2項対立7と集団自衛権2

経済協定も同じでスワップもFTAもどこと結ぶと総合的に有利かが判断基準であって自分の負担が増えるのはイヤ・保証しませんとか、相手に「輸入関税を下げろ」と言い、自分は「一切下げません」と言う一方的な契約は成り立ちません。
モノを買えば代金を払うように、人間関係では必ず対価があります。
単独業界の損得だけならば単細胞でも分り易いですが、輸入枠を広げる業界は損をする・輸出の増える業界がトクをする・民族の発展のために将来どの業界を伸ばして行く方が良いかを含めて総合判断になると分り難いのですが、この複雑な総合判断コソが国益を図るために重要です。
ですから部分を取り出して単純な絶叫的議論を仕掛けるのは無理がある・単純化スローガン反応するのは民族の将来を誤ります。
トランプ氏のスローガンである高関税や移民禁止した場合・・雇用を取り戻そうと言いますが、ことは単純ではありません・・服作用を幅広く見ないと大変なことになると言われている所以です。
生命体の維持発展には、日々新陳代謝が必須です。
企業で言えば不得意分野を縮小または切り離して得意分野に特化する選択と集中・リストラクチャリングが必須ですし、個人も不得意分野にこだわらず運動神経のある人はスポーツに特化し、美術才能のある人はその方向へ・・その分英語数学の勉強を減らしてもいいのです・・国家社会も原理が同じです。
生命体はいつも何かを棄てて何か良いもの取り込んで行く・・取り込むべき必要な知識分野・友人知人も入れ変わって行くし、その結果幼児期少年期青年期と変わって行くように、社会や企業・組織体も永続性を図るにはいつも微妙な入れ替えやトキには大きな痛みを伴うドラスチックな入れ変えが必須です。
特に貿易の原理は、お互いに得意なモノを売って不得意な分野を輸入する相互交換関係ですから、個人が得意分野への特化するのと原理は同じですが、輸入拡大で潤う業界と輸入拡大で損をする業界の関係者が違う・・この点が切り離される事業分野・・痛みを伴う企業リストラと原理が似ています。
リストラの場合、社内配置転換(・・いきなり未経験の分野に移れば未熟ですから出世競争から外れてしまうなど縮小方向になった分野担当者には厳しい局面ですが、)で何とか処遇して社内融和を図っています。
同じように縮小して行く業界に働いている人を輸出で拡大する業界にうまく転進させて行くには、どのような政策が良いかこそが政治のテーマであるべきです。
集団自衛権論に戻りますと、議論すべきテーマは相互同盟を結ぶ必要があるかどうかであって、アメリカの戦争に巻き込まれると言う議論は論点がズレています。
自分だけ都合よく守ってもらえないのは当たり前ですから同盟する以上はその対価として、盟主の催す戦争に参加して犬馬の労をとるのは昔から同じです。
それを含めて同盟するかどうかだけであり、同盟国の戦争に巻き込まれるかどうかを議論するのは間違いです。
アメリカのような超大国の場合「孤立してどこからも応援がなくとも良い」と言う唯我独尊が成り立ちますが、軍備の貧弱なクニでは、その分に反比例して、いつでも応援を頼めるようにしておく必要があるのは世界常識ですし個人でも同じです。
個人や企業で言えばいつでも原材料や部品その他の仕入れ可能であれば在庫が減らせるし、これが難しいときには多くの在庫・食糧の備蓄が必要になります。
企業は銀行融資枠が大きければ現金保有残高を減らして有効利用出来るし、国家間ではスワップ協定で相互保証枠が大きければ、自前で外貨準備を蓄積する必要性が減ります。
世界一の純債権国日本にとって外貨のスワップがあってもなくとも大したことがないが、経済基礎の脆弱な国にとっては相保障があるかないかは死活的重要性があるのと同様の関係です。
このように軍備であれ、経済であれ弱小国ほど相互保証の利益が大きいのが原則です。
アメリカの戦争に巻き込まれると言う議論は、アメリカが敗退するような危険な戦争に付き合って日本が滅びるようなリスクがあるかないかの議論では意味があります。
弱小国が強国に攻められていて応援を元米良た場合日本が応援すると強国に一緒に滅ぼされ停止まうような場合にはどうするかの議論が重要です。
今のところ、アメリカの陣営参加しても圧倒的戦力のあるアメリカ軍に対する付き合い程度のリスクしかありません。
まして周辺事態に限定すれば、アメリカと互角に戦える国は中ロしかないのですから、想定されるリスクは対中ロ戦だけです。
この内今のロシアの国力からしていろいろな場面でアメリカと対立をしていてもアメリカと正面からコトを構える自体は想定し難い・・挑戦意欲を示しているのは中国だけです。
しかし、米中が貿易面で利害があっても直接軍事対決発火の可能性は本来ありません。
軍事力行使・火を吹くとしたら、尖閣諸島・南シナ海に絡むことくらいですが、これはアメリカにとってすぐに軍事力行使を必要としない間接的利害でしかないのに対して、日本には直接的死活的利害があって、しかも公船と言う元軍艦を改造した艦船が毎日のように押し寄せている状況で、いつ正式な軍艦が来るかもしれない緊迫状況・・今にも中国による軍事力行使リスクが迫っています。
日中1対1よりはアメリカを巻き込んだ方が有利だから、日本がアメリカにも利害あるとして逆に巻き込もうとしている関係であり、じょうきのとおり、日本が日本近海でアメリカ独自の利害による戦争に巻き込まれるリスクは殆どないでしょう。
唯一のリスクは朝鮮有事の場合ですが、これは元々日米安保がある限り避けられないし元々の朝鮮戦争でも、ベトナム戦争でも日本から米軍が出撃していたものですから、集団自衛権とは関係がないでしょう。
アメリカ有事の際に日本その他弱小国の応援を得ても、早期情報を得るあるいは兵站などの後方支援などで役に立つ程度で本格的主力軍の衝突場面ではアメリカ軍本体の能力次第になります。
これに対してアメリカの5分の一の軍事力の国でも、日本侵攻を始めると日本にとっては死活問題ですから、アメリカの応援があるのとないのとでは桁違いのメリットがあります。
逆に日本有事の際にアメリカの応援がないと亡国の危険があります。
実際にトランプ氏による100%「日米一体」の表現があれば、中国やロシアが日本侵略を計画したり強迫することすら出来ない状態になっています。
日本はアメリカによる日本防衛表明の御陰で数十万規模の人命が損なわれずに済んでいる・・この見返りにどの程度まで犬馬の労をとるべきかも決まって来る関係です。
(折角朴政権が反日を改めたと思っていたら、次の大統領候補者はそろって朴政権以上に反日を煽動するようになっているなど・・今や中韓の強迫は急を告げています)
自国が危険に曝されている程度に応じて、相手国への協力による危険の引き受けの必要性・程度が決まる関係です。
尖閣諸島に連日押し寄せる中国の多数船舶の意気込みを見れば、一旦軍事侵攻が始まり戦端が開かれれば、とても一人や二人の被害程度で追い払えるとは思えません・・。
もしも日本だけでは直ぐに追い払えずに、数千人規模の被害が出て、しかも国土の一部が蹂躙される事態・半年ほどの戦争の結果仮に追い払っても大変な被害です。
やはりアメリカに付き合っておいて・・仮に付き合いの結果数人規模の被害が出てもアメリカの睨みだけで中国やロシアを追い払ってくれている今の方が安上がり・・被害絶対数が少なくて済む気がします。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC