PC・・政治的正しさ

話題が違法収集証拠排除とその例外にそれましたが、人権擁護の細か過ぎる議論が犯罪者集団の悪用を許している面があります。
大分前に「近代法の法理」を守れとか「憲法を守れ」と言うスロ−ガンに関するテーマに関して書いたことがありますが、法律家であればもっとどう言う守るべき利益があってどう言う利益が侵害されるのかを具体的に主張すべきです。
プライバシーとか肖像権とか意味不明の新しい権利主張をされると、法律家でもそれとこれはどう言う関係があるの?と聞くことすら憚られる・・まして一般の人は、黙ってしまうしかない変な風潮があり、マスコミによる洪水的報道によって裸の王様的言論封じが成功しているように思われます。
最近では、ヘイトと言えば何でも黙らせることが出来るような風潮が問題になっています。
ニュース女子とかで沖縄基地反対闘争の実態を報道したところ、これがヘイトに当たると言ってマスコミが大騒ぎしてどこかの論説主幹か副主幹だったかを降格させた騒ぎです。
正確には内容が(このコラムは受け売り専門で事実調査出来る能力ががありませんから・・)分りませんが、実態調査したら日当払って募集しているとか韓国人が参加していると言うことがヘイトになると言うらしいですが、韓国人が参加していると言う実態報道が何故ヘイトなのかよく分りません。
いわゆる政治的正義・・PCそのものではないにしても、人権擁護を称する団体から根拠なく槍玉に挙げられるととんでもない組織とされてしまうメデイアの行き過ぎが目立ちます。
・・日本人に分りよい例では動物愛護・例えば欧米人による捕鯨反対運動や韓国の慰安婦騒動・・いわゆるリベラルが幅を利かし過ぎている不満が漸く世界中で表に出て来ました。
トランプ旋風や移民反対運動の激化もその一環ですし、要は本質無視の揚げ足取りの行き過ぎです。
築地移転問題で言えば、地下水汚染が心配だと煽るだけ煽っておいて今になって地下水を飲むわけじゃないので何の実害がない・・分が悪くなると「風評被害が心配だ」と矛先を変えていますが、風評を煽って来たのはメデイアではないでしょうか?
http://www.huffingtonpost.jp/yuko-fujisawa/political-correctness_b_8802070.htmlからの引用です。
「シーズン19のエピソード「Stunning and Brave」のテーマは、自身の出演したリアリティ番組をきっかけに性同一性障害だったことを告白し、女性に性転換をしたことが話題となった、元アメフト選手ケイトリン・ジェンナー。アメリカでは彼女のことを“Stunning and Brave”(魅力的で、勇敢だ)と評価するのがポリティカル・コレクトネス(PC)の観点から一般的だそうです。というのも彼女のことを悪く言うのは「ダサイ」ことで、許されるべきではないという空気感があるそう。
しかしエピソード内で、主人公の一人であるカイルが、「個人的に彼をそんなにすごいと思わない。」と悪気がなくて言ってしまった途端、PCを押し付ける校長やその他PCフラタニティ(サークルみたいな団体)に責められまくり、PCがやっかいなものになっていく・・・という展開で話は進んで行きます。さすが時事ネタや議論を呼ぶテーマを扱うサウス・パーク。PCは大事だけど、固執しすぎるがあまり、社会が窮屈になっていないか?という風刺をしたエピソードでした。」
この記事を書いた人はそれでもPCが必要と言う意見のようですが・・。
ところで西欧でテロがあると逃走されない限りその場で射殺する様子が普通・・原則のように見えるにも拘らず(犯人の自供によらずに)、直ぐに(数時間後には)アジトや関連先を急襲したりしている報道を見るとかなりの事前調査活動があったことを前提にしています。
マスメデイア報道の基本イメージは、テロを防げなかった政権のお粗末・批判する報道が一般的・・政権の無能・支持率低下をテーマにしています。
ベルギーテロ直後に多言語社会で公安情報が入り難いことが大報道されていました。
一方でプライバシー保護を大宣伝して犯罪を起こしていない・・起こしそうな人と言うだけでは事前情報収集させないようにキャンペインしておきながら、事件が起きると事前抑止出来なかった政権批判→政権弱体化に向けた一斉報道ですから、基準が無茶苦茶です。
メデイアの言うとおりにしていると政権崩壊〜社会混乱する一方ですから、テロ組織の助長・連携でもしているかのような行動です。
(メデイアは令状なし情報収集を極力批判する傾向がありますが、クルマ・電子機器その他先端機器が発達している現在では、19〜20世紀型社会構造に適合して来た令状主義は実務的に無理になっていることは、GPS捜査に関して紹介した最高裁判決自身が認めているところです。
時代遅れの型にはまった令状主義にこだわっていると、テロ組織の事前検挙や情報収集・事前抑止は多分不可能でしょう。
江戸時代には刀を抜いて切り掛かって来てからの自衛でも・・あるいは実行行為があってからの検挙で間に合っていましたが、今は銃乱射や爆弾テロなど起きてからでは護衛さえ多くすれば済むことではありません。
しかも被害が大きくなり過ぎます。
新しい時代に即した方法を開発すべき・・その工夫の1つががGPS装着でしょうが、テロリストは最先端手法で狙って来るのに・・裁判所が従来型手法にない捜査は認めないと撥ねていたのでは、社会の安全維持に無理が出て来ます。
そもそも司法と別の公安機関は犯罪実行前の怪しい者・組織に対する事前情報収集するのが制度目的ですから「令状なしでやってはいけない」という最高裁判断は(刑事手続に使わなければ良いと言うのかな?)矛盾です。 
今どき江戸時代のように木陰に隠れながら尾行するなど不可能です。
「壁に耳あり」と言う忍者のような仕事では間に合わない・・防犯カメラやウエブ上の送信記録の解析が重要ですが、令状請求して関係者立ち会いや事前通告などをやっていたら捜査になりません。
この辺の問題点は最高裁判決にも書いている・・令状なしの取り付けは違法と判断しながら、(令状さえあれば良いかと言うと)令状発布要件に当たらないのではないかと指摘している点・・令状請求があっても安易に認めるべきではないと言う意見まで書いていますので、地裁判事は滅多に認めないでしょう。
結局はプライバシー侵害リスクがある以上・事実上捜査手法として認めないことになります。
その上判旨によるとGPS利用に限らず・プライバシーに限らずいろんな権利の具体的侵害がなくとも、「侵害のリスク」あるだけでも立法的解決がない限り捜査を認めない」と言う法原理が確認されたことになります。
違法捜査の結果受けた侵害の有無程度に関係なく軽微であっても?(最判は、具体的侵害がなくとも憲法上の重大な侵害の可能性があると言うのですが)違法でさえあれば、違法収集証拠を採用しないというようです。
テロ組織がインフラ破壊・混乱を目指していながら、自分は正常に作動するインフラを利用してテロ現場に向かい、テロ実行後正常に動くインフラを利用して逃走計画を立てる身勝手なテロリスト論理・・とどこか似ていませんか?
テロ組織を追跡するときに警官は予め決められた方法でしか攻撃追跡できない・・例えばテロリストが信号やスピード規制無視で逃げているのに追いかける警官はスピード規制や信号を守らねばならない・・スピード違反で追いついて逮捕したから逮捕無効と言うような主張する権利があるのでしょうか?
実際には犯人追及時には、スピードや信号規制等道路規制が外れていますが、もしもそう言う例外法律がない分野が起きた場合の話です。
たとえば、表現の自由は大事ですが杓子定規に適用するとるとエログロ雑誌がはびこるように、物事には原則と例外があり(通行の自由と交通規制が両立し職業選択の自由と風俗業の立地規制が両立するように)境界を決めるのが法律であり、更に微妙な境界事例を決めるのが裁判所の約割りですが、何でも憲法問題に持っていき法の例外が許されないとすると(憲法改正が事実上不可能な我が国では)新規抜け穴を悪用する者がはびこります。

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