日米同盟強化

Dec 28, 2012「観光立国と生活レベルの低下4」で、尖閣諸島に半端な戦力(数十人規模)を駐屯していても肝腎の本格戦争に入れば日本本土防衛には無意味・・放棄するしかないだろうと書きましたが、(平時のシーレーン防衛には大きな意味があります)防衛ラインを広大な太平洋のどこに引いてもアメリカ本土の防衛にとって、(日本の沖縄防衛と尖閣諸島防衛の関係よりもなお)大した違いはありません。
(アメリカ本土向けロケット発射を何秒か早く知ることが出来るくらいでしょうか?)
仮に日本列島が全部中国支配下になって日本から攻撃機あるいは大陸間弾道弾が飛び立っても中国本土から直接飛んでも距離の比率から言ってアメリカの防衛にとっては50歩100歩以下でしかないでしょう。
日本を韓国のように経済植民地化しておけるならば、アメリカにとって第1列島線が(守ってやるぞという意味で)重要になります。
日本が経済支配下に入らない・もしかして中国経済圏に入るのを選択するなら、何のためにシーレーンなど中国から防衛してやる必要があるか・・子供でも分る道理です。
ですから「防衛分野だけ同盟しましょう」と言っても、アメリカが実質メリットを求めて来るのは当然です。
TPPや沖縄基地問題等アメリカに利害のある問題で具体的に安倍政権がどう対応(譲れる)出来るか、アメリカにじっと見られている状態です。
ヤクザにミカジメ料の支払を渋ったら、・・「じゃあ他所のヤクザが店に来て嫌がらせされても知らないぞ・・」というのがアメリカのやり方でしょう。
もしも参議院選挙までアメリカの思惑どおりに動けない・・野田政権同様に国民を騙すために選挙までは意思表示出来ないと言うなら、(アメリカにとっては国民に言えないほどの大規模譲歩引き出すには選挙後の方が有利ですから)そこまでは我慢するでしょう。
あまりにも大きな譲歩を迫られる場合、アメリカ離れを画策した方が良いかについては、中国の出方を考えてシビアーな検討が必要です。
戦後60年以上に及ぶアメリカの横暴?に反感を持っていた民主党政権は、今後中国と仲良くすれば良い・・これまで大分援助して来たし・・アメリカを袖にして近寄れば中国が喜んで大切にしてくれると思っていました。
民主党はもともとソ連圏との友好を模索して来た社会党・民社党出身議員を多く抱えているので反米基調になっていたのは当然ですが・・国民の多くもアメリカの勝手な行為の数々に不満を持っているところへ中国の台頭もあって、民主党政権誕生=親中国路線傾斜が当然の雰囲気でした。
ところが、日本には予想外の中国の対応が待っていました。
アメリカから離れたならば立場が弱いだろうと足下を見られてしまい、逆に尖閣諸島に対する領土要求を誘発させてしまいました。
日本的理解ではこれまで対立して来た相手でも、相手が弱って頼ってくれば優しくいたわるのが普通ですが、中国や韓国では相手が弱っているならこれを好機と見て、徹底的に叩く・・しゃぶり尽くす価値観の国だと知らなかったのです。
低姿勢に出れば、大切に対応するのが日本の礼儀ですが、中韓(もしかしたら世界中が)では相手が下手に出れば相手が弱っているのだから、この機会になお強く要求すれば良いという価値観の国です。
慰安婦問題・南京虐殺等々、事実無根でも相手が主張するなら、反論して揉めていないでそのとおり認めて謝れば和解出来るという発想が日本の(甘い?)価値観ですが、(ヤクザでも言いがかりをつけたことについて被害者が謝るなら、それ以上追及しない国民性です)相手の方は、事実無根でも認めてくるほど相手が弱いならば、もっと新たな要求が出来ると考える価値観の民族です。
今回はアメリカの要求がきつすぎるからと言って、簡単に中国寄りに舵を切り替えられないことも(交渉相手のアメリカには)分っています。
ところで安倍政権の対米手みやげ論ですが、ただ低姿勢で譲歩すれば上記のとおり却って悪い結果になり兼ねません。
こちらもしたたかに交渉して行く心構えが必要です。
ベトナム戦争当時、ドミノ理論が一世を風靡したことがありますが、尖閣諸島をアメリカが守れずここに中国軍基地が築かれると(日本本土防衛にとってはあまり意味のない場所としても・・・)台湾(国府軍)防衛に重大な影響が生じます。
(※ 尖閣諸島問題で日本が引けば、その内沖縄諸島まで中国が領有主張を始める可能性が高く、さしあたり石垣島など離島から占領が始まるでしょうが、順次日本がこれらの占領を黙認して行くことになると、台湾本島が中国軍基地に包囲されることになります。
こうなると台湾武力侵略(開放)が現実化して来るので、武力行使がなくとも台湾が屈服するしかなくなるでしょう。)
遠隔先端基地は攻撃側には出撃の足がかりになるので有用ですが、守勢のときには守備隊が拡大分散している方が不利になります。
(沖縄占領に後ここから出撃する爆撃機によって東京空襲が常態化したことを想起すれば良いでしょう)
我が国は専守防衛なのであまり遠くまで出っ張って戦力分散している方が不利になりますが、攻撃側の中国にとってはここに基地を築ければ台湾と日本を分断出来るし、そこから航空機が出撃出来れば有利になります。
沖縄まで要求して来るのは大分先のことであるとしても、台湾に至近距離の尖閣諸島に中国軍基地を設定するだけでも台湾を脅迫するのに充分です。
沖縄米軍による台湾応援をここで分断・妨害出来ます。
この視点から言えば、台湾政権が中国共産党政権と一緒になって尖閣諸島領有を主張していたのは不可解・・よく考えていなかったのでしょう。
台湾当局(国府軍)にとっては、日本の尖閣諸島実行支配を揺るがすのは得策どころか、自分の首を絞める行為です。
直ぐに台湾当局が静かになったのはこう言う視点が働いているからでしょう。  
アメリカの要求がきつ過ぎて、交渉決裂となってアメリカが守ってくれないなら・・・と言うことで、「尖閣諸島は要りません・諦めました」となればアメリカも大変です。
台湾防衛だけではなく、「たった1つの離島さえ守ってくれない同盟なんか意味ない」という声がわき上がるのは当然で、将来的には日米同盟が空洞化して行くのは必至です。
日本は手みやげばかり気にしないで、この辺を(直接言うのは、はしたないですが、)交渉材料にして行くべきでしょう。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC