12月14日総選挙と民意2

今回の選挙では、集団自衛権行使閣議決定の変更や秘密保護法制定や増税の可否・・中国による尖閣諸島侵犯・小笠原諸島海域での漁船団による侵略的操業、慰安婦騒動で冷却化している韓国との関係処理の軸足をどうすべきかなどなど、戦後秩序を揺るがす大事件が連続的に発生していたので国家の基本方針を決めるべき大きな課題が目白押しでした。
(韓国の中国への軸足変化も含めて)根底にはアメリカ支配・戦後秩序が揺らいできたことにあると言うべきでしょう。
戦後秩序の基礎が揺らぎ始めた大変革の始まりにあたって、日本の立ち位置を決めるべき大争点が目白押しであったにもかかわらず、解散が決まるとマスコミは「争点のない・大義のない解散だ」と言う報道を繰り返していて、ネットでは、争点隠しに励んでいると言われるようになりました。
選挙は国民の意思・民意を知るために存在するものですから、政治家はぼやけている争点の輪郭を明らかにして国民意思をより正確に聞き取る努力をすべきです。
「争点がなくて自分は何を訴えて良いか分りませんが兎も角私に投票して下さい」と言う政治家は辞めた方が良いでしょう。
マスコミは、(本来マスコミと非民主政治は相容れない筈です)個々の政治家が明らかにできない争点の輪郭を組織力で明らかにして国民に提示するべき業界です。
解散が決まるといきなり「争点がない」と言い出すのでは、マスコミ業界の怠慢ですし、民主政治否定論に近いと批判されても仕方のない自殺行為ではないでしょうか?
時間軸で見ると、安部政権誕生後約2年間のアベノミクスに対する評価と中韓両国による戦後秩序に対する挑戦・・重要事態連続発に対処して来た安倍政権の各種の施策(秘密保護法制定や集団自衛権解釈変更や武器禁輸幅の変更など)に対する採点・・信任投票が必要な時期が来ていたように思います。
(今時4年間も白紙委任では長過ぎるので、アメリカでは2年ごとに中間選挙があるのはこの点で合理的です)
まして大事件があったときにはすぐに民意を問うべきでしょう。
沖縄普天間基地対応の拙劣さ〜原発事故対応の拙劣さが問題にされた民主党鳩山〜菅政権に対する国民評価が必要であったのに、すぐに選挙して民意を問わなかったのは民主制の根本に反していましたから、先送りした選挙でその分の不満が大きくなって大敗してしまったのです。
先送りすれば民意の不満がそれだけ溜まって行く点では、小泉総理引退後福田〜安倍、麻生政権が選挙先送りしていて大敗したことに共通します。
このように、政権獲得後想定外の大事件があると、これに対する民意を問うていないのですから事後に対応の是非について直ぐに信を問うのが本来的な民主制の基礎です。
緊急処理すれば事後に直ぐ上司や議会等の事後承認を得るのが一般社会でも常識です。
選挙のテーマとしては、増税を決めた民主党だけではなく、自民党内にも根強かった増税実行路線を、安倍政権が解散決断と同時に変更したことを国民が支持するのか、支持しないのかこそが目先の最大争点になるべきでした。
小泉元総理の郵政選挙では、郵政民営化に飽くまで反対していた勢力が大打撃を受けた経験から、今回は安倍政権が増税延期を決めると同時に解散・総選挙を決めると、増税要求派の政治家はあっさり延期賛成に転じた結果如何にも争点がなくなったかのような外見を呈していました。
しかしこれは増税派が正面から戦うことを避けた・不戦敗を選んだ選挙戦術によるものであって、増税実行圧力を跳ね返すために安倍政権が解散に打って出たことは明らかでしたから、国民に問うべき直接の最大争点は増税の可否であったことはまぎれもなかったでしょう。
「争点がないから国民はしらけている」と言う大宣伝をマスコミが繰り返して、選挙に行っても意味がないかのようないわゆるネガティヴキャンペインを大々的にやっていることがネット批判されていました。
この批判の結果か?途中から争点がないと言う宣伝が少なくなり、選挙後の報道でも投票率が低かったことの主張も(あることはあるものの)控えめですし、争点がなかったと言うマスコミ批判はいまのところほぼ封印されています。
マスコミがネット批判に負けて報道姿勢を変更せざるを得なくなった記念すべき事件ではないでしょうか?

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