ポンド防衛の歴史16(ポンドの威信5)

話がそれましたが、経済実力の落ちて来た場合のテーマ・2013-4-7「ポンド防衛の歴史15(ポンドの威信4)」の続きに戻ります。
戦後のイギリスは、経済力が落ちて来たのに格式にこだわって、(核武装もするし武力維持でも無駄に頑張ります)広大な屋敷(毎年の植木屋さんの費用やちょっとした家の修理も半端ではありません)や門塀を維旧家の格式出費が多くて、実生活が苦しい旧家みたいなものでした。
個人の場合、旧家の格式を維持するのが何かと面倒なので都会に出てしまって、簡素な生活に切り替えることが多いのですが、国の場合は逃げ出す訳には行きません。
(大名が明治維新後全員東京に移り住んだのも、元々江戸に住んでいたというだけはなく、地元にいると面倒だった面があったでしょう)
国力の変化を為替相場に委ねてジリジリと実力相応に国家の格式を下げて行けば無理がないし、貿易収支改善も期待出来ます。
現在のギリシャ危機(この基礎原稿は昨年12月10日ころに書いておいたものですが、今ではキプロス危機になっています)の原因も同じで、自国の実力に応じてジリジリと為替相場が下落して行けば自然体で楽だったでしょうが、自国の経済力に直截関係なくドイツ、フランス等EU諸国平均経済実力でユーロの為替相場が決まるのですから一種のバスケット方式に参加してしまった状態です。
実力以上の評価を受ければ外見は格好いいでしょうが・・・その分マイナスが生じます。
能力以上の高校・大学に入ったり、交際関係(庶民が名門女子校に子弟を入れると付き合いが大変なのと同じです)に入るとそのレベルに合わせた付き合いが大変になります。
ギリシャ・キプロス等の弱小国はユーロが実力以上の為替相場になっても、貿易赤字を修正する為替変動を利用するチャンスがなく、赤字が累積してしまった結果現在の危機が来てしまいました。
逆から言えば、どんなに貿易赤字が続いていても通貨下落の心配がないので、ロシアが有効国のキプロスに資金逃避地として巨額預金をしていたのが今回あだ花になりました。
EUとしては基本的に預金の削減・・預金者にも相応の痛みを求める政策のようですからロシアの巨額(不正資金?)預金者は大変なショックでしょう。
中国でもどこでも不明朗国は、裏金をどこか信用出来る国に隠しておきたいようです。
ギリシャは独仏等の相場にリンクするだけで独自の通貨を持っていれば、(アジア危機後のアジア諸国のように)バスケットから離脱すれば良いのですが、自国通貨がない(金利政策も出来ない)ので、イギリスのように自国通貨の売り浴びせを受けない代わりに、為替が下がることによる交易条件を有利に是正するチャンスを失い貿易収支が際限なく悪化してしまったのです。
この解決には通貨切り下げが一番簡明ですがこれが出来ないので、緊縮の強制しかない・・とは言うものの南欧諸国国民が納得しないのが現実です。
EUを完全に経済統合に一歩でも進むか、国別経済の独立性を飽くまで維持するならば、自国独自の通貨・金利政策・為替相場に戻るしかないでしょう。
ちなみに2012年12月11日の新聞報道では、ユーロ圏の新条約会議で10日に合意され、(ギリシャのユーロ離脱よりは)財政規律を強化・財政の一体化強化の方向に決まったようです。(このブログはこの頃に書いてあったものです)
財政規律維持と言っても実際には無理がありますので(12月10日ころに予想して書いておいたこのブログ通りに)今春のキプロス危機では、国民の反発で否決されてしまいました)。
行く行くは日本で言えば青森や沖縄その他地方は独立国ではなく、日本の一部として地方交付税その他補助金など補填して成り立つような関係に持って行かない限り根本的解決にはならない筈です。
ただし、財政規律重視方向は将来的には上記のような財政の一体化に進むしかなくなるので、主権維持を気にするイギリスが飽くまで今回の合意に反対を貫いたので、独仏との間で将来に禍根を残すことになったと報じられています。
ちなみに敗戦直後から1990年までのドルとポンドの対円為替レートがグラフになっているデータがあったので紹介しておきます。

以上は以下のアドレスからのコピーです。

http://homepage3.nifty.com/~sirakawa/Coin/J062.files/Graph13.gif

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