トランプ(取引)政治の不安定さ1

経済原理に合わない強行政策は、市場の反発を受けるだけでなく、当然相手国の対抗を生みます。
自国へのX国からの輸出に45%もの重税をかけて規制すると,相手の方もアメリカから輸入品に同率課税を・報復をしかけるでしょう。
それだけでなくアメリカへ逆輸出出来ない企業の自国国内進出・・企業誘致に努力するどころか,それ相応の嫌がらせ対応をするでしょうから、海外進出自体が難しくなり競合国に負けてしまいます。
経済原理によれば,高級仕立ての店舗(インフラ)を維持したまま商売するならば値下げ競争よりもより高級化して行くしかないのと同じです。
「キミの名は」のようなアニメを作ったり、少量でおいしい料理・果物を開発したりする方向へシフトし努力するのが合理的で,ストレス発散的ヒステリック対応はクニを誤らせます。
それには・・ノーベル賞級学者を大勢雇うのではなく,庶民の底上げ,民度を上げない限り無理ですが,欧米では千年単位でガバメントと切り離して民衆・ピープルを大事にして来なかったので、この回復には相応の時間がかかります・・1〜2世紀では無理でしょう。
日本は江戸時代の浮世絵、落語,都々逸その他の庶民芸術の隆盛を見ても分るように、古代から庶民レベルが高い・・大事にして来たからレベルが高いのか,レベルが高いから大事にするしかなかったのか不明ですが・・兎も角みんなのレベルが均質的に高いクニです。
トランプ氏の狙い撃ち的個別恐喝的言動・政策は,時間経過で無理に直面するのは時間の問題ですから,新しい時代に対応出来る唯一のクニ・日本に対し、その内トランプ氏は理不尽な何かを要求(恐喝)するしかなくなる時が来ると思われます。
またもや、日本が戦争引きずり込まれるような非常に難しい局面があると思いますが,先の他ルーズベルトの策謀に酷いメにあった経験があり日本も少しは利口になっていますし,世界も今は欧米の一方的論理ばかりではなくなっています。
強力な要求をするには背後に困っている事情がある・・弱みですから,必ず落としどころがあるので,(トランプ氏得意の裏取引の期待)この局面を利用して日本も決裂させないで利用出来ます・・交渉の切り札に使えます。
トランプ大統領職就任直後には(対中裏取引きをするために)対中台湾カードなど出して強迫を始めていましたが,米中蜜月の開始になるための始まりの印象があるので私は警戒していました。
当然台湾現政権は安易に喜ばずに警戒を強めていました。
良い気になって反中共主張を強化し過ぎると,いつ米中取引成立によってはしごを外されるか分らない危惧があるからです。
この辺はトランプ氏就任直後の1月に書いていたものが先送りになって一旦March 13, 2017,「素人政治の限界6(プロの流出)」〜「政治と信頼1(意思表示の責任)」等で書いていたものですが、このようにトランプ氏のいわゆる「取り引き外交政策」は本来の味方すらも疑心暗鬼にさせる・・信用出来ない関係を自ら作り出していることが分ります。
トランプ氏の取り引き外交はアメリカに頼るしかなく、絶対に裏切る心配のない同盟国まで僅か1ヶ月先も見通せず安心出来ない疑心暗鬼状態に追い込んでいるのですが,こんなことで国内政治運営だって出来るのか?と言う政治の基本になって来ます。
最近側近・・政府要職高官の更迭がはげしくなる一方・・後任の広報官がわずか10日で再更迭されるなど・・次々と内部混乱が起きていますし、各部門高官の任命すらままならない状態が起きているなど、・政府の体をなしているかの疑問・・まさにこのコラムを書いていた1月ころの予想どおりになってきました。
政治における信用の重要性を、トランプ氏のおかげで今更ながら勉強出来たところです。
専制支配下では皇帝の気分次第ですから、官僚が行動すべき基準不明(これを理由に専制支配というのですからあたり前)で,うっかり果断に動けない・・結果的に様子見ばかりになって行き社会・政治が停滞します。
これが中国が約2000年間、ざん言や密告に明け暮れて停滞し続けた基礎原因ですし、李氏朝鮮長期停滞の原因です。
この基礎原稿を書いていた後に安倍総理がトランプ氏就任後に諸外国首脳に先駆けて真っ先にトランプ大統領と会談し大成功に終わりましたが、その後の中国との首脳会談での取引成立次第でいつ対中蜜月にな る・南沙諸島は黙認する尖閣諸島も暗黙の同意を与える・・かすら分からない不安が残ります。
安倍訪米の約3ヶ月遅れでようやく習近平氏の米国訪問が実現しましたが、緊迫中の対北朝鮮関係での協力と巨大貿易赤字対策について4ヶ月だったか100ヶ日だったかの猶予期間を貰って習近平氏がなんとか格好つけて帰りました。
明白な取引こそ成立しませんでしたが、いわば100日内に提案された取引次第で米国トランプ政権はは取り引きに応じる基本姿勢を示したことになります。
中国が猶予期間内にトランプ氏の期待する成果を出せるかどうかだったのですが、その後緊迫の度を増した北朝鮮関係で、中国は一種の2枚舌で何の具体的対応も示せずに(対北朝鮮貿易を停止・縮小せず)ズルズルと来た上に対米貿易黒字が急上昇しているので、トランプ氏がついに怒っている態度表明・・中国の銀行に対する制裁を発表しました。
http://jp.reuters.com/article/china-trade-balance-idJPKBN19Y0P3
北京 13日 ロイター] – 中国税関総署が13日発表した6月の貿易統計は、輸出入ともに市場予想を上回る伸びとなった。6月の対米貿易黒字は254億ドルで、5月の220億ドルから増加。2015年10月以来の大きさとなった。
また、1─6月の中国と北朝鮮の貿易額は25億5000万ドルと前年比10.5%増加した。
トランプ氏が中国の銀行制裁発表を韓国文大統領訪米時にぶっつけたことから見ると、同大統領の北朝鮮に対する融和姿勢に対する「半端な怒りではない」という強い意思表示でもあったのでしょう。
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/06/29/2017062900656.html  朝鮮日報
文在寅(ムン・ジェイン)大統領は28日午後、ドナルド・トランプ米大統領との首脳会談のため米ワシントンD.C.に向け出発した。
文大統領はトランプ氏から詰め寄られる前に自分から進んで「早くサード配備する」と言わされてしまったとも報道されています。
会談模様を見るとトランプ氏の表情は、終始不機嫌な様子のままで一方的にFTA再交渉・貿易赤字に対する不満やその他の要求をぶつけられた様子でしたが、ついに正式要求をつ突きつけらたのが以下の記事です。
http://www.sankei.com/economy/news/170713/ecn1707130016-n1.html2017.7.13 08:41更新
米、韓国にFTA見直しを正式要求
ワシントン=小雲規生】米通商代表部(USTR)は12日、2012年に発効した米韓自由貿易協定(FTA)の再交渉を韓国に対して正式に要求したと発表した。米国の対韓貿易赤字の削減が狙いで、近くワシントンで両政府の代表による合同委員会の特別会合を開くよう提案している。」
一方で対中強硬策が出始めました。
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017063000189&g=prk
【ワシントン時事】米財務省は29日、国連などの制裁措置にもかかわらず、マネーロンダリング(資金洗浄)など北朝鮮による不正な金融取引に関与したとして、中国の丹東銀行(遼寧省)を制裁対象に指定すると発表した。また、北朝鮮との取引に絡み中国人2人と中国の海運会社1社も制裁対象とした。北朝鮮問題をめぐり、中国企業に対する独自制裁はトランプ政権下で初めて。
トランプ氏は中国は何も役に立たない「中国に業を煮やした」というところですが、権力闘争中の習近平氏にとっては、ここでアメリカとうまくいかないのでは、国内で格好がつかない困った事態です。

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