切り捨て社会の持続性(米国)1

米国から逃げ出す企業は以下の通りです。
https://japanese.engadget.com/2018/11/27/ev-gm-5-15/

EVと自動運転車に資源集中。GMが米国内5工場閉鎖、人員15%削減へ
トランプ政策空振り
米ゼネラルモーターズ(GM)が、契約社員の15%をレイオフするとともに、北米5か所の工場を閉鎖、さらに6車種を生産終了すると発表しました。
GMでは今回の再編によって正社員、契約社員あわせておよそ1万4000人のGM従業員が失業する可能性があります。
電気自動車と自動運転車の開発に資源を集中する方針です。

要は、EV系人材に入れ替えたいということでしょう。
車がEV系になると関連部材が大幅減になるので、生産台数が同じでも必要雇用が減るだけではなく、人材の系列が違いますので旧来型人材はそっくり適応障害・失業またはサービス業等への転換が求められる状態です。
本体で1万4000人減といえば、部品納入その他関連企業・周辺飲食業などの雇用減は膨大ですが彼らの多くが行き場を失なっていきます。
https://jp.reuters.com/article/gm-restructuring-trump-tweet-idJPKCN1NW29P

トランプ氏はツイッターで、GMがメキシコや中国の工場を閉鎖しなかったと批判。「米国はGMを救ったのに、その返礼がこれとは!われわれは今、電気自動車を含めGMへの補助金全額カットを検討している」と述べた。

旧来型製造技術者のレベルアップで国内雇用を守るには、時間もコストもかかるので民間企業としてはそんなことにエネルギーを使うよりも、新興国であるがままの低レベル人材を安く使って生産を続ける方が有利というのが米国企業の価値判断です。
アメリカの場合、労働者を機械設備同様の視点で見ているのでペイしないとなれば、(効率の良い機械が出てくれば新しい機械に取り替えるように)簡単に切り捨てるし、労働者も自分の能力(その企業で教えられた恩義など考えずに)に見合った待遇がない=他社からより良い条件を提示されれば転職(勤務先を切り捨てる?)する相互関係です。
中国への日本進出企業では中国人に技術やノウハウを教え込むとすぐに高い給料をくれる現地企業に転職してしまうのが普通ですが、諸外国では組織に対する帰属意識の歴史経験がないのです。
日本の場合には大昔からの村落共同体の発展した武士集団=お家大事・企業一家の思想できましたので、構成員全員生き残り策が最大関心です。
上杉、毛利の例を書いてきましたが、苦しくともリストラなど一切しない(・支配層の儲けを図るよりも構成員の維持が最優先です)のが基本です。
新興国に汎用品製造で追い上げられるようになると海外進出しますが、本国製造業をマザー工場として維持するための海外進出であって、本国の人員削減を目的にしていません。
アメリカ・ユダヤ資本主義は従業員のための企業ではなく「儲け」の基準で切り捨てる仕組みのようです。
新興国の低賃金に対抗するために能力が細分化した弊害をなくし多能工化を進めるなどの工夫努力を多くの企業で進めて、単純作業しかできない新興国との差別化に日々努力してきたのがその一例です。
その努力の結果現場から新技術発見工夫も生み出しやすくなっています。
日夜の努力の結果、国内製造業の急激な縮小を免れてきたし、車その他の各種部品産業が輸出産業・国際競争力を保っています。
人材育成・地味な努力ができるのは、大昔からの組織構成員相互の信頼関係が基礎にありますが・・時間とお金をかけて訓練しても一人前になると転職してしまう社会では企業が自己資金で訓練する意欲を失うでしょうから仕方のない面もあります。
アメリカや中国の現状・転職が先か企業がドライに切り捨ててきたから会社に忠誠を尽くす気持ちがなくなったのが先かの問題ですが、これを日本型の相互信頼社会に変えるのには数世紀どころか千年単位の時間が必要な印象です。
ホームレスに話題を戻します。
放逐された時代不適合・低賃金労働者をどうするかの政治がないことが可視化されたのが近年のホームレス激増になっていることがわかります。
彼ら全員の再教育には無理がある・・・教育機会がなかっただけで教育さえすれば、戦闘機やロケット製造技術者として参加できるようになれる人がいるか?よいえば1万人に一人?あれば良い方で、9割方は今なくなりつつある標準的技術を習得することさえできないでしょう。
国外移転企業を非難したり、ボランテイアによるピンポイントに頼って残酷な切り捨てに対する罪悪感解消に努めている様子ですが、ボランテイアが5人〜10人の再教育に成功しても、全体の底上げにはつながりません。
20年ほど前に職業転換教育・「学校」という映画を見た時の印象ですが、営業マンがリストラにあって職業訓練校に通う設定でしたが、なんとボイラーマンになって再起するストーリーでした。
当時既に新築ビルでは地下でボイラーを炊くスチーム暖房など時代遅れでしたので、再就職後すぐにその職業自体なくなる・・衰えゆく職種なので非常に違和感を覚えながら鑑賞したものでしたが、26日に紹介したボランテイアによる再教育も似たような滅びゆく職種に就職させるための訓練でした。
これから伸びゆく最先端・・ITや金融取引・製造業でも戦闘機製造技術等の能力付与は(文字も読めないものに教えるのは無理があるので、最底辺の接客訓練などでなんとか最低賃金でも雇ってもらえるようにするものに過ぎないようです。
職業柄リストラに遭った人たちを見ていると、先端系産業に勤めていて熾烈な競争に敗れた人が結構います。
時代遅れ産業よりは最先端系の方が日々の競争が熾烈で、そこでの優勝劣敗が日常的です。
学問でも絵描きでも体操でもスケートでも将棋でも皆そうでしょう。
その道のプロコーチその他が工夫しても、無理・プロをやめるしかないということで脱落していくのです。
そこで脱落した人がもう一度挑戦できるように再訓練出来る公共の?職業訓練校など有るはずがありません。
先端系で脱落した人は時代遅れと言われる旧式産業界でやりなおすしかないのが現実です。

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