一般的生き方です。
我が国は誰もスタンドプレーに走らず・・黙々と戦後住宅不足時には公営住宅供給に税を投入してきたし、教育無償化や国民皆保険や年金制度を進めてきました。
アメリカではオバマケアなど個人名で騒ぎますが、日本の国民生活安心の基礎を作り上げた功労者の話をついぞ聞きません。
こういうことは短期の得票を求める選挙向きではなく、誰か立派なリーダーが旗振りして決めるのではなく、国民の暗黙合意によるからです。
農地で言えば数百年かけて耕地を肥沃にしていく日本の農業と土地を酷使し、使い捨て的に使いきり、土地が痩せれば化学肥料を撒いたり、移動して行く農業の違いでしょうか?
こうした息の長い政策には天文学的予算が必須でしかも地味です・・長くても4〜5年で選挙の評価を受けねばならない民主政体・・政権交代する前提の短期施策では不可能です。
日本人の多くは選挙や目先の評判でなく、子孫のために・・が恥をかかないようにお国(結局は郷土です)のために尽くす姿勢で多くの人が頑張ってきました。
これが我が国に住む人たちの価値基準であり、良き伝統です。
企業は不要な人材を「遠慮なく解雇し」「少しでも条件が良ければ転職する」「都合によっては外国へ逃げればいい」という価値観の国では、日本のような愚直?な価値観は育たないでしょう。
社会のあり方として、いわゆる性善説と性悪説を古くはjune 4, 2013,モラール破壊10(性善説の消滅)前後、近くは19年2月14日頃に書きましたが、日本は性善説の国であって、監視してこそ真面目によく働くというような性悪説・投票箱民主主義のように底浅いものではありません。
使い捨てといえば、都市さえもスクラップアンドビルド政策・用済みになれば、ゴーストタウンにして捨てていくアメリカ社会に対して、日本は戦災を受けた東京駅復元が数年前にようやく終わりましたが、毎日何百万という人が利用しながら復元していく地味な仕事です。
いろんな町の行事や古美術の保存、民具、地域のお祭りなどの伝承にエネルギーを注ぐ町の人たちを見ると、なぜか胸が熱くなります。
最近では日本でも利益率中心の経営がようやく根付いたと賞賛する声が大きくなり、アメリカの真似をするのが正しいという主張が有力ですが、私はアメリカ方式に反対です。
コスト重視の経営原理→賃金は低ければ低いほど良い→さすがのアメリカも低賃金政策は、新興国に汎用品の生産がどんどん移転するようになり、職業訓練や教育を受け付けない膨大な数の底辺労働者を抱え込んでしまった負の遺産・解雇すれば済む時代ではなくなってきました。
あまりにも大量に底辺移民を入れてきたので、「あとは知りません」というこれまでのやり方は数が多すぎるのでどうするか・放置できない時代に入っています。
2月27日に紹介したヒスパニック人口が約6000万人で、その中で一握りの成功者もいるでしょうが、大多数が文字やパソコン不要の現場作業(草刈り等の原始的?)に従事している階層では、真面目に働いてもアパートに住む収入がない状態になっている状態になってきたようです。
日本でも失業→転職対策として、再教育論が盛んですが、アメリカの底辺の場合基礎学力の違いが大きすぎる印象です。
しかも2月26日と27日紹介したように、彼らは米国民という共同体意識を持っていない・どちらかといえば、長年排他的扱いを受けてきた関係でむしろ敵意を持っているので、米国にいながら職業に必要な英語を身につけようとする意欲もない状態が見えます。
政府が正面に出ないでボランテイアに補助金をだす程度・餓死者続出時に政府は手を出さずに教会で気休め的にスープを振る舞うような政策が米国の基本的方向のようです。
底辺労働者・移民大量受け入れによる負の連鎖が始まると、この解決には途方も無い国民負担が生じる現実に嫌気したのがトランプ氏の反移民政策になって国民の感情的支持を受けるようになった基礎のように見えます。
オバマ時代から不法移民に対する合法化の政策が採用されました。
これは長期間不法移民のままで放置(追放しないまま放置)すると帰属意識の乏しい(逆に反感を持つ)移民に対する国民融合化を進めるための政策だったと考えられます。
不法移民の中で一定の要件に該当するものを合法化することで懐柔する・・その方が再教育に馴染みやすいのです・・が行われ、他方で新規移民には、能力に応じた枠を強化する方向できたのは、これ以上の底辺労働向け移民不要という政策表明と見るべきでしょう。

切り捨て社会の持続性(米国)2

弁護士業界で言えば、都心の名だたる法律事務所に入って数年して周辺県に移籍して、時代遅れ?旧来型の家事事件や生活保護事件に従事する若手がいくらもいます。
旧来型職種は総じて競争が激しくないというか高度なスキルを必要としない(弁護士であれば、半年〜1年の見習い程度ですぐできそうな)ことが多いので、脱落者には再挑戦し易いのです。
移民〜難民が人間であれば言葉が半分しか通じなくても誰でもできる最底辺層職種に浸透する傾向があるので、底辺層ほど職を奪われる危機感が強い・・移民反対、排外的になる傾向が起きる原因です。
国民同士の階層間移動では排斥運動がおきませんが、ただでさえ底辺労働の場が新興国の挑戦で職場が狭まっているときに上からの脱落者が加わるので、(弁護士業界で言えば旧来型業務は限界があるので新業態の企業法務進出が奨励されているのですが)余計に従来型の労働者の地位低下・平均賃金低下→先端産業で働く人との格差拡大を招きます。
韓国では就職路人予備校に通ってようやくサムスン等超一流企業に就職できても、30代から肩叩きが始まると言われています。
肩叩きにあうと、退職金等を利用して小さな居酒屋、土産物屋、コンビニ店主等を始めるしかないと言われていますが、似たようなことが世界中であるのでしょう。
要するに各種業界内の先端分野ではアメリカ企業的感覚で、少しでも能力に難があると見れば、容赦なく切り捨てて旧来型業種に脱落させていく集団です。
部外者にとっては、コンピューター系職業についていると聞くと先端で将来性がありそうですが、内部は多様な階層分化が出来上がっています。
プログラマーの職業寿命が短いのが知られていますが、職業寿命が尽きて再就職するとなれば、同業種で生きるのは無理で映画で見たようにローエンド・・ボイラーマンやタクシー運転手など超古式ゆかしい職業に戻るしかないのかも知れません。
数日前にリクルートが求人倍率の公表を取りやめたという記事が日経に出ていましたが、同じ業界関連でも職種が細分化されているので、求人倍率が細かな職種別で見ないと意味不明になる関係があるということらしいです。
建設業の求人倍率といっても分野によってまるで違うでしょうし、パソコン関連でいえばトータル求人が多くてもある分野では求人が少ないのに別の分野では求職が溢れているなどで細かな分野別で見ないと意味がないらしいです。
職業訓練校などは、数十年前から残っている古びた職業(重機操作等・今ではパソコン操作の練習?)の訓練をしているのが普通です。
4〜5年ほど前に交通事故被害で失業した1級建築士が、CADシステムの職業訓練に通っていたことがありました。
1級建築士でも何ができるかによって、求人倍率が違います。
長寿時代には再教育システムが必要と言うものの、40〜50台の人が20台の若者と最先端分野の教室で机を並べても生まれ付きのIT環境で育った彼らに付いて行くことができるわけがない・同年代の中高校教育でいえばいわば「落ちこぼれ組」「お荷物」です。
再勉強しなかった人よりはある程度分るようになったという程度でしかないので、本当の戦力として就職戦線で戦えるとは思えません。
部長職に止まったままでの学習ならば、基礎的能力で若者に叶わないものの、ある程度若者のやっているIT関連職務の理解ができる年配者になったという程度でしょうか?
完全離職した人の再就職用スキルを与える職業訓練校の役割は、「ローエンドのありふれた職業にせめて就職できるようにします」という程度の底上げを図ることでしかない印象ですがいかがでしょうか。
アメリカのホームレスに対する施策をさっと見た印象では、サービス業で接客できる程度の職業訓練・ピンポイント救済に引っかからないその他大多数は底辺労働にもつけない・・滅びゆく「先住民」のごとく「ゲットー」に囲って死ぬまで保護していくしかないイメージです。
シェルターは出入り自由なのでその点収容所とは違いますが・・。
出入り自由でも、アパートを借りる金もなく、ホテル等に泊まれない以上は夜になると路上で寝るか、別のシェルターを選べるにしても結局は近くのシェルターに帰るしかないのでは、事実上一生シェルター暮らしになる点は同じです。
能力別人口構成はピラミッド型で、底辺層の裾野が広いのでボランテイアがピンポイント的再教育して・一つ一つの成功例・・やっている人は善行を積んでいる達成感や満足感いっぱい・・それはそれでいいことです。
しかし・・こういうやり方では砂漠に水を撒いているような気休め・自己満足で抜本的解決にはなりません。
マザーテレサで知られるように、あるいはビルゲイツの巨額寄付金のように、欧米ではこういう気休め政策にのる人を賞賛して「アメリカ人の心根は優しい」のだという宣伝をして?底辺層不満のガス抜きしてきた社会です。
日本は個人スターを必要としない社会ですから、こういう真似事の売名行為?・・といえば怒るでしょうが・・は不要です。
一本釣りだけではなく、底辺レベルの底上げ・・40点以下の製造要員の仕事が新興国に取られるようになれば、国民の最底辺レベル層を原則として(それでもついて行けない人は一定率残るでしょうが)40点以上に引きあげる努力・・この種の底が挙げには静かな長期ビジョンによる国・社会の制度設計が必須ですが、これには数世代にわたる施策が必須です。
外国人を受け入れるようにする以上は、彼らに対する教育投資が必要と騒がれているのはこの現れです。
膨大な再教育投資の必要性を考えると、縄文の昔から一体的価値観のある日本人と違う歴史経緯・・外国人を受け入れて同化させていくだけでなく、単純労働で受け入れると彼らの技術水準をあげる教育が成功するとは思えない・・長期的に日本社会のためにならないという意見で、長移民受け入れ反対をしてきました。
日本の人手不足・高齢化の循環が安定軌道に乗るまでの数十年間・・我慢すれば高齢者と生産年齢人口のバランスが取れるようになります。
長い日本民族の歴史で見ればほんの短期間のことですから、ジタバタせずにじっと我慢の哲学こそが必要です。
民族ごとにスキルの歴史が違うのですから、その歴史にあったレベルの産業構造社会を作っていく・(日本がアジア展開するまで・・例えば中国は鉄のカーテンによって比喩的にいえば、中国人レベルが50点であれば50点の産業を担当できたのに政治力学によって解放されていなかったために5〜6点程度の低レベル産業にとどまっていた・・ダムが決壊して急激な近代化が生じたにすぎません。
中国がその勢いがどこまでも続くと過信?あるいは空威張りで自国民は100点の仕事をできると息巻いていますが、それは結果を見てからのことにすべきでしょう。

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