アメリカの民主主義2(大統領令とは?2)

大統領令に署名さえすれば,イキナリ現場で特定国出身者だけ一律に入国拒否したり拘束したり出来るかのような報道を見ると(報道ぶりからすれば)具体的審査の結果ではないように見えます。
ただし,上記は反トランプ立場?の報道によるだけで,疑いの濃厚な特定国出身だけ厳しく質問・審査したら,怪しい人物が引っかかった・・やはり厳重検査して良かったことになるのかも知れません。
特定国出身到着者全員が入国拒否されたのかどうか知りたいところです。
全員またはこれに近いとなれば具体的審査の結果だと言うのは無理ですから,予め特定国出身者だけ入国させない命令であったことになりそうです。
いずれかについては大統領令自体にどう書いているか見れば直ぐ分ることですから,誰か早くアップデートとして欲しいものです。
※後記2月5日MSN報道で毎日新聞名で大統領令が要約されて出ました。
もしも具体的審査の結果ではなかったとした場合のことですが,
第1に考えられるのは,オバマ大統領が2014年頃に不法入国して15年以上経過している人で子供のいる人には,特別な在留資格(3年間先送り・Deferred )を与えようとして議会(共和党に)に反対されて実現出来なかった政策・DAPA (Deferred Action for Parents of Americans and Lawful Permanent Residents)を,大統領令で断行したことがあります(内容を含めてうろ覚えで正確ではありません)ので、これの撤回署名だったかも知れません。
現状は以下のとおりです。
http://www.cnn.co.jp/usa/35084845.htmlによると以下のとおりです。
「オバマ大統領の移民政策は、子どもが米国籍もしくは合法的な居住者である不法移民(約430万人)については一時的に強制送還の対象から外し、合法的な就労に道を開くというもので2014年に発表された。」
「だがテキサス州を初めとする26州はこれに反発、大統領権限での改革は憲法違反だとする裁判を起こした。15年には連邦地裁が州側の言い分を認めて実施を差し止める決定を下し、高裁でもそれが支持された。」
「民主党の候補指名を確実としたヒラリー・クリントン前国務長官は最高裁の判断は「受け入れがたい」と声明で述べた。一方、共和党の指名候補となるのが確実なドナルド・トランプ氏は「(裁判所は)われわれの安全を守ってくれた」とツイートした。」
上記によると26州が執行停止決定を取っていて,最高裁では4対4の可否同数で決着がつかなかった状態・・高裁決定が維持されている・・効力がないが、訴訟していない26州以外では大統領令が施行されていることになるのかな?
※追記です
2月5日のmsn報道では、今回の入国禁止令はワシントンの連邦地裁で違憲判決?が出て、全米の入国手続再開と出ていますから、個別審査の結果ではなく一律禁止命令だったたように見えますし1地裁で違憲判決が出ても全米で効力があるようです。
【ロサンゼルス長野宏美】中東・アフリカの7カ国からの入国を一時禁止する大統領令について、米西部ワシントン州シアトルの連邦地裁は3日、一時差し止めを命じる仮処分の決定を出した。命令は全米に適用され、即時効力が及ぶ・・」
全国で効力があるとすればオバマの大統領令が全米で執行停止されたままだったことになります。
そうするとAB両地裁で別の判決が出るとどうなるのか?この報道だけではアメリカの制度は意味不明です。
マスコミが一方的に報道していたので,オバマの大統領令がそのまま施行されているとばかり思っている人が多いと思いますが,国内意見の実態は上記のとおり拮抗していたのです。
こう言うややこしい・国論が割れていた状況であったことを日本では全く報道せずに、極論主張のトランプと言うイメージばかりだったので,彼の勝利を「驚き」としているのです。
今,トランプ氏が最高裁判事に推薦している人は保守論客と言うことですから,任命されたら4対4の均衡を破って憲法違反決定になると言われています。
トランプ氏側の言い分は,http://blog.livedoor.jp/wisdomkeeper/archives/52001959.htmlによれば以下のとおりです。
「日曜日の午後にトランプは移民に厳しい大統領令を発令しました。しかし同時にトランプは、ホワイトハウスにて、「・・今回の大統領令と、2011年にオバマ元大統領が発令した大統領令は同じ内容である。彼はイラクからの難民に対するビザの発給を6ヶ月間禁止した。」と述べました。
さらに、トランプは、「イラク、イラン、リビア、ソマリア、スーダン、シリア(無期)、イエメンは一時的に入国に禁止したが、これらの国々はオバマ政権が”テロを支援し訓練している国”と名指しした国々である
「プリーバス首席補佐官は、NBCのインタビューにて「アメリカには325000万人の外国人旅行者が入国している。今回、詳しい入国審査を行う目的で空港で拘束した109人については、オバマ政権と連邦議会がテロを支援、訓練している国として名指しした国から来た者たちだ。」と述べました。
以上によると元々オバマ政権がリストに上げていたクニからの入国審査を強化した結果、一部不審者を拒否したり拘束しただけで、一律拒否したわけではなさそうに見えます。
そうとすれば審査をまじめにしているだけのことになります。
今回の大統領令記載の文言自体を(マスコミの解釈ではなく)早く知りたいものですが、何故かマスコミが翻訳文を報じない・・煽りに徹しているようなので本当のことがよく分りませんが,その内いろんな立場から出て来るでしょう。
※上記2月5日朝のMSNに報道によれば、違憲決定が出たのであれば、個別審査の結果ではなく一律禁止命令であったことが推測されます。
とすればトランプ陣営の「審査強化しただけ」と言う主張は事実に反していたことになります。
繰り返しますが、ここのテーマは国民の多くが支持しているかどうかを知りたくて書いているのではなく,支持さえあれば強制収用所送りなど既存法制度無視の大統領令が今でも有効になる国かどうかを知りたくて書いています。
憲法違反で差し止めになれば良いのではなく,そんな大変な裁判をしない限りさしあたり有効として強制出来てしまうクニかどうかです。
ところで大統領令の位置づけですが,学校で習っている三権分立の原理からしてこれが非常に怪しいと言う関心からこの数日このテーマで書いています。
これまで書いて来たように,アメリカの人道主義と言っても黒人差別、日系人差別(日系人強制収用・・戦後では,クリントン政権の日本標的の100%関税の強迫など)をして来た歴史から見ると人権はアメリカ人・あるいはキリスト教徒だけにあって外国人(白人以外)には人権・・法の保護がないという基本的システムであるような疑いがあります。
トランプ氏の大統領令で具体的事由に関係なく仮に一律入国拒否出来るとしている場合を考えてみましょう。
既存法令無視で大統領令だけでどうしてこんな乱暴なことが出来るかの疑問です。
日本の場合上陸拒否出来る事由は法定(限定列挙)されていて,その中には、総理大臣等が超法規的に「指定したものを拒否し拘束出来る」と言うような乱暴な条項はありません。
入国であれ逮捕などの条件であれ,厳格な法定手続を定めながら,総理または大臣等指定するものを例外とすれば法で拒否理由を限定記載する意味がなくなりますから,そんな法規が国会に上程されたら,それこそ法治国家の全面否定・憲法違反の疑いで大騒ぎになるでしょう。
逆に上記法定事項に該当しても法務大臣は特別に許可出来ると言う逆の救済条項があるだけです・・これなら裁量があっても人権侵害になりません。
出入国管理及び難民認定法
(昭和二十六年十月四日政令第三百十九号)
(上陸の拒否)
第五条  次の各号のいずれかに該当する外国人は、本邦に上陸することができない。
各号省略
(上陸の拒否の特例)
第五条の二  法務大臣は、外国人について、前条第一項第四号、第五号、第七号、第九号又は第九号の二に該当する特定の事由がある場合であつても、当該外国人に第二十六条第一項の規定により再入国の許可を与えた場合その他の法務省令で定める場合において、相当と認めるときは、法務省令で定めるところにより、当該事由のみによつては上陸を拒否しないこととすることができる。」

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