アメリカの州・郡(County Government)と市町村の関係2

アメリカの場合、州の規模が大きいので隣の州で日常規制・ごみ収集方法が違ってもあまり関係がないと言えば分かり良いでしょう。
例えば、関東地方だけで7都県もありますが、アメリカの場合で言えばカリフォルニア州の何分の1です。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q116683326によると以下の通りです。

カリフォルニア州面積:411,045平方km
(日本の面積の1.1倍)

以上のように州(ステート)と連邦の成り立ち・・歴史が違う上に事実的な意味を持つ面積規模もまるで違うアメリカの州の連邦の政府に対する自治権を理想化して日本の小さな都道府県や市町村に当てはめる議論は間違いです。
アメリカの場合、主権国家内の自治権というよりは独立国の条約による連合体・・EU加盟国がマーストリヒト条約等に従う義務によって、もともと100%あった主権が制限されている関係と見るべきです。
上記歴史経緯や地理条件などを総合すると、州に対して郡(County Government)や市町村がどのような自治権を有しているかの研究こそが日本の自治の参考にすべき基準です。
以下はカリフォルニア州政治に関する17年10月7日現在のウィキペデイアの記事からです。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AB%E3%83%8B%E3%82%A2%E5%B7%9E%E3%81%AE%E6%94%BF%E5%BA%9C地方政府

「カリフォルニア州は郡に分割されており、郡が法的な州の小区分である[8]。州内には58郡があり、480の都市、約3,400の特別地区と教育学区がある[9]。特別地区は具体的な公共計画と公共設備を有権者のために運営し、「その境界の中で行政的あるいは所有者としての機能を果たすための州の機関」として捉えられている[10]。
地方政府の権限の詳細を支配下に置くために州議会は1963年にサンフランシスコ郡を除く全郡に地方機関結成委員会を創設した。」

その境界の中で行政的あるいは所有者としての機能を果たすための州の機関」ということは、要約すればこれと言った自治権がない・・州政府の末端行政機関であるかのような位置付けです。
別の記事を見ると郡は条例制定しても市の批准がないとその市内では適用できないというので相応の条例制定権があるようですが、上記カギ括弧書きの要約と合わせると州政府の下位機関としての行政執行を具体化する範囲程度のイメージです。
そこで各州と郡を一体として・・市町村の自治体との具体的な関係を見ていきます。
自治体とは何か?政府とは何か?となると意外に難しいのに気づきます。
昨日書いた通りアメリカは、もともと独立国家の連合体ですから、州内の統治をどうするかについて連邦憲法に何も書いていないことになります。
ですから州政府と郡や自治体との関係も州ごとに違うことを前提にする必要があります。
そもそも州の憲法事項になっているかを最初に問題にすべきでしょう。
https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/zk079/zk079_02.pdfによれば以下の通りです。

2.2
地方政府の法的位置づけ10
地方政府は各州ごとに州憲法や州法によって規定されており、その種類や機能は一律に定義することができない。歴史的には、地方政府を州の一部局として自治の範囲を狭く解釈する見解と、州からある程度独立した組織として自治の範囲を広く解釈する見解との対立があった。
地方政府の機能や権限を狭く限定的に解釈する前者の代表としては、
「ディロンの法則(Dillon’s Rule)」と呼ばれる解釈基準がある。この基準によると、地方政府は州憲法や州法によって付与された権限のみを行使することができる。
一方で、地方政府の固有の自治権を主張する議論として「クーリー・ドクトリン(Cooley’s Doctrine)」が挙げられる。クーリー裁判官は1871年にミシガン州最高裁判所で、「州憲法による黙示の制限」によって地方政府の権利は州議会の権力から保護されており、「純粋にあるいは基本的に地方的な事務については、地方政府の法が州法に優先する12」と述べている。
・・・・このため、南北戦争の頃になると州議会の過剰な介入に反発した地方政府や住民が、地方の自治権を主張して各地でホームルール運動を起こすようになった。この運動が一定の成果を挙げて、各州の州憲法や州法において、人口等の一定の条件を備える地方政府に対する、州政府の介入を制限・禁止する規定や、州憲法や州法に違反しないことを条件に、地方政府に自治憲章を制定する権利を認める規定が定められることで、地方政府の自治が保障されるようになった。ただし、実際にはこの特典が得られる地方政府は限られており、また自治憲章に関する規定は州憲法や州法にもとづいている。自治憲章のための権限は、あくまでも州政府から地方政府への授権であり、州政府から独立した自治権を地方政府に与えるものではない。」

以上要するに州法で許容される範囲の自治権しかないということでしょう。
各州が自由に決めてきたとは言っても江戸時代の各大名家が周辺大名家のいいところを吸収模倣して行ったように時間の経過でおのづと共通化していきます。
アメリカでは学校制度から何か何までいろいろあって自由な国だという評価する人が多いですが、ただ発展段階が原始的〜初歩段階にあるからに過ぎないのではないでしょうか。

アメリカの州・郡(County Government)と市町村の関係1

日経新聞の10月4日夕刊1面には柏崎崎原発「合格」と大見出しで出ています。
あとは新潟県知事の同意を得られるかがテーマらしいですが、新潟県の同意が何故必要になったのかの疑問です。
「昔は越の国だった」という主張を始めるとは思えませんが・・?
新潟県も思うように原発反対で補助金をうまく取れなくなると「昔は中国の領土だった」という主張を始めるのでしょうか?
そこまで行かなくともあちこちの県が何かある都度エゴむき出しで行動するようになると、なにかあっても助け合いたい気持ちが薄れて民族一体感が次第に蝕まれていき、民族維持のために自己犠牲を厭わない勇猛果敢な精神がすり減っていきます。
これが中韓の狙いでしょう。
そもそも地方自治制度がなんのためにあるか?という疑問になってきます。
現在憲法改正論が(反対論を含めて))盛んですが、この辺で憲法で定める地方自治の限界・自体首長が、その自治体領域が日本の領土ではない(とは言っていませんが・・)かのような主張をすることが許されるかを議論する必要があるように思われます。
地方自治制度は、アメリカの意向で現憲法で導入された制度ですから、当然にアメリカの連邦と州の関係をモデルにしていると見るべきでしょう。
以下に比較紹介するように大日本憲法には地方自治の章節がありません。

大日本帝国憲法
目次
第1章 天皇(第1条-第17条)
第2章 臣民権利義務(第18条-第32条)
第3章 帝国議会(第33条-第54条)
第4章 国務大臣及枢密顧問(第55条-第56条)
第5章 司法(第57条-第61条)
第6章 会計(第62条-第72条)
第7章 補則(第73条-第76条)

日本国憲法
第八章 地方自治
第九十二条  地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。
第九十三条  地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
○2  地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
第九十四条  地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
第九十五条  一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。」

憲法を見ると特定自治体の同意がないと国策遂行できないのは、その地方だけの特別法制定の場合に限定されています。
憲法上は全国的な国策の貫徹には、特定地方の同意がいらない仕組みです。
憲法上の要請ではないのにあれもこれもと地方の同意が必要な制度にしていたことが間違っているのです。
オナガ知事15年訪米時の記事からです。

http://vpoint.jp/media/44476.html
翁長雄志沖縄県知事の訪米は大失敗
江崎 孝  2015/6/05(金)  メディア批評|沖縄 [沖縄時評]
恥晒した権限誤解翁長知事の思い込みをはるかにしのぐほど、米国の要人や政治家は民主主義が何であるかを心得ていた。つまり州知事と州政府の安全保障に関する法的権限を厳しく峻別(しゅんべつ)していたということである。その点、外交・安全保障にかかわる地域の首長の法的権限を誤解し、夜郎自大な発言で、世界に恥を晒(さら)した翁長沖縄県知事とは雲泥の差である。
・・最後に付け加えると、出発前の記者会見で外人記者が発した「それ(訪米)よりも知事はなぜ安倍首相を説得しないのか」という質問の意味が理解できなかった翁長知事の責任を問うべきである。」

地方自治体首長が政府の頭越しに外国で国防・国家主権に関する事柄を政治発言をするのは、越権行為であり許されないということは、アメリカのように独立している各州が連邦を結成した場合には、州政府が連邦政府の専権事項である外交や防衛問題に口出しするのは条約違反になるという意味でより一層はっきりします。
ただし、元々自分らは先住民・異民族だから・・というのでは、同じ土俵での議論になりません。
冒頭に書いたように日本の地方自治制度は、長年の国内議論すらも必要性もなく敗戦時に歴史の違うアメリカ憲法を(法的素養のない人材が?)模倣して作られたものです。
日本の地方自治制度を論じるならばアメリカ各州内の地方自治の実態や歴史研究が必須です。
アメリカの連邦と州の関係は周知の通り独立国同士の連合契約・条約で成立しています。
合衆国ではなくUNIRED STATE OF・・・ステートの連合ですから、日本の地方自治体とは経緯・本質がまるで違います。
もともと百%の主権を持っている各州(国)が連邦を組むために主権の一部を連邦政府に移譲した関係・移譲しない部分にはもともと持っていた主権が残っているのは当然です。

https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/zk079/zk079_02.pdf
「2.1
合衆国憲法
合衆国憲法における地方自治の規定は、1791年に成立した憲法修正第10条による。
ここでは「憲法が合衆国に委任し、または州に対して禁止していない権限はそれぞれ
の州または人民に留保されている」と定めていることから、連邦と州の間での役割分
担は、連邦の権限が具体的に列挙されて州が残余権を有するという、州権の強い形と
なっている。」

軍で言えば同盟行動する以上、軍事活動時に一致協力する範囲で独自行動を制約される程度の関係です。
アメリカ連邦政府と各州の関係は、主権国家である日本がアメリカとのいろんな条約を締結すればこれを守る義務があるような関係の方が近いでしょう。
このような場合、日本やアメリカに自治権があるかという方向の議論ではなく、条約によってどこまで日本国内法が(商取引で言えば契約したらその契約を守られねばならない範囲のレベル・・人権がどこまであるかの議論でありません・・)制約されるかの議論であって順序が逆です。
自治の面でアメリカとの比較をするならば、アメリカの州政府と州内の郡や市その他の自治体の関係と日本の中央政府と県市町村の自治権を比較するのが本来の議論です。
日本の県の権限を連邦政府と対立・緊張関係にある(独自の軍を持ち)州の自治権?と同じように見る現在の暗黙の前提となっている議論自体が無茶過ぎておかしいのです。

民主主義の基礎4・信頼関係3(governmentとは?1)

アメリカの場合人種のルツボであって民族主義の情緒に訴えられないので、for the people「人民のための政府」という秀逸レトリックが生まれたのですが、こうなると政府・人民とは何かが気になります。
国民を対外戦争に動員するためには人民による、人民のための政府擬制が必要なので、政府実在を強調するしかないでしょう。
政府・governmentとは何かですが、直訳すれば統治(者)ですから、これを日本の「政府」と翻訳するのは誤訳ではないでしょうか?
governmentの内容実質は、統治する機関・支配者でしかないのでしょうし、the people・ピープルは構成員?ではなく支配・管理対象でしかない、日本で言うところの国民ではなく「烏合の衆であるpeople」民衆がその対象になっています。
governmentに関するギリシャのプラトンから始まって、現在のガバナンス論まで有益な講演・質疑録が以下に載っていますので、関心のある方は参照して下さい。
専門家同士の長いやり取りがあって、これを私が勝手にまとめても間違いがあっても困りますが、運良く?まとめがありましたので、その部分だけ引用しておきます。
http://web.iss.u-tokyo.ac.jp/gov/research/dp_uno.pdf
DiscussionPaperSeries
全所的プロジェクト研究 ガバナンスを問い直す 政治思想史の観点から
東京大学社会科学研究所
InstituteofSocialScienceUniversityofTo k y o
宇野 重規(東京大学社会科学研究所)
2012年11月
「とりあえずのまとめ
(フーコーが正しいとすれば)本来は私的な財産や従属的立場にある人々を管理す
ることを意味した「統治」が、君主が自らの私的財産である領土と人民を管理する
という趣旨から、近代国家による行政、さらには公的秩序の維持一般を指す用法へ
と拡大した。と同時に、以前はさまざまな主体の実践に用いられていたのが、もっ
ぱら国家に関してのみ使われるようになった。」
欧米思想史では、日本の政府とは違い、governmentは統治、支配機関のあり方論でしかない以上は、ガバメントの特性は支配階層・・・共和党統治などで表現するしかありません。
日本の「政府」はマツリゴトをする府であり、集団員を超越したリーダーや支配者・管理者を予定していません。
古代の卑弥呼その他日本列島でのマツリゴトの本質は「憑依」に頼る点で一見非合理ですが、集団構成員の言葉にならない本音・・集団の総意を体感する儀式だったと見るべきでしょう。
「総意」については日本国憲法で書いている「総意」をどのようにして知ることが出来るかと言う関心で大分前書いたことがあります。
憲法
第一条  天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
大方の納得する総意・落としどころはその場の雰囲気?を読む能力が必要です。
多数意見であっても反対派もいるので総意ではありません・・。
多数意見で押し通すのでは、落ち着かないのである程度反対論者も納得する妥協的現実論は、選挙では知ることが出来ません。
最後まで妥協せずに(不利な判決が出れば不当判決と非難するなど)最後までいがみ合っている社会では民主主義社会は成立しませんので、本当の明主義社会が成立するには、高度な民度が必須です。
どうやって総意を探るかの智恵。民度ですが、口論の末につかみ合いの喧嘩をしているのでは社会の融和が保てないので、我が国古代には憑依に頼って、これに従うルールが出来たのです。
巫女に頼る古代社会は、現在でも冷静な話し合い解決能力がなく際限ない争いをする後進国よりも社会運営方法としては、はるかに進んだ制度です。
喩えば、スポーツ競技で0、何秒まで測定出来る時代と違い目測のときには、測定出来ないときに、判定不能な場合には勝敗をクジやじゃんけんで決めていたのと同じです。今でも相撲やスポーツでは行事や審判の判定は絶対と言う決まりがあります。
測定器あるいはDNAなどの発達によって厳密判定可能化が進んでいますが、政治意見の優劣はいくら議論しても決まらないのが普通ですから、(現在の支配的方法である多数意見だからといって正しいとはかぎりません・・クジで決めると予め決めたのと同様の一種の取り決めです)最後はクジやトランプで決めるのは意外に合理的です。
これと同じことを古代から考え出して内輪もめをやめたのですから、今でも適当なところで論争を終わりにする知恵がなく、内部紛争に明け暮れる社会に比べれば、かなり進んだ制度です。
測定機器発達同様にこれが次第に合理化されて(冷静・論理的な議論が出来るようになって)、朝廷や幕閣での合議制や村落での寄り合いによる民意集約方式に発展したものと見るべきです。
日本では組織と言えば村落集合体が基礎ですが、構成員である自分自身の意思が無下に否定されることがない融和的解決が多い社会の運営は参加人の意思をソンタクした「政(まつりごと)」であり、誰か強い人の意見で統治される対象ではなくみんなの総意、共同作業であることは古代から今も変わっていません。
日本の集団には支配・被支配という2項対立意識はありません。
ちなみに政治の「治」とは、治山治水の治であって、上から命令・支配出来るものではなく、自分より超越的な自然界に「御治め下さい」と受納して頂くものです。
結局は集団総意をルールに従って憑依して(お上の声を)聞き、これを実行しましたので嘉(よみ)して下さいと言うに過ぎないのが我が国の政治です。
「国民」と言う漢字がありますが、これは明治政府が無理に西欧流近代国家概念に当てはめただけであって、元はと言えば「くに」の民です。
「くに」とは何かと言えば、今でもクニ(郷土)に帰るとか邦人と言うように「くにを同じくするひと」「はらから」としてあい助け合う同胞を表す意味です。
郷土を同じくし、何世代にわたって維持して来た相助け合う同胞を国民と漢字表記しているのですから、支配の対象でしかなく共に助け合う存在ではない・砂粒の人達?であるpeopleをクニの民ではない「人民」と翻訳したのは誠に的を射た翻訳と言うべきです。
日本人をも欧米並みに「人民」と定義すれば、社共・文化人勢力のスキな「搾取」される被害者像がフィットする関係になります・・実際彼らは国民と言う言葉より「人民」と言う言葉が好きです。
アメリカの人たちは日本の国民に昇格していない・・工場の機械や工具・牛馬や原材料同様の支配利用の対象。商品でしかないが、タマタマ牛馬ではない「ひと科」に属すると言う意味で「人民」と言うのですが、その状態で今まで来たことになります。
フランス革命後の民主主義と言ってもgouvernement・government・統治機関を構成する支配層間のヘゲモニー争いをpeopleの選挙で決めるようになっただけのことであって、ガバメントは人民の支配(者)機構である点は変わりません。

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