最低賃金制度3と2重基準

韓国で最低賃金が守られない社会の基礎にある就職難・・就職予備校の続きです。
https://courrier.jp/news/archives/64677/からの引用です。
韓国で全寮制のスパルタ式就職予備校が増えるわけ
韓国ではいま若者の失業率が深刻な課題だ。
「2016年1月から、公務員職の求人に対して、史上最多となる22万人以上の応募があった。労働市場における過酷な競争のせいで、多くの若者が無職状態にある」と韓国統計局で雇用状況担当のシン・ウォンボは言う。
こうした現状で、なんとか安定した職に就くため、全寮制の就職予備校に入る若者たちを「朝鮮日報」が追った。
全寮制の予備校はもともと大学浪人生が入るものだったが、最近は、就職に備える人を対象にしたものも増えているというのだ。
通常の4年制大学卒業者を対象にした4年制の専門大学院だが、ロースクールと同じように、大学を卒業して就職に失敗した人や、就職しても転職を考える人が受けることが多い。
またTOEIC対策の全寮制予備校もある。サムスン、ヒュンダイ、LGなどの大手ではTOEICスコアが入社基準の一つとなっているためだ。
京畿道にある全寮制のTOEIC予備校では、朝8時に授業が始まる前に携帯電話を預ける。それから学校側が定めたスケジュールに沿って夜の11時まで勉強する。
規則も厳しい。この予備校では「飲酒禁止」「恋愛禁止」で、発覚すると罰金をはらわされ、退学させられる。
塾生同士が親しくなるのを防ぐために、名前でなく「○○番予備校生」と番号で呼ぶ。
夏の間、この予備校で勉強したカン(25)はこう語る。
薬学大学の受験に備える予備校では「授業中の男女の同席」も禁止されており、破ると罰則点数が科せられる。罰則点がつくと「罰則チョッキ」を着て1週間生活し、保護者に通告される。点数が上限を超えると退学になる。
予備校生のイ(25)は女性と同席したという理由で、1週間「規則をきちんと守ろう」と書かれた罰則チョッキを着て生活した。
http://www.excite.co.jp/News/chn_soc/20170219/Recordchina_20170219008.html
韓国に過去最悪の就職氷河期到来、「日本との比較で一層悲惨」と韓国紙
レコードチャイナ 2017年2月19日
朝鮮日報は「今月卒業を控えたソウル市の私大(4年制)史学科の学生40人余りのうち、就職が決まったのはわずか10人足らずだ。大学院進学者を除いても卒業予定者の半分以上が卒業と同時に『ニート』に陥る状況だ」」と紹介。同学科を卒業予定の女子学生の「入学したころから『就職は容易ではない』と聞かされていたが、それでも当時は先輩たちが卒業前に何とか就職に成功していた。卒業したらすぐに失業者になると思うとめまいがする」との声を伝えている。」
「昨年の日本の大学新卒者の就職率は97.3%、高卒者も97.7%に達したことに触れ、「日本もいわゆる『失われた20年』の期間中は若者の就職難に苦しんだが、現在日本では新卒者たちが就職先をえり好みするのが普通」と言及」
上記のように入学時に予定していた大卒としての就職出来なかった数は大変な数ですから、多くの若者が法令違反でも雇ってくれれば働くしかない・厳しい労働環境を表しています。
外資系や大手は法令違反出来ないので、中小商店主(個人商店などは)が最低賃金より安い賃金で雇えると言う事実上の中小優遇策です。
中国でも先進国並みの厳しい環境や保健衛生規制をしていても民族系は守らなくとも大目に見られる・・外資系はドシドシ摘発されるなどの差別政策が行なわれているのと同じです。
18日に紹介した記事では、韓国では、最低賃金未満(法令違反)で働く人が11、5%もいる点が重要・・統計に現れない実態としての下押し圧力が強いと言うことです。
日本では、18日の紹介記事では最低賃金+40円未満が300〜500万人となっていますが、下記のとおり日本では6500万人前後はたらいていますから全労働人口の5〜6%しかいません。
この3〜500万がどの世代に多いかの視点が重要です。
日本の労働人口はhttp://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/統計局速報
労働力調査(基本集計) 平成29年(2017年)4月分 (2017年5月30日公表)
(1) 就業者数,雇用者数
   就業者数は6500万人。前年同月に比べ80万人の増加。52か月連続の増加
   雇用者数は5757万人。前年同月に比べ57万人の増加。52か月連続の増加」
しかも日本では65〜70歳台で老後暇つぶし・・健康管理目的で働く人がかなりいますが、この種の人にとっては収入があっても小遣い程度の感覚ですから、最低賃金+アルファでも働けさえすれば満足です。
(私もまだ弁護士業務をやっていますが、高齢弁護士の場合、若いトキのように家族を支える収入の必要性が皆無です・・自分の手取りはゼロでも良い・・事務所維持出来れば続けるか?と言う人が多いでしょう)
http://www.stat.go.jp/data/topics/pdf/topics97.pdf 
総務省平成28年9月18日
統計からみた我が国の高齢者(65以上)
要約
○ 高齢者の就業者数は、12年連続で増加し、730万人と過去最多
○ 就業者総数に占める高齢者の割合は、11.4%と過去最高
○ 日本の高齢者の就業率は、主要国で最高
○ 高齢雇用者の7割超は非正規の職員・従業員
「自分の都合のよい時間に働きたいから」が最多の理由
上記によれば、高齢労働者が730万もいる・・その7割=510万人が非正規です。
これはあたり前の結果ですが・・日本では最低賃金+40円未満の労働者数350〜500万人というのですから、高齢労働者の非正規(・・働きたいときに働く週2〜3日?しか働かない?)だけでほぼカバー出来ていることになります。
日本の場合、最低賃金でも働く傾向の強い高齢者の割合が全労働者の11、4%もあっても、全労働者中最低賃プラスαで働く人が5〜6%しかないと言うのですから、最低賃金近辺で働く若年層の比率は殆ど取るに足りない数字になります。
高齢者でも生活のために収入の必要な人もいるとしても概ね年金や蓄えで間に合う率が高い高齢労働者が暇つぶしに働く人が増える一方の社会では、平均賃金が下がるの当たり前です。
賃金の実態を知るには漠然と平均賃金の公表をするのではなく(高齢者や子育てて中の女性の労働参入が増えると平均賃金が下がる傾向になります)世代別の賃金推移その他きめ細かいデータ開示が必要です。
賃金センサス等で概ね出ていますがそこまで見る人は少ない・・メデイアが報じる場合・・選挙時に「景気が良いと言っても平均賃金が下がっている」というメデイア報道の影響力は甚大ですので、メデイアの報道姿勢をここでは書いています。
ところで、最低賃金制度が何のためにあるか?
韓国のように公式に出ている統計でさえ、11、5%も守られていないのでは、違反者に対する処罰も出来ないし最低賃金を強制する意味がないことがあきらかです。
最低基準や各種業法規制は・・国内のレベルを基準に「不景気とは言ってもこの程度すら守れない事業者には、市場退出を迫ることが出来る水準」で決めないと実効性がありません。
およそ強制力のある「法」と言うものは、大多数が守れる基準・・この基準でさえ守れない人は同一社会の構成員として認められない(刑務所に入ってもらう・・あるいは事業免許取り消し)と言う最低基準であるべきです。
中韓の場合国民が実際に守れない基準を決めて事実上放置し・・コネ次第でお目こぼしになる・政権に不都合な者だけ取り締まる社会・・先進国並みの「法」を制定して、先進国を装っている二重基準傾向がこうした場面に出て来ます。
統計の誤摩化しと根本思想は同じです。

最低賃金制度2(加重平均)

全労働者賃金の総合計を出すのは困難・不可能でしょうから、出来るだけ小さな単位にして修正・推定して行くしかないでしょう・これが加重平均の考え方です。
加重平均の加重程度はサジ加減ではないにしても細かい作業ですから、素人には簡単に踏み込めない・・専門家の意見に任せるしかないのでしょう。
メデイアはそこまで説明する義務はない・・と言うことで、合計特殊出生率その他ブラックボックス化した報道しかしません。
ただ、今はITの進歩で細かいデータにそのままアクセス出来るようにしてもコストがそれほどかかりませんから、専門家による加重平均したと言うだけではなくナマの(またはそれに近い)データに簡単にアクセス出来るようにすべきです。
メデイアでは県単位の違いを交通事故ワーストNo.などでしょっ中出していますが、例えば神戸市の状況と山間部の多い兵庫県全部の平均では交通事故発生頻度や平均寿命〜健康管理、文化やレジャー度、意識調査その他総べて統計的意味が違い過ぎるように思えます。
東京でも、島嶼部や奥多摩地方と23区内を一緒に統計する意味がない・・都内各地の人口比で加重平均や◯◯調整して発表してもらう必要がないでしょう。
千葉県でも千葉市以西とその他地域では政治意識や生活文化意識がまるで違う筈です。
これを勝手に?加重平均して県単位の調査結果が◯◯であると言うよりは、単位を地域や市町村単位等細かく発表すればするほど正確性が出ます。
加重平均などしてくれなくとも、◯◯村と23区を全部そのまま出してくれれば見る人が自分勝手に奥多摩や三多摩地域と23区を比較したり、渋谷と新宿ではこの点が共通でこの点ではこんなに違うんだと個々人が理解すれば良いことです。
全国の各市町村を新聞やネットで書き切れないのは当然ですが、ネットニュース等では関連情報としてクリックすればそのデータに簡単にアクセス出来るようにサービスしてくれたら見る方は自分の関心に合わせて各地を比較してみられます。
その結果をどのように想像するかは読者の判断に任せれば良いことで、メデイアが色付けして報道する必要はありません。
メデイアは事実を淡々と報道した上で、せいぜい参考意見を付記する程度にすべきでしょう。
現在はメデイアの意見を「事実のように」報道することが多く、詳細事実をそのまま報道する記事を滅多に見かけません。
実は物品配送でも「最後のワンマイル」こそが大変・現場の人材任せですから、不透明なことは何事も同じです。
以前、野鳥の生息数調査している人の話を聞いたことがありますが、卵をいくつ見つけたなどの報告はその人の報告書に任されているので(仮にコストを2倍にして複数調査会社に頼んでも擦り合わせの段階で)、発注者の意図(暗黙の期待)に合わせてどうにでもなってしまう傾向があると言う説明を聞いたことがありますが、・・平均数値化するとコンマ何桁までの数字が出来るので、これを見ると如何にも精密調査したような印象ですが、その基礎数字は大まかです。
韓国の失業率や大卒就職率なども、中国のように統計そのものを誤摩化すことはないとしても分母をどうするかの点でおかしいと言う意見があります。
大卒就職率が53%と言うのが公式発表らしいですが、現役で就職出来ずに留年している人や浪人したもののサムスン等大手に就職出来ずに中退する人を含めていません。
日本でも司法試験受験中で浪人している人や大学院進学者・家業手伝いなどを母数に含めませんが、要はその比率・程度問題でしょう。
社会問題になるほど就職浪人・予備校生が増えて来ると、そう言うグループも失業の仲間に含めるか別の統計を作って発表しないと社会(・・特に若者の就業)実態が分らなくなります。
http://www6.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/?pid=081116
韓国 就職浪人街 ~格差にあえぐ若者たち~制作NHK/ジンネット (日本 2008年)初回放送2008年11月16日(日)午後10時10分~韓国 就職浪人街~格差にあえぐ若者たち~ 
「韓国、ソウルの一角にあるノリャンジン地区は、わずか1キロ四方におよそ50の就職予備校と200を超す3畳一間の安アパートがひしめきあい、1万人の就職予備校生が 集まる“就職浪人街”である。
・・・彼らが脇目もふらずめざす就職先は公務員である。その理由は、韓国経済の低迷が続くなか企業が正社員の採用を手控え、非正規雇用がこの5年間で約1.5倍、200万人に激増。また、正社員として入社しても2年以内なら会社の都合で解雇できるため、大半の若者たちは、いつ首を切られるかわからない状況だからだ。必然的に身分の安定した公務員に志望者が殺到するようになった。」
試験の競争率は平均30倍、一部では800倍にも跳ね返っている。受験生をふるいに掛けるため試験問題の難易度が年々上がり、今では一流大学卒でも不合格になる者が珍しくはない。」
1万人くらい集まっても、国民全体から見れば大したことはないと言う意見もあるでしょうが、全国からこんなに集まる町が出来上がっていることが国民全体の傾向を表していると見るべきです。
競争率30倍と言うことは30分の29・・約97%・・800倍の場合、799人が最終的に失業者として社会に放り出される宿命でしょうか?
上記放送時期が2008年でかなり古いのですが、その後韓国経済の低迷が更に進んで来た状態ですから、就職困難が加速しているから大変です。
08年頃までの韓国の成長率が5〜6%あったと記憶していますが、ここ数年は3%以下に低迷していますから、現在ではもっと悲惨な状態になっていることは確かでしょう。。
韓国大卒就職率の現状は以下のとおりです。

[WBS] なぜか日本企業が人気!韓国就職戦線異常アリ!


韓国・釜山で開かれた外国企業の合同就職面接会。
参加した韓国の学生は2015年より3割以上増加し過去最大です。
韓国の就職事情にいま変化が起きています。
これまで人気だった財閥系の企業への人気に陰りが見せ始めています。
日本の大卒就職率が97.3%で売り手市場なのに対し韓国は64.5%と買い手市場のため良い人材を求める企業には追い風で合同面接会に参加した企業は2015年に比べて3倍に増えました。」
上記のとおり韓国では国内の就職先が少ない・・市場原理で賃下げ圧力がかかる構造です。
経済苦境を何とかしようとしないで、文大統領が権力の力で賃上げしろとか「反省しろ」「正規化しろ」と言っても無理があります。
嫌韓系ネット上ではコンビニなどでは、最低賃金の何分の1で働かされている・文句言うとクビになる・・雇ってくれないと言う記事がしょっ中出ています。
・・最低賃金以下の実態は違法なので実は表に出難いので実数はもっと多い可能性がありますが、ネット報道は誇大嫌韓報道ではなさそうです。
韓国の実質的失業率・・就職浪人や中退者は大卒の就職率53%に入らないので実態不明ですが、同世代の就労率で結果から見るのが正しいしょう。
・・詳しそうな人のネット意見を見ると進学率が何%と発表されているのに、進学率✖️若者人口=で出る進学者実数で見るともの凄く就職率が低くなるようです。
その差は中退や就職浪人で消えて行くのでしょうが、・就職浪人継続を諦めた多くは非正規その他で働いている・失業者とは限らないとしても「大卒就職率」を大学進学者の就職率としてみ集計し直した方が社会の実態を表していると言う意見です。
http://blog.livedoor.jp/kanedashoji70/archives/39170025.html
韓国の本当の大卒就職率は30.6%
【寄稿】日本の大卒者の「就職率97%」は事実に反す(2015.8.7 朝鮮日報)
この”新卒”就職率を見てみたいと思います。南朝鮮の場合、36%、およそ3人に1人が卒業浪人をします。
南朝鮮の就職率56.2%(2014年度)といいますが、卒業浪人はどこにいったんでしょうかね。信用されていない統計庁の「学校・産業別卒業者現況」によると、2014年に大学を卒業した人数が26万758人(!)。ついでに無職は8万6333人。
2014年大学を卒業というの多くは1990年前後に生まれた事を意味します。そして、この年に生まれた人はおよそ65万人。2008年の大学進学率は83.8%でしたから、約54万5000人が大学に入学したはずです。それなのに卒業者が半分以下っていう事は、就職浪人以外に中退が多いという事ですね。
2014年の就職率 公表値 56.2%
2014年の大卒者 26万758人(16万6545人が就職)
2008年の進学者54万5000人(就職率は30.6%)

最低賃金制度(非正規)

大手の場合本社ビル清掃などは外注でしょうから、もしかするとシステムエンジニア−など陳腐化の早いプロを派遣や非正規に頼っていることが多いかも知れません。
高級技術者は、終身雇用・出世期待よりは腕一本で行きたい・・腕に自信のある人=プロは終身的保障がない分時給が正規職より高い方を選ぶ傾向があります。
メデイアの世界でも、これを狙ってフリーライターやフリージャーナリストになる人が多いことから見ても、大手の非正規は正規より「格上」と言うことがあります。
大手の非正規の正規化は待遇改善になるよりは、解雇が利かない・終身雇用化する程度・・もしかすると社会硬直化を進めることになるかも知れません。
フランスが経済低迷・失業率の高止まりで苦しんでいるのは、長い社会党政権時代を経て労働者保護が進み過ぎて解雇困難→企業がリスク回避のために新事業開拓=新規採用に及び腰になっている結果によると言われています。
国民・若者が解雇され難い大手や公務員志向ばかりになるとイノベーションが起き難くなります。
前オランド政権の経済政策は文政権の公約に似ていて、(トランプ公約も同じですが・・)工場の海外展開・既存工場閉鎖による失業をなくすためには閉鎖に対する政府権限強化策で対応するのが中心・・1昨年あたりから政府保有株式の議決権を2倍にする法施行がありました。http://www.nikkei.com/article/DGXKZO86759970U5A510C1EA1000/心配なフランス「2倍議決権」2015/5/14付
「株主の権利をめぐるフランスの新法が波紋を広げている。当該企業の株式を2年以上保有している株主に2倍の議決権を付与するのが骨子だ。表向きの理由は長期の視点に基づく経営を促すことだが、実際には仏政府などの発言力が強まりすぎて、健全な企業統治が損なわれる懸念がある。
 新たな法律は通称「フロランジュ法」と呼ばれ、鉄鋼大手の欧アルセロール・ミタルが2012年に仏北東部フロランジュの製鉄所の閉鎖を決めたことに端を発する。この決定に世論が激しく反発し、仏政府も介入した。」
「その後、企業が工場を閉める前に売却先を探すことを義務づける法律づくりが進み、その中にもうひとつの目玉として2倍議決権の規定も盛り込まれた。」
「今回のフランスの動きは利点よりもマイナスが大きいのではないか。議決権の2倍化で権限が増大する大株主のひとつが仏政府だ。例えば自動車大手のルノーは仏政府の議決権が17%から28%に増える見通し。経営者のなかには、経営に対する政府の介入が強まらないか懸念する向きもある。航空大手のエールフランスKLMについても、仏政府は株式買い増しに乗り出した。」
これによるとルノーが日産の株式を保有していることによって、日産の海外展開にまで仏政府が口出し・・拒否権行使出来るのか?と言うことで、日本でも大騒ぎしたばかりですが、経済原理を無視した短絡的政策ばかりでは余計企業が萎縮してしまいます。
素人向けには海外工場移転を抑制するために・・「工場閉鎖を認めない」と言えば(トランプ大統領も同じで)・・短期的には強権政治が成り立ちますし、選挙民向けには結果を端的に明示し易いですが、こんな無茶は長く続きません。
鳩山民主党が「少なくとも県外へ」と言うスローガンで選挙に買ったのとの同じで、その道筋がない・・結果だけ宣伝するパフォーマンスでしかありません。
マクロン氏はこのような政策に訣別する新鮮味の訴えで大躍進したのです。
韓国でも途中解雇のあるサムスンなどよりも公務員志向でこのために浪人してでも予備校に通う状態をこの後で紹介しますが、現代労組の横暴が知れ渡っていますが、韓国の企業間格差は正規雇用に関する解雇規制の強さ・・大手正規になれば地上の楽園を謳歌出来るし、入れなければ人間扱いされない社会意識とも関係があります。
オランド政権でマクロン氏が解雇規制緩和を主張していたのにオランド大統領が労組の圧力に屈してしまった→これに不満を抱いたマクロン氏が下野して大統領選に出馬して大勝した経緯が重要です。
日経新聞昨日の夕刊によると見出しでは「2大政党歴史的大敗」と言う宣伝ですが、内容を見ると選挙前の第1党社会党系284人が44人に大激減に対して第2党だった共和党が199から137ですから共和党の減少率はそれほどではありません。
大手にもいろんな非正規がいるとしても全体の5%の人に対する人件費アップが仮に2割上がっても労働分配率が少し上がる程度ですが、それでも総人件費が上がります。
その分下請けに対する発注代金が下がるリスクが起きて来ます。
これでは却って弱者イジメになってしまう・やり易い大手から始めるのは、格差を是正する効果がない可能性があります。
言わばパフォーマンスに過ぎず大手財閥系と中小零細の格差が大き過ぎることに対する社会不満に対する解決になっていません。
非正規のうち中小以下で働く者が95%を占める・・5%しか大手や公社で働いていないのですから、95%の非正規労働者の待遇を良くするには、中小の採算性を上げるしか方法はありません。
ところで中小の取引条件を改善しないままで非正規職員を強制的に正規転換したらどうなるか・・待遇改善になるでしょうか?
倒産スレスレの中小零細がこれ以上労働側取り分を増やせない・・結果的に中小の労働分配分を元非正規と平等分配する・既存正規社員の給与を削減するしかないのでしょうか?
末端サービス業では、個人経営者が健康を害するほど負担をしていることが多いものです。
日本のコンビニ経営者で言えば、時間給の上がる深夜を経営者家族が担当し、昼間をバイトやパートに頼っていることが多いと言われていました。
この結果末端店舗経営者夫婦・家族が健康を害する悲劇が一般化していましたが、この結果チエーン化が進むと、今度は「名ばかり」店長化が進みます。
「名ばかり店長」に過重労働のしわ寄せが行くようになったので、マクドナルドの店長事件(残残業手当のいらない管理職か?)の判例が出た背景です。
中小零細の賃金低下は、中小経営者自身の経営不振が背景にあります。
強制的に非正規を禁止した場合、中小労働者を等しく貧しくするしかないのでは、大手との格差拡大に不満のある庶民の怒りに対する何ら解決にもなりません。
結果的に大企業の下請け発注金額をアップさせるしかないので、文政権がここまで踏み込めるかどうかが彼の評価を分けます。
短絡的に命令しても経済活動と言うものは簡単には動きませんので、したたかな仕掛けが必要です。
ところで、最低賃金について6月17日に紹介したとおり、日本の全国平均823円と書いているのですが、全国平均をどう言う計算で出したかが不明です。(私が知らないだけですが)
仮に地方市町村ごとの?数字を合計して平均化した場合で考えると、たとえば非正規雇用者が万単位でいる大都市の900円台と1〜2人しかいない過疎地市町村・・概ね労賃も安くなります・700円と足して2で割ると社会の実態が出ません。
マスメデイアはアベノミクスによって、如何に賃金が上がっていないか、低いかを強調するために全国平均を発表する傾向があります。
正確には全国ではなく、「全労働者」平均にすべきでしょう。
大都市の5万人の労働者平均が900円台で過疎地の一人が700円台の場合、市町村数で割れば、(900+700)÷2=800円台平均になりますが、全労働者平均にすれば900円台の人5万人に700円台の人が一人ですから平均値はほぼ5万分の1しか変わりません。

韓国マンション相場(最低賃金比較)

韓国の場合、周知のとおり財閥とその他との格差が圧倒的ですから、金融資産を単純に人口で割る平均値では、一般大衆の平均値を表していません。
このようにしてみると、韓国マンション平均価格が6000万円になったと言うニュースの重み・・平均値と言うことは普通の人が買える価格であるべきですが、日本的感覚・・金融慣行を前提にすれば、普通の人が買える訳がない価格になっている状態です。
この機会に日韓の最低賃金も比較しておきましょう。
日本の平成28年の最低賃金はhttp://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/
によると東京圏で約900円台近辺で全国平均823円です。http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2015/0723/shiryo_03.pdf
内閣府によれば、
○ 最低賃金程度の時給で働く労働者は300~500万人程度(*)
。最低賃金を引き上げる場合、最低賃金程度の時給で働く労働者の所得を引き上げるとともに、働者全体の賃金の底上げにも効果 。
(*)最低賃金+20円以下の時給で働く労働者は340万人程度、最低賃金+40円以下の時給で働く労働者は510万人程度(2014年度推計)
他方、韓国では、http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2016/11/korea_01.htm独立行政法人労働政策研究・研修機構l2015年のデータによれば、
「最低賃金(時間当たり5580ウォン)未満で働く労働者は222万人に上り、全労働者の11.5%を占める」
公式最低賃金比で言えば日本900弱対558です。
最低賃金未満で働く人が11、5%もあると言うのでは、最低賃金比で最底辺労働者の平均水準の比較をすることが出来ませんが、最低賃金比で見ても900対558の比率になります。
違法行為の摘発は難しいにも関わらず11、5%も違法賃金があると言うことは、実際にはその何倍もあると見て良いでしょう・・。
韓国では実際には最低賃金を守っていないし、日本の300〜500マンの数字は、最低賃金+40円以下で働く人の数字ですから、日韓の実質的最底辺労働者の収入格差はもっとあると見るべきです。
咲いて賃金以下で働いている数字が11、5%もあると言うことは、外資や大手は最低賃金を守るしかないが、中小はお目こぼしの社会・・中国が汚職処罰や環境規制は先進国並みと威張っても厳しく取り締まって外資を不利にしているだけですから、北京の空を見れば結果が違うのと同じです。
どこの国でも現場裁量による幅があるのですが・明白な2重3重基準になる社会は法治国家とは言えない・・後進国と言うことでしょうか?
あるいは後進国は、民度レベル上無理な基準なのに形だけ先進国基準を導入するものの、現場では民度レベルで無理があるので、先ずは大手や外資だけ厳しくして中小零細はついて行けない実態に合わせてお目こぼしするしかないと言うことでしょう。
日本は古代に中国の都城概念を導入しながら、(商業都市国家が起源の中国と日本社会の成り立ちと違う面もあって)羅城「門」だけ作って城壁を作らずお茶を濁したのと同じです。
韓国では、最低賃金未満の雇用が11、5%もあると言うことは、同国の最低賃金制度は(日本との比較のために?)対外的格好付けのために、経済実態に合わない程高くした結果、経済実態がついて行けていないことを表しています。
法で決めた最低賃金以下でも働くしかない・・要は職場がないこと・・就職難に原因があります。
市場原理で決まって行くしかない賃金相場を法で決めるのは無理がある・・当たり前の結果です。
最低賃金以下ならば職場があると言うことは、市場原理をいじるのではなく、経済システムに問題があることを表しています。
安倍政権のように雇用を増やして需給バランスを改善して行き、結果的に賃金水準を上げて行くのが王道でしょう。
市場原理無視で大統領の命令一下「非正規を減らし賃金格差を縮小しろ」と言っても出来る訳がありません。
韓国の場合、大手財閥が利益を全部取ってしまい、下請けが食うや食わずの経済構造とすれば・・構造を改造をしないで末端の値決めだけ強制しても無理があるでしょう。
韓国経済が対外的に貿易収支黒字で成り立っているのに、国民には最低賃金を払えない・払うと中小企業が成り立たないと言うことは、いわゆる出血輸出の構造です。
サムスンや現代自動車等の財閥系大手も利益がなくて、下請けにこれ以上高い代金を払うと赤字になると言うならば分りますが・・。
下請け従業員が生活出来るようなマトモな賃金を払えないような原価割れ発注を繰り返しているのは、大手自身が下請けにきちんと生活出来るようにすると国際競争に負けると言うならば、国を挙げての出血輸出・ダンピング輸出の問題ですし、大手の利益取り分が大き過ぎて下請けに払う分が減っているならば、優越的地位利用の不公正取引の問題です。
日本と韓国では法制度が違うでしょうが、独禁政策は先進国では概ね共通・・似たような条文がある筈ですが、この活用がされていない・・回避されていることになります。
日本の独禁法を見ておきましょう。
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)(定義)第二条
(1)〜(8)省略
(9)この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
一〜四省略
五 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。
イ 省略
ロ 不当な対価をもつて取引すること。
韓国歴代政権が財閥の横暴に切り込めない・・独禁法適用を回避して政府がやっているフリ・・パフォーマンスをするために?最低賃金だけ上げても末端では守る体力がない・・これが韓国民の悲惨な状況を拡大させている原因です。
今回当選した文大統領は下請けイジメをやめさせないで(そのままで)、非正規雇用をなくすと言う末端から強制して行く構えのようです。
しかし今でも中小零細企業は大企業による不採算発注の圧力で息も絶え絶えで経営者や家族労働の手取りを削り人件費を削るしかないのに、この構造を無視して「非正規を正規にしろ」と強制して解決出来るのでしょうか?
ある新機軸の商売が始まる多くの場合、既存規制が邪魔していることが多いので、政府がこの解禁で後押しする場合には、やりたい人が一杯いる場合に(民泊のように)その分野の新産業の活気が出ますが、産業界がやる気がないのに政府が特定新産業を推進しようとしてもうまく行きません。
「馬を水飲み場に連れて行けるが水をのませることは出来ない」と言われる所以です。

最低賃金引き揚げ4と外資流入減4

中国国民不満の激しさについては別に機会があるときに譲って、外資流入減問題に戻ります。
地方政府・幹部→中央の大幹部の搾取・私腹を肥やす構造をそのままにして、庶民の不満解消のために外資(に限らず国内企業も含めて)に賃上げを要求・強制するのでは、外資(国内企業)にとって投資効率が悪くなってしまいます。
諸外国との賃金格差があってそのコスト計算の結果、巨額の初期投資をしてもペイするので外資が中国に投資するのですから、工場・店舗等立ち上げ後操業時に高騰した賃金を払うリスクや暴動リスクが出て来ると、外資は新規投資をやめるか抑える・・慎重方向になります。
(中国国内資本でも外国へ逃げ出す余力のある企業は、国内新規投資・第2〜3工場増設よりはベトナム等に生産工場を一部新設する方向になります)
借地や家賃で言えば、賃料が安ければ契約時の権利金支払が割高でも良いが、賃料が高額ならば、契約時に支払う権利金・保証金等初期投資を少なくしないと借りないでしょう。
工場用地や店舗用地購入金額・初期投資資金も、操業後の収益を計算して行なうものですから、初期投資金とその後の収益予想(工員・店員等の給与水準あるいはその後の暴動リスクを含めた収益率)とは相関係数になります。
最低賃金の強制的引き揚げ政策は・・結果的に地方政府に支払う土地代金や幹部への裏金その他の初期資金=外資導入額が減る方向になるので、結果的に共産党幹部の懐に入るお金が減り・・格差率が下がる方向に落ち着くのでしょう。
共産党大幹部相手に難しい汚職撲滅運動・・時々見せしめ的に高級幹部の摘発をするよりは、最低賃金引き上げを企業に強制する方が・・これが大量失業を引き起こさないで成功した場合のことですが、実は幹部の汚職縮小・・格差是正に効果が高いことになります。
実際には賃上げによって経済が縮小して失業が増え、他方で末端・部下・汚職協力者への分配金が減ることによる忠誠心喪失となり、却って社会不安が増大します。
失業増大も見方を変えれば,所得分配機能の喪失状態と言えます。
所得分配構造が機能しなくなってリビヤやチュニジュアの春その他アラブで騒乱が起き始めたことをこれまで書いてきました。
ちなみに、人件費上昇分として土地代・初期投資が下がれば良いというのは、個人経営の場合のことで、法人企業の場合はそうでもありません。
企業決算では、土地等はバランスシート上取得資金がそのまま資産計上されるので経費(マイナス)になりませんから、土地購入代金の上下は(評価損を計上しなければならない場合以外)短期的には原則として決算には何ら反映されない・・中立項目です。
短期的には操業後のフローコストの方が、企業収益発表(株主対策)にとって重要です。
土地購入資金が半値〜3分の1に下がっても、(評価損を計上しなくて良い限度では)法人のバランスシート上は中立ですから(ただし初期投資資金が借入による場合、各年度の金利負担は減るでしょうが・・その程度の誤差です)労賃が高くなって経費率が上がると、各年度の決算上は労賃の上がった分だけ利益率が下がり・もしかしたら赤字になります。
法人企業にとっては、初期投資資金が安くなれば、その分開業後の賃金が高くなっても良いとは言い切れません。
地元政府にとっても同じで、苦労して誘致しても初期投資が減ると地元政府に入る公式資金が減るだけではなく、幹部の懐に入る裏金が比例して減るので、地元政府・幹部の誘致熱意が以前よりも下がります。
あれやこれやで、ローエンド工場向け外資流入が減り、この種工場が逆に中国から出て行く一方になりつつあります。
他方で中級品工場設置目当てに入って来る外資が増えるならばバランスが取れますが、まだ中国では中級品製造技術が殆ど成長していないので、逆に資金流入が下火・減少して来たのが、この1〜2年の傾向でした。

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