労働力人口と国力

中国の問題は措くとして、一般論として労働力人口減の開始が日本や中国経済のマイナス要因という見方・人口ボーナス・・人口オーナスを唱える経済学者の意見には、私はAugust 4, 2012「マインドコントロール2( 人口ボーナス論の誤り2)」その他で反対してきました。
人口さえ多ければ発展するし少なければ衰退するというのは、歴史事実に反していることなど書いてきました。
企業でも図体・製造装置や社員数さえ多ければ余計売れるワケではありません・・売上が伸びるから設備投資するのであって売れない・技術の劣る製品を増産しても倒産するだけです。
人口や規模に関係なく国際競争力がなくなれば(技術が劣れば)衰退するときはします。
中国や日本では・・(あるいは欧州でも・・)むしろもっと早く人口減にするべきであったというのが、私がこれまで繰り返し書いて来た少子化賛成・人口論です。
日本で言えば、グローバル化が10〜20年遅ければ、(逆から言えばもっと早く少子化が進んでいれば)その間にもっと蓄積出来たし、高度化対応に人材シフトする時間があったし、汎用品向け労働人口を減らしておけたのでもっと楽だったと言う意見を書いてきました。
中国の場合で言えば、まだまだ農村や奥地に多くの余剰人口が残っていて近代化の恩恵・汎用品用の低賃金工場労働収入を得る恩恵すら受けていない人口が膨大・・低賃金でも工場で働きたい希望者が一杯いる・・もっともっと汎用品工場の拡大・受け入れが必要な状態です。
従来中国では「8%成長以下になると大変なことになる」と言われていたのは、この辺の実情・・毎年毎年の余剰労働力参入圧力の大きさを表しています。
流入圧力が大きいのは現状の低賃金でも地方で農業しているよりは魅力のある職場ということですから、トータル人口の増減の問題ではなく、魅力を感じる新規参入者が多いか少なくなるかの問題です。
ある職種の賃金・待遇が他の職種よりも高いときは、転職による参入圧力が高まる・・参入障壁さえ低ければその職種にはいくらでも人が集まるので、総人口が同じあるいは減少しているかに関係がありません。
日本で言えば昭和30年代に地方から金の卵と言われる集団就職がありましたが、まだ就職したい人が地方に一杯いる時代・・比喩的に言えば年間200万人の新卒があるときにその6割=120万人が農業後継者になるよりは都会で働きたい状態から、少子化の結果新卒・新規参入者が150万人に減るとどうなるでしょうか?
仮に150万〜120万人に減っても、企業に受け入れ能力・需要さえあれば、労働条件をアップすることによって他の職種へ流れているあるいは農業・就職先がないために軍人等にとどまっている職種から奪い取ることによって、必要人員を確保出来ます。
トータル人口が150万人に減っても他業種よりも有利な条件を提示出来て都市進出希望者を従来の6割比率から8〜9割に引き上げられれば、工場労働者数自体を維持出来ます。
逆に賃金が上がり過ぎて(あるいは同じ賃金でも総合力で割高になって)競争力がなくなるとどんなに大量の労働者の参入希望があっても生産を縮小するしかありません。
国力の消長は、人口の増減ではなく、企業競争力次第ということです。

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