アベノミクスとは?3

「必要は発明の母」とも言いますが、需要があってこそ必要な人材が生まれるのであって、先に供給さえすれば、需要が生まれるという倒錯した議論でここ20年ばかりいろんな分野で供給過剰が続いて来た面があります。
金融でも同じで、金あまりで資金需要以上に大量供給さえすれば、需要が生まれると期待するのはおかしなものです。
過剰供給下で生まれる需要は不健全な後ろ向き需要(借金の借り換え等)や不正需要(審査が甘くなれば不正受給が増える)が中心で、健全な成長投資には殆ど結びつきません。
マンション等で言えば建て過ぎれば、売れ残りの叩き売りが増えるので、不要な人でも勝っておこうか?と言う需要が増えるのを期待しているような不健全政策です。
民間で作り過ぎても、最後は売れ残りを叩き売りすれば結果的に売れるからと言う発想で増産する企業は皆無ではないでしょうか?
資金不足時代の延長思考で景気対策には資金供給の増減さえすれば良いという時代遅れの金融政策を資金あまりの先進国では取り続けて来たこと・・資金余剰下では、金融緩和効果がなくなって手詰まりになって来た原因です。
これまでの金融緩和効果がないから「もっと大胆にやれ」と言ってみても、大量資金不足下で資金緩和が少な過ぎて効果がないのではなく、資金が既に余剰で緩和自体に意味がなくなっているのですから、意味のない主張です。
砂糖をいくら入れてもうまくならないときに、更に「大胆に」砂糖をドバーッと足すのではなく、塩や香辛料を加えるなどの変化が必要です。
即ち、資金あまりの日本で如何に金融を緩和しても、企業は内需や輸出需要=売れる以上に国内投資することはありません。
企業は無駄な投資をしていると倒産してしまいますから、国債を買ったり需要のある海外への進出資金等に使ってしまうのが普通です。
1000兆円前後にのぼる国債のうち国内保有率が(数年前には95%でしたがここ1〜2年外国人保有が増えているようです。)約92%ですが、その内企業がどのくらい持っているかです。
銀行、生保等金融関連保有分もその何割かは企業が預けたり、投資した資金でしょうから、実質的には企業がかなりの比率を占めている筈です。
企業保有分(金融資産)は、その企業にとっては本業その他に投資する資金需要がなくて国債を買っている・・これ以上金融緩和しなくとも既に資金余剰ということです。
こう言う企業にとって金融緩和(金利下げ)しても使い道がなく・・・逆に金利下げ分運用益が減少することになります。
国内需要喚起・・車で言えばスピードアップするのは、アクセルを踏む権限のある政府の役割です。
需要が起きたときに資金不足を解消するのは金融緩和・日銀の役割ですが、需要を喚起する仕事は日銀ではありません。
そこで重要なのは第三の矢と言われる成長戦略ですが、これ自体バクとしていて今のところ不明です。
どの政権でも成長させたいのはヤマヤマですから、これまでどの政権(歴代自民党政権も含めて)も約20年来成長戦略を唱えてきました。
どのようにして成長させるかこそが政治家に問われているのですから、これに対する答えとして「成長戦略です」と言うのでは、同義反復にしかなりません。
成長戦略を具体的に言えないで実際には「為替相場が円安になるかどうかに全てかかっている」というだけでは、心もとないことになります。

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