最低賃金制度3と2重基準

韓国で最低賃金が守られない社会の基礎にある就職難・・就職予備校の続きです。
https://courrier.jp/news/archives/64677/からの引用です。
韓国で全寮制のスパルタ式就職予備校が増えるわけ
韓国ではいま若者の失業率が深刻な課題だ。
「2016年1月から、公務員職の求人に対して、史上最多となる22万人以上の応募があった。労働市場における過酷な競争のせいで、多くの若者が無職状態にある」と韓国統計局で雇用状況担当のシン・ウォンボは言う。
こうした現状で、なんとか安定した職に就くため、全寮制の就職予備校に入る若者たちを「朝鮮日報」が追った。
全寮制の予備校はもともと大学浪人生が入るものだったが、最近は、就職に備える人を対象にしたものも増えているというのだ。
通常の4年制大学卒業者を対象にした4年制の専門大学院だが、ロースクールと同じように、大学を卒業して就職に失敗した人や、就職しても転職を考える人が受けることが多い。
またTOEIC対策の全寮制予備校もある。サムスン、ヒュンダイ、LGなどの大手ではTOEICスコアが入社基準の一つとなっているためだ。
京畿道にある全寮制のTOEIC予備校では、朝8時に授業が始まる前に携帯電話を預ける。それから学校側が定めたスケジュールに沿って夜の11時まで勉強する。
規則も厳しい。この予備校では「飲酒禁止」「恋愛禁止」で、発覚すると罰金をはらわされ、退学させられる。
塾生同士が親しくなるのを防ぐために、名前でなく「○○番予備校生」と番号で呼ぶ。
夏の間、この予備校で勉強したカン(25)はこう語る。
薬学大学の受験に備える予備校では「授業中の男女の同席」も禁止されており、破ると罰則点数が科せられる。罰則点がつくと「罰則チョッキ」を着て1週間生活し、保護者に通告される。点数が上限を超えると退学になる。
予備校生のイ(25)は女性と同席したという理由で、1週間「規則をきちんと守ろう」と書かれた罰則チョッキを着て生活した。
http://www.excite.co.jp/News/chn_soc/20170219/Recordchina_20170219008.html
韓国に過去最悪の就職氷河期到来、「日本との比較で一層悲惨」と韓国紙
レコードチャイナ 2017年2月19日
朝鮮日報は「今月卒業を控えたソウル市の私大(4年制)史学科の学生40人余りのうち、就職が決まったのはわずか10人足らずだ。大学院進学者を除いても卒業予定者の半分以上が卒業と同時に『ニート』に陥る状況だ」」と紹介。同学科を卒業予定の女子学生の「入学したころから『就職は容易ではない』と聞かされていたが、それでも当時は先輩たちが卒業前に何とか就職に成功していた。卒業したらすぐに失業者になると思うとめまいがする」との声を伝えている。」
「昨年の日本の大学新卒者の就職率は97.3%、高卒者も97.7%に達したことに触れ、「日本もいわゆる『失われた20年』の期間中は若者の就職難に苦しんだが、現在日本では新卒者たちが就職先をえり好みするのが普通」と言及」
上記のように入学時に予定していた大卒としての就職出来なかった数は大変な数ですから、多くの若者が法令違反でも雇ってくれれば働くしかない・厳しい労働環境を表しています。
外資系や大手は法令違反出来ないので、中小商店主(個人商店などは)が最低賃金より安い賃金で雇えると言う事実上の中小優遇策です。
中国でも先進国並みの厳しい環境や保健衛生規制をしていても民族系は守らなくとも大目に見られる・・外資系はドシドシ摘発されるなどの差別政策が行なわれているのと同じです。
18日に紹介した記事では、韓国では、最低賃金未満(法令違反)で働く人が11、5%もいる点が重要・・統計に現れない実態としての下押し圧力が強いと言うことです。
日本では、18日の紹介記事では最低賃金+40円未満が300〜500万人となっていますが、下記のとおり日本では6500万人前後はたらいていますから全労働人口の5〜6%しかいません。
この3〜500万がどの世代に多いかの視点が重要です。
日本の労働人口はhttp://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/統計局速報
労働力調査(基本集計) 平成29年(2017年)4月分 (2017年5月30日公表)
(1) 就業者数,雇用者数
   就業者数は6500万人。前年同月に比べ80万人の増加。52か月連続の増加
   雇用者数は5757万人。前年同月に比べ57万人の増加。52か月連続の増加」
しかも日本では65〜70歳台で老後暇つぶし・・健康管理目的で働く人がかなりいますが、この種の人にとっては収入があっても小遣い程度の感覚ですから、最低賃金+アルファでも働けさえすれば満足です。
(私もまだ弁護士業務をやっていますが、高齢弁護士の場合、若いトキのように家族を支える収入の必要性が皆無です・・自分の手取りはゼロでも良い・・事務所維持出来れば続けるか?と言う人が多いでしょう)
http://www.stat.go.jp/data/topics/pdf/topics97.pdf 
総務省平成28年9月18日
統計からみた我が国の高齢者(65以上)
要約
○ 高齢者の就業者数は、12年連続で増加し、730万人と過去最多
○ 就業者総数に占める高齢者の割合は、11.4%と過去最高
○ 日本の高齢者の就業率は、主要国で最高
○ 高齢雇用者の7割超は非正規の職員・従業員
「自分の都合のよい時間に働きたいから」が最多の理由
上記によれば、高齢労働者が730万もいる・・その7割=510万人が非正規です。
これはあたり前の結果ですが・・日本では最低賃金+40円未満の労働者数350〜500万人というのですから、高齢労働者の非正規(・・働きたいときに働く週2〜3日?しか働かない?)だけでほぼカバー出来ていることになります。
日本の場合、最低賃金でも働く傾向の強い高齢者の割合が全労働者の11、4%もあっても、全労働者中最低賃プラスαで働く人が5〜6%しかないと言うのですから、最低賃金近辺で働く若年層の比率は殆ど取るに足りない数字になります。
高齢者でも生活のために収入の必要な人もいるとしても概ね年金や蓄えで間に合う率が高い高齢労働者が暇つぶしに働く人が増える一方の社会では、平均賃金が下がるの当たり前です。
賃金の実態を知るには漠然と平均賃金の公表をするのではなく(高齢者や子育てて中の女性の労働参入が増えると平均賃金が下がる傾向になります)世代別の賃金推移その他きめ細かいデータ開示が必要です。
賃金センサス等で概ね出ていますがそこまで見る人は少ない・・メデイアが報じる場合・・選挙時に「景気が良いと言っても平均賃金が下がっている」というメデイア報道の影響力は甚大ですので、メデイアの報道姿勢をここでは書いています。
ところで、最低賃金制度が何のためにあるか?
韓国のように公式に出ている統計でさえ、11、5%も守られていないのでは、違反者に対する処罰も出来ないし最低賃金を強制する意味がないことがあきらかです。
最低基準や各種業法規制は・・国内のレベルを基準に「不景気とは言ってもこの程度すら守れない事業者には、市場退出を迫ることが出来る水準」で決めないと実効性がありません。
およそ強制力のある「法」と言うものは、大多数が守れる基準・・この基準でさえ守れない人は同一社会の構成員として認められない(刑務所に入ってもらう・・あるいは事業免許取り消し)と言う最低基準であるべきです。
中韓の場合国民が実際に守れない基準を決めて事実上放置し・・コネ次第でお目こぼしになる・政権に不都合な者だけ取り締まる社会・・先進国並みの「法」を制定して、先進国を装っている二重基準傾向がこうした場面に出て来ます。
統計の誤摩化しと根本思想は同じです。

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