最先端社会に生きる1

この辺から正月元旦〜2日のコラム続きに戻ります。
日本はキャッチアップ社会ではないので、他所の技術を導入して簡単に成長して行く過去の成功モデルは最早通用しません。
「輝かしい未来」が待っているような正月元旦の目出たいイメージ新聞がなくなって久しいですが、これからも最先端で苦闘しながら(外形上モタモタするしかない)やって行くのは(他所の技術導入で高成長するよりは)日本にとって名誉なことです。
円高・・ハンデイが大きくなればなるほど国際競争は苦しいですが、ハンデイが高いのは本来名誉なことです。
数日前に置き碁の例を書きましたが、置き石をドンドン減らして勝っていても実質的実力が下がっているのに、表面上勝っていて、景気が良さそうに見えるので気がつかないだけです。
円安で楽をしようとするのでは、企業体力がなまってしまいます。
円安時に甘やかされて基礎的競争力が弱っているところで、投機筋の標的になって円高になると日本経済がひとたまりもなく参ってしまいます。
ここ4〜5年破格のウオン安で良い思いをして来た韓国経済が、今回は投機筋の標的になってウオン高になって来るとひとたまりもない状態が懸念されているのが参考になるでしょう。
日本も囲碁の例で言えば、置き石を4個から3に減らす程度で良いのに調子に乗って5から1に減らすと実力以上の円安ですから、企業は楽して儲けられますが、その代わり筋肉質でなくなったころに投機の対象になって急激な円高(本来の実力相応レベル)に戻るとメタメタになってしまいます。
相撲で言えば大関がまだ関脇の実力があるのに、あえて幕尻〜十両に下がって相撲を取れば(大関の待遇を受けられない代わりに)連続勝ち星を挙げられて景気の良い話になりますが、弱いものばかり相手では実力が却って下がってまうでしょう。
苦闘の将来が待っているのは誰のせいでもない・・課長〜部長〜役員と昇進すればランクアップに応じて大変なのは当然ですが、そのうちに新たな地位に適応出来るのが普通です。
円高=ランクアップに応じてその直後は適応に苦しむのは当たり前で(政治家の責任にしても始まりません)最先端水準に到達した日本民族みんなの試練・宿命です。
前を行く選手を追うのは楽ですが、先頭ランナーが辛いのはどこの世界・分野でも同じです。
日本は栄誉ある地位を得た以上は、その苦労を苦労と思わずに輝かしい1歩の始まりと思って民族みんなで背負って新たな地位に挑戦して行くべきです。
他人の後を追って高度成長したい人が今でもいますが、そう言う人は新興国に引っ越せば(高速道や鉄道も港湾も何もかもそろっていない社会では、毎日のようにインフラの充足劇を見られて)高度成長が実感出来ます。
円安期待とは、せっかく部長に昇進したのに「課長に戻れば楽で良いなあ!と言っている負け組の発想です。
(課長の実力しかないのに官打ちにあったと言うなら別です・・安倍政権の円安政策は日本の実力はもっと低い・・荷が勝ち過ぎるという意思表示になります)
我が国は経済だけではなく道徳的にも最先端社会を構築した以上は、簡単に先が見えないのは当然ですから、成長率だけを基準にこれを「失われた20年」などと閉塞感を強調して批判するのは誤りです。
前人未到の領域に入った以上は、傑出した指導者など滅多に出る訳がないので何をするにも暗中模索・モタモタするしかないのは当然です。
モタモタが20年続いているのは誰の責任でもない・・政治家の責任ではないので、政治家を非難しても始まりません。
政治家や誰かに安直に解決してもらおうとしても、誰も経験のないことですから日本の歩む方向は試行錯誤しかないのは当然です。
これを従来の高度成長期のように、どこか先進国の経験の真似をしたら良いとい安直な期待で政治家に期待すると、どこにも真似をする事例がないのでどの政党が政権をとっても国民が期待したようにはうまく行かず、政権が安定しないことになります。
日本の政権が短期で交代する・・国民の期待はずれに終わるのは、過去の高成長期待を煽るマスコミ(ネットを含めた)・学者の姿勢に問題があります。
欧米の過去の事例を学ぶのに秀でた学者の意見で政治をすれば楽ですが、そんな社会・・低レベルな二番手〜三番手社会にわざわざ落伍して生活する必要はありません。
前向きに一歩でも二歩でも進もうとすれば、モタモタするしかないのですから、これまでの日本の愚直とも言える歩み方は正しい選択であったように思います。
マスコミの煽動に応じる・・ポピュリズム的政治を志すには一旦大関・関脇クラスから、幕尻クラスにランクを落とすのが早道です。
安倍政権は円安にする=一旦ランクを落として高度成長のような気分に国民を踊らせようとしていますが(ランクを落とすのは誰でも出来るし実現可能です)、長期的な体力・国力を弱めることにならないかを心配しています。
アニメの普及を通して日本庶民の生き方が世界に浸透し始めていることをDecember 20, 2012「米英系マスコミ支配2とマスコミの限界」のコラムで書いたことがありますが、我が国の国民生活レベル全般(信義を守るなど道徳意識を含めて)が今や世界の模範になりつつあります。
鼓腹撃壌の故事を持ち出すまでもなく、政治の要諦・・目標は国民の福利にあります。
世界で一番犯罪率が低い・財布など落とし物をすれば直ぐに交番に届けられている・・こんな理想社会が日本以外にありますか?
街にゴミが散らかっておらず隅々まで清潔・・町並みも綺麗な状態で騒音も少ない・川には澄み切った水が流れている・・子供や動物など弱者に対するまなざしが暖かいし、みんなお互いにいがみ合っていない・・信頼性の高い理想郷を実現しているのが現在日本社会です。
スラム街がないのも日本の特徴です。
日本にも一見貧しそうな木密住宅街がありますが、そこでも路地の隅々まで綺麗に掃除が行き届き、狭い空間に草花を育てるなど暖かい風情があって、諸外国の荒れ果て・荒んだスラム街とは全く違います。

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