日米製造業の違い2

GMの国内5工場閉鎖発表は、閉鎖による国内イメージダウン・トランプ氏による報復のマイナスや消費地としての国内市場規模よりも国外で戦えるかどうかの判断の方が重要とみたのでしょう。
本田の英国工場閉鎖発表が大騒ぎになっていますが、本田の場合、英国にとって外資そのものですから、英国内に工場を持つメリット(英国内にある方が英国内では売りやすいでしょうが、EU全体への売り上げを見込んだ工場維持ができるかです)デメリットの帳尻の問題であることが分かり良い例です。
これが英国最近のヒット企業である(せっかく世界企業に育ったのに?)掃除機で知られるルンバがシンガポールに本社を移すという決定になると英国民も複雑な気持ちのようです。
消費の将来性としてアジアが有望・本社(商品開発や意思決定の迅速さのために)もアジアにおいた方が合理的という発表のようです。
アメリカに戻しますと、「レベルの低い国民はお荷物なので早く出て行ってくれ」とまではっきり言えないので、国内製造業を守れとキャンペインしていると思われますが、アメリカの政策方向から見れば、大量雇用する必要のある製造業・3月5日に紹介したようにGMはアメリカ本籍の企業でありながら、(実質用済み扱いされているから?)トランプ氏に脅されても米国工場閉鎖を決めたのです。
自国内にとどまって自国企業としての保護を受けて優遇されるよりは、世界(よその国・市場)で堂々と戦う方が合理的という企業があっても不思議ではありません。
3月3日には中国企業自体が大量生産部門をアフリカへ移転している実態を紹介しました。
アメリカで残っている製造業でもハイテク製品は別として車生産等旧来型製造業は時代の寵児ではない・・肩身の狭い思いをしているのでしょう。
日本人の価値観は一人で巨万の富を稼ぎ、大金を寄付してばらまく・/貧乏人をフードスタンプの行列に並ばせるようなあり方には拒否感の強い社会です。
アクまで皆ですり合わせて良いものを作り、(自己の手柄にせず「皆様の協力のおかげです」という)世界に貢献したい人が多い社会ではないでしょうか?
米国製造業従事者比率を80年台と足元?の比較(20%から8%へ)を3月1日に日経新聞記事を紹介しましたが、日本製造業従事者数の変化がどうなっているかを見ておきましょう。

https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0204.html

 

上記引用グラフでは、日本では全労働者に対する比率は80年の約35%から17年の約18、6%へ下がっていますので、アメリカの20分の8より減少率が少ないのですが、、この間女性と高齢就労者が増えたことが重要です。

アメリカも同様の理屈がなりたつでしょうが、日本の場合、増加分の多くが女性高齢者の労働参加の進展・保育や介護その他サービス業の需要があってその方面の就労者が増えたのです。

(現役の工場労働者が吐き出されて慣れないサービス業に押しかけたのとは違います。

全産業に占める製造業従事者比率の変化ではなく、製造業従事者がどれだけ減ったかの減少比率が重要です。

グラフのコピー拡大率によって違いますが、80年では3、5センチ(約1、8センチ1000万人)で約2000万人あまり、17年では2、8センチですから約27%(約550万人あまり?)しか減っていません。

アメリカの実数減少率が不明ですが、日本の場合工場労働者数自体(実数)があまり減っていないようです。

日本では、生産年齢人口の減少過程に入ってから逆に就労者数が増えているので、生産年齢人口比・特に男性で製造業従事者比率がどうなっているかが重要でしょう。

(この間に増えたのは製造業向きではない女性と高齢者ですからサービス系需要が増えたのは、受け皿として好都合でした)


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