加計問題と政争

8月9日紹介記事の筆者は、やはり総理の意向が働いたこと「図らずも・・・・陰画のように浮かび上がらせたのである」と批判的意見で結んでいますが、私はこれがなぜ批判対象になるのかわかりません。
まさに大きな岩盤をつき崩すには大きな政治力が必要・・政治力がなくて既得権益擁護しかできないのでは総理の器とは言えません・・実行力があってなぜ悪いのか疑問です。
問題は総理が友人の便宜を図って加計1校だけに絞ったのかどうかでしょう。
いわゆる4条件は、むしろ石破氏らの岩盤規制構築勢力によって15年からきまっていたし、今治市の申請で戦略特区指定の条件として獣医師会側の抵抗空しくどうしても特区指定されるならば(せめて)「1校限定」要請によって指定容認された段階で10年以上前から同地での開設準備をして来て他に競合申請準備していた学校がなかったとすれば加計学園になるのは事実上決まっていたのですから、抵抗・獣医師会側から1校だけにしてくれと妥協案が出た時点で勝負あった筈です。
大学学部新設計画などの大事業は計画から資金準備人材手当等々内部的根回しや候補地選定など相当の長期計画になる上に、文系と違って牛馬等の動物飼育が必須ですから大規模な用地手当ての下準備も必要です。
企業が遠隔地に新工場をたてるのに必要な下準備と似ています。
今治市では10年ほど前から加計学園が1度申請していると言うのですから、結局この時点でもし認可申請が出れば加計学園に決まっていたことになります。
これを覆して仮にいきなり京都の別大学に決まったとすれば、その場合こそ強引な政治家関与の疑惑がうわさされるべき筋合いです。
インドネシの新幹線受注が日本の詳細な計画で進んでいたのに大統領が変わった途端にその経過に実績のない中国に決まったことを日本人多くが怪しいと思うのと同じです。
ただしそこは政治の奥深さで、1校指定だと加計学園しかなくなる、、それでも安倍さんやれるのですか?と言う落とし穴・謎かけだったように見えます。
もしそのまま強行すれば獣医師会側の族議員のみならず福岡選挙で恥をかいた麻生副総理を巻き込んで大規模な政局にする脅しが背後にあって、「やってやろうじゃないか」と強行したことで今回の政局が起きたとも読めます。
こうした流れがネットで出て来たことによって加計学園騒動は安倍総理の友人が経営する学園に決まったという結果から根拠なく「疑惑」を煽っているメデイアの論法は一方の政治利権に組して煽って来た疑いが出て来ました。
ただし戦略特区指定容認と加計学園の申請に4条件不要になるかは別問題とすれば4条件クリアーしていないのに総理の意向で強引に決めたかの論点は残りそうです。
4条件がそのまま残るのでは、戦略特区制度の意味がないはずという一般論程度しか今は分かりません。
もし、この一般的理解が正しければ「違法でも疑惑でもないが総理のおともだちに決まったことじたいがゆるせない」と問題が擦り変わるのでしょうか。
慰安婦がいたかどうかではなく軍が強制したかどうかが焦点だったのに、これが虚偽とわかると今度は慰安婦制度があったこと自体女性として許せないと問題をすり替える議論に似ています。
一連の騒動に石破氏が関連しているというネット報道が出て来ましたが、安倍総理の友人の経営する学園に決まったという結果だけから、総理が怪しいに決まっているという飛躍のある「疑惑」をメデイアが煽るのは「報道の自由」乱用の疑いがあるのと同様に「もしかして?」と思う程度は自由ですが、それ以上の事実関係を押さえないまま憶測で石破氏の陰謀を断定的に主張するのではメデイアと同レベルになります。
ですからその真偽は不明ですが、防衛省の内部情報漏れも石破氏が防衛省に確固たる地盤を持っていることとどこか(当然石破氏は否定するでしょうが・・)共通すると言えば共通します。
稲田朋美防衛大臣辞任直前に制服組トップが一緒に引責が決まったのは、石破氏の意で動いていた疑いによる(安倍氏による報復人事?)政治的脈絡関連が後になるとわかるかも知れません。
http://www.sankei.com/politics/news/170728/plt1707280052-n1.html
「南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報問題の混乱を受け、防衛省、背広組、陸上自衛隊のトップ3人の交代が決まった。」
8月9日に引用した記事によると「石破プラス麻生副総理プラスその他次期政権での処遇期待組による岩盤連合が安倍一強政権が切り崩したい」という権力闘争があって、これに前川氏及び背後の文科省役人層が肩入れした可能性が背景にありそうに読めます。
政治の裏は部外者にはわかりませんので、以下は素人がうろ覚えの報道記憶のおさらいをする程度の域を出ませんが麻生氏の絡みは以下の流れがあります。
振り返ってみると、福岡での故鳩山邦夫氏の地盤継承をめぐる昨年秋ころの自民党内の分裂選挙で、麻生副総理の推す蔵内陣営(日本獣医師会会長)と管官房長官の推す候補者の一騎打ちの結果待ちだったところ、菅官房長官派の勝利で一気に獣医学部新設の動きが進んだという報道を見たことがあります。
http://www.sankei.com/politics/news/161011/plt1610110066-n1.html
2016.10.11 23:04
「11日に告示された衆院福岡6区補欠選挙は、鳩山邦夫元総務相の次男の鳩山二郎氏と、党県連会長の長男、蔵内謙氏の自民党系の2人が立候補し、分裂選挙に突入した。鳩山氏に対しては邦夫氏が旗揚げし、菅義偉官房長官が顧問を務める派閥横断グループ「きさらぎ会」が応援するが、麻生太郎副総理兼財務相や閣僚の一部は蔵内氏を支援。選挙戦は、政権中枢が双方に分かれての“代理戦争”の様相を呈する骨肉の争いとなった。」
安倍政権としては、福岡の勝利を見定めてついに岩盤をこじ開ける方向に動き始めたことが大規模な反安倍包囲網が形成される契機となり、その反撃によって窮地に落ちいったことになります。
スーダン派遣自衛隊の日報開示請求が起きたのはちょうどそのころです。
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/263592.htmlによると以下のとおりです。
「問題の発端は、去年10月、ジャーナリストの男性が、部隊が2016年7月7日から12日までに作成した日報の開示請求を行ったことでした。」
次に出て来た森友学園問題も財務相所管疑惑ですから情報の出し方は麻生氏の手の内にあります。
政局が思うように行かなければ裏からいくらでもリークさせる構えでしょうか。
ユーチューブによる国会中継を見ているといつもニヤニヤしながら座っている麻生氏の態度が気になっていましたが、複雑な権力抗争が背景にあったからでしょうか。
安倍政権が、ここぞとばかりにメデイアに叩かれ続けて支持率が下がり苦境に落ち込むのを待っていたように、政権受け皿を狙うかのように麻生氏関連の派閥大合併が行なわれました。
次期内閣改造が必至になってからのことですからその処遇睨みでどの程度協力するかの駆け引きもあるでしょう。
https://news.nifty.com/article/domestic/government/12198-91074/ 自民党の麻生派、山東派など3派閥が合併に向け協議 細田派に次ぎ党内第2派閥に
2017年05月22日 20時25分
記事まとめ
自民党の麻生派など3つの派閥会長が、合併に向け大詰めの協議を行った
麻生太郎副総理、山東昭子元参院副議長、佐藤勉衆議院議院運営委員長が会談した
新しい派閥のトップは麻生氏が務める見通しで、細田派に次ぎ党内第2派閥になる」
安倍政権崩壊直前に石破氏をこの件で目立たさせれば安倍氏の恨みを買って直接の政権移行は無理がある・・安倍政権を(麻生氏が高齢化し過ぎる前に)次回の任期で終わらせれば、麻生氏は石破氏へのリリーフとしての禅譲を期待できるし麻生氏にとって損のない仕掛けです。
石破氏も高齢の麻生氏なら期間が短いので「譲るだろう」という見立てもあり得ます。
中堅以下の議員にとってはまだ数十年議員生活がありますし、2〜3回当選議員にとっては下っ端すぎて今の政権に取り立てもらう希望もないのですから、今の政権より次期以降の政権の方が気になる結果、彼らを巻き込んだ権益構造・反安倍連合が出来上がってくるのは簡単です。
もっと任期満了まで長い事務方も同様で、次期以降の政権に縁を持ちたい官僚・内部告発の造反?組が次々と出る根拠がわかります。
安倍一強とは言っても終身制ではないので、再任されても数年先には任期満了がきます・・。
その時に備えて次の芽に近づくのは次期政権への擦り寄り・・自己保身の点数稼ぎに励んでいると見るべきでしょう。
正義感がある硬骨漢であるならば、岩盤規制をつくった12年になぜ体を貼って抵抗しなかったのか?
あるいは、総理の意向という忖度程度で何らの指示もないのになぜ反対しなかったのかの疑問が湧きます。

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